【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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124 守護霊魔法!

置きっぱなしの鞄を取りに行くために闇の魔術に対する防衛術の教室に戻ったソフィアは、心配そうに眉を下げたハーマイオニーに扉を開けた途端抱きしめられた。

 

 

「ハーマイオニー…」

「ソフィア、大丈夫?顔色は…うん、よくなってるわね」

 

 

ハーマイオニーは目線を合わせるようにしゃがむとじっとソフィアの顔を見て少し安心し、表情を緩めた。

ソフィアは薄く微笑み、「だいじょうぶよ」と告げる。

 

 

「わたし、いまからくすりをもらいにいってくるわ」

「そう…ちょっと残念だわ…」

 

 

この愛らしい姿が見れなくなるなんて、とハーマイオニーは心の底から残念そうにため息を溢す。

確かに友達にちやほやと可愛がられるのは嫌ではなかったが、この短い手足では碌に動き回る事も出来ず、魔法も使えない。ソフィアは苦笑し「もう、こりごりよ…」と肩をすくめた。

 

 

 

セブルスの研究室を訪れたソフィアはその部屋にルイスがいる事に気付くと思わず駆け寄り飛びつくように抱きついた。

 

 

「ソフィア?」

「──はぁ…」

 

 

生きている者の体温と、優しい声に、ようやく強張っていた体の力を抜くとソフィアは詰まっていた息を長く吐いた。

 

 

「──なんでもないわ!もう、このすがたでいるの…たいへんだったの!」

 

 

すぐに手を離し、誤魔化すように明るく言うと調合机の奥にいるセブルスの元へぱたぱたと足音を立てて向かう。

 

 

「とうさま、くすりはできた?」

「…ああ、これを飲めば戻る」

 

 

セブルスは大鍋から真っ赤な液体を掬い、コップになみなみと注いだ。

漂ってくる臭いは、間違いなくその薬が不味いものだと告げていて、ソフィアは嫌そうに眉を顰めセブルスを見上げる。

 

 

「…おいしくなさそう…」

「かなり苦いだろうな」

「…がまんするしか、ないわよね…」

 

 

ソフィアは顔を顰めながら小さな手でそのコップを受け取った。

顔を近づければ鼻をツンと刺す刺激臭に、思わず顔を背け「うぅ、」と舌を出してしまう。

 

 

「父様、服を戻さないと」

 

 

このまま身体が大きくなれば、間違いなくソフィアの服はビリビリに破けてしまいあられも無い姿を晒すことになるだろう。──別に、今ここにいるのは父親と血を分けた双子の兄だ、本人達はもし素っ裸のソフィアを見ても狼狽えることは無かっただろうが、一応ルイスはセブルスに伝えた。

 

確かにそうだ、とセブルスはソフィアの服にかかっていた魔法を解除する。途端にソフィアの服は元の大きさに戻り、スカートが床にずり落ちた。

 

 

「…ま、べつにいいわ」

 

 

ソフィアは片手でなんとかコップを掴み、一応下着だけは脱げないようにローブの上から反対の手で抑えながらじっと真っ赤な液体を見る。そして一度大きく息を吐き、ぴたりと息を止めると一気にその薬を飲み干した。

 

 

「──うっ…!」

 

 

ソフィアは体の中を駆け巡る灼熱に苦しげに胸を押さえる。ポン、と軽い音が響き白い煙がソフィアを包み込む。少しして煙が晴れた先には元の姿に戻ったソフィアがその場に座り込んでいた。

 

 

「ソフィア、大丈夫?」

「ええ…めちゃくちゃ不味かったけど、大丈夫よ」

 

 

ソフィアはよろよろと立ち上がりスカートを履き直し服の乱れを正した。一応、ルイスとセブルスは視線を逸らしていたがソフィアが着替え終わると直ぐにソフィアの身体に異変がないかと調べるために向き合った。

 

 

「災難だったわ…まあ、ちやほやされるのは、悪くなかったけど」

「…何故あんな馬鹿な真似をしたんだ?」

 

 

セブルスはソフィアの身体が不都合なく戻っている事を確認し、内心で安堵の息を吐きながら少々強い口調で聞いた。ソフィアは肩をすくめ「だって…」と口籠る。

 

 

「…ちゃんと縮み薬になっているか、私にはわからなかったんだもの…」

「…薬が出来ていたから良かったものの…毒なら、死んでいたぞ」

「…ごめんなさい」

 

 

静かなセブルスの怒りに、ソフィアはしゅんと項垂れる。しかしあの場でティティに飲ませると脅したのは紛れもない父では無いか、結果縮み薬だったら良かったものの、それこそ毒なら…ソフィアは間違い無く、泣いて取り乱していただろう。

 

 

「ソフィア…父様がティティに毒を飲ませるわけないでしょ?ちゃんと僕が助言して、縮み薬になるってわかっていたんだよ」

「…え?そうなの?」

「…当たり前だろう」

 

 

わかっていなかったのはソフィアだけであり、ルイスとセブルスは小さくため息をついた。

セブルスも流石に鬼ではない。ネビルの時もそうだが、きっとハーマイオニーが助言するだろうとは思っていた。だからこそハーマイオニーがネビルに助言している事に気付きながら知らぬふりをした。──とはいえ、あの状態から縮み薬を本当に仕上げるのは難しかった筈だ。勿論表立って褒める事はないが、感心は、していた。ハーマイオニーにとって不運だったのはグリフィンドール生だと言う事だろう。それがなければ──レイブンクロー生なら加点されていたかもしれない。

 

セブルスはルイスの知識と、優秀さを信用し、あの無残な薬も残りの材料で何とか縮み薬にするだろうと思っていた。ソフィアが薬をティティの代わりに飲まなければ、セブルスはルイスに加点するつもりだったのだが、残念ながらそれはなされなかった。

 

 

「ルイス…よくあの状態から縮み薬が作れたものだ」

「んー…ま、父様からの挑戦かな?って思って、頑張ったんだ」

「…流石私の子だ」

 

 

セブルスは柔らかい声でルイスを褒め、その目を細める。その目には確かにルイスを誇りに思う感情がちらりと滲んでいた。

ルイスはセブルスの言葉に嬉しそうに頬を染めてはにかんだが、隣にいたソフィアはつんとそっぽを向いていた。

 

 

「どうせ、私は父様の子なのに調合が下手よ…」

「まぁまぁ、ソフィアは母様に似たんだよ、ね?父様?」

「ああ…まぁ、アリッサは魔法薬学も得意だったがな」

 

 

セブルスはソフィアの優れた変身術の事を思いながら頷いたが、余計な一言をつい言ってしまい、ソフィアはついに不貞腐れた。

 

 

 

「ははっ!機嫌直しなよソフィア?これから僕たちは幸せな気持ちにならないといけないんだから」

 

 

腕を組みそっぽを向くソフィアにくすくすとルイスは笑いかけ優しくその肩を叩く。ソフィアは一瞬何のことかと思ったが、そういえばこの時間に守護霊魔法をセブルスから教わる約束をしていた事をようやく思い出した。父から教わる魔法。それもかなり難易度が高い特別な魔法だ。──その事を思い出しようやくソフィアは気持ちを切り替えセブルスに向き合った。

 

 

「ああ…そういえば、そうね…色々あってすっかり忘れてたわ」

「…今日一日で出来るとは思わん。…二人とも杖を出しなさい」

 

 

セブルスの指示に、ソフィアとルイスは頷き杖を出した。

 

 

 

 

 

「エクスペクト・パトローナム!」

「エクスペクト・パトローナム!──うーん、だめ!出来ないわ!」

 

 

その後何度も二人は呪文を唱えたが、杖から霞のような銀色の靄が出るだけで実体となって現れる事はない。

必死に一番幸福な記憶を考えていたのだが、どうも気持ちが足りないのか上手くいかなかった。

 

 

5時限目終了のベルが鳴り、ソフィアとルイスは顔を見合わせため息をついた。もう、今日はここまでだろう。

 

 

「杖先から靄が出せただけで、今日は充分だろう」

 

 

むしろ、充分すぎる。とセブルスは思っていたが、2人は納得ができず「あと一回だけ!」と叫ぶと真剣な顔をして目を閉じた。

 

 

ルイスは考える。生きてきた中で最も幸福な記憶は何か──それを思うだけで胸が温かくなり、思わず頬が綻ぶような、そんな確かな記憶は何か。

 

 

──ソフィア。父様…。

 

 

ルイスは、隣にいる愛しい妹と大切な父の事を思った。

 

 

 

 

ソフィアは考える。生きてきた中で最も幸福な記憶は何か──それを思うだけで温かく、いつでも柔らかなものに包まれているような気持ちになれる、そんな記憶は何か。

 

 

 

──そうだ、一年生の時…。

 

 

ソフィアはグリフィンドールの談話室でたくさんの友人に囲まれルイスと共に過ごした誕生日パーティを思い出した。

 

 

「「エクスペクト・パトローナム」」

 

 

胸に確かな幸せな記憶を呼び起こし、二人は同時に呟いた。

途端、杖先から銀色の光が溢れそれはぼんやりとした陰のように静かに広がる、一瞬、何かの形を作ろうとその光は集まったが──輝きはふっと、空に溶けて消えた。

 

 

「──父様!見た?」

「惜しかったよね!?」

 

 

二人は興奮し目を輝かせながらセブルスを見つめる。セブルスは確かな2人の能力に優しく微笑みその頭を撫でる。

 

 

「ああ、…よくやった。すぐに出来るようになるだろう」

 

 

褒められた2人は嬉しそうに顔を見合わせて微笑んだ。

流石に直ぐには使いこなせなかったが、それも時間の問題だろう。回数をこなし安定させることができればきっと、2人は立派は守護霊を出現させる。

 

 

「ねぇ、父様の1番幸せな記憶って何?」

 

 

ソフィアは頭を撫でられるくすぐったさに目を細めながら、セブルスをちらりと見上げた。父の心に確かにある幸福の記憶とは、一体どんなものなのだろうか。

 

 

「…さあ、何だろうな。──もう夕食の時間だ、戻りなさい」

 

 

セブルスは薄く笑ったまま誤魔化した。ソフィアは少し残念そうにしたが深く追求する事はせず、「おなか空いたわ!」と言いながら杖をポケットに戻し、重い鞄を掴んだ。ルイスもまた、同じように空腹感を覚え「大広間に行こうか」と腹を撫でながら笑う。

 

 

扉に向かう2人を見つめるセブルスの瞳を見れば、セブルスが何を思って守護霊魔法を成功させているか、きっとソフィアとルイスはわかっただろう。──セブルスにとっての幸福の形は、今ここに確かに存在しているのだから。

 

 

 

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