【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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126 猫の本能!

ソフィアはロン、ハーマイオニーと共に談話室に居た。ハリーは夕食後すぐにクィディッチの練習があり、この場には居ない。ソフィアは目の前にある掲示板を見つめながら、ハリーが戻ってきてこれを見たら落ち込むだろう、と少しため息をこぼす。

 

 

「ホグズミードにようやくいけるのか!やったぜ!」

「楽しみだわ!えっと…ハロウィンの日ね」

「…ハリーは悲しむでしょうね」

 

 

うきうきとしている二人に向かってぽつりと呟けば、ロンとハーマイオニーは顔を見合わせる。すっかり忘れていた、そういえばハリーはホグズミード行きの許可を貰えていなかったのだ。

 

 

「まぁ、今回きりってわけじゃないし、次はきっといけるさ!」

 

 

ロンは明るく言うと「ところで天文学の宿題一緒にしていい?」とソフィアとハーマイオニーに聞く。その顔にはありありと答えを写させて下さいという願いが見えていたが二人は気付かないフリをして頷いた。

 

 

それぞれの部屋に天文学の宿題を取りに行き、談話室の暖炉近くに座る。ぱちぱちと暖炉が火を爆ぜながら、温かい熱を発していた。

 

もうすぐ冬が訪れる。

ソフィアは冷たくなった手先を暖炉に火に近づけながら数週間前に森で出会った犬のことを考えた。──雪が降れば、あの子は生き残れるかしら?時々ご飯を持って行ってるけれど、冬本番になればきっと動物は冬眠してしまうわ。…大丈夫かしら。

 

ソフィアとルイスが黒犬に出会い、そのあまりの痩せ細った体に不憫に思い餌を持ってくると約束してから、2人はシェイドの足にチキンや果物、そしてミルク瓶などが入ったカゴを持たせ2、3日に1度は送っていた。ちゃんと届けられるか不安だったが、毎回空になったカゴが戻ってきているためきっと受け取っているのだろう。「あまり、毎日餌付けすると自分で狩りをしなくなって、僕らが卒業してから飢え死するかもしれない」というルイスの言葉により、毎日送る事はやめた。

 

 

 

──そうだわ。ハグリッドに黒犬の事を伝えよう。きっとハグリッドは優しいから、飼ってくれるわ。ファングも居るし。

 

 

中々いい案だとソフィアは考えながら、全く進んでいない天文学の宿題にようやく取り掛かった。

 

 

「なぁソフィア。これって…なんだっけ?」

「ロン!自分で考えないとだめよ!」

「星なんて全部同じに見えるんだ、─ちょっとヒントだけ!」

「んー…?」

 

 

ロンが机に広げていた星座図をソフィアの方へと押しやる。ソフィアはそこに書かれた星座と教科書を見て少し考えた後、教科書のページをいくつか捲る。

 

 

「ロン、違うところを見てるわ。これは夏の大三角じゃなくて、冬の大三角よ」

「え?──あ、本当だ。ありがとう!」

 

 

ロンは何度も教科書と星座図を見比べ、羽ペンを走らせる。しかしふと手を止めるとじっと教科書を見つめ怪訝そうな目でソフィアを見た。

 

 

「見ろよ。…こんな所にブラックの名前が」

「あら、知らなかったの?」

 

 

ソフィアはロンが指差した箇所を見るとすぐに何を言いたいのかわかり、むしろ何故今まで気が付かなかったんだ、授業で何回も出てきたのに──本当に授業をまともに聞いていないのね、と少し呆れながらシリウス、と書かれた箇所を指で撫でた。

 

 

「ブラック家に生まれた人はみんな星から名前をつけられているのよ?これでまでも何人ものブラック家の名前が教科書で現れているわ」

「ロン…本当に授業を聞いてないのね」

「……ちぇっ」

 

 

ハーマイオニーとソフィアから呆れたように言われてしまい、ロンは面白くなさそうに口を尖らせると、星座図にシリウスとその星の名前を書き込んだ。

 

 

暫くは3人とも無言で星座図を仕上げていたが、周りの騒めきが気になりソフィアは羽ペンを置くとぐっと一度伸びをした。

ちらりと周りを見てみれば至る所でホグズミードの事が話されている。そこに行った事が無い者が殆どで、月末──ハロウィンの日を心待ちにしているのが見てとれた。

 

 

「あ、ハリー!こっちよ、お疲れ様!」

 

 

目を上げていたソフィアは丁度ハリーがクィディッチの練習から戻り談話室へと入ってきたことに気付き手を振った。

ハリーはいつもと異なる談話室の熱のこもった騒めきに不思議そうにキョロキョロと辺りを見渡しながらソフィアの元へ駆け寄る。

 

 

「何かあったの?」

「第一回目のホグズミードに行く日が知らされたの」

 

 

ソフィアは古い掲示板に貼られている「お知らせ」を指差した。その瞬間ハリーの表情は一気に暗くなり、無言でソフィアの隣に座った。ハーマイオニーは星座図に書き込んでいた手を止めると、少し言葉を選ぶように、気を使いながら口を開いた。

 

 

「ハリー、この次にはきっと行けるわ。ブラックはすぐに捕まるに決まってる。一度目撃されているし…」

「ホグズミードで何かやらかすほどブラックは馬鹿じゃないよ。ハリー、マクゴガナルに聞けよ。今度行っていいかって。次なんて永遠に来ないぜ──」

「ロン!ハリーは学校内にいなきゃいけないのよ!」

 

 

ハーマイオニーは厳しい目でロンを睨み、咎めるように言ったがロンは「だって、三年生でハリー1人だけ残しておくなんてできないよ」と反論した。

三年生で1人だけ。その言葉はハリーの落ち込んでいた気持ちをさらに沈ませた。──そうだ、きっとホグズミードに行けないのは僕だけに決まっている。他のみんなは楽しく過ごして、僕1人だけここでひとりぼっちで過ごすんだ。

 

 

「ハリー、私ここに残りましょうか?」

「ソフィア…ううん、行ってきて。僕…マクゴガナルに聞いてみるよ」

 

 

ハリー1人だけ残しておくのは何だか申し訳なく、ソフィアはそう聞いたがハリーは少し困ったように笑うと首を振った。ソフィアは優しい、それはハリーもよく分かり、その言葉はとても嬉しかったが──一方で悲しくもあった。気を遣われている、きっとソフィアもホグズミードに行きたいだろうに。

 

ソフィアもホグズミードに行きたくない訳ではなかったが、第一回目が行けなくても別に問題はなかった、ハリーは周りの浮き足立つ様子、楽しげな様子に悲しく、惨めに感じているのだろう。それなら一回目くらい一緒にいてあげよう。──そう思っていたが、ハリーの悲しげな微笑みとやんわりとした拒絶に言葉を噤んだ。

 

ハーマイオニーは何か言いかけようと口を開いたが、その時大きな蜘蛛の死骸を咥えたクルックシャンクスが軽やかに彼女の膝に飛び乗り、狩りの成果を褒めて欲しそうにゆっくりとハーマイオニーを見上げた。

 

 

「わざわざ僕の目の前でそれを食うわけ?」

「お利口さんね、クルックシャンクス?独りで捕まえたの?」

 

 

ハーマイオニーは優しく柔らかい声でクルックシャンクスを褒め、ふわふわとしたその頭を優しく撫でた。

クルックシャンクスはハーマイオニーを見ていた目を逸らし、ちらりと女子寮へと続く階段を見る。

ハーマイオニーとソフィアとハリーはその視線の先を追い──ロンだけは嫌そうにクルックシャンクスを睨み続けていた──白い毛玉のようなものがぽんぽん跳ねるようにこちらへ向かってくるのを見た。

 

 

 

「ティティ!──まぁ、あなたも捕まえたのね?偉いわ!」

 

 

白い毛玉の正体。フェネックのティティはソフィアの膝の上に飛び乗ると、口に咥えた小さな子蜘蛛を「どうだ」とばかりにソフィアに見せる。まだピクピクと動いている足を見たロンは声にならない悲鳴をあげ仰反ると、ソファの背にびったりと身体をくっつけた。

 

 

「そいつらをそこから動かすなよ──スキャバーズが僕の鞄で寝てるんだから…」

「わかってるわ、ほらティティ?蜘蛛を食べちゃいなさい?」

 

 

ソフィアは優しくティティの身体を撫で、ティティは嬉しそうに目を細めばきばきとその蜘蛛を食べた。

 

ハリーは眠たい目を擦り、欠伸を1つこぼす。今すぐベッドに向かいたかったが、自分も星座図を完成しなければならない事を思い出すとロンが持ってきてくれていた自分の鞄を引き寄せ中から羊皮紙やインク、羽ペンを取り出し作業に取り掛かった。

 

 

「僕のを写していいよ」

 

 

疲れている様子のハリーに気づいたロンは最後の空白を埋めたあとハリーの前に完成したばかりの星座図を押しやる。ハーマイオニーは丸写しが許せずむっとした表情をしたが、何も言わずに自分の星座図を鞄に片付けた。

 

その時、クルックシャンクスがハーマイオニーの膝から飛び退くとロンの鞄の上に着地し、鋭い爪で猛烈に引っ掻き出した。

 

 

「おい!離せ!この野郎!」

 

 

ロンは悲鳴をあげ喚きながら鞄を引っ掴んだが、クルックシャンクスは爪を食い込ませテコでも離れない。ソフィアは慌てて立ち上がりティティをぎゅっと抱きしめ一歩後ろに下がった。

 

 

「ティティ!待って、落ち着きなさい!」

 

 

クルックシャンクスの興奮が移ったのか、ティティはソフィアの腕の中で四肢をばたつかせもがき出ようとしていた。ソフィアは必死に抱きすくめ、そのせいで手の甲や腕に赤く細い引っ掻き傷ができる。

 

 

「ロン、乱暴しないで!」

 

 

ハーマイオニーは悲鳴をあげ、しかし手を出すことも出来ず狼狽したまま「クルックシャンクス!ダメよ!」と叫んだ。談話室にいた生徒たちは騒ぎに気付き、どうしたんだと近付き見物する。

 

必死に鞄を振り回し、クルックシャンクスを引き離そうとしていたロンだったが、クルックシャンクスの攻撃でボロボロになった鞄の口が開きその中から遠心力でスキャバーズが飛び出し見事な曲線を描きながら空を舞った。

 

 

「あの猫を捕まえろ!」

 

 

クルックシャンクスは空を舞ったスキャバーズに気付くとすぐに鞄から離れ命からがら逃げるスキャバーズを追いかける、生徒の群れを走る2匹に、何人かが悲鳴をあげて慌てて飛び退いた。ジョージがロンの声を聞きクルックシャンクスを捕まえようと手を伸ばしたがするりとクルックシャンクスはその手から逃れ、執拗にスキャバーズを追いかけた。

 

 

「ああ……大変だわ」

「…うん、そうだね」

 

 

ソフィアが暴れるティティを抑えながら青い顔で呟き、ハリーは小さく頷いた。

 

 

「見ろよ!こんなに皮と骨になって!その猫をスキャバーズに近づけるな!」

 

 

ロンは箪笥の下で震えていたスキャバーズを引っ張り出すと尻尾を掴み、ハーマイオニーの眼前に突きつける。その哀れな鼠を見てハーマイオニーは流石に顔を蒼白にし、腕の中でもがくクルックシャンクスを抱きしめたまま小さく呟く。

 

 

「クルックシャンクスには、それが悪いことだってわからないのよ!ロン、猫は鼠を追いかけるものだわ!」

 

 

ハーマイオニーは反論したが、その声は震えていた。ロンは苛々とした様子を隠す事なくハーマイオニーとスキャバーズを睨む。

謝罪ではなく、ロンにとって言い訳としか取れないその言葉に顔を真っ赤にして「そのケダモノ、おかしいぜ!」と吐き捨てた。

 

 

余程クルックシャンクスが怖かったのか、飼い主であるロンの手にいてもバタバタと暴れるスキャバーズに、ロンは優しく「大丈夫だ、大丈夫…」と宥めすかし、ポケットの中に入れた。ポケットの中で収まり、それでも震える小さなスキャバーズを感じ、ロンはきっとハーマイオニーを睨んだ。

 

 

「スキャバーズは僕の鞄の中だってのを、そいつ聞いたんだ!」

「馬鹿な事言わないで、クルックシャンクスは臭いでわかるのよ。他にどうやって──」

「その猫、スキャバーズに恨みがあるんだ!いいか、スキャバーズの方が先輩なんだぜ?その上に病気なんだ!」

 

 

ロンは何か言いかけ口を開きかけていたハーマイオニーを無視すると、怒ったまま談話室を横切り男子寮へ続く階段を足音を強く鳴らせ上がっていった。

 

 

一瞬談話室は静まり返っていたが、すぐに先程のような騒めきが戻り生徒達はぱらぱらと元いた場所に帰っていった。

ハーマイオニーはじっと男子寮へ続く階段を見ていたが、がっくりと肩を落とすと腕の中で「にゃあ」と鳴くクルックシャンクスを強く抱きしめた。

 

ソフィアはそっとハーマイオニーの側により、その落ち込んだ肩を撫でる。

 

 

「ソフィア…クルックシャンクスは…変じゃないわ。…習性よ…本能だもの…」

「ええ、わかってるわ。ティティも、スキャバーズを捕まえたかったみたいだし…けど、ハーマイオニー?ペットがしでかした事は、飼い主がキチンと謝らなければならないわ。悪くない事でも…ロンは傷付いたのだから…」

「…ええ、…そうだったわ…私、混乱して…」

 

 

ハーマイオニーは長いため息をつくと、「私も、もう寝るわ…」と言ってとぼとぼと女子寮へ上がっていった。

 

 

ソフィアは暫くその落ち込んだ背中を見ていたが、ハリーの元へと戻ると肩をすくめた。

 

 

「…荷物、片付けましょうか」

「…うん、そうだね」

 

 

二人は散らかった羊皮紙や羽ペンを鞄の中に詰めるとそれぞれ自分のものと、相方のものを手に持つ。

同時に「はぁ…」とため息をこぼした2人は顔を見合わせ苦く笑い合った。

ロンとハーマイオニーは良く小言を言い合い、喧嘩をすることがあるが、今回は長引きそうだとソフィアとハリーは思った。

 

 

 

 

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