ハロウィーンの朝、3年生以上の生徒はホグズミードに行ける時を今か今かとそわそわと待ちながら友達たちと楽しく会話を交わしていた。「どんなお菓子があるかな?」「叫びの館を見に行こう!」「ゾンコって素晴らしい物が沢山売ってるんだって!」──大広間で生徒たちの期待がこもったその言葉たちを聞くたびに、ハリーは気分が沈み悲しくなってきたが、なるべく普段通りに見えるように──何でもない、僕は気にしてないから──と必死に表情を取り繕った。
「ハニーデュークスからお菓子をたくさん持ってきてあげるわ」
「ゾンコでいい物も買ってくるわ」
「うん、たーくさん買ってくるよ」
ロンとハーマイオニーはクルックシャンクスとスキャバーズの一件でお互いに長く口を聞いてなかったが──いや、ハーマイオニーは何度か謝ろうとしたがロンが無視した──ハリーの落胆振りを見てクルックシャンクス論争をついに水に流した。
「僕の事は気にしないで、パーティで会おう。楽しんできて」
ハリーは気を遣われるのは、もうたくさんだった。その度にどうしても惨めな気持ちになり、さらに気分は沈み込むだけだ。ハリーのその気持ちが分かったソフィアは、もう学校に残ると言う事はなかった。
朝食後、ソフィア達はホグズミード行きの生徒たちの集合場所の玄関ホールまで向かう。ハリーは3人の見送りの為に玄関ホールまで着いて行ったが、その楽しそうな生徒たちの顔を見ると──来なかったら良かったかもしれない、と少しだけ後悔した。いや、でも笑顔で見送らないと3人は自分を気にして心から楽しめないかもしれない。──ハリーは、誰よりも友人達の幸福を望み邪魔をしようとは一切考えなかった、きっと優しいソフィアは「一緒に居て」と言えば直ぐに頷いてくれるだろう。そう分かっていたが、ハリーはけっしてそれを口にはしなかった。
フィルチからのチェックを終えたソフィアとロン、ハーマイオニーは何度か後ろを振り返り、ぽつんと玄関ホールで立つハリーを見た。ソフィア達は大きく手を振り、ハリーが独り大理石の階段を引き返すまでそうしていた。
「ハリーの分も楽しもうぜ」
「ええ…そうね」
「沢山お土産を買わないと!」
ソフィア達は顔を見合わせ頷き合う。快く送り出してくれた友のために、目一杯楽しんでお土産を買い慰めよう。そう、決めた。
生徒たちの群れに加わり、暫く道を進む、すると突如開けた場所に出て大きな門構えのアーチが生徒たちを迎えた──ホグズミード村──そう書かれている看板を見て歓声がそこかしこから上がる。
「まずはハニーデュークスに行こうぜ!」
「ええ、そうしましょう!」
先程まではハリーを思い複雑な表情をしていたソフィア達だったが、周りの雰囲気と、そして絵画のワンシーンのようなホグズミード村の美しい光景に目を輝かせ期待に胸を高鳴らせた。──友達思いの3人であっても、まだ13.4の子どもだ。この雰囲気に飲まれない方が可笑しいだろう。
ソフィア達は頬を赤く染めながらハニーデュークス店の扉を開ける。陳列棚には沢山の色とりどりな魔法キャンディが並び、商品説明を見る限りどれも美味しそうだ。
「わぁ!見て!12時間キャンディよ!これ本当に12時間無くならないの、それもすっごく美味しいし…!」
「ミントキャンディもあるわ!眠気覚ましに丁度いいかもしれないわ」
「ハーマイオニー、それかなり臭いがキツイぜ?歯磨き粉みたいなもんだ」
「あっ!見て、試食品を配ってるわ!行きましょう!」
店主は今日がホグワーツ生の第一回目のホグズミード行きの日だと知っていた為、この日に新商品を作り試供品を用意していた。この店の商品を売り込む目的なのは勿論だが、──あまりお小遣いが無く、商品を見るだけで買えない可哀想な子ども達の為に、ちょっとしたサプライズプレゼントのつもりだった。
「新商品のヌガーだよ。さぁ皆さんどうぞ──良かったら買って行ってね」
「ありがとう!」
「──わぁ!見て!ドライフルーツが入ってて綺麗!」
ソフィアは包みを開け手で摘みながら歓声を上げた。
それは水飴のような透明のソフトキャンディで、中にはキラキラと輝く鮮やかなドライフルーツが混ぜられていた。窓からの光に反射し虹色に輝く──まるで、宝石箱のような美しいヌガーにソフィアは食べるのも忘れて日の光に当てていた。
それを見た店主は嬉しそうににっこりと笑う。
「お嬢さん、見た目も良いけど──勿論味も最高に良いよ。食べてごらん?」
「えぇ!──わぁ!すっごく、甘くて…うん!とっても美味しいわ!」
ソフィアは口の中にヌガーを放り込みモグモグと口を動かしていたがぱっと顔を輝かせると口を手で押さえながら率直な感想を店主に告げる。
「──んっ!?な、何これ!すごい、口の中でサイダーみたいにパチパチしてるわ…!面白い食感!おじさん、一袋買うわ!」
口の中で踊り出したヌガーにソフィアは目を丸くしていたが直ぐに気に入り、人の良い笑顔を見せる店主から新商品を一袋受け取った。周りにいた生徒達も、ソフィアの食レポを聞き、幸せそうな笑顔を見てそんなに美味しいのかと生唾をごくりと飲む。──新商品が棚から全て無くなるのも、時間の問題だろう。
「ねぇソフィア、これとこれどっちが美味しいと思う?」
「え?うーんどっちも美味しそうね…」
ソフィアはハーマイオニーの呼びかけに気付き走り寄った。
ソフィア達がホグズミード村のほぼ全ての店を見て周り、両手にお土産を抱えて帰ってきたのは太陽が沈みかける黄昏時だった。
3人の帰還を談話室で待っていたハリーに鮮やかな彩りの菓子の数々を雨のように降り注ぎ、ロンが満面の笑みを浮かべる。
「ほーら、持てるだけ持ってきたんだ!」
「ありがとう。ホグズミードってどんなどこだった?どこに行ったの?」
ハリーは膝の上に転がった黒胡椒キャンディの小さな箱を摘み上げながらソフィア達に聞いた。ソフィア達は顔を見合わせ一気に話した。答えは──全部。どこに行っても楽しく愉快で、それでいて不思議だった。
顔を紅潮させ人生最高の楽しい時を口々に話す3人に、ハリーは笑顔を浮かべて聞いていたがやはり、寂しく感じるのも事実で、その笑顔は少々ぎこちなかった。
「バタービールを持ってきてあげたかったなぁ、心の芯から温まるんだ──」
「あなたは何をしていたの?宿題やった?」
「クィディッチの練習とかかしら?」
ハリーの表情を見て冷静になったソフィアとハーマイオニーが心配そうにハリーに聞けば、ハリーは首を振り自分がホグズミード行きには敵わないが、少し楽しいこと──そして、気になることを経験したのだと話した。
「宿題もクィディッチの練習もしてないよ。ルーピン先生が部屋で紅茶を淹れてくれて、次の授業で使うグリンデローを見せてくれたんだ」
「まぁ!楽しそうね!私もリーマス先生の紅茶飲みたかったわ」
ソフィアは以前、リーマスの家で飲んだ紅茶の味を思い出し残念そうに眉を下げたが、今回ハリーに出された紅茶は一般的な少々安っぽいティー・バックのものだった。勿論ハリーにとってお茶の葉はもううんざりであり、そのリーマスの気遣いがとても嬉しかったのだが、──ソフィアはそうとは気が付かない。
「うん、それで──スネイプが来て、ルーピン先生に薬だって言ってゴブレットを渡したんだ…どう見ても怪しいよね?」
ハリーは声を顰めて言うとソフィア達を見渡した。ロンは口を大きく開け、信じ難いものを見る目で「ルーピン先生が、それを飲んだ?…まじで?」と呟く。
ソフィアは目前に控えた満月に備える脱狼薬だと気が付いていたが何も言わず、真剣な目をするハリーとロンになんと言って良いのか分からず──あまりに信頼されていない父を気の毒に思いながら閉口した。
「そろそろ降りた方が良いわ。宴会があと5分で始まっちゃう」
ハーマイオニーはちらりと腕時計を見て立ち上がる。ソフィア達は慌てて散らばった菓子をカバンの中に片付け、急いで肖像画の穴を通り大広間へと向かう集団の中に混じったが、ハリーとロンはまだセブルスのことを小声で話していた。
「ハリー、ロン。もし仮に。スネイプ先生がリーマス先生に毒を盛るつもりなら、ハリーの目の前ではやらないと思うわ」
ソフィアは声を抑えながらハリーとロンに囁く。2人は顔を見合わせ「うん、多分ね」と答えたが、心の奥ではきっと毒を盛ったに違いない、そう考えているのが見え見えでソフィアは眉を顰め少々機嫌を損ねた。
しかし、ハロウィーンの意匠が施された大広間を見てすぐにソフィアは機嫌を戻す。
何百ものジャックオランタンが空に浮かび煌々と灯りを灯し、生きた蝙蝠が天井を飛び交う。燃えるようなオレンジ色の吹き流しが荒れ模様の空を模した天井の下で何本も鮮やかに踊っていた。
食事も例年通り素晴らしく、ソフィアとハーマイオニーとロンはハニーデュークスの菓子を沢山食べたにも関わらず、全ての料理をおかわりした。
ハリーはリーマスの様子が気になり何度も教職員テーブルを見たが、リーマスは毒に苦しんでいる様子も無く楽しげにフリットウィックと話している。それを見てほっと安心したハリーだったが、数席離れた席に座るセブルスが不自然なほどリーマスを見ているような気がして、眉を寄せた。
──あの場にいたのは僕とルーピン先生だけだ。もし遅効性の毒で数日後にルーピン先生が死んでしまっても…犯人がスネイプだと、僕に証明できるだろうか。絶対、スネイプは認めないはずだ。
睨むようにハリーはセブルスを見ていたが、ソフィアに「ねぇそこのパンプキンパイとって?」と言われ、ようやく目を離した。
ソフィアは受け取ったパンプキンパイを頬張りながら、ふとスリザリン生のテーブルを見てドラコしか居ないことに気がつく。
──ルイス、どこにいるのかしら。
他のスリザリン生と宴会に参加しているのかと思いテーブルの隅々まで見たが、その姿は無かった。
ソフィアが首を傾げた時、さっと大広間の扉が開き小走りになりながらルイスが現れた。すぐにドラコの隣に座り、何か謝るようにジェスチャーをしている。
どうやら、何か用事があって宴会に遅れてしまったようだ。
──薬の調合かしら、難しいものをするって言ってたものね…。
ソフィアはきっと原因はそのあたりだろう、と深く気にせずすぐに視線を逸らし、今度は冷たいアイスクリームに手を伸ばした。
ーーー
少し時間は戻り、ルイスは廊下を1人走っていた。
ホグズミードから城へ帰宅し、三日ほど前から調合している薬の様子を見て少し煮詰めていたら…気がつけば宴会が始まる時刻はゆうに超えていた。
「ドラコ、怒るかなぁ」
遅れずに来い。そう何度も言われた事を思い出しルイスは苦笑する。ルイスとて遅れたい訳ではなかったが、調合を疎かにする事も出来ない。この3日間きっかり12時間ごとに火の調節をし、かき混ぜていた苦労が無駄になってしまうし、セブルス──父の期待に応えたかった。
「──あれ?」
ルイスは廊下の端で蠢く影を見つけ足を止めた。窓から差し込む光から逃れるように真っ黒な犬が壁に沿うようにして身を隠している。しかし、その目だけはわずかな光を反射し輝いていて、隠れているつもりなら少々疎かだろう。
「どうしてここにいるの?…ご馳走様の匂いに釣られちゃったかな?」
「…クゥーン…」
黒犬は警戒していたが、現れたのがルイスだと気がつくと尻尾を揺らめかせ、暗がりからのっそりと現れる。ルイスは以前見た時よりも肉付きの良くなった身体を優しく撫でる。
「ちゃんと、ご飯食べてるようだね?」
「ワン!」
ありがとう!と言うように黒犬は吠え、ルイスの腕に感謝を込めて頭を下げて擦り付けた。ルイスはくすくすと笑いながら辺りを見渡す。
「出口がわからなくなっちゃったかな?──おいで、こっちだよ。フィルチに見つかったら敷物か剥製にされちゃうかも」
小さく笑い、ルイスは立ち上がると着いておいでと言うように自分の腿を叩く。黒犬は何度か後ろを振り返りながらもゆっくりとルイスの後を追った。
ホグワーツに居る全員が大広間に集合しているのだろう、生徒や教師は1人もいない、それにゴーストとも出会す事なくルイスと黒犬は玄関ホールにたどり着いた。
「──じゃあね、これからもっと寒くなるから…できれば洞穴とかで冬を越した方がいい。ご飯はまた時々届けるけど…自分で狩りもしなよ?」
「ワン!」
黒犬の頭を撫で、ルイスは大きな扉を押し開ける。黒犬はするりと開けられた隙間から外へ飛び出すと一度振り返りしっぽを揺らした後、その闇に溶けるようにして森へ走った。
黒犬を見送った後、ルイスはすぐに大広間へと向かい、ドラコの隣に座る。すぐに不機嫌そうに「遅い」と言われてしまい、苦笑しながら「ごめんごめん」と軽く謝った。
「薬の様子を見るだけじゃ無かったのか」
「そのつもりだったんだけど。…難しい薬だからね、ちょっとかき混ぜたり火の調節をしてたんだ」
ルイスはほとんど無くなりかけていたパンプキンシチューの器を近づけ、スプーンで掬いながら答えた。
宴の締めくくりにはホグワーツに住むゴースト達の面白おかしい余興で、大広間中に歓声と拍手が湧き、ハリーはようやくホグズミードに行けず辛い気持ちが柔いでいったのを感じた。
ソフィア達は宴会後、他のグリフィンドール生の後ろをついていつもの通路を塔へ向かっていったが、太ったレディの肖像画に繋がる通路まで来ると、グリフィンドール生で溢れかえっている場に出くわした。
「なんで皆入らないんだろう?」
「うーん、レディもハロウィーンパーティに出かけているのかしら?」
ロンの怪訝そうな声にソフィアは背伸びをして必死に前を見ようとしながら答えた。肖像画の人は時たま別の肖像画へと出かけてしまう。それを一年生の時に知ったソフィアはそう思ったが──あれは深夜で誰も出ないだろうと思ったからだろう。こんな時間に職務を放棄するだろうか?
「通してくれ、さあ!何をもたもたしてるんだ?全員合言葉を忘れたわけじゃないだろう。──ちょっと通してくれ、僕は首席だ」
パーシーが人混みを掻き分け先頭に立つ。パーシーは肖像画を見ると直ぐに表情を険しくさせ「誰か、ダンブルドア先生を呼んで、急いで!」と叫んだ。
只事ではない事態に、後ろにいた生徒達はつま先立ちになり何があったのか前を見ようと必死に首を伸ばす。
「どうしたの?」
今しがた到着したばかりのジニーが不思議そうにソフィアに聞いた、ソフィアは後ろを振り返り、それが、寮に入れないの。そう、答えようとしたがジニーの隣に突如現れたダンブルドアを見て息を呑んだ。
ダンブルドアはいつもの柔和な笑顔を消し、真剣な表情で肖像画まで向かう。生徒達は互いを押し合いながらダンブルドアに道を開けた。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、ソフィアは何が問題だったのか──ダンブルドアが来るほどの問題は何なのかよく見ようと、その後ろを着き、前に近付いた。
「ああ、なんてこと──!」
「…酷いわ…」
ハーマイオニーが絶叫してソフィアの腕に捕まる。その信じ難い光景を見続けることが出来ず、ソフィアの肩に自分の顔を押し付けた。
ソフィアはハーマイオニーを抱きしめながら、じっと肖像画を見つめる。
太ったレディは肖像画から消え去り、絵は滅多切りにされてキャンバスの切れ端が床に散らばっていた。絵のかなりの部分が切り取られ、床に無残にも散らばっている。
ダンブルドアは無残な姿の肖像画を一目見るなり、暗い、深刻な目で振り返った。マクゴガナル、リーマス、セブルスがダンブルドアの方に駆けつけ、その肖像画を見て息を呑んだ。
「レディを探さねばならん。マクゴナガル先生。すぐにフィルチさんのところにいって、城中の絵を探すよう言ってくださらんか」
ダンブルドアの指示に、マクゴナガルは蒼白な顔のまま頷き、すぐに向かおうとしたが突如ふわりとその目の前にピーブズがいつもの意地悪げな顔で現れ、マクゴナガルは足を止めた。
「見つかったらお慰み!」
「ピーブズ、どう言うことかね?」
みんなの頭の上を楽しげに飛び回るピーブズにダンブルドアが静かに聞いた。どの先生達にも敬意を払わず不遜な態度を取るピーブズであっても、流石にダンブルドアは例外なのか意地悪げな笑いを引っ込め、ダンブルドアの前にふわりと飛んだ。
「校長閣下、恥ずかしかったのですよ。見られたくなかったのですよ。あの女はズタズタでしたよ。5階の風景画の中を走っていくのを見ました。ひどく、泣き叫びながらね──お可哀想に」
わざとらしく、低い作り声を出し嬉しそうにピーブズは言ったが、ダンブルドアの片眉が上がったのを見ると、白々しくレディの状態を気にかけているフリをした。
「レディは誰がやったか、話したかね?」
「ええ、確かに校長閣下」
胸を逸らし、今から告げる言葉を皆に聞かせ──その後の恐怖に歪む顔を見て楽しむためにピーブズは生徒達の方を振り返り、にやひと意地悪くほくそ笑んだ。
「そいつはレディが入れてやらないんで、酷く怒っていましてねぇ。──あいつは癇癪持ちだねぇ。あの、シリウス・ブラックは── ハハハハッ!」
ピーブズは高く笑いながら生徒たちの頭上を飛び回るとぽんと小さな音を立てて消えた。
生徒たちは言葉を失い恐怖と混乱から不安そうに身を寄せ合う。ソフィアは震えるハーマイオニーを抱きしめながら、そばに居るセブルスを見た。
セブルスはソフィアを見ていなかった。セブルスが睨むように見ていたのは──リーマスだ。
「…グリフィンドール生はマクゴガナル先生と共に全員大広間に戻りなさい」
ダンブルドアは静かに告げる。
すぐにマクゴナガルが「さあ、行きますよ」と声を上げ、先頭を切り大広間に向かう。マクゴガナルは手に杖を持ち、暗がりに目を凝らしながら──どこからブラックが飛び出してくるのか分からない、警戒しているのだろう──後ろからハリーがついてきているのを何度も確認し持って大広間へ向かった。
「…ソフィア…私…怖いわ」
「…大丈夫よ、ハーマイオニー…。…私も怖いけど、きっと、すぐ見つかるわ…」
ぎゅっとハーマイオニーはソフィアの腕に捕まりながら恐々頷く。
ソフィアは同じように顔色の悪いハリーを見上げ、手をそっと差し出したわ、
「ハリー…。…手を握っててもいい?」
「う、うん…」
ハリーは狼狽えたが小さく頷くとその白い手を握った。
シリウス・ブラックがグリフィンドール寮に来る理由なんて、一つしかない。
ソフィア達は同じ事を考えていた。
──ハリーを殺すために、本当にホグワーツにやってきたんだ。
ロンはハリーを守るためにぴったりと隣にくっついて歩き、辺りを注意深く──恐怖に顔を引き攣らせてはいたが──見ていた。
ハーマイオニーもソフィアにしがみつきながらも、震える手で杖を握り何かあったらすぐに呪文を言おうと決意しているようだ。ソフィアもまた、何かあればすぐにハリーを庇うために手を繋いだ。──いつでも引き寄せられるように。