【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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130 三本の箒で聞いた新事実!

 

2回目のホグズミードへ行く日がやってきた。

ソフィアはルイスとセブルスへのクリスマスプレゼントを選びたかった為、ハリーに申し訳無さを感じつつも、ロンとハーマイオニーのように厚手のマントを羽織り、首には長く暖かいマフラーを巻いてホグズミード村を訪れていた。

 

 

「ハニーデュークスに行って新商品を見ましょう?ハリーにお土産も買わないと」

「そうしよう。また新商品の試食があるといいなぁ」

 

 

ロンは浮き足立ち楽しげに顔を綻ばせ、ハーマイオニーもニコニコと頷きそれに賛同したため、3人はまず最初にハニーデュークスへ向かった。

 

ハニーデュークスの店内はクリスマス一色に染まり、店内にはキラキラと輝く美しい装飾品で彩られ、クリスマスシーズン限定と銘打たれた商品の数々が並んでいた。

 

 

「今だけですって!もみの木型の飴だわ…中にプレゼントが入っているんですって!」

「素敵ね!これにする?」

「もうちょっと見て回ろうぜ」

 

 

入り口近くで決めてしまうなんて勿体無いとばかりにロンが店内の奥を指差す。それもそうか、とハーマイオニーとソフィアはすぐにロンの後を追い店の奥へと進んだ。

色とりどりの飴やチョコレートが並ぶ商品棚を通り過ぎ、1番奥まった場所には『異常な味』という看板が下げられたコーナーがあった。

ロンは嬉々としてその商品を見ていたが、ハーマイオニーとソフィアは商品説明の欄を見て顔を顰める。

 

 

「血の味…こんなの売れるのかしら?」

「だめ、絶対にハリーはこんなの欲しがらないわ。これってバンパイア用だと思う」

「じゃ、これは?」

 

 

ロンがニヤリと意地悪く笑い、ゴキブリ・ゴソゴソ豆板の瓶をハーマイオニーとソフィアに掲げて見せた。小さな茶色い豆がぞわぞわと蠢く様子にハーマイオニーは体をのけぞらせ、ソフィアはロンと同じように笑う。

 

 

「悪戯にはいいわね」

「絶対嫌だよ」

 

 

後ろからこっそり近付いていたハリーがそう言って姿を表すとロンは驚き危うく瓶を落とす所で、ソフィアは驚きに目を見開き一気に煩く打つ心臓を抑えた。

 

 

「驚かさないでよハリー!心臓が止まるかと思ったわ!」

「ごめんごめん!」

「ハリー!ど、どうやってここに!?」

「うわー!君って姿現しが使えるようになったんだ!」

「まさか、違うよ」

 

 

感心するロンの言葉を否定したハリーは声を落としてどうやってここまで来たか──ポケットから地図を出しながら、忍びの地図の一部始終を3人に伝えた。

 

 

「フレッドとジョージも、何でこれまで僕にくれなかったんだ!弟じゃないか!」

 

 

その素晴らしい地図を知るとロンは憤慨し悔しそうに顔を赤くする。ハーマイオニーはぎゅっと眉を寄せ、そうあって欲しいというように口を開いた。

 

 

「でも、ハリーはこのまま地図を持ってたりしないわ、マグゴナガル先生にお渡しするわよね?ハリー」

「僕、渡さない!」

「気は確かかよ、こんなに素晴らしいものを渡せるか?」

「僕がこれを渡したら、どこで手に入れたか言わないといけない!フレッドとジョージが盗んだってことがフィルチに知られてしまうじゃないか!」

 

 

ハーマイオニーはぐっと押し黙ったが、それでもなんとか意見を変えさせようと必死にハリーにその地図の深刻さを伝えた。

 

 

「それじゃ、シリウス・ブラックはどうするの?この地図にある抜け道のどれかを使って、ブラックが城に入り込んでくるかもしれないのよ!先生方はその事を知らなきゃいけないわ!」

「ブラックが抜け道から入り込むわけがない」

 

 

何としてでもこの地図を手放したく無いハリーはハーマイオニーを納得させようと思いつく限り、彼女が好きな理論的に話して聞かせた。

ハーマイオニーはロンが示した店内のドアに貼り付けてある掲示物を見ながら、必死に他の理由を考えたが二人を納得させる言葉が見つからず、焦ったそうに黙ったままのソフィアを振り返った。

 

 

「ソフィア!あなたも何とか言ってよ!」

「──え?…あ、ごめんなさい。考え事してて…」

 

 

じっと忍びの地図を見つめ深く考え込んでいたソフィアは3人の話を半分しか聞いていなかった。

ようやく地図から目を離すとぼんやりと記憶にある3人の話を脳内で整理し、心配から憤るハーマイオニー、何としてでもこの場に居たい、地図も渡したく無いハリーとロンを見た。

 

 

「…今日一回だけなら、いいんじゃないかしら」

「ソフィア!あなたまで!?」

「流石ソフィア!ハーマイオニーと違って話がわかるぜ!」

 

 

ロンはパチンと指を鳴らして歓声を上げたが、ハーマイオニーが強く睨んだため、不貞腐れるようにそっぽを向いた。

「分からず屋」と声もなくロンの口が動いたのをハリーだけが目撃した。

 

 

「流石にこの天気だし…それに吸魂鬼が居るのなら来ないでしょう。ただ、一回だけと約束してくれる?もし、ハリーが何度もここにきて…あなたは目立つから、それが他の人にバレて、万が一ブラックがそれを知って──。…フレッドとジョージは…ハリー、あなたが傷付けば凄く自分を責めると思うわ」

「うー…ん。…うん、分かったよ」

「よし!多数決で決まりだ!な?それでいいだろハーマイオニー、それに…クリスマスだぜ。ハリーも楽しまなきゃ」

「ハーマイオニー、僕のこと…言いつける?」

 

 

ハリーは悪戯っぽく聞いた。

こう言えば、きっとハーマイオニーは言い付けられない。何故なら──彼女もソフィアと同じでとても友達想いで優しいから。

にやりと笑ったハリーに、ハーマイオニーは心配でたまらないという顔で唇を噛んでいたが、重いため息を吐き、とうとう諦めた。

 

 

「まぁ、そんな事しないわ。──でも、ねぇ、ハリー…」

「ハリー、フィフィ・フリスビー見たかい?」

 

 

ロンはこれ以上この話を続けるつもりは無く、無理矢理ハリーの手を引き樽の方に向かって行く、ハリーは地図を無くしてはたまらないとすぐに丁寧に折り畳みまたポケットに入れた。

 

ソフィアはぽん、とハーマイオニーの肩を優しく叩き「今日だけは、多めに見ましょう。それが何よりのクリスマスプレゼントよ」と慰めた。

 

 

ハーマイオニーはもう一度ため息をつき、不安げな顔をしながら店内を見て回るハリーとロンの元へ向かったが、ソフィアはその場でハリーのポケットの中にある地図を見続けた。

 

 

「…どうしよう…ルイスに、相談しないと…」

 

 

ハリーの言葉が本当ならば、地図に人を表す名前が書かれる筈だ。

 

 

──ソフィア・プリンスではなく、ソフィア・スネイプという名前が。

 

 

フレッドとジョージは今まで何も言ってこなかった。気が付いていて黙っているのか、それとも抜け道を見たりフィルチや先生たちの動きを見る事だけに気が取られ、そもそもソフィアとルイスを探した事が無いのか。──後者だといい、そう願いながらソフィアは真剣な顔で考え込んでいたが、ハーマイオニーから名前を呼ばれ、慌てて彼女の元へ駆け寄った。

 

 

ソフィアとハーマイオニーとロンが菓子の代金を払い、四人はハニーデュークス店を後にし吹雪の中歩き始めた。

 

初めてホグズミードに来たハリーに3人は口々に店の名前を言い指で示したが、吹雪の中ではどの店も白く霞がかりぼんやりとした店先の光が微かに見えているだけで、ハリーにはどの店がゾンコなのかさっぱりわからなかった。

 

 

「こうしよう。三本の箒まで行って、バタービールを飲まないか?」

 

 

ロンの提案に3人とも大賛成だった、これ以上吹雪の中にいればまともな防寒着を着ていないハリーが凍死するのは時間の問題だろう。ソフィアは自分が巻いていたマフラーをとると顔を真っ白にさせるハリーの首に巻いた。

 

 

「あ、ありがとう。でも、ソフィア…寒くないかい?」

「マントがあるから、大丈夫よ」

 

 

ソフィアは鼻と頬を真っ赤にさせながら笑い、ハリーはソフィアの熱が残るマフラーをぎゅっと掴み「本当にありがとう」と心から感謝した。

 

4人は身を寄せ合い歯をガチガチ震わせながら三本の箒に入っていった。

 

 

中は寒さを逃れるためにここを訪れた人で溢れていた。

凍えていた体がすぐにじんわりと温かくなる熱気で満たされる。酒が入った人々の楽しげな会話が至る所で繰り広げられ、かなりの騒音となっている場をハリーは目を輝かせて見渡した。

ソフィアは流石にここにはブラックは来ないだろう、と考えぴったりと体に巻き付けていたマントを少し緩めながらようやく一息をついた。

 

 

「マダム・ロスメルタだよ、僕が飲み物を買ってこよう」

 

 

ロンが寒さで赤くなっていた頬を更に赤く染め、美しく確かな曲線美を描く女店主に駆け寄った。ソフィアはちらりと自分の体を見下ろし、そしてハーマイオニーの胸元をじっと見た。

 

 

「どうしたの?」

「…何 にも(・・)無いわ」

 

 

──もう14歳になったと言うのに、女性らしい曲線がない事にソフィアは少し凹んだ。

ハーマイオニーは不思議そうに首を傾げていたが奥に空いているテーブルを見つけるとすぐに座りに行った。ハリーとソフィアもその後に続き、悴んでいた指を摩りながら席につき、ロンがバタービールを持ってくるのを今か今かと待っていた。体の表面は確かに温まったが、まだ芯はすっかり冷え切っていたのだ。

 

 

「おまたせ!」

 

 

数分後ロンが大ジョッキ4本を抱えてやってきた。「メリークリスマス!」ロンはそれぞれに配った後、嬉しそうにジョッキを挙げた。

 

 

ソフィアはバタービールをぐいっと飲む。

温かく甘い味は喉を通り体の隅々まで行き渡り、体の中心がぽかぽかと温まっていくのを感じた。ハリーを見ればこんなに美味しいものは飲んだことが無い、というように幸せそうに目を細めていた。

やっぱり、ここに来れて良かったのかもしれない。ハリーにとって友人とホグズミードで過ごすひと時が、何よりのクリスマスプレゼントになるに違いない。そう思っていた。

 

 

急に冷たい風が吹き、ソフィア達はおもわず肩を震わせ風の吹き込む入り口を見た。その途端飲んでいたバタービールを思い切りハリーが吹き出しむせ込む。現れたのはマクゴガナルとフリットウィック、ハグリッドにコーネリウス・ファッジ魔法大臣だった。

 

錚々たるメンバーにソフィアとハーマイオニー、ロンはとっさにハリーの頭を手で押さえぐいっと机の下に隠した。学校関係者──それも、教師は間違いなくハリーに気がつくだろう。ハリーはここに来る事を許可されていない、バレてしまったらただでは済まされないだろう。

 

何とか隠す事はできないかとハーマイオニーは素早く辺りを見渡し側にあるクリスマスツリーに目を止めるとそっとポケットから杖を出し「モビリアーブス!」と小声で唱える。

ソフィアもすぐに杖を出すと「ジェミニオ」と小さく唱え、ハーマイオニーによってテーブルの真前に置かれたクリスマスツリーを複製した。これなら余程のことがない限り、向こうからこちらは見えないだろう。

ソフィア達は顔を見合わせ、なるべく頭を下げて無言でバタービールを飲んだ。

 

 

 

マクゴガナル達の元にロスメルタが注文された酒を運び、ファッジが一緒に一杯飲もうと誘う。大臣からの誘いにロスメルタは嬉しげに頷くとすぐに自分の飲み物を取りに行き、そしてまたすぐに戻ってきた。

 

 

「それで、大臣。どうしてこんな片田舎にお出ましになりましたの?」

「…シリウス・ブラックの件でね。ハロウィンの日に学校で何があったのかは…薄々聞いているんだろう?」

 

 

ファッジは周りに会話が聞こえていない事を確認し、低い声で答える。「確かに、耳にしてますわ」とロスメルタが認めればマクゴガナルは少し怒ったような顔でハグリッドを見上げた。

 

 

「ハグリッド、あなたはパブ中に触れ回ったのですか?」

「大臣、ブラックがまだこの辺りに居るとお考えですの?」

「間違いない」

 

 

囁くようなロスメルタの言葉に、ファッジはキッパリと言い切った。

ロスメルタはこの店にも吸魂鬼が二度もブラックを探しにきた事を批判し、やや刺々しくファッジに文句をいう。確かに、ここに吸魂鬼が来ては商売もできたものじゃ無いだろうとソフィアは思う。

ハリーはもしかしてまた吸魂鬼が来たらどうしよう、と更に身を縮こまらせて閉ざされている扉をちらちらと何度も見た。

 

 

「──でもねえ、私にはまだ信じられないですわ。どんな人が闇に加担しようと、シリウス・ブラックだけはそうならないと、私は思っていました。…あの人がホグワーツの学生だった時の事を覚えていますわ。もし、あのころに誰かがブラックがこんなふうになるなんて言ってたら、私きっと、──あなた、蜂蜜酒の飲み過ぎよ──って言ったと思いますわ」

「君は話の半分しか知らないんだよ、ロスメルタ。ブラックの最悪の仕業はあまり知られていない」

 

 

ファッジがぶっきらぼうに伝え、酒を少し飲む。

ソフィア達は思わず会話に出てきたシリウス・ブラックの名前に顔を見合わせた。──嫌な予感がする。

 

 

「最悪の?あんなに沢山の人を殺した、それよりも悪いことがあるっておっしゃるんですか?」

「その通り」

「…ブラックのホグワーツ時代を覚えていると言っていましたね、ロスメルタ。──あの人の1番の親友が誰だか、覚えていますか?」

 

 

マクゴガナルはギリーウォーターが入っているグラスをじっと見ながら呟くように聞いた。その途端ロスメルタはくすくすと笑いをこぼし、懐かしそうに目を細めた。

 

 

「いつでも一緒、影と形のようだったでしょ?ここにはしょっちゅう来てましたわ──ああ、あの二人にはよく笑わされました!シリウス・ブラックと、ジェームズ・ポッター!」

 

 

ハリーが手に持っていた大ジョッキを落とした。ロンが思わず机の下にいるハリーを蹴ったが、ハリーは声一つ出さずじっとマクゴガナル達の会話に聞き入った。

ソフィアはちらりとロンとハーマイオニーの顔を盗み見る。2人とも顔は蒼白で、バタービールを飲んだとは思えないほど微かに震えていた。

 

 

「その通りです。ブラックとポッターは悪戯の首謀者。もちろん、二人とも非常に賢い子でした。──しかし、あんなに手を焼かされた二人組は居なかったでしょう」

「そりゃわかんねぇですぞ。フレッドとジョージにかかっちゃ、互角の勝負かもしれねぇ」

 

 

ハグリッドは愉快そうにくつくつと笑い大ジョッキをぐびっと傾けて飲んだ。フリットウィックも懐かしむように「みんな、ブラックとポッターは兄弟じゃないかと思っただろうね!」と言う。

 

 

「ええ、ええ!懐かしいですわ。それに…ほら、今でもふらりと来てくれるのですがジャックとも不思議と仲がよかったですね。スリザリンとグリフィンドールでしたが」

「ジャックは彼らのいきすぎた悪戯のブレーキ係でもありましたな!…ま、効果の程はイマイチでしたが。一緒になって楽しんでいるようでしたし」

 

 

フリットウィックは懐かしさに脚を揺らめかせ遠いところを見ながらしみじみと呟く。──彼ら3人は友人であり、好敵手でもあった。

 

 

 

ソフィアは出てきたジャックの名前に少し、狼狽した。ジャックはセブルスの──父の友人だ。そのジャックがブラックと、ハリーの父と友人なら…彼らはみんな同級生という事になる。この前の夏休みに、ハリーの父とジャックが友人だとは聞いたが、まさかブラックまで同級生だとは思わなかった。そして自分の予想が正しいのならもう1人──。

 

 

「ポッターは誰よりもブラックを信用した。卒業してもそれは変わらなかった。ブラックはジェームズがリリーと結婚した時、新郎の付き添い役を務めた。2人はブラックをハリーの名付け親にし…後見人にした。──ハリーはもちろん、全く知らないがね、こんな事を知ったらハリーがどんなに辛い思いをするか…」

「ブラックの正体が、例のあの人の一味だからですの?」

 

 

ロスメルタが早く聞かせてほしいというように目を期待と、そして一抹の不安で輝かせながら促すようにそっと聞く。酒が入っているファッジはいつもより口が軽いようで、また一口酒を飲み喉を潤した後で更に声を顰めて答えた。

 

 

「ポッター夫妻は、自分達が例のあの人に付け狙われていると知っていた。ダンブルドアは例のあの人と戦っていたから、数多の役立つスパイを放っていた。その内の1人から情報を聞き出したダンブルドアは、ジェームズとリリーにすぐ危機を知らせ身を隠すように進めた。だが──もちろん、例のあの人から身を隠すのは容易では無い。ダンブルドアは忠誠の術が1番助かる方法があると2人に言ったのだ」

「どんな術ですの?」

 

 

魔女であっても聞いたことがない術の名前に、ロスメルタは夢中になって先を促した。フリットウィックがごほんと咳払いをし、忠誠の術──秘密の守人を立て、情報を自身に隠す物だと説明した。

それを聞いていたハーマイオニーとソフィアはさっと顔色を変える。優秀で聡い2人は、ブラックがハリーの両親に何をしたのかそれだけで理解してしまった。

 

 

「それじゃ、ブラックがポッター夫妻の秘密の守人に?」

「当然です。ジェームズ・ポッターは、ブラックだったら2人の居場所を教えるくらいなら死を選ぶだろう、それにブラックも身を隠すつもりだとダンブルドアにお伝えしたのです。…それでも、ダンブルドアはまだ心配していらっしゃった。ダンブルドアとあの子が…ポッター夫妻の秘密の守り人になろうと、申し出られた事を覚えていますよ」

「ダンブルドアはブラックを疑っていらした?」

「ダンブルドアには、誰かポッター夫妻に近い者が、2人の動きを例のあの人に通報しているという確信がおありでした。ダンブルドアはその少し前から、味方の誰かが裏切って例のあの人に相当の情報を流していると疑っていらっしゃいました」

 

 

マクゴガナルは重々しく伝えると一度言葉を切りため息をついた。

 

 

「それに──ブラックの裏切りで亡くなったのはポッター夫妻だけでなく…」

「まさか…あの日、巻き添えになった人がいたんですの?」

 

 

マクゴガナルはハッと口を抑えると首を振った。とても言葉にはできない、言うつもりはなかった、というような悲痛な表情で押し黙る。

ロスメルタはファッジを見たが、ファッジは固く口を閉ざしそれについては何も言わなかった。

 

 

「それで…それでも、ジェームズはブラックを使うと主張したんですの?」

「そうだ。そして、忠誠の術を掛けてから1週間も経たないうちに──裏切ったのだ」 

 

 

ファッジが重苦しい言葉で伝えた。

もはや、ソフィア達は瞬きすらも出来なかった。ハリーが今何を考えているのかわからない、ただ、ソフィア達はこの話をきっとハリーは聞いてはならなかったのだと強く思った。──ハリーは、やはり、今日ここに来るべきでは無かった。

 

ハグリッドは当時の記憶を思い出し、怒りに顔を歪めると汚い言葉で強くブラックを罵倒した。

あまりの大声に店内の客が半分ほど静まり返り、マクゴガナルが慌ててハグリッドを諫めたが、ハグリッドは後悔と憤怒で顔を歪めたまま憎々しげに呟いた。

 

 

「ヤツに最後にあったのは俺にちげぇねえ!その後で奴はあんなにみんなを殺した!ジェームズとリリー達が殺されちまった時、あの家からハリーを助け出したのは俺だ!崩れた家からすぐにハリーを連れ出した。──ああ、生きているのは、ハリーただ1人だったんだ!みんな死んじまってた!…可哀想な、ちっちゃなハリー。額に大きな傷をうけて、両親は死んじまって…それに、い──」

「ハグリッド!!声が大きすぎます!」

 

 

マクゴガナルは周りからの視線に叫ぶとハグリッドの手を強く叩いた。ハグリッドはぐっと一度口を閉ざし何度か深呼吸をすると声を低めてボソボソとブラックが現れた時の事を話したが、──話しているうちにまた感情は高ぶり再度マクゴガナルに強く叱った。

 

 

「でも…逃げ仰せなかったわよね?魔法省が次の日に追い詰めたわ!」

「ああ、魔法省だったら良かったのだが!奴を見つけたのは我々ではなく、ピーター・ペティグリューだった。──ポッター夫妻の友人の1人だが、悲しみで頭がおかしくなったのだろう。多分な。ブラックがポッターの秘密の守人だと知っていたペティグリューは、自らブラックを追った」

 

 

ロスメルタはペティグリューを思い出し、そういえば確かにいつもブラックとジェームズにくっついていた肥った男の子がいた事を思い出した。

いつも2人に追いつきたいというように必死だったが、決して仲間にはなれない才能のないペティグリューを思いマクゴガナルは過去に厳しく当たってしまった自分を責め、鼻を啜った。

 

 

 

その後マクゴガナル達はペティグリューの死骸がどれだけ木っ端微塵だったかを話した。そして、アズカバンで過ごしていたブラックがあまりにも平常に見えた事をファッジは恐ろしい物を見たと言うように声を顰めて語る。

ファッジはブラックが逃げ出したことで、万が一例のあの人──ヴォルデモートの元へ行くことがあれば、きっとヴォルデモートは復活するに違いない。それを何よりも危惧していた。

しん、とマクゴガナル達の間で沈黙が落ちる。マクゴガナルはあまり減らなかった飲み物のグラスを静かに机の上に置き顔色の悪いファッジを見た。

 

 

「さあ、コーネリウス。校長と食事なさるおつもりなら、城に戻った方がいいでしょう」

 

 

その言葉に1人、また1人と立ち上がり三本の箒から出て行った。

扉が開き舞い込んだ冷たい風が、ソフィア達の心情を表すかのように店内に吹き込む。

 

 

「…ハリー…」

 

 

ソフィア達は机の下を覗き込んだ。

ハリーは蒼白な顔で俯き、自分の手を見つめていたが、3人が見ている事に気づくと、表情を硬らせたまま顔をゆっくりと上げた。

その目に映る絶望と、困惑、そして激しい怒りにソフィアは何もかける言葉が見つからなかった。

 

 

 

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