【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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137 2人と2人!

 

翌朝からクリスマス休暇が終わるまで、ハーマイオニーは談話室を避けていた──いや、ハリーとロンを避けていた。気まずさもあるが、自分は間違えた事をしていないという信念からけっして2人に謝る事も無く、整然とした態度を崩さなかった。

ハーマイオニーは図書室に篭り、課題に取り組む傍ら、ヒッポグリフの裁判についても必死に調べた。ソフィアもヒッポグリフの判例を探していたが、何にでも完璧以上を求めるハーマイオニーのキャパは既に限界を超えていた。

 

顔色は悪く、目の下には濃い隈ができいつも辛そうに眉を寄せている。

ソフィアはハーマイオニーを手伝いたかった──せめて、少しくらい課題を写しても良いのではないか、そう思ったが少しの甘えも許さないハーマイオニーは、ソフィアの手助けを拒んだ。

ソフィアもハーマイオニーと同じように全科目を受講している。大変なことに間違いはないが、それでもまだ彼女ほど精神的に追い詰められていないのは──ソフィアはとても要領が良く、尚且つ完璧を求めなかったからだ。

 

ハーマイオニーは課題が羊皮紙2巻き分だとしても、4巻きほど書いてしまう。100点満点のテストで120点を取る為に寝る間も惜しんで努力する。

ソフィアは課題が羊皮紙2巻き分なら、しっかりと2巻き分書き、100点満点のテストなら90点が取れるのならそれで良しとしている。──その差だろう。

 

 

クリスマス休暇が明け、生徒達がホグワーツに戻り以前のように賑やかになってもまだ、ハーマイオニーはハリーとロンと以前のように話す事はなかった。ロンはハーマイオニーを一目見るとツンとそっぽを向き、けっして目を合わそうとはしなかった。

ハリーはソフィアに言われた事を考え、クリスマス休暇があける頃には気持ちも落ち着いて来ていたが──だが、クィディッチのチームメイトであるウッドやフレッドとジョージがクィディッチを話題にするたびに箒の事を思い出し、もやもやと心の奥で燻る気持ちを無視する事も出来なかった。

結果、自然とハリーはロンと過ごし、ハーマイオニーはソフィアと過ごしていた。

 

ロンは、少々ソフィアにも怒っているようで、ソフィアは気にせずすれ違うたびに挨拶をしたが、ロンはぶっきらぼうに呟くように答えるだけだった。

 

 

 

日を追うごとにハーマイオニーは追い詰められ常に辛そうに顔を歪ませストレスから苛々とした気持ちを抑えきれなくなっているようだった。ソフィアが話しかければ答えはするものの、その言葉に──ハーマイオニー自身は無意識だろうが──やや、刺々しい響きがあった。

 

 

「ハーマイオニー、すこし休憩しない?」

「…そんな時間、あなたにはあっても、私にはないわ」

「…私、ハニーデュークスで買ったキャンディを持ってるの?食べない?」

「いらないわ」

 

 

夕食を取りに大広間に向かう途中、ソフィアは廊下を早歩きで歩くハーマイオニーを追いかけながら言ったが、返事はとても冷たいものだった。

ソフィアは肩をすくめ、ポケットから出しかけていたキャンディをもう一度戻す。ハーマイオニーは追い詰められているだけだ、本来の彼女はこんな言い方はしない。──そう分かってはいるが、チクリと胸に痛みを感じてしまう。

 

 

早く歩いていたハーマイオニーは突然ぴたりと足を止め、じっと前を睨むように見ていた。どうしたのかと隣に並び前を見て少し先にロンとハリーがいる事に気付く。

 

 

「ルーピンはまだ病気みたい。そう思わないか?一体どこが悪いのか、君わかる?」

 

 

ロンの言葉を聞いたハーマイオニーは苛々とした粗暴な舌打ちを零すと鞄の口が空いている事に気付き──かなり嫌そうに顔を顰め──その場にしゃがみ込んで沢山の本を詰め直した。

 

その大きな舌打ちを聞いたロンがくるりと振り返り、ハーマイオニーと同じく言葉に苛立ちを含みながら突き離すかのような声でハーマイオニーに聞いた。

 

 

「なんで僕たちに向かって舌打ちなんかするんだい?」

「何でもないわ」

「いや、何でもあるよ。僕がルーピンはどこが悪いんだろうって言ったら君は──」

 

 

ロンはつかつかとハーマイオニーに歩み寄りながら食ってかかったが、ハーマイオニーは鼻先で笑うと表情を歪め嗤った。

 

 

「あら、そんなこと、わかりきった事じゃない?」

「教えたくないなら、言うなよ」

「あら、そう」

 

 

ハーマイオニーは目を細め高慢に言うとそのまま肩をぶつけるようにして大広間に向かった。

 

 

「知らないくせに!あいつ、僕たちにまた口をきいてもらうきっかけが欲しいのさ!」

 

 

ロンは憤慨してハーマイオニーの後ろ姿を睨みつけていたが、ソフィアがまだこの場にいる事に気がつくと憤ったままじろりと睨む。ソフィアは目を見開き、固まった。

 

 

「なんだ、ソフィアまだいたの?早くどっか行けよ」

 

 

その言葉にソフィアは唇を噛むと俯いたままでハーマイオニーの後を追いかけて走り去った。

ロンはてっきり何か言い返すかと思ったが、何も言わずに去っていったソフィアの背中を少しバツが悪そうに見送る。──八つ当たりだ。そう、ロンは自分でもわかった。

 

 

「ロン、ソフィアは…」

「ソフィアも、ハーマイオニーに賛成してるだろ!?」

「…、…うん、そうだけど…」

 

 

流石にその怒りをソフィアに向けるのは間違えている。ハリーはそう言おうと思ったがあまりにロンが怒っている為何も言わずに口を閉ざした。

今回の2人の喧嘩は、流石に長引きそうだ。きっと、箒が無事に帰ってくるまでそれは続くだろう。

ハリーはソフィアとまで険悪な雰囲気になりたくはなかったが、クリスマスの日からまともに会話する事が出来ていなかった、ソフィアの側にはいつもハーマイオニーが居たし、何よりハリーの隣にはロンがいる。2人の側でにこやかに会話するなど、無理な事だ。

 

ハリーは走り去っていったソフィアの背中を見ながら心の中でため息をこぼした。

 

 

 

 

ソフィアは木曜日の夜、宿題に必要な本を借りに図書室へ行っていた。ハーマイオニーはきっと談話室の隅で沢山の机を占領し必死になり宿題をしているだろう。一応、一緒に行くかと声をかけたがその返答は勿論ノーだった。

 

いくつもの本を持ち、思ったより遅くなってしまったと思いながらソフィアは独り廊下を歩いていた。角を歩き、甲冑が並ぶ廊下に出た途端、その甲冑の足元に何か黒い影がある事に気付きソフィアは肩を揺らし飛び上がった。

 

 

「ソフィア?」

「…ああ!ハリー!…びっくりしたわ…」

 

 

ソフィアは聞き覚えのある声とぼんやりと見えたその人にドキドキと鳴る胸を抑えながら安堵の息を吐く。──一瞬、ブラックが潜んでいるかと思った。

 

暗がりの中、台座の上に力なく座り込むハリーの顔色は悪く、ソフィアは心配そうに眉を寄せるとハリーに駆け寄り、目の前でしゃがみ込んだ。

 

 

「どうしたの?ハリー。とっても顔色が悪いわ…医務室へ行く?」

「ううん…大丈夫」

「…そう?無理しないでね…」

「うん。…隣、座る?」

 

 

ハリーはそっと台座の横を指差し少し端によった。ソフィアはすぐに頷くと隣にちょこんと腰掛ける。椅子では無い台座は狭く、自然と2人の肩は触れていた。

 

 

「僕…今、ルーピン先生から守護霊魔法を教わってるんだ。吸魂鬼を追い払う為に…それの帰りなんだ」

「そうだったの…」

 

 

ハリーはぽつぽつと先程の訓練の様子を話しだした。

 

 

「ルーピン先生がボガートを連れてきて、それで吸魂鬼に変身したら魔法を唱えるんだけど…難しくて…」

「守護霊魔法は高度だもの…無理もないわ。…ねえ、本当に大丈夫?…その、お母さんの…叫び声が聞こえるんでしょう?」

 

 

ソフィアは心配そうにハリーの目を覗き込む。ハリーは疲れたように笑い、そして目を伏せた。

 

 

「うん…今日、初めて母さん以外の声を聞いたんだ。…父さんと…もう1人居た」

「…マクゴガナル先生が、巻き込まれた人が居るって…」

「多分、その人だ」

 

 

ハリーは目を閉じ、その時の記憶を思い出した。

 

 

 

 

男の引き攣ったような声が聞こえた。

 

「リリー!ハリーを連れて逃げろ!あいつだ!早く行くんだ!」

「リリー、私達が食い止めるわ、早く逃げて!」

「何を言ってるんだ!君も早く!」

「馬鹿言わないでジェームズ!…リリー!行って!」

 

誰かがよろめきながら出て行く音、ドアが勢いよく開く音、甲高い哄笑──。

 

 

 

 

「多分、女の人…だと思う。父さんと一緒にヴォルデモートに立ち向かってた…。父さんとその人は…母さんが逃げる時間を作るために…」

「…そう…勇敢な人達だったのね」

 

 

ソフィアはヴォルデモートの名前が出た事に顔を硬らせたが、ハリーの声の震えに気付くと優しく呟いた。

 

 

「僕…僕、初めて、父さんの声を聞いて…それが、死ぬ前の声なのに…嬉しかったんだ。こんな気持ちじゃ守護霊なんて、作り出せない……でも…」

「…ハリー、そう思うのも、仕方がないわ。…私も…母様の記憶が無いもの、写真で知ってるだけで…全く覚えてない…誰も教えてくれない…。きっと、それが…死ぬ前の声だとしても聴きたいと──願ってしまうわ」

 

 

ソフィアは前を向いたままぽつりと呟いた。

いつもの慰めるような優しく包み込む声ではなく、悲しみが多く含んだ声にハリーは息を呑む。

 

 

──そうだ、ソフィアもお母さんの事を何も知らないんだ。

 

 

ホグワーツに来る前までは、ソフィアは母の事をあまり考えなかった、ルイスと父が居る、それだけで充分だと思っていたが、ホグワーツで母親の残滓を見つけるたびに心が揺れていた。──本当は、ソフィアも母の事を知りたかった。ただ、話そうとしない父の気持ちを汲み取り、気にしないふりをしていただけで。

 

 

ハリーは何も気の利いた言葉をかける事が出来ず、無言のままソフィアの頭をおずおずと撫でた。ソフィアは少し驚いたようにハリーを見ると目を細めて微笑み、その肩にそっと頭を乗せた。

 

ハリーは自分の肩の温かな重みと、ソフィアの静かな息遣い、仄かに香るシャンプーの匂いに──何故か心臓がどくんと跳ねたのを感じた。

いつもの明るいソフィアではない、どこか物憂げな横顔を見て、ハリーは胸がドキドキ鳴る事に首を傾げながら何か話題はないかと必死に思考を動かした。

 

 

 

「ソフィアは…その、両親の事、何も知らないの?お父さんの事も?」

 

 

あまりソフィアは親のことを話さない。ハリーも踏み込んで聞くことはなかった──気持ちがよくわかるからだ──だが、今なら聞いてみてもきっと答えてくれるだろうと、小さな声で尋ねた。

 

 

ソフィアは暫く無言だった。

やはり聞いてはいけない、無遠慮な質問だったと慌てて「ごめんね」と言おうとした時、ソフィアは口を開いた。

 

 

「父様の事は──…知ってるわ。けれど…ごめんなさい。…私だけの判断では…言えないの」

「謝らないで!…僕こそごめん、言いにくい事もあるよね」

 

 

ハリーはソフィアの言葉を聞き、きっと父親の事で何かがあり、ルイスと2人で決めた約束事でもあるのだろうと解釈した。

暗く落ち込んだ目を見せるソフィアに、何か別の話題を振ろうとハリーは咄嗟にリーマスの事を話した。

 

 

「そういえば。ルーピン先生は僕の父さんの友達だったんだって」

「──え?」

「ブラックの事も、知ってる人だって…知っていると思っていた…って言ってた。僕の父さんの友達なら当たり前かもしれないけどね」

「……。…そう…なんだか、不思議ね。…さあ、そろそろ寮に戻らない?ここは寒いもの」

 

 

ソフィアは何とかそれだけを言うと話を無理矢理変えるようにそう言って笑い、ぱっと立ち上がった。

肩に乗っていた暖かさが無くなったハリーは少し残念に思いながらも、たしかに足先が冷えてきたのを感じ同じように立ち上がる。

 

ハリーは手に残っていたチョコを半分に割ると片方をソフィアに差し出した。

 

 

「食べる?少し気持ちが落ち着くんだ」

「ありがとう、いただくわ!」

 

 

ソフィアはにっこりと笑いそのチョコを受け取ると一口で頬張り、いつものようににっこりと明るく笑った。

 

 

 

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