【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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151 許す、のではない!

 

 

現れたペティグリューに、ルイスは息を呑んだ。

本当に──本当にペティグリューが生きていた。という事は、自分の母が死ぬ原因になったのはブラックではない、彼らが言っていたように彼は無実の罪を着せられアズカバンに捕らえられていたのだ。

この小汚い、どこかネズミを連想させる男が母の敵なのだ。

 

 

「やぁ、ピーター。しばらく振りだったね」

「シ、シリウス…リーマス…友よ…な、懐かしの友よ…」

 

 

ペティグリューは必死に引き攣った顔に笑みを浮かべ、懇願するように喘ぎリーマスとシリウスを忙しなく見ながらも、何度か扉の方に目を向けていた。

 

 

「ジェームズ達が死んだ夜。何が起こったのか、今話していたんだよピーター。君はあのベッドのところで煩く喚いていたから、聞き逃していたかもしれないね」

「リーマス…君は、ブラックの言う事を信じたりしないだろうね、あいつは僕を殺そうとしたんだ…」

「そう聞いていた。──ピーター。いくつかすっきりさせたい事があるんだが」

 

 

リーマスの声は冷ややかで少しの情も篭っては居なかった。それを聞いた途端ペティグリューはどっと顔中に汗を噴出させる。だめだ、ブラックは自分を殺すだろう、何とかしてリーマスを信用させないと、せっかく今まで生き延びた、なのに、こんなところで──。

 

 

「こいつは、また僕を殺しにやってきた!こいつはジェームズ達を殺したんだ!今度は僕を殺そうとしている!リーマス…!助けてくれ…!」

 

 

ペティグリューはリーマスの言葉を遮り金切り声で叫び哀願した。人差し指の無いペティグリューは中指でブラックを指し示し、指されたブラックは憎々しげに顔を歪め底知れぬ暗い顔でペティグリューを睨む。

その目に射抜かれたペティグリューは怯えたような小さな悲鳴をあげ縮こまった。

 

 

「お前が…母様を殺したのか…」

 

 

ルイスは立ち上がると、ローブの袖を掴んでいたソフィアの手を振り払い立ち上がった。

ペティグリューは思わず後退り、再度唯一の逃げ道である扉の方を見たが、その近くにはハリーが居た。それに、杖を構えているのは子どものルイスだけではない、リーマスとブラックもまた、その杖先を油断なくペティグリューに向けている。

 

 

「き、君は…アリッサの子どもなのだろう…ああ、彼女に、…よ、よく似ている…」

「ピーター!!」

 

 

自分が殺した者の子どもに、張り付いた笑顔をむけて話しかけるなど、ブラックは許せず強くペティグリューの名前を叫ぶ。

その声はあまりに憎しみと怒りが込められており、自身に向けられた声では無いと分かっていてもハリー達は肩を震わせた。

 

 

「うん。よく言われる。母様に似てるって」

「や、優しい…優しい人だった…と、とても…」

 

 

ルイスはこの場にそぐわない朗らかな笑みを浮かべていた。リーマスとブラックはその顔を見て困惑したが、ルイスと長い間友であるハリー達と妹のソフィアはその笑顔の裏に隠された激しい怒りに気付いた。──ルイスはこんな凶悪な目で笑わない。

 

 

「そうらしいね。でも、僕は母様の記憶が無いんだ。死んじゃってるからね。僕は…僕とソフィアには母様の記憶が無いんだ、声も、匂いも、何も覚えていない。──ねえ何で?何で母様は殺されたの?お前の言う優しい母様は、何で死ななければならなかったの?何で、その日その場所にいたの?」

 

 

ルイスにとって、母というものはどこかお伽噺のような、自分とは無縁の存在だった。勿論産んでくれた事に感謝をしてはいる。だがそれ程、思い入れが強いわけではない。ルイスが薄情なのではない、全く記憶にないのだ、仕方がないと言えるだろう。

ただ、ルイスはセブルス──父の事を心から愛し、そして父は亡き妻を今でも愛して、亡くなった事に心を痛めているのだと知っている。だからこそ、ペティグリューが許せなかった。

大切な者を悲しませ苦しめるその存在が──今、目の前に、生きている。

 

 

胸の奥からどろりと黒い感情が溢れ出し、止められない。ペティグリューはルイスの目を見てがくがくと震え、蚊の鳴くような小さな声で否定し首を振った。

 

 

「そ、れは──そ、そんなこと、僕は、知らない…」

「残念」

 

 

ルイスはちっとも残念ではなさそうに言うと杖を振るった。ペティグリューが情けない悲鳴をあげ急激な浮遊感にもがき、四肢をばたつかせたが体は勢いよく床から浮き上がる。

天井ギリギリまで浮かんだペティグリューは何が起こるのか──何をされるのか分からず浮かんだまま蒼白な顔で地上にいるルイス達を見る。「リ、リーマス助け──」

 

 

「──ぐあっ!」

 

 

全てを言う前にルイスが腕を振り下ろし、その動きに合わせるようにペティグリューは床に叩きつけられた。ばちんと肉が打たれた音にハーマイオニーは悲鳴をあげ耳を塞ぎ、ソフィア達は息を飲み表情を強ばらせた。

 

防御を取る事もできず腹を打ち付けたペティグリューは息をする事を一瞬忘れた、すぐにまた浮遊感が体を襲う「い、嫌だ──」ばちん、肉を打つ音と叫び声が続き、リーマスは呆然と目の前で繰り広げられる暴行を見ていたがはっと我に帰ると慌ててルイスの腕を掴んだ。

 

埃っぽい床の上にペティグリューは転がり、痛む体に呻き情けない泣き声をあげる。

ルイスは一切温度の感じさせない目で苦悶の表情を浮かべるペティグリューを見たまま、目を離す事はなかった。

 

 

「…止めないでください。こいつに、僕は全てを聞かないと──」

「落ち着きなさいルイス。…ピーターは本当に、何故アリッサが居たのか知らないんだ」

「………」

「ゆ、赦して…ほ、本当に、な、何のことか…」

 

 

ルイスはため息を零すとリーマスの手を振り払い腕を下ろし、くるりと振り返りリーマスの後ろにいるブラックを見た。

 

 

「ブラック、あなたは知ってるの?」

 

 

首を傾げるその目には、見覚えのある狂気を孕んでいた。

子どもが見せるには闇深い目に、ブラックは表情を険しくしながら少し考え頷く。

 

 

「ああ…アリッサは、守るために外部から遮断されたジェームズ達の為に食料を運んでいた」

「…それは…何で。あなたじゃなくて?危険すぎる」

「ああ、危険な役目だ。命を狙われかねない。…だが、彼女はリリーの為にそうしたいと言って聞かなかった…ついにリリーとジェームズは折れた」

「…そう、本当に──本当に、死ぬ必要はなかったんだね、母様は…巻き込まれただけなんだ」

 

 

ルイスはぽつりと呟き視線を落とした。

命を狙われていたのではない、たまたま、偶然──不運にも巻き込まれてしまったんだ。

ソフィアは迷子になった子どものように独り佇むルイスの元に駆け寄り、その項垂れた体を何も言わずに抱きしめた。

 

 

「…ブラック…。…シリウス?」

「…、…なんだ?」

 

 

ブラック──シリウスは、そのソフィアの言葉に驚き一瞬自分が呼ばれたのだとわからなかった。たしかにその名前は自分の名前だ、だが、何年もそんな丁寧に話しかけられた事がなく、目に見えて狼狽した。

 

 

「母様は…ペティグリューが守人だと知っていたの?」

「…いや、それは知らなかった。アリッサと俺は元々隠れ家が何処か知っていたから、守りが行われた後も…入る事が出来た。…俺がジェームズの守人だと信じていたよ。きっと、最期まで──だから、アリッサは微塵も不安に思う事なく、その日も隠れ家を訪れたんだろう。守りがあるから…何の問題も…ないと…」

「…母様は、ハリーのお父さんとあなたの友情を信じていたのね」

 

 

シリウスは、小さく頷いた。それと同時に言いようもない後悔が再び胸を締め付ける。

 

アリッサは、俺が守人になると言った時、それなら安心だと、信じられると笑っていた。

だが──その役目を、密かに変えたのは紛れもない俺だ、良い案だと、その時は思っていた。ピーターが裏切り者だとは、微塵も疑わなかった。とんでもない過ちだ。

 

 

「ジェームズとリリーは、俺が勧めたから…ピーターを秘密の守人にしたんだ。俺は──その時は、完璧な計画だと思った。誰もが俺が秘密の守人だと思っただろう…俺も、周りにそう言った。目眩しの為に──ヴォルデモートはきっと俺を追う。ピーターのような弱虫の脳なしが守人だとは誰も思わないだろう、と──」

 

 

シリウスは床に這いつくばるペティグリューに近づいた。ペティグリューは胸を抑えながら必死に離れようともがくが、後ろには油断なく杖を構えたリーマスがペティグリューを睨み見下ろしていた。どこにも、逃れられる隙などなかった。

 

 

「…ピーター?ヴォルデモートにジェームズ達を売った時は、さぞかし、お前の惨めな生涯の最高の瞬間だったろうな」

 

 

ペティグリューは憎悪の混じるシリウスの嘲笑に、息も絶え絶えに「違う」「狂ってる」と呟いたが、誰の目から見てもペティグリューに分が悪いのは明らかだった。

 

 

「そういえば…シリウス、貴方はどうやってアズカバンから脱獄できたの?」

 

 

ソフィアはペティグリューを睨め付けるシリウスを見ながらぽつりと呟いた。途端にペティグリューがぱっと表情を変えソフィアを見たが、ソフィアはその視線を受けて嫌そうに眉を顰め、ルイスを抱きしめる腕に力を込めると一歩後ろに下がった。

 

シリウスは少し顔を顰めたが、聞かれて不快な質問では無かったのだろう、自分でもその答えを探しているかのように遠い目をしながらゆっくりと、言葉を選ぶように答えた。

 

 

「どうやったのか…自分でもわからない」

 

 

シリウスは自分が無実であると理解し、正気を失うことが無かったからだとソフィア達に伝えた。

吸魂鬼は幸福な気持ちのみを吸い取る、無実だという強固な思いは吸い取られる事はなく、シリウスの胸に燻り続けた。

かといって吸魂鬼が全くの無問題かというと、けっしてそうではなく、辛く耐え難い日々だった。耐えきれなくなった時にはアニメーガスで犬に変わり、吸魂鬼からの猛撃を退けることが出来た。

新聞記事でペティグリューが生きている事を知った時には心の中に新たなる炎を燃やし、弱りきっていたシリウスを微かに力づける事となる。

隙を見てアニメーガスに変わり、痩せ細った身体で鉄格子を抜け出しそのままアズカバンから脱獄したのだ。

 

 

「俺は犬の姿で泳いだ。…北へと旅し、ホグワーツの校庭に忍び込んだ。それからずっと森で潜んでいた…」

「それにしては…シリウスは…その、やつれてないわ。…何故なの?」

 

 

ハーマイオニーは今のシリウスが鉄格子をすり抜けられる事はないと考えていた。犬の姿であっても、中々に巨大で毛艶も良かった。禁じられた森で充分な食料が得られるとは思えず、それなら──やはり、誰かが…リーマスが内通者として食料を届け匿っていたのでは無いかと思っていた。

 

 

「それは…」

 

 

シリウスはハーマイオニーの言葉に少し狼狽え、言ったいいものか悩むようにソフィアとルイスを見た。

ルイスはソフィアに抱きしめられその視線を受ける事が無かったが、その悩むような目を見たソフィアはごくりと固唾を飲み小さく呟く。

 

 

「私達が、食料を届けていたの…その、普通の野良犬だと思って…あまりに痩せててかわいそうだったから…」

「本当に…2人が天使のように見えたよ」

 

 

シリウスは少し微笑む。

虫や獣を食べていたとは言え、うまく捕まえられるものでも無い。耐え難い空腹で、どうしようもなかった時にソフィアとルイスが現れた時には──本当に、天使達が迎えにきたのかと、柄にもなくシリウスはそう思った。

 

 

「力を得た俺は…一度だけ、クィディッチの試合を見に行ったが、それ以外は…ハリー、君はジェームズに負けないくらい、飛ぶのが上手い…」

 

 

シリウスはハリーを見た。ハリーも、視線を逸らす事なく、その目をじっと見つめた。

 

 

「信じてくれ。…信じてくれ、ハリー。俺はけっして…ジェームズ達を裏切った事はない。裏切るくらいなら…死ぬ方がマシだ」

 

 

シリウスの声は掠れ、目には消えかけた涙が再び浮かんでいた。

ハリーはその目を見て、ようやく──シリウスを信じることが出来た。

胸が詰まり、言葉に出せず、ハリーは小さく──だが、しっかりと頷いた。

 

 

「だめだ!」

 

 

ペティグリューはハリーが頷いたのを見て、まるで死刑を宣告されたかのような絶望に満ちた声で叫び、祈るように手を握り合わせその場に這いつくばった。

 

 

「シリウス──僕だ、ピーターだ…君の、友達の…!…まさか君は──」

「俺のローブは充分汚れてしまった。これ以上お前の手で汚されたくない!」

 

 

シリウスは自分に躙り寄るペティグリューを蹴り飛ばそうと足を振り上げたが、ペティグリューは悲鳴を上げ後退りその足がペティグリューを打つ事はなかった。

 

 

「リーマス!君は信じないだろうね…計画を変更したのなら、シリウスは君に話したはずだろう?」

 

 

ペティグリューはリーマスの方に向き直り、憐れみを乞うように身を捩りながら金切り声を上げ懇願したが、ペティグリューを見下ろすリーマスの目には冷たいままで慈悲のかけらすらも残っていない。

 

 

「ピーター、私がスパイだと思ったなら、シリウスは話さなかっただろう。──シリウス、多分、それで話してくれなかったのだろう?」

「すまない、リーマス」

「気にするな、我が友パッドフット。…そのかわり、私が君をスパイだと思い違いをした事を許してくれるか?」

「勿論だとも」

 

 

シリウスは微かに微笑み、自身の杖腕の袖を捲り上げる。

 

 

「一緒にこいつを殺るか?」

「──ああ、そうしよう」

 

 

シリウスの言葉に、リーマスは厳粛に答え同じように袖を捲る。

紛れもない死刑宣告に、ペティグリューは悲痛な顔で首を振り、「やめて、やめてくれ…!」と懇願するが、2人はその言葉に少しも心を揺らす事はない。──覚悟はとうに決まっていた。

ペティグリューは這いながらロンの元に向かうと、その場に跪き、必死に引き攣った媚びるような笑みを浮かべた。

 

 

「ロン…僕は、いい友達…いいペットだっただろう?ロン、僕を殺させないで…お願いだ…ロン、君は僕の味方だろう…?」

「自分のベッドにお前を寝かせていたなんて!」

「優しい子だ…情け深い、ご主人様…」

「人間の時より、ネズミの方がさまになるなんていうのは、ピーター、あまり自慢にならない」

 

 

シリウスの声にペティグリューは膝を折ったまま向きを変え、止めなく震えながらハリーをゆっくりと見た。

 

 

「ハリー…ハリー……君はお父さんにそっくりだ、生き写しだ…」

「ハリーに話しかけるとは、どういう神経だ!?ハリーに顔向けが出来るか?この子の前で、ジェームズの事を話すなんて、どの面下げて出来るんだ!?」

 

 

シリウスが大声を出しペティグリューを牽制したが、ペティグリューにとっては僅かな希望があるのは、ハリーしかいない。ハリーに向かって両手を広げ、膝を使いずりずりと進みながら囁いた。

 

 

「ハリー、ジェームズなら僕が殺される事を望まなかっただろう!ジェームズなら、わかってくれたよ、ハリー…ジェームズなら、私に情けをかけてくれただろう…」

 

 

シリウスとリーマスが表情を変え、ペティグリューに近づき、肩を掴んで床の上に仰向けに叩きつけた。ペティグリューは恐怖に痙攣しながら顔色を無くし2人を見上げる。

 

 

「おまえは、ジェームズとリリーをヴォルデモートに売った。そして…その上にあの子達の家族までも犠牲になった…!それを、否定するのか?」

 

 

シリウスが怒りで震えながら重々しく呟けば、ペティグリューはついに顔を覆いわっと泣き出した。喘ぎ喘ぎそれでも必死に同情を誘うかのようによろよろと床の上に座り込むと指の隙間からシリウス達を見ながら途切れ途切れに訴える。

 

 

「シリウス、僕に何が出来たっていうんだ…!闇の帝王は…あの方には君も想像出来ないような武器がある。僕は…怖かった!シリウス、僕は君たちみたいに勇敢じゃなかった…!僕は、やろうと思ってやったわけじゃない、あの人が、無理矢理──」

「嘘をつくな!お前はジェームズ達が死ぬ一年も前から、ヴォルデモートに密通していた!お前がスパイだった!」

「あの方は──あの方は、あらゆるところを征服していた!あの方を拒んで何が得られたろう?」

「何が得られたかって?──それは、罪もない人々の命だピーター!」

 

 

シリウスの顔には憎悪が浮かび、ペティグリューを指した杖先から火花が迸る。

今にも殺しそうなシリウスを見て、ペティグリューは後退り、それでも、必死に訴えた。

 

 

「君にはわかってないんだ!シリウス、僕が殺されかねなかったんだ!」

「それなら、死ねば良かったんだ。友を裏切るくらいなら、死ぬべきだ!俺たちもお前のためにそうした!」

 

 

肩で息をしながらシリウスが悲痛に叫ぶ。──それは、紛れもない事実だ。シリウスにとってかけがえの無い親友は、もちろんジェームズだ。だが、ペティグリュー──ピーターも、リーマスも、友に変わりはない。喜んで命を投げ出し死んだだろう。

ペティグリューは、シリウスの叫びに、言葉を詰まらせた。

リーマスはそっとシリウスの上がる肩を優しく掴み隣に並ぶと、ペティグリューを見下ろし杖を静かにむけた。

 

 

「お前は気付くべきだった。ヴォルデモートがお前を殺さなければ、我々が殺すと。──ピーター、お別れだ」

 

 

 

ハーマイオニーは両手で顔を覆い、これから起こる事を見たくないと壁の方を向き、ソフィアはぐっと強くルイスを抱きしめ──顔を蒼白にさせていたがそれでも、視線を逸らす事はなかった。

 

今、まさに1人の男の命が消えようとしている。ペティグリューは──過去の友人達のその目に、体の力を弛緩させ、項垂れた。

 

 

「──やめて!」

 

 

しかし、リーマスとシリウスが杖を振り下ろすより前にハリーが叫びながら駆け出すとペティグリューの前に両手を広げ立ち塞がった。

 

 

「殺してはだめだ。…殺しちゃ、いけない」

 

 

ハリーの言動に、シリウスとリーマスは愕然とし雷に打たれたような強い衝撃を受けた。

 

 

「ハリー、このクズのせいで…君は両親を亡くしたんだぞ」

「わかってる。…こいつを城まで連れて行こう、僕たちの手で、吸魂鬼に引き渡すんだ…こいつはアズカバンに行けばいい、殺す事だけはやめて…」

 

 

ハリーの言葉にペティグリューは俯いていた顔を上げ、顔中に歓喜を溢れされると両腕でハリーの足に縋りつき抱きしめた。

 

 

「ハリー!ありがとう、君は──こんな、僕に…ありがとう!」

「放せ。お前のためにやったんじゃない。僕の父さんは…親友が、殺人者になるのを望まないと思っただけだ」

 

 

ハリーは穢らわしいとばかりにペティグリューの腕を撥ねつけ、吐き捨てるように言い、ソフィアとルイスに向き合った。

 

 

「ソフィア、ルイス。…それでも、良い?」

「……」

 

 

ソフィアに抱きしめられその肩に顔を預けていたルイスはゆっくりとソフィアから離れるとハリーを見た。

 

 

「…僕は殺したい。本音はね。…けど…こいつを今ここで殺したら…真実は僕たちしか知り得なくなってしまう…それでは…うん、ダメ、だと思う。…全てを明らかにしないと…シリウスの汚名は晴らせない」

「…そうね、私も…それで、いいと思うわ。アズカバンに…連れて行きましょう」

 

 

ハリーはソフィアとルイスの言葉に少し安心したように微笑んだ。勿論、殺したい気持ちが完全にないわけではない。ただ、──やはり、父の親友達が人殺しになっては行けないと、ハリーは強く思っていた。

 

 

「ペティグリューは、縛っておきましょう」

 

 

ソフィアは「 インカーセラス(縛れ)」と唱え杖先から細い縄を出すとペティグリューを縛り上げ、これ以上戯言を言わないように猿轡を噛ませた。

縛られたペティグリューは床の上に倒れもがき、苦しげに呻いたが、それで心を痛める者は──ここには1人もいない。

 

 

「足の一本でも砕いた方がいいかもよ」

「ルイス!」

 

 

ルイスはペティグリューの足に杖を向けたが、ソフィアが慌てて諫め、ルイスの腕を抑えた。ルイスは肩をすくめ「だって逃げ出すかも…」と不満げに呟く。

 

 

「もし、ピーターが逃げ出そうと変身したら。殺す。…いいね?」

 

 

リーマスは静かにソフィアとルイスとハリーに伝えた。

3人は恐怖で顔を引き攣らせるペティグリューを見下ろし、しっかりと、頷いた。

その頷きを見たリーマスは早くペティグリューの姿を白日の元に曝け出したいのだろう、テキパキと動き、ルイスにより固定されていたロンの足に再度魔法をかけしっかりと固定し直した。リーマスに手を貸されながら立ち上がったロンは恐る恐る足に体重をかけたが、痛さに顔を顰める事はない。

 

 

「良くなりました、ありがとう…」

「スネイプ先生はどうしますか?」

 

 

ハーマイオニーは項垂れぴくりとも動かず気絶したままのセブルスを見て小声で言った。リーマスはセブルスの元に駆け寄り脈を取り包帯の巻かれた頭を見ながら「大丈夫、適切な処置がもう施されているからね」と安心させるように──ソフィアとルイスに向かって言った。

 

 

「君たちは…少しやり過ぎたね。セブルスはまだ気絶したままだ…うん、このままのほうがいいだろう」

「…僕が運びます」

「そうかい?…なら、お願いしようかな」

 

 

ルイスはセブルスの元によると一度、心配そうにじっとその閉じられた目を覗き込み、優しくその力のない手を掴みながら浮遊呪文をかけた。

ふわり、と浮かんだセブルスをルイスは大事に包み込むように横抱きにする。

どうしようもない体格差があり、セブルスの足や腕は投げ出されていたが、頭はしっかりとルイスの胸にもたれかかっていた。こうして運ぶほうが幾分もマシだろう。

 

 

ペティグリューはシリウスにより手錠をかけられ、逃げられないようリーマスとロンと繋がれる。もう抵抗する事は無駄だと諦めたのか、暴れる事はなく項垂れるだけだった。

 

 

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