【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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154 過去を辿る!

 

 

ソフィアとハリーはしっかりと手を繋いだまま森へと走った。誰にも見られてはならない──その事を忘れていないソフィアは途中でハリーの手を引きハグリッドの小屋の戸口から見えないように野菜畑や温室を経由し、遠回りだったが隠れ場所になる森へ、なんとか辿り着くと木々の陰に入り、荒くなった呼吸を整えた。

 

 

「ふう…。…次は…ハグリッドの所へ行かないと…」

「うん、…大丈夫?」

 

 

ハリーはまだソフィアの顔色が悪い事が気になり、汗の滲む顔を覗き込んだ。ソフィアは力なく微笑むと、胸を押さえ何度も深呼吸をする。

 

 

「大丈夫よ。──行きましょう」

 

 

2人は森の橋を縫うように、こっそりと木々の間を進んだ。やがてハグリッドの小屋の戸を叩く音が聞こえ、2人は急いで大きな樫の木の影に隠れ、ハリーはしゃがみ込み幹の影から外の様子を伺うソフィアの頭の上から顔を覗かせた。

ハグリッドが蒼白な顔で扉を開き、何もいない戸口を忙しなく見る。微かに 自分(ハリー)の声が聞こえ、木の幹から見ていたハリーは息を呑んだ。

 

 

「僕の声だ…本当に、あそこに僕達が…」

 

 

ハグリッドがまた小屋に戻り扉を閉めた時、ハリーはソフィアと目線を合わせるようにしゃがみ込み、小屋の扉をちらちらと見ながら囁いた。

 

 

「どうする?」

「…バックビークに近づきましょう」

 

 

2人はこっそりと木々の間を進み、かぼちゃ畑の柵に繋がれ落ち着かない様子のバックビークが見えるところまで近づいた。

 

 

「やる?」

「…まだ、駄目よ。今バックビークを連れ出したら…委員会の人はきっと、ハグリッドが逃したと思うわ…外に繋がれてるのをちゃんと目撃させないと」

「でも…それなら、60秒くらいしかないよ?」

「それしかないの」

 

 

ソフィアの硬い緊張した声に、ようやくハリーはとんでもない事をやろうとしている、ソフィアが何故こうも緊張しているのかがわかりぐっと表情を引き締めた。

 

暫くすると陶器が割れる音が微かに響いた。

ソフィアは一瞬肩を震わせるとぐっと唇を強く噛み、何かに耐えるように木の幹をぐっと強く掴んだ。

 

 

「ソフィア、僕たちが中に飛び込んで──ペティグリューを今捕まえたらどうだろう」

 

 

ハッと息を呑んだハリーは名案を思いついたと言うようにソフィアに早口で囁く。ソフィアはハリーを見て少し困ったように眉を下げ、頭を振った。

 

 

「私も同じ事を考えたわ。でも…駄目なの、ハリー。誰にも見られてはいけないの。それが自分自身であってもよ。もし今…もう1人の自分を見たらどう思う?」

「…僕、多分…気が狂ったかなって思う」

「その通りよ。…今、私たちはペティグリューを…ただのスキャバーズだと思ってるもの。もし、もう1人の私たちが実はそのネズミは死んでいたはずのペティグリューだ!──なんて、言うの。スネイプ先生のように、信じられないわ」

「そっか…うん、そうだね」

「…ほら、見て──来たわ」

 

 

城の方を指差したソフィアの指先を辿って、ハリーは遠くの正面玄関からこちらに向かってくるダンブルドア、ファッジ、そして死刑執行人と委員会の人々を見た。間も無く彼らに気づいた ソフィア達(自分達)が裏口から現れる筈だ。

 

まさにソフィアとハリーがそう思った時、裏口の戸が開き自分達がハグリッドとともに現れる。ハグリッドを必死に説得しようとするソフィア達にハーマイオニーが透明マントを被せ、再び自分達は消えるとハグリッドの小屋の扉を死刑執行人達が叩いた。

 

ソフィアとハリーは木の影にじっと隠れながら5組の足音が遠ざかる音を聞いていたが、ふと別の話し声が聞こえ、小屋の扉が少し開いている事に気づく。

 

外の様子を伺う死刑執行人の顔が引っ込んだのを見て、ハリーがソフィアに囁く。

 

 

「僕がやる──ここで待ってて」

「気をつけて、ハリー…」

 

 

ハリーは頷き、木陰から飛び出すと身を屈めてバックビークに近づいた。ファッジが死刑執行の正式な通知を読み上げる声を聞きながらバックビークのすぐ側に寄ると、以前にしたように瞬きをしないよう気をつけながらハリーはバックビークのオレンジ色の瞳を見つめお辞儀をした。

バックビークは鱗で覆われた前脚を曲げると軽く頭を下げ、またすぐに立ち上がる。

 

 

「バックビーク、くるんだ。…おいで、助けてあげるよ…」

 

 

ハリーはバックビークに向かって囁き、繋がれていた縄を解いた。だが、バックビークは嫌がるように前脚で踏ん張り、動こうとしない。

なかなか移動しないハリーとバックビークに、ソフィアは焦ったように辺りを見渡し、かぼちゃ畑の端の柵にイタチの死骸が括り付けられているのを見つけるとすぐさま駆け出し数匹の死骸を掴んだ。

 

 

「バックビーク、おいで!」

 

 

ソフィアは囁きながらイタチを掲げた。

バックビークは首を上げてそれを見ると羽を広げゆっくりとソフィアの元に歩く。ソフィアはようやく動き出したバックビークに優しく笑いかけ、一度お辞儀をした。バックビークがそれに返事をしたのを見て、ソフィアはすぐにバックビークの口元にイタチを放り投げる。

バックビークはうまく空中でそれをキャッチするとバキバキと音を立て──あまりの音に、気付かれるかとソフィアとハリーはひやひやしたが、扉が開くことは無かった──食べながら森の奥へ入った。

ソフィアもハリーと一緒にバックビークが繋がれている手綱を持ち奥へ導き、時々イタチを食べさせ大人しくさせながらかぼちゃ畑が見えないところまで進み、ようやく足を止めた。

 

 

「ここなら安全だわ。…静かに…」

 

 

ハグリッドの小屋の裏戸がバタンと開く音がした。ソフィアとハリーはじっと音を立てずに佇み、バックビークも同じようにじっと耳をそばだてた。

しん、とした静寂。──そして、嗄れた声が聞こえた。

 

 

「どこじゃ?」

「ここに繋がれていたんだ!俺は見たんだ!ここだった!」

「これは異なこと」

 

 

死刑執行人は怒り荒々しく叫んだが、ダンブルドアはどこか面白がっているような声だった。

死刑執行人が怒り狂い、癇癪を起こして斧を振り上げ下ろす。──あの時聞いた音は、この音だったんだ。

 

 

「ピーキー!いない!いない!!よかった、きっと自分で自由になったんだ!ピーキー!賢いピーキー!」

 

 

ハグリッドが吠えるように啜り泣きをしながら叫ぶ。バックビークはハグリッドの声を聞いた途端そちらへ行こうとしたが、ハリーとソフィアは強く手綱を持ち直し足を踏ん張りなんとかバックビークを抑えた。

 

 

ダンブルドアが死刑執行人を宥め、またハグリッドの小屋に戻っていく足音が聞こえた。

じっと耳をそばだてていたソフィアはその足音が消え、扉が閉まり、再び静寂が訪れた後、ようやく重い息を吐いた。

 

 

「これからどうするの?」

「そうね…皆が城に戻るまで待たなきゃだめね。シリウスが捕まって…8階に閉じ込められて──それから、飛んでいかないと…」

「じゃあ…暴れ柳が見えるところまで移動しよう。じゃないと、何が起こってるかわからなくなるし」

「そうね…慎重に、行きましょう」

 

 

ハリーとソフィアはバックビークの手綱を握りなおし、暗い闇が深まっていく中そっと森のすそに沿って進み、暴れ柳がちらりと見える木立の影に隠れた。

 

 

「ロンが来た!」

 

 

ハリーが小声で叫び、もっとよく見ようと身を乗り出してしまう。ソフィアは慌ててハリーのローブを引き木立の影に引き戻すと「ちゃんと隠れて!」と小声で窘めた。

 

ロンがスキャバーズを捕まえようと芝生を横切り駆ける。その後に続いてソフィア達が現れ──「今度はシリウスだ!」次に、暴れ柳の根元から、大きな黒い犬が躍り出てハリーを転がし、ロンを咥えた。

 

 

「…ここから見てると、余計酷くみえるよね?」

「うーん。否定出来ないわ」

 

 

ハリーは少し顔を顰めてロンの腕にがっちりと食い込んだ犬の牙を見た。ソフィアもその言葉に苦笑しながら頷き、ロンが犬に引き摺られ木の根元に引き込まれるのを見ていた。

 

 

「うわっ!危ない!──ソフィアの魔法が無かったら、ノックアウトされてたね」

 

 

暴れ柳はギシギシと軋み、ハリーと狼を殺さんばかりに枝を振り下ろす。

ソフィアとルイスが同時にプロテゴを唱え、なんとかハリーが柳の渾身の一撃を受ける事なく柳の下から逃げるのを見ていたハリーは「わぁ…」と感嘆の声を漏らした。

 

 

「こうみると…ルイスも、ソフィアも凄いね…」

「ふふっ…ありがとう」

 

 

もし、あの時守られていなかったらノックアウトどころではない──きっと今ここにいる事も、そもそもシリウスが無実だと知ることもなく気絶し朝を迎えていただろう。

 

クルックシャンクスが枝の攻撃をうまく避けながら木のコブに触れ、その後にソフィア達が入っていく。

皆が入った後すぐに暴れ柳はまた動き出した。その数秒後、ソフィアとハリーはすぐ近くで足音を聞いた。ダンブルドア達が城へ戻っていくその姿を見たソフィアは顔を顰め「危なかったわね」と囁く。

 

 

「もし、あと少し遅かったら…見つかってたわね」

「でも、ダンブルドアが一緒に来てくれたかもしれないよ?」

「ダンブルドア先生だけなら良いけど…大臣は、きっとシリウスを見たらすぐに処刑するわ」

「確かに…」

 

 

ダンブルドア達が城の階段を登って見えなくなるまで、二人は見つめていた。

その後暫くは何も起こらなかったが、リーマスが石段を下り暴れ柳に向かって走ってきた。もう、すっかり辺りは暗闇に飲まれていたが──ちょうど、満月は分厚い雲に隠されていた。

木の根元の穴の奥へ消えたリーマスを見ていたハリーは、焦ったそうにつぶやく。

 

 

「ルーピンがマントを拾ってくれてたらなぁ。そしたら、スネイプがマントを拾うことは無かったのに…そうすれば…」

「…スネイプ先生が来なくとも、結局私たちは外に出て…リーマス先生は人狼になるの。…多分、それだけで運命は変えられないわ」

「ああ…うーん…」

 

 

ハリーは憎々しげに空を見上げる。

今日が満月でなければ──ルーピンが薬を飲み忘れてさえいなければ。

暫くハリーとソフィアが無言で暴れ柳を見ていると、足音が聞こえほろ酔い状態になったハグリッドが千鳥足でソフィアとハリーの前を横切った。──もし、透明マントを取りに行っていたら、ハグリッドに見られていたかもしれない。

またバックビークがハグリッドの元へ向かおうと暴れ出してしまい、ソフィアとハリーは手綱を掴み懸命に押さえ込んだ。ハグリッドの姿が見えなくなると、バックビークは暴れもがくのをやめ、悲しそうに項垂れた。

それを見たソフィアは、少しだけ胸を痛めた。仕方のない事だ──もし、ここでバックビークがまだ遠くに逃げ出していない事がバレたら、きっとハグリッドはそれを隠しきれない、隠し事がとても苦手な人だ…きっとすぐにバレてしまい、バックビークは処刑されるだろう。

 

 

それからほんの2分もしないうちに城の扉が開き、セブルスが暴れ柳に向かって走り出した。木のそばで立ち止まったセブルスは辺りを見渡し、ふいにしゃがみ込むと落ちていた透明マントを拾い上げた。「汚らわしい手で触るな」というハリーの吐き捨てられた呟きに、ソフィアはただ沈黙した。

 

セブルスがリーマスと同じように木の枝でコブを突きマントを被って姿を消した──きっと、穴の奥へ行ったのだろう。

 

 

「これで全員ね。私たち…みんなあそこにいるわ。後は…出てくるまで待ちましょう」

 

 

ソフィアはバックビークの手綱の端を1番近い木にしっかりと括り付け、乾いた土の上に腰を下ろし膝を抱え座り込んだ。

ハリーもソフィアの隣に座り、じっとその時を待つ。

 

 

「…ハリー…私、途中で気を失ったからわからないの。…何故吸魂鬼は、シリウスを捕まえなかったのかしら?…スネイプ先生と大臣がそう話していたわよね?」

「うん…」

 

 

ハリーは自分が見た事を話した。

ソフィアが守護霊を出し、自身を掴んでいた1匹の吸魂鬼を退けた後に大きな銀色の何かが、湖の対岸から疾走し現れ吸魂鬼を退却させた──説明し終わった後、ソフィアは眉を寄せ深く考え込んだ。

 

 

「…誰が守護霊を出したのかしら…守護霊を出せる人なんて…いる?」

「そういえば…ソフィアは守護霊を出してたよ」

「え?──ほ、本当に!?私、一度も成功した事ないのよ!?…まさか…気がつかなかったわ!」

「多分、ソフィアが守護霊を出してなかったら僕は吸魂鬼にキスをされてたよ。本当に、ありがとう」

 

 

言うのが遅くなっちゃったけど、とハリーは微笑む。ソフィアは嬉しそうにはにかんでいたが、ふと「吸魂鬼のキスってなんなの?」と、ようやく長い間疑問に思っていた事を聞く事ができた。

ハリーは吸魂鬼のキスがどのようなものかを説明し──それを聞いたソフィアは眉を寄せ黙り込んでしまう。

シリウスが執行されるのは、吸魂鬼のキスだ。もしハリーの言うように生ける屍のような魂のない状態になってしまったら──それは、死よりも恐ろしい状態なのではないだろうか。

 

 

「吸魂鬼のキスをさせるわけにはいかないわね…うーん…それにしても、本当に誰なのかしら…ルイス…じゃ無いわよね?ハリー、誰だったか見たの?」

「うーん…うん、僕、見たよ。…でも…思い込んでいただけだ、混乱しただけで…その後すぐに気を失ったし…」

「誰だと思ったの?」

 

 

教師の誰かだろうか。

──もしかして、実は父様本人で、結果シリウスを助ける事になってしまってどうしてもそれが嫌で…嘘をついている、とか…?

ソフィアはそう思ったが、ハリーは少し悩むように口を閉ざした後──吐息混じりに小さく呟いた。

 

 

「僕──父さんだと思った」

 

 

どんな奇妙な事を言っているのか、ハリーは自分自身よく分かっていた。

ちらりとソフィアを見れば、ソフィアは目を見開き驚き、口を僅かに開けていた。

 

 

「ハリーのお父さんを見たの?」

「う──うん、そう、思った。わかってるよ、もう死んでるって」

「ゴーストだったの?」

「わからない…実体があるように、見えたけど…」

 

 

ソフィアは少し悩み、そしてハリーに微笑みかけた。まさか、そんな表情で見られるとは思わず──てっきり哀れみか、戸惑いの目で見られると思っていたのだ──ハリーは息をのむ。

 

 

「…ハリーのお父さんが助けてくれたのなら、素晴らしいわね」

「…僕の言葉を…その、信じてくれるの?」

「ええ、信じるわ」

 

 

ソフィアの微笑みに、ハリーはきゅっと胸が締め付けられれような気がした。

自分でも馬鹿げた言葉とは思う、もう父はずっと昔にヴォルデモートに殺されたのだ──ただ、死んだと思われていたペティグリューは生きていた。ならば…それなら、自分の父親が生きていても、不思議では無い──そう、ハリーは思いたかった。

 

 

 

 

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