【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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157 いとこなの!?

 

ハリー、ソフィア、ロンは翌日の昼には退院することが出来た。

既に退院していたハーマイオニーとルイスと落ち合うために、ハリー達は花束を持つ少女の部屋を訪れた。

今日は試験が終わった後のホグズミード行きの日だったが、流石にそんな気分にはなれなかったし、何があったのかハーマイオニーとルイスと眠っていたロンに伝えなければならなかった。

 

 

「逆転時計…そんなの、あるんだ…凄いね」

 

 

逆転時計を使い過去に戻ったハリーとソフィアが罪なき命達を救い出した話を聞いたルイスは、噛み締めるようにつぶやく。

 

 

「それで──それで、シリウスが飛んでいく前に…私とハリーに言ったの…」

 

 

ソフィアは言葉を区切り、一度深呼吸をした。そしてきょとんとした顔をして首を傾げ言葉の続きを待つルイス達をゆっくりと見回し、口を開いた。

 

 

「…ハリーのお母さんと、私の母様が…姉妹だって」

「……え?」

「嘘だろ?」

「そんなわけないわ!」

 

 

ルイス、ロン、ハーマイオニーはそれぞれ信じられないと言うような怪訝な顔で眉を寄せる。しかしハリーとソフィアは真剣な顔で、冗談でもなんでもないのだと3人を見つめた。

 

 

「でも…でも、母様は純血でしょ?ハリーのお母さんは…マグル生まれだよね。…ハリーのいとこは、マグルでしょ?」

「…ルイス、よく考えて。…母様が純血だと、誰も言ってないの。…私たちがそう思っていただけ。…スリザリンだから、きっと純血なのだと…」

「そんな──…そうか、姉妹だから母様は秘密の守人になりたかったし…危険な役目を担ったんだ。シリウスは、昨日…『アリッサは、リリーの為にそうしたいと言って聞かなかった』って言ってた。…僕は、ずっと母様とハリーのお母さん…リリーさんが友人なんだと思ってた…けど、違うんだ…姉妹、だったから…」

 

 

ルイスは昨夜の事を考えながらゆっくりと口にする。姉妹だから守りたかった、その気持ちを、ルイスは誰よりも理解ができる。

 

 

「…ただの姉妹じゃないの。…私たちと同じ双子だったんですって」

「双子?…まさか…」

 

 

ルイスは驚きソフィアとハリーを困惑した目で見る。双子の親が、双子の子どもを産む。それは無いわけではないが、珍しい事だと言えるだろう。──確かに、ハリーとソフィアの目だけは、とても良く似ている。ただの偶然だと思ったが、こんな想像もしなかった事実が隠されていたなんて。──流石に、ルイスは困惑し何も言う事が出来なかった。

 

 

「でも──でも、私、ずっと疑問だったの。何故…ソフィアとルイスのお母さんが亡くなった事がずっと隠されていたの?あなた達の──保護者は、何故、教えなかったの?」

 

 

ハーマイオニーは困惑し、眉を顰めてソフィアとルイスを見る。ハーマイオニーが指す保護者とは、父親の事だと、2人は理解し顔を見合わせ、ルイスは首を振った。

 

 

「…わからない。僕は…ただ、母様が殺されたから…それを伝えるには、僕らはまだ子どもだと…受け入れられないんじゃないかって思われてるんだろう…って考えてたんだけど」

「私は…──私も、わからないわ」

 

 

ソフィアはぐっと息を飲み、暫くした後に小さな力の無い声で吐き出した。

ロンはハリーと親戚だと知った2人があまり嬉しくなさそうな事に首を傾げ、怪訝な顔でソフィアとルイスに聞いた。彼にとって、特にそれは深い意味のある言葉ではなかった。

 

 

「嬉しく無いの?僕がハリーと親戚なら、めちゃくちゃ嬉しいけどなぁ」

 

 

ソフィアとルイスは顔を見合わせ、同時にハリーを見た。

ハリーは、ソフィアとルイスが自分の親戚だと知り──驚いたが、とても嬉しかった。その事実を知った時はかなり狼狽したが、一夜明けてみればなんて素晴らしい事なのかと浮き足立っていた。

だが、どうも2人は自分のように両手を上げて喜んでいないとわかると、急に嬉しい気持ちは萎み、気まずそうに肩をすくめた。

 

 

「勿論、嬉しいわ!…私たちに親戚なんて居ないと思っていたもの」

「うん、嬉しいよ!けど…ちょっとびっくりして…」

「…本当?…本当に、嬉しい?」

 

 

ハリーの不安げな声に、ソフィアとルイスはにっこりと明るい、よく似た笑顔を見せ「勿論!」と同時に言った。その笑顔を見たハリーは、ようやくホッと胸を撫で下ろし2人と同じように嬉しそうに笑う。

だが、それを見ていたハーマイオニーだけは、どこか浮かない顔をしていた。

 

 

「…本当に、双子なのかしら…双子だとしても…一卵性なのかしら…ねえ、ハリー?あなた、お母さんの写真とか持ってない?」

「あっ!あるよ、ちょっと待ってて、部屋にあるから持ってくるよ」

 

 

ハリーはハーマイオニーの言葉に、両親の写真がたくさん収められているアルバムを思い出しパッと立ち上がると取りに戻る為に駆け出した。

肖像画の扉からハリーが消えたのを見送ったハーマイオニーは、真剣な顔でソフィアを見た。その、あまりに真剣な眼差しにソフィアはきょとんと目を瞬かせ首を傾げる。

 

 

「どうしたの?ハーマイオニー」

「…ソフィア、ハリーのいとこで…嬉しい?」

「え?勿論よ!びっくりしたけど、嬉しいわ!」

「…そう。──うん、わかったわ。それならいいの」

 

 

ハーマイオニーは膝の上で指を組むと、そのままじっと黙り込んでしまった。

ソフィアとルイスは、どこか様子のおかしいハーマイオニーに首を傾げていたが、何故そこまで深く考え込んでいるのか、それを聞く前にハリーが片手にアルバムを持ち、息を切らせながら部屋に駆け込んで来たため、それに気を取られ何も言わなかった。

 

 

「持ってきたよ!」

 

 

ハリーはソフィアの隣に座り、前にある机の上にアルバムを乗せる。ソフィア達はアルバムをよく見ようと、身を乗り出してじっとその表紙を見つめた。

ハリーは特に躊躇うことも勿体ぶる事もなくパラパラとページをめくり、そして自分の両親の結婚式の写真が貼られているページで手を止めた。

 

 

「この人が僕の母さんだよ」

 

 

ソフィアとルイスは、ハリーが指差す女性を見て息を飲み言葉を無くした。

 

 

「「…母様……」」

 

 

自宅にある、唯一の母の写真と、その白いドレスを着た写真に映る女性は、同一人物に見えた。それほど、瓜二つで、違いを見つける事の方が難しそうだ。きっと2人で並んでいればその差異に気付くかもしれない。だが、少なくともソフィアとルイスには、その女性が母親と見間違うほど似ていた。

 

 

「…一卵性の双子だったのね、母様と…リリーさんは」

「…もう、疑いようがないね。本当に…そっくりだ」

「そんなに似てるの?僕、…アリッサさんを、見てみたいな」

「来年、写真を持ってくるわ。きっと驚くわよ!」

「うん!楽しみだなぁ」

 

 

ハリーは顔を綻ばせ心から嬉しそうにはにかむ。

天涯孤独の身だと思っていた、少なくとも、魔法界で自分と血の繋がりがある人は居ないのだと思っていた。

だが、ソフィアとルイスという、素晴らしい友人であり──密かに思いを寄せている人と親戚だなんて、こんな嬉しいことはない、そうハリーは思う。

一瞬、いとこでも結婚出来るし、とハリーは考え──そこまで考えてしまった自分に、みるみるうちに顔を赤くした。

 

ソフィアの顔を見れば、さらに顔に熱が集まっていくのを感じたハリーは居ても立っても居られず、勢いよく立ち上がる。──それを見たロンは「どうした?」と驚いたが、ハリーは誤魔化すようにアルバムを掴み上げた。

 

 

「ねえ、校庭に行こうよ!外の空気を吸いたいんだ」

 

 

胸を焦がす、何とも言えず甘酸っぱい感情に、体がソワソワと落ち着かない。溢れ出した思いを鎮める方法を、まだ恋愛面で幼いハリーは分からず──ただ、何故か走り出したい気持ちに駆られていた。

 

 

「そうだな!行こうぜ」

「…そうね、ハグリッドの様子も気になるし行きましょう」

 

 

ロンとハーマイオニーはハリーの言葉に頷き立ち上がったが、ソフィアは立ち上がる事なくちらりとルイスを見た。

 

 

「…僕たちちょっと話したい事があるんだ、母様の事で…ごめん、2人きりで話したくて…」

「後で行くわ、ハリー」

「そう?うん、わかった!」

 

 

ハリーは残念に思ったが、2人で話したい事もあるのだろう、と深く考えずロンとハーマイオニーと共に肖像画を通り、人気の無い廊下へ戻った。

 

ロンは窓から差す暑い日差しに目を細めながらネクタイを緩め先頭を歩く。ハリーはぱらぱらとアルバムを捲りながら、ハーマイオニーと少し後ろをついて歩いていた。

 

 

「ハリー」

 

 

ハーマイオニーが、小さな声でハリーに呼びかけた。ちらちらと前を歩くロンを気にするように何度も見ていたが、ぐっとハリーの腕を掴むとロンにバレないように素早く近くの空き教室にハリーを引っ張った。

 

 

「どうしたの、ハーマイオニー?」

 

 

ハリーは驚き、深刻な顔をするハーマイオニーを見た。ハーマイオニーは何度か口を開いては閉じていたが、ついに意を決したように強い目でハリーを見ると、ハリーの腕を掴む手にぎゅっと力を込める。

 

 

「ハリー、あなた。ソフィアの事…好きでしょ」

「えっ……う、うん。何で?何でわかったの?」

 

 

唐突に言われた言葉に、ハリーは顔を赤くししどろもどろに答えたが、否定することはなかった。自分でその気持ちに気付いたのは昨日だが──確かに、ずっと前からソフィアの事を特別に思っていた。…きっと、知らないうちに好きになっていたんだろう。

 

 

「そうよね…」

「そ、そんなにわかりやすかった?どうしよう、ソフィアにバレてるかなぁ」

「…ソフィアは鈍いから、多分、バレてないけど…ハリー。あなたとソフィアはいとこよ」

「うん。そうだね。…でも…」

「まだ、そこまで考えてないのかもしれないわね。──ハリー…ええ、いとこでも、結婚出来るわ。でも、ハリーのお母さん…リリーさんとアリッサさんは、双子なの、凄く似ているなら…一卵性の双子ね」

「…?…それがどうしたの?一卵性って、フレッドとジョージみたいに、似ているって事だよね?」

 

 

ハリーはハーマイオニーの言いたい事が分からず、首を傾げた。…ただ、なんとなく、ハーマイオニーの表情からあまり良くない事を聞かされるのではないか、と、予想はしていた。

 

 

「ええ、そうよ。一卵性の双子はね──遺伝子情報が殆ど同じなの。つまり…つまり、ハリーとソフィアは、いとこでもあるけれど…遺伝子学的には、異父兄弟…に近いと、私は思うわ」

「……え?…つまり…?」

 

 

ハーマイオニーは困ったように眉を下げ、心の底から気の毒そうに、ハリーに伝えた。

 

 

「結婚出来るわ。きっと書類上はいとこだもの。──ただ、血が濃すぎるわ。それを知ったとき…多分、世間は…その、あまり…受け入れないんじゃないかって…私は思ったの」

 

 

アリッサとリリーが同一の遺伝子を持つ双子ならば。

ハリーとソフィアは、いとこというよりも。異父兄弟に近いのではないか。ならば、もし2人が恋に落ち結婚し、子どもをもうけたとして…それは、許されるのだろうか。──そう、ハーマイオニーは考えた。

 

 

「…そんな」

「ハリー、勿論私は気にしないわ、2人とも大好きな友達だもの──でも…私の言葉を、覚えていて欲しいの。…それだけよ」

 

 

ロンの所に行きましょう。きっと探してるわ。そう、ハーマイオニーは言うとその場から逃げるようにハリーの腕から手を離し扉を開け、足早に廊下を走った。

残されたハリーは暫くその場で立ちすくんでいたが、遠くからロンが自分を探す声が聞こえ、ゆっくりと重い足を動かした。

 

 

 





最近の研究では、一卵性双生児でも遺伝子情報が異なる者もいるとわかってきていますが。
この話の中で、一卵性双生児は遺伝子情報が同一だという世界観でお願いします…。
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