【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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158 隠されていた人

 

 

部屋に残ったソフィアとルイスはハリー達を見送った後、浮かべていた笑みを消し、真剣な顔でお互いを見た。

 

 

「…どうする?」

「…どうしましょう」

 

 

どうする?──とは、2人の父のセブルスの事である。ソフィアとルイスは自分達の母親を死なせる原因になったのが、ペティグリューの裏切りだと知っている。だが、セブルスはそれを知らぬまま無実の人を恨み続けているのだ。それは──きっと、いい事ではない。

 

 

「…私、なんで父様がハリーを憎んでいるのか…ようやくわかったわ」

「うん。…ハリーのお父さん…ジェームズの守人にシリウスがなって…それを信じていたから──母様はジェームズとシリウスの友情を信じていたからあの場所に行って、死んでしまった。…きっと、父様は…許せなかったんだろうね。守人だと思っているシリウスの事は勿論だけど…ジェームズの事も」

「…本当は、シリウスは守人じゃ無いとしても…結局、母様は2人を信じて…殺されてしまった。…シリウスは無罪だと言っても…もしかしたら、許さないかもしれないわね」

「うーん…」

 

 

ルイスは難しい顔をして腕を組み、悩むように唸り声を上げた。

──父様の怒りと恨みは尤もかもしれない。結局、シリウスが裏切ったのでは無いとしても…母様は2人を信じていた、それ故に危険な任務を受け、死んだ。…もしペティグリューが守人だと知っていたら、その任務を受けなかったかも知れない。

 

 

「…でも、何で母様があの場で亡くなった事が秘密にされたんだろう」

 

 

ルイスは顎に手を添えたまま呟く。

別に、その事実は隠されなくても良かったのでは無いだろうか。──ヴォルデモートの犠牲者の一人として大衆に知られていてもおかしくは無い。

何故それを知るものは居ないのか、そして、何故セブルスはそれを隠したかったのか。

 

ソフィアはじっとルイスの顔を見つめた。

ソフィアには、ひとつだけ──あり得ない事かもしれないが、ホグワーツで過ごし、家族の事を知る中で微かな違和感を感じる場面が何度かあった、特に今年は、引っかかる部分が多かった。…だが、証拠は何もない。それをルイスに伝えるべきなのか、悩んだ。

 

 

「…?…どうしたの?」

「…ルイス、突拍子もない事なの、何も…証拠は無いの。私の思い過ごし…考えすぎかもしれないわ…」

 

 

ソフィアの声は震えていた。泣きそうなほどに顔を歪ませ、顔色はひどく悪い。ルイスは驚き目を見開くと、すぐに立ち上がりソフィアの隣に移動した。

そっと、その震える肩を抱き、優しく落ち着かせるように「どうしたの?言ってみて?」と促す。

 

ソフィアは一度大きく息を吸い込み、そして長く吐き出した。

 

 

「…三本の箒で、ジェームズがシリウスの守人だったとマクゴナガル先生達が話していた時なんだけど…」

「うん」

「ハグリッドが…『みんな死んじまってた、可哀想なハリー。両親も死んじまって、それに、い─』…って、何かを言いかけたの」

「…?…それが?」

「ハグリッドはジェームズとリリーの遺体を見たのね。それと、私たちの母様…アリッサでしょう?…それに、の後に続く言葉は『い』だったの。…別の存在を示してるわ」

「……他にも誰かいたって事?」

 

 

ソフィアはまた暫く沈黙した後。消え入りそうな声で囁いた。

 

 

「…叫びの屋敷で、母様があの場に居たと初めて聞いた時、私達は驚いてすぐに聞き返したわ。でも、シリウスはまだ誰かの名前を伝えようとしていた気がするの」

「……たしかに、…そうかも」

 

 

あの時、シリウスはまだ何かを言おうとしていた。だがそれを遮り反応したのは自分達だ。

その時の事を思い出すようにルイスはじっと深く考え込む。

 

 

「それに…シリウスは、ペティグリューを追い詰めた時に、こう言ったよね?…『おまえは、ジェームズとリリーをヴォルデモートに売った。そして…その上にあの子達の家族までも犠牲になった』…私は、母様の事を指してるのだと思ったけれど…」

 

 

ルイスはその言葉を聞き、驚愕に目を見開き首を微かに振った。「そんな、」と小さく口が動いたが言葉は紡がれない。

ソフィアはルイスの目を静かに見つめる。二人とも、お互いの瞳の中に、何か確かな答えを探すかのように見つめあっていた。

 

 

「…家族、って…よく考えれば、おかしい言葉だわ」

「そんな──そんな、あり得ない」

「…ルイス、みぞの鏡…覚えてる?」

「え?…う、うん。本人の隠された強い望みを見せるものでしょ?それがどうしたの?」

「…私──私、あの鏡に、父様と母様と、ルイスと…私と──」

 

 

ソフィアの大きな目から一雫の涙が溢れた。

 

 

「ひとり…見覚えの無い、男の子を見たの。私達より、少し年上に見えたわ…家族の中に──当然のように、混じって…見覚えはないの。でも…黒髪で、黒目で…と、…父様に、よく似てるって、後で…気付いて…っ…!」

「──ソフィア!」

 

 

ぽろぽろと涙を流しながら震えるソフィアの体をルイスは強く抱きしめた。──だが、ルイスの体も、僅かに震えていた。

 

ルイスも、ソフィアの言いたいことが何なのかわかってしまった。

 

ハグリッドが続けるはずだった言葉。

シリウスの家族、という言葉。

そして、ソフィアが見た知らない男の子。

よく考えれば、家にある母様の写真は、たった一人の赤子を抱きしめている。

そして、家族写真はひとつもない。

もし、撮っていたとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「僕たちには──もうひとり、家族が居たんだ。…その人は、多分、僕らの…兄様だ。ハグリッドは、その時三本の箒で…いとこ、と言おうとしたのかもしれない。…兄様は、母様と一緒にその日に犠牲になってしまった。──ああ!そうか、そうか…!」

 

 

聡いルイスは全ての辻褄が合い、強くソフィアを抱きしめ目を閉じ、苦しげに呟いた。

 

 

「ハリーは、ハリーのお母さんは、自分を守って死んだって、一年生の時に…そう、僕らに教えてくれた。お母さんに守られて…生き残った男の子になった。でも、僕らの兄様は──生き残れなかった。死んでしまった、それが、きっと…。──父様はハリーが何故生き残れたのか知っていたのかもしれない。だから…どうしても受け入れられなくて…!」

 

 

生き残れなかった男の子。

それは──裏を返せば、母の愛により守られなかった男の子という事になるのでは無いだろうか。

きっと、当初、セブルスはそれを知らなかっただろう。ただ友人を信じて死んだ アリッサ()と、生き残れなかった息子。その2人の遺体を連れて帰り、埋葬し、年月が経つうちに──生き残れなかった男の子の意味を知ってしまったのかもしれない。

 

死体に唾を吐くような心無い言葉を、誰かが吐き出さないとも限らない。その事実に耐えられず、きっと、セブルスは自分達に全てを隠そうとしたのだ。

 

友人を信じたあまりに死んだ可哀想で──愚かな女。

そして、母の愛に守られず生き残れなかった男の子。

 

 

その事実は、きっとセブルス(父様)には耐え難い事だった。

 

 

ルイスはセブルスの隠されていた気持ちを確信し、強く目を閉じる。優しく、不器用な父だ。きっと何よりも、自分達にそれを知られたくなかったのだろう。

 

 

「…でも、…それでも、私は。母様や、兄様の事を知りたいわ」

「……僕も」

 

 

ルイスはそっとソフィアを抱きしめていた腕の力を抜き、2人は額を合わせ涙を流しながら呟いた。

これは、きっとそう遠くない真実だろう。…だが、今はまだ想像の範囲を出ない。ならば、ソフィアとルイスが取る行動は一つしかない。

 

 

「行きましょう」

 

 

──父様のところへ。

 

 

ソフィアとルイスは最後に一筋の涙を流すと目元を擦り、確かな芯のこもる目でお互いを見つめ合い──同時に頷いた。

 

 

2人は真実を求めて、家族を求め立ち上がり、強く手を繋ぎその場から駆け出した。

廊下を走り、地下への階段を駆け下り、何度も通った部屋の扉を、2人は強く開け放つ。

 

 

「「父様!」」

「…ソフィア、ルイス…他の者が居たらどうするつもりだ」

 

 

セブルスは研究室の奥にある机に向かい怪訝な顔でソフィアとルイスを見た。

2人の必死な表情を見たセブルスは、大方、今朝ルーピンが人狼であるとスリザリン生達に言った事に対する苦言だろう。

そう、思っていた。

 

ソフィアとルイスは真剣な面持ちで机の前に近づくと、ぐっと唇を噛み締め、思いを全て吐き出すように、口を開いた。

 

 

「父様、私達…知りたいの」

「僕たちの、家族のこと。…僕たちには、兄様がいた。…そうでしょう?」

 

 

2人から伝えられた思いもよらない言葉に、セブルスは息を飲み、唖然とした表情で2人を見つめる。ソフィアとルイスの瞳は、確かな確信を宿し、強くセブルスを──セブルスの触れてほしくなかった部分を貫いた。

 

 

「…何故、その事を…」

「…本当なんだ」

「まさか…ブラックか?ブラックが伝えたのか!」

「違うわ。誰も言わなかったわ!…私が気付いたの。…きっかけは、沢山あったけれど…」

「お願い、父様。僕たちに全てを教えて…僕たちは、もう何も分からないまま…知らないままで居るのは嫌なんだ!」

「……」

 

 

ソフィアとルイスの悲痛な懇願に、セブルスは苦しそうに顔を歪め、──そして、大きく息を吐いた。

セブルスは立ち上がると、不安げに瞳を揺らせるソフィアとルイスの元に近づき、目線を合わせるようにその場にしゃがみ込む。

 

 

「…全て、話そう。…私が──本来なら、初めに2人に、伝えるべき事だった…すまない、ソフィア、ルイス──」

「「父様っ!」」

 

 

セブルスのあまりに弱々しい震える声に、ソフィアとルイスは飛びつくように父の身体を抱きしめた。セブルスも2人の身体を強く抱きしめ、何度も「すまない」と呟く。

 

 

「……リュカ・スネイプ。…ソフィアとルイスの兄の名だ」

 

 

 

セブルスはその日──愛する家族に何があったのかを話した。

 

 

 

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