ソフィアとルイスは母と兄の事を聞いた後、シリウスが犯人ではなく、本当の守人はペティグリューだったのだとセブルスに伝えたが、セブルスはその妄言は二度と聞きたくないとばかりに機嫌を損ねてしまった。
「万が一。あり得ないと思うが、…ペティグリューが守人だったとしてもだ。…アリッサとリュカは奴らを信じて…死んだ。その事実は変わらない」
強い口調で言われてしまい、ぐうの音も出ず。ソフィアとルイスはそれ以上何も言わなかった。
シリウスは空の彼方に──どこかに行ってしまった、きっともう二度と会うことは無いだろう。そう2人は考える。──勿論、それは後々とんでもなく甘い見通しだったと痛感するのだが。
ソフィアとルイスは研究室を出て、ハリー達が居るだろう校庭へ向かう。思ったよりも話し込んでしまった、もう寮へ戻ってるだろうか。
「あ、リーマス先生!」
ソフィアは玄関ホールへ向かうリーマスを見つけると駆け寄り、少し心配そうに身体をじっと見た。その顔には疲労感が見えていたが、ソフィアとルイスに気がつくと少し表情を綻ばせる。──だが、それも少しで、すぐに苦々しい顔で、力なく笑った。
「ソフィア、ルイス…昨日は──」
「リーマス先生、怪我は?」
「大丈夫だった?僕、心配してて…」
「…私は大丈夫。…ごめん。薬を飲み忘れないと…入学前に約束したにもかかわらず…君達を危険な目に──それに、私があの場で人狼にさえならなければ…ペティグリューを逃すことは…」
その後悔してもしきれないと言う言葉に、ソフィアとルイスは何も言えなかった。
──その通りだと思っていたからだ。だが本人が1番苦しく思い、それを悔いている。…なら、あまり──辛く、責める事は出来ない。
「本当よね!今度からはしっかり飲んでね?リーマス
だが、小言を言わないわけではない。「先生」の部分を強調し、軽口のように──少しだけなら許されるだろう。ソフィアはそう思い怒ったようにわざと頬を膨らませたが、リーマスは悲しそうな目で「…本当に、ごめん」と苦しげに吐き出した。
ソフィアは慌ててそんな責めるつもりは、と言おうとしたが、ルイスにより脇腹を軽く小突かれてしまう。
「ソフィア、何その嫌味…」
じとりとした怪訝な目で見られたソフィアは「な、なによ」と狼狽し、ルイスの細められた目を見る。
「…ソフィア、もしかして知らないの?」
「え?…何が?」
「リーマス先生は、もう先生じゃないよ。と──スネイプ先生が、人狼だってバラしちゃったんだ。だからお辞めになるって…もう出るの?」
「ええっ!そうなの!?そんな、何で!?」
ソフィアは大声で驚きの声を上げると、リーマスのローブを掴み「いなくなるなんて嫌よ!最高の先生なのに!」と必死に訴える。
その様子を見て、ただの皮肉ではなく本当に知らなかったのだとわかったリーマスは少しだけ表情を緩めたが、ゆっくりと首を振った。
「私が決めた事なんだ。…一度薬を飲み忘れたら、辞めると」
「そんな…」
「…そうだ。ルイス。ちゃんと忍びの地図は要望通り、ちょっと細工したよ」
悲しげなソフィアの視線から逃れるようにリーマスはルイスを見ると、口先だけで微笑んだ。
「本当?ありがとう!…ねぇリーマス、夏休みに遊びに行ってもいい?」
「君たちの保護者が許可したらね」
「うーん。それは無理かなぁ…」
苦笑するルイスの頭に、リーマスはそっと手を伸ばし──少し躊躇したが、優しく撫で、続いてソフィアの肩を優しく叩いた。
「ソフィア、ルイス。私は君たちの先生になれて嬉しかったよ。ありがとう」
「…ありがとう、
「また会いましょう!ね?
「…そうだね、またいつか」
ソフィアとルイスはもうリーマスの事を先生だとは呼ばなかった。
リーマスは少し目を見開いたが、どこか嬉しそうに笑うと無言で頷き、2人から離れて1人、ホグワーツを去った。
ソフィアとルイスは扉が閉まり、リーマスが見えなくなるまで見送っていた。
「さっきの、地図の細工って何なの?」
ソフィアはふと思い出し、廊下を進みながら首を傾げる。
ルイスは辺りをちらりと見て誰もいないことを確認した後、小声で囁いた。
「僕らの名前の事だよ。プリンスって表示されるように細工してもらったんだ」
「ああ…そういえば、色々あってその問題をすっかり忘れてたわ!」
そういえば、そんな事で頭を悩ませていた事もあったと、ソフィアは少し遠い目をして考える。
今年は──いや、今年も色々な事があった。去年まではハリーを取り巻くトラブルに巻き込まれ…自分から首を突っ込んで行ったが、今年は家族の深い問題に立ち向かった。
あまり、解決はしていない。むしろ、様々な事実を知り、悩み事の種は増えたと言えるだろう。
母様はヴォルデモートにより殺された。
自分達にはもう1人家族が居た。
そして、ハリーと自分達はいとこである。
「…私たち、平穏な学生生活を送れる事ってあるのかしら」
「…去年も思ったけど。…なんだか無理そうだよね」
2人は顔を見合わせ、苦笑した。
ーーー
残りの数週間は平穏だったと言えるだろう。
ソフィアとルイスはハリー達と共に一緒のコンパートメントの中で、遠くなっていくホグワーツ城を見ていた。
「私、今朝、朝食の前にマクゴガナル先生にお目にかかったの。マグル学をやめることにしたわ」
「本当に、やめちゃったのね…でも、いいと思うわ」
あらかじめその相談をハーマイオニーから聞いていたソフィアは、少し残念そうにしたがきっとハーマイオニーにはそれが良いのだろう──かなり追い詰められていたし──と同意する様に頷く。
ロンとハリーは驚いて顔を見合わせ目を瞬かせた。勉強が大好きなハーマイオニーが、マグル学をやめるなんて。それに、マグル学の成績はかなり良かった筈だ。
「でも、君、100点満点の試験に320点でパスしたじゃないか!」
「そうよ、でも、また来年今年みたいになるのは耐えられない。あの逆転時計…あれ、私には無理だったの。おかしくなりそうで…だからやめたの。マグル学と占い学を落とせば、来年また普通の時間割になるもの」
「…ソフィアは、来年も同じ時間割なの?」
どこかさっぱりとした表情のハーマイオニーを見たハリーは心配そうにソフィアを見る。ソフィアはハーマイオニーほど追い詰められて居なかったが、それでもつらそうにしている事もあった。
ソフィアは「うーん」と悩みながら「…占い学だけやめようかしら」と呟いた。
その言葉を聞いたハーマイオニーは手を叩き喜び、その方が良いわよ!と強く勧める。
占い学はこの一年であまり重要なものを学べなかった気がする。試験の時に水晶の中に見た光景がソフィアの脳裏に蘇ったが、きっとあれは偶然だろう。スキャバーズの事を考えていたからネズミが見えただけだ、髑髏と蛇に見えたのは、きっと気のせいだ。──そう自分に言い聞かせた。
「そっか。…来年…2ヶ月も先かぁ…」
「ハリー、また私たち遊びに行くわ!」
「うん、あの公園に自転車はまだあるかなぁ?」
寂しそうに窓の外を見るハリーを慰めれば、ハリーは少しだけ嬉しそうに笑った。
「あ、…ソフィアとルイスの家に泊まれないかな?住みたいわけじゃない…けど。ほら、いとこだし」
なんとかしてダーズリー家にいる時間を減らしたいハリーは期待を込めてソフィアとルイスを見たが、2人は申し訳なさそうに眉を下げた。
「んー…保護者に聞いてみるわ」
「でも、期待はしないで。成人するまではダメだって…昔、言われたから」
「そっか…うん、でも…聞いてみて?」
ハリーは心から残念に思った。僅か望みをかけて何度も懇願したが、ソフィアとルイスは困った様にぎこちなく微笑む。──間違いなく、ハリーの願いは聞き届かれないだろう。
「ハリー、休暇中僕の家に来て泊まってよ!今年の夏はクィディッチのワールド・カップだぜ!どうだい?ハリー?泊まりにおいでよ!一緒に見に行こう!パパ、役所勤めだからたいてい切符が手に入るんだ!」
「うん…ダーズリー家は喜んで僕を追い出すよ。とくにマージおばさんの事があった後だし…」
ハリーはロンの言葉に元気づけられ、ソフィアとルイスは顔を見合わせて「良かった」と2人にだけ聞こえる声で呟いた。
「んー…私…ダーズリー家に行ってみたいのよね」
「ええっ!…や、やめといた方がいい。嫌な気持ちになるだけだよ」
ソフィアの小さな呟きに、ハリーはそんなとんでもない事を願うなんて有り得ないとばかりにぶんぶんと首を振る。魔法が大嫌いで、何の刺激も変哲もない普通な事をなによりも美徳とする彼らは、間違いなくソフィアを傷つけるだろう。
「でも…ハリーのおばさんは…えーと、ペチュニアさんだっけ?…私の母様の、お姉さんでもあるんでしょう?」
「…あ、そういえば、そうだね」
「母様の昔の話を聞いてみたいわ」
「難しいと思うよ。ペチュニアおばさんは、僕の母さんの事も嫌ってたし…魔法が大嫌いだし…」
「そう…残念ね。子どもの頃の母様の写真とか、見てみたかったんだけど…」
ソフィアはため息をつき、残念だと肩をすくめる。
ハリーは少し考え、自分でも何故そう言ったのかわからなかったが「じゃあ、僕がソフィアとルイスのお母さんの事を聞いてみるよ」とぽろりと口にした。
そんな事聞けば間違いなく数日は食事抜きになり部屋に軟禁されるだろう。言った後で後悔したが、ソフィアがぱっと嬉しそうに笑顔を輝かせたのを見て、引けなくなってしまった。
「本当!?ありがとう!嬉しいわ!」
「う、うん。でも、期待しないでね?」
「ええ、わかってるわ!」
「…ハリー、無理しないで。きっと魔法に関わる事は禁句なんでしょ?」
「うーん…頑張るよ」
ルイスはすぐにハリーの引き攣った顔を見て、優しく伝える。ソフィアもすぐに嬉しそうな顔を消し、申し訳なさそうにハリーを見た。
そうだ、ハリーは両親のことも知らされていなかった。それ程隠され、魔法に関する事全て秘匿されていた。きっとペチュニアさんは、妹達が魔女だと言う事がとてつもなく、嫌だったのだろう。
「ハリー、…私…ごめんなさい。忘れてね」
「…ううん、大丈夫。…僕も、母さんの子どもの頃の写真…ちょっと見てみたいし、探してみるよ」
「…本当?…ありがとう、ハリー」
ようやくソフィアがいつものような笑顔を取り戻したのを見て、ハリーは嬉しそうに頬を緩めた。ソフィアが悲しむのは見たくないし、なんだって…喜ぶのならなんだってしてあげたい。
ただ、ハーマイオニーの言葉を忘れたわけではなかった。「いとこであり、異父兄弟」その言葉はハリーの心に突き刺さっていたが、今は──深く考えない事にした。ソフィアの気持ちはわからないし、将来のことなんて…それこそ、不透明だ。問題が出てきた時に、考えればいい。
その後ソフィア達はいつもの車内販売員から沢山の菓子を買い込んだ。もちろんチョコレートは誰一人として選ばなかった──もう一年はチョコレートを見たくない。ソフィア達は同じ事を考えていた。
コンパートメントの座席の上に沢山の菓子の包みが広がり、5人はいろいろな事を話していた。話題はもっぱらハリー、ロン、ソフィアによるクィディッチのワールド・カップの件だったが。
「あ。ハリー。窓の外に何か飛んでるよ」
ふとルイスが窓際にいるハリーの隣を指差した。全員がその指差す方を見て、窓の外に何か灰色のものがぴょこぴょこ飛んでいるのを目撃した。
それは小さなフクロウだった。小さな体には大きすぎる手紙を嘴に咥え、懸命に羽をばたつかせ必死に汽車に食らいついている。ふらふらと危なげな様子は見ているこっちがひやりとしてしまう程だ。
ハリーは急いで窓を開け、腕を伸ばしてフクロウを捕まえた。
疲れたのかくったりとしていたフクロウは、ハリーに手紙を渡すと途端に元気になり嬉しそうにコンパートメント内を飛び回る。
任務を果たして嬉しく、誇らしいのだろう。天井ぎりぎりをくるくると旋回するフクロウを見て、ソフィアは楽しげに笑った。
「手紙?……シリウスからだ!」
「えーっ!?」
「読んで、ハリー!」
ハリーの驚きと興奮に満ちた声に、ソフィア達も目を丸くしてたちまち興奮し早く手紙の内容が知りたいと目を輝かせる。
ハリーは食い入る様に手紙を見つめ、声に出して読んだ。
その手紙には、シリウスの無事を知らせる事と、そしてやはり──あのファイアボルトを贈ったのは自分だと書かれていた。
「ほら!ね!?言った通りでしょ?」
「ああ、だけど、呪いなんかなかったじゃないか──いてっ!」
ハーマイオニーの勝ち誇ったような言葉に少しロンは意地悪く呟く。だがその呟きも、フクロウの甘噛みというには強すぎる噛みつきにより途中で止まった。
「来年の君のホグワーツでの生活がより楽しくなるよう、あるものを同封した──なんだろう…」
ハリーは封筒の中をよく探した。もう一枚羊皮紙が入っている事に気付きすぐにそれを広げさっと目を通す。
途端に、バタービールを一気に飲み干したような、ソフィアに手を繋がれ微笑まれたかのような、そんな温かく満たされた気持ちになった。
「ダンブルドアなら、これで充分だ!」
「ホグズミード行きの許可証!良かったわね、ハリー!」
「うん、本当に嬉しい!…ちょっと待って、追伸がある…──よかったら、君の友人のロンがこのフクロウを飼ってくれ。ネズミがいなくなったのは、俺のせいだし──だって!」
「こいつを飼うって?」
ロンは目を丸くして小さなフクロウをしげしげと見た。
少し何かに迷う様に眉をひそめたロンは、フクロウを手に掴みクルックシャンクスの前にずいと突き出す。
「どう思う?間違いなくフクロウなの?」
クルックシャンクスはふんふんとフクロウの匂いを嗅いでいたが、満足げに目を細めゴロゴロと喉を鳴らした。どうやらこれは本当にフクロウらしい。──それがわかったロンはにっこりと嬉しそうに笑い、ふわふわとしたフクロウを指の腹で撫でた。
「僕にはそれで十分な答えさ。こいつは僕が飼う」
ハリーは駅に着くまで何度もシリウスからの手紙を読み返した。
ソフィア達もハリーの気持ちを考え、何も言わずにそれを見守る。
汽車はついに速度を落とし、キングズ・クロス駅に到着した。
ソフィア達はカートに乗せた荷物を押し運びながら9と4分の3番線の柵から外の世界へ飛び出す。
ソフィアとルイスはいつものようにハリー達と別れ、遠くからこちらにゆっくりとした歩みで近づいてくるジャックの元に駆け寄った。
「おかえり、ソフィア、ルイス」
「ただいま!」
「いつも迎えにきてくれてありがとう、ジャック!」
「気にすんな。…聞いたよ。…知ったってな」
ジャックはソフィアとルイスを寂しさが含む真剣な目で見つめる。
ソフィアとルイスは顔を見合わせ──だが、優しく、朗らかに微笑んだ。
「うん、母様と兄様の事を──大切な家族の事を知ったの!」
「ジャックも兄様の事知ってるんだよね?色々教えてね!今度は隠し事は無しだからね!」
「…ソフィア…ルイス…」
2人が知ったのは辛い過去だ。
だが、それでも家族の事を知れて嬉しいのだと微笑む2人を見て、ジャックは一度目を伏せ込み上げるものを誤魔化した。
──アリッサ、2人はしっかり育ってるぜ?…アリッサによく似て、優しい子ども達だ。
「ああ!勿論だ!…さあ、家主が帰ってくる前にあんな写真やこんな写真を見せてやろう!」
「ええ!?楽しみだわ!」
「ジャック、母様ってかなり若く兄様を産んだよね?…父様って意外と…手が早かったんだね」
「あー…」
ルイスは率直に、父には言えなかった感想をジャックに伝える。それを聞いたジャックは苦笑いをこぼし、ソフィアは直接的な言葉に「ルイス!」と頬を赤らめた。
「──いや、手を出したのはアリッサだ。アリッサは欲しいものを手に入れるための手段を選ばない強かな奴だったからなぁ──あいつには内緒にしろよ?静かにキレるぞ」
「か、母様…」
「母様って…どんな人だったの?わたし優しくて、とても優秀だったって聞いたから…」
ルイスとソフィアは、アリッサがセブルスを手に入れるために何をしたのか──勿論考え理解したが頬を赤らめただけで何も言わなかった。いや、言えない。流石に両親の学生時代の性事情をあまり、口には出したくない。
「アリッサはなぁ…たしかに優しくて、賢い人だったな。だが、まぁ…スリザリンらしく手段を選ばない狡猾さと思い切りの良さもあった。さっぱりとした性格で、なんでもはっきり嫌なものは嫌だと言っていたな。──ま、その分…マグル生まれだ、疎まれることも多かったがちっとも気にしてなかった…見ていて気持ちの良い女だったよ」
「へぇ…なんだか、イメージとちょっと違うなぁ」
「俺に聞くより、アイツに聞いてやれ…今なら話してくれるさ」
「ええ、そうするわ!」
人気のない路地まで進んだソフィアとルイスはジャックの腕に掴まり、一年振りの家へ戻った。
ようやくアズカバン編終了しました!160話…長かったですらいつもだらだらまとめられず…読みにくい文章になってしまい、すみません。
次からは炎のゴブレットです!
これはまだ短くできるかも知れない、と思っています。ゴブレットはハリーの物語ですしね。
しかし、色々と書きたいところはあるので、丁寧に書いていきたいと思います。
いつも感想、評価、閲覧ありがとうございます!励みになります。
終わりにアンケートがあります。よければご投票下さい。三校揃うまでを書き始めるまで投票可能にし、その時1番多い人がパートナーになります。
そして、恋愛フラグが立ちます。フラグなだけで、恋人になるのかはまだ未定です。よろしくお願いします!
ルイスの場合は、家族愛で踊ります。
追加 フレッドではなくジョージのミスです…ごめんなさいジョージ…!
ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?
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ドラコ
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ハリー
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フレッド
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ルイス