【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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163 何度目かの隠れ穴!

ソフィアは大きな鞄に2日分のお泊まりセットを詰め、ついでにお菓子や色々な悪戯グッズを忍ばせた後、パタンと鞄を閉じた。

 

 

「よし、これで忘れ物は無いわね」

「きゅーん」

「だーめ、ティティ。あなたは連れて行けないわ」

 

 

ティティ、と呼ぶソフィアの声は咎めつつも柔らかな甘さを含んでいた。

ソフィアは鞄の上に乗りカリカリと爪で引っ掻くティティを抱き上げ顎の下を指で撫でる。真っ白なフェネックの──本当は、ただのフェネックでは無いのだが──ティティは気持ち良さそうに目を細め「きゅーん」と甘えたようにソフィアの手に頭を擦り付ける。

飼った時は掌に収まるほど小さかったティティも、もう小型犬程度の大きさにはなっただろう。長くふさふさとした毛並の尾は、いつのまにか根本から分かれて四本になっていたが、ソフィアは全く気にしなかった。

むしろ、ふわふわな四本の尻尾それぞれがソフィアの体をくすぐるように撫でる、その愛情表現がたまらなく好きだった。

 

 

「すぐ戻ってくるからね?」

 

 

ティティはぺたりと耳を垂れさせ、ソフィアの腕の中から抜け出すと軽やかな足取りでソフィアの腕を通り肩まで駆け上がる。そして、襟巻きのようにソフィアの首元に巻きつくと、白い煙を上げ──それが晴れる頃には、ソフィアの首には先程までなかった真っ白なつけ襟がついていた。

 

 

「こーら。変化しても、ダメよ?」

 

 

ソフィアがティティに変化の能力があると気付いたのは夏休みが始まってすぐのことだった。

 

 

 

 

いつものようにリビングで家族の団欒の時間を過ごしながら、思い思いの場所で読書をしていると、ティティがとてとてと小さな足音を響かせソフィアの脚の上に丸まった。

 

 

「ティティも大きくなったわねぇ…ふかふかのクッションみたいだわ。うーん…こんな毛並のクッション、欲しいわ…」

 

 

ソフィアは読んでいた本を閉じで足の上の温かな重みを撫でる。

するとティティは首を上げ少し首を傾げるようにすると「きゅ、」と小さく鳴き、ぼふん、と微かな音を立てて──真っ白なクッションに変化した。

 

それを見たソフィアはぴしりと固まったが、ルイスは怪訝な顔でソフィアとクッションになったティティを見てため息をこぼす。

 

 

「ソフィア、流石にティティをクッションに変化させるなんて…」

 

 

変身術の得意なソフィアが、きっと変身させたのだろう。しかし、どれだけ変身術が得意で自信があるとはいえ、自分のペットに変身魔法をかけるなんて──万が一戻らなくなったらどうするつもりなんだ。

ルイスも、少し離れたところで見ていたセブルスもそう思ったが、ソフィアは驚愕で目を見開き、ぽかんと口を開けたままゆっくりと首を左右に振った。

 

 

「私──私、何もしてないわ!か、勝手にティティが…変身したの!」

「……えぇ?」

 

 

ルイスは手を伸ばし真っ白なクッションを撫でる。それは温度もなく、ふわふわとしたとても気持ちの良いどこからどう見てもクッションだった。これ程見事な変身術を、ただのフェネックが使えるわけがない。

 

困惑するソフィアを見たセブルスは、本当にソフィアの魔法では無いと知ると立ち上がり、ソフィアの膝の上から クッション(ティティ)を掴み入念に調べた。

 

 

「……ティティは、妖狐なのかもしれんな」

「妖狐?」

「変化の得意な種族だ。英国原産の魔法生物では無い」

 

 

セブルスはソフィアにクッションを渡す。

もし、ティティがこのままの姿だったらどうしよう、と泣きそうに顔を歪めるソフィアの隣に座ると安心させるように優しく伝えた。

 

 

「妖狐ならば、魔力と知性を持つ。…ソフィアのクッションが欲しい、その言葉を聞いて叶えたのだろう。…戻るように言えばいい」

「…ティティ、元に戻って!」

 

 

ソフィアが懇願するように叫んだ途端、クッションはぶるりと震え白煙を上げ元のティティに戻った。

 

 

「ティティ!」

「きゅ?」

 

 

ソフィアはほっと胸を撫で下ろしぎゅっとティティを抱きしめたが、当の本人はきょとんとした目でソフィアを見つめ、嬉しそうに尻尾をぱたぱたと揺らした。

 

 

「すごいね、本当に妖狐なんだ…」

「驚いたけれど、…凄いわティティ!さすが私のペットね!」

 

 

変身術が得意なソフィアと、変化術が得意なティティ。偶然ペットショップで出会い家族になったのも、──必然なのかもしれない。そうソフィアはティティを抱きしめながら思った。

 

 

「父様、他にも変化出来るのかしら?」

「そうだな…おそらく、…訓練すれば可能だろう」

「まぁ!…ティティ?カップに変化してみて?」

 

ティティを持ち上げ、ソフィアが試しにそう言ってみれば、ティティは再び──ぽん、と軽い音と白煙を吐いて真っ白のティーカップに変化した。

ソフィアは目を輝かせ興奮したように「凄い!凄いわ!」と何度もティティを褒めた。

 

 

その後何度かさまざまな物に変化したティティだったが、どうやらどんな物に変化しても体色と同じく真っ白な物にしかならなかった。

 

 

 

 

 

「もう…ダメよ、ティティ。戻りなさい」

「きゅー…」

 

 

ぽん、と音を立ててつけ襟から元の姿に戻ったティティは悲しそうに耳と尻尾をだらりと垂らした。

その姿を見ると少し心が痛むが、ソフィアは考えを変えることは無い。ロンの家である隠れ穴は兎も角、クィディッチワールド・カップの広い場所で離れ離れになってしまえば──きっと再び会うことは叶わないだろう。

 

 

「ソフィアー?まだ準備してるの?もうそろそろ行かないと遅れるよ」

「はーい!もう行くわ!──ほら、父様とお留守番しててね?」

「…きゅーん…」

 

 

居間からルイスの呼び声が聞こえ、ソフィアはティティを床にそっと放ち、カバンを手に持って立ち上がった。

ティティはようやく諦めたように項垂れたままソフィアの足下に擦り寄り居間へ向かうソフィアの後ろを追いかけた。

 

居間へ行けばルイスは既に支度を終えて待っている所だった。

ルイスはロンの家へ行くわけでは無いが、ちょうど同じ時刻にセブルスに姿現しでマルフォイ邸まで行くことになっている。

その前に、ソフィアをセブルスと2人で見送る事にしたのだ。

 

 

「父様、ティティをよろしくね?」

「ああ──楽しんできなさい」

 

 

ソフィアはセブルスに抱きつき、セブルスも身体を屈め優しく抱き返す。

いつものようにソフィアはセブルスの頬にキスを落とし、セブルスは目を優しげに細めた。

 

 

「ルイス、試合会場で会えたらいいわね!」

 

 

セブルスから離れるとソフィアはルイスに抱きつき、同じように頬にキスをする。ルイスもまた頬にキスを返し、ぎゅっと優しくソフィアを抱きしめた。

 

 

「そうだね。…ま、それが良いことなのか、僕にはわからないけど」

「…ふふっ確かに、そうかもね」

 

 

ルイスはマルフォイ家と行く。

ソフィアはウィーズリー家と行く。

もし、万が一出逢ってしまえば2年前のようにバチバチと火花を散らせ、また喧嘩が勃発するかもしれない。今回はそれを止める ジャック(大人)は居ない。

 

ソフィアはフルーパウダーを一掴みすると暖炉の中に投げ入れる。暖炉の炎が緑色に揺らめき燃え上がった。

カバンを掴み、ソフィアは顔一面にぱっと明るい笑顔を広げ大きな声で言った。

 

 

「じゃあ行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

「くれぐれも、迷惑をかけないように」

「はーい!──隠れ穴!」

 

 

ソフィアは行き先を告げながら緑の炎の中に飛び込んだ。

手を振るルイスの姿を最後に、ぱっと視界から見慣れた居間が消え身体が急旋回し、ぐんぐんスピードが上がる。

ソフィアは目を閉じ身体を縮こまらせ、スピードが落ちてきたときに咄嗟にカバンを自分の前に突き出した。

 

 

止まる直前カバンを前に出したおかげか、ソフィアは今度は尻餅をつくことなくウィーズリー家のキッチンの暖炉にたどり着くと先にカバンを外に放り投げ、這い出た。

 

 

「ソフィア!いらっしゃい、久しぶりね!」

「お久しぶりですモリーさん、お招きくださりありがとうございます!」

 

 

エプロンで手を拭きながらモリーはにっこりと笑いソフィアを助け起こし、抱きしめ歓迎を身体全体で表した。

 

 

「自分の家だと思って寛いで頂戴ね?少し前にハーマイオニーも着いたところよ。今はジニーと一緒にいるわ。──ジニー!ハーマイオニー!ソフィアが来たわよ!」

 

 

モリーが居間にいるハーマイオニーとジニーに呼びかければすぐにばたばたと走る足音が聞こえ、扉から2人が顔を輝かせながら飛び込んできた。

 

 

「「ソフィア!」」

「ハーマイオニー!ジニー!久しぶりね、会いたかったわ!」

 

 

ソフィアは2人まとめてぎゅっと抱きしめ嬉しそうに顔を綻ばせる。

ハーマイオニーとは去年も殆ど共に過ごしたが、学年が違うジニーとは談話室か大広間でしか会う事がなく──それに、去年は授業や宿題に追われていて、正直ゆっくり話す余裕があまりなかった。

 

 

「今日一日と、試合の日だけ泊まれる事になったの。クィディッチワールド・カップが終わった次の日にはすぐに帰らないといけないんだけどね」

「残念だわ…ソフィアもロンのお家からホグワーツに行けばいいのに…」

「私の()()()、過保護なのよ」

 

 

ソフィアの言葉に、このまま1週間少し隠れ穴で過ごすハーマイオニーは残念そうに言ったが、ソフィアはくすくすと楽しげに笑って答えた。

ソフィアの言う保護者が誰を指しているのか知っているハーマイオニーは、あのセブルス・スネイプが過保護なところなど想像も出来ない、と内心で苦く思う。

 

 

ソフィアはハーマイオニーとジニーと楽しげに会話しながらキッチンの奥にある洗い込まれた白木のテーブルに、ふと見知らぬ2人がいる事に気付いた。こちらを見て微笑ましそうな目を向ける2人はジニーとよく似た赤毛をしている。──間違い無い、ウィーズリー家の長男と次男だろう。

ソフィアはすぐに2人のそばに寄ると人懐っこく明るい笑みを浮かべた。

 

 

「はじめまして、ソフィア・プリンスです!あなたは?…ビル?チャーリー?」

「チャーリーだよ。よろしくソフィア」

 

 

チャーリーはニコリと笑い大きな手を差し出した。ロンやパーシーと比べてやや背が低いが、彼らの中で最も体格がしっかりとしている。シャツから伸びる腕は太くがっしりとしていて、所々傷跡や火傷の跡が残っていた。

 

 

「チャーリー!ドラゴンの仕事をしているのよね?私、ドラゴンとか、魔法生物が大好きなの!」

「本当かい?ドラゴンは──素晴らしい、うん」

「ええ、ほら…2年前にちょっと…。あの時に初めて本物を見たの、凄く美しくて、かっこよくて…また見てみたいわ!」

 

 

ハグリッドがこっそりと飼っていたドラゴンの幼体の事を思い出しうっとりと目を細めるソフィアを見て、チャーリーはドラゴンの良さがわかる人に会えた嬉しさから微笑んだまま「また、きっと会えるさ…割と遠く無いうちに」と呟いた。

ソフィアがその言葉の意味を聞く前にビルが立ち上がりソフィアに手を伸ばした。

 

 

「俺はビル。よく来たね」

「はじめまして、ソフィアよ!…あっ!ビルって、グリンゴッツで呪い破りをしているのよね?私、呪い破りに興味があって…ずっと話を聞きたいと思っていたの!」

 

 

ソフィアはビルの手を握り、ぱっと明るく笑う。

怪我が付き物の呪い破りに興味がある女子は少ないため──いや、ドラゴンに興味がある女子も少ないだろう──ビルは「へぇ!」と驚きながらも自分の仕事に興味がもたれる事は嬉しく、人の良さそうな笑みを浮かべる。

 

 

「もし、本当に呪い破りになりたい日が来たら…何でも聞いて。力になるよ」

「ありがとう!将来何になるか…うーん、悩むわ…。呪い破りも素敵だし、ドラゴンの研究者も魅力的よね…魔法生物全体の研究にも興味があるの。変身術も好きだから…ちょっと教師にもなりたいし…」

「夢が沢山あるのは良い事だ。…いずれにしろ、勉強が必要だね、応援してるよ」

「ええ、ありがとう!」

 

 

ソフィアはまだ漠然とした未来しか描いていない。だが、どの夢もかなりの勉強と成績が必要な職業ばかりだ。

 

 

「ソフィアはすごく賢いのよ!」

 

 

ジニーはソフィアの後ろから顔を出すと、まるで自分の事のように誇らしげにビルとチャーリーに言う。ソフィアは少し驚きながらも照れたように笑い「大袈裟よ!それに、ハーマイオニーには負けるわ!」と悪戯っぽくハーマイオニーをチラリと見た。

 

 

「ソフィアが苦手なのは魔法薬学と薬草学の実技試験くらいね?」

「うーん…今年は、ちょっと頑張ろうかしら」

「ええ、せめて鍋を溶かさないくらいにね?」

 

 

くすくすとハーマイオニーが笑いながら言えば、ソフィアは肩をすくめて「それ、先生にも言われたわ」と呟いた。

 

 

立ち話も何だし、座るかい?とチャーリーに聞かれたソフィア達はそのまま白木のテーブルにつき、モリーが運んできた紅茶を飲みながらビルとチャーリーの仕事の話を熱心に聞いた。

ジニーはあまり呪い破りにも、ドラゴンの研究にも興味がなく少々退屈そうにしていたが、ハーマイオニーとソフィアの目がキラキラと輝き興奮から頬を紅潮させているのを見ると、自室に行きましょうとは言い出せなかった。

 

 

暫くすると話し声と共にばたばたとキッチンに向かう足音が聞こえ、ソフィア達は入り口の方を振り返る。

現れたのは家主であるアーサーと、双子のフレッドとジョージ、それにロンだった。

 

 

「あれ、ソフィア!来てたのかい?」

「フレッド、久しぶりね!」

「久しぶり──なんだ、言ってくれたらよかったのに!」

「ジョージも、久しぶり!」

 

 

ソフィアは椅子から立ち上がるとフレッドとジョージの元に駆け寄りぱっと抱き着いた。フレッドはソフィアの頭を悪戯っぽく笑いながらぐりぐりと撫で、ジョージは優しくその背中をぽんぽんと叩いた。

 

 

「ルイス、まじで来なかったんだな」

「そうなの。先約があって…」

「聞いたぜ?マルフォイと行くんだろ?物好きだよなぁ」

「ルイスはドラコと仲良しだから…」

 

 

苦虫を噛み潰したような嫌そうな顔でやれやれと首を振るフレッドとジョージを見てソフィアは苦笑する。

敵対する寮のスリザリン生であり、さらにクィディッチでも姑息で卑怯な手ばかり使うドラコの印象は、やはりどこで聞いても悪い。本人の行いのせいだとは分かっていても、なんとなくソフィアは複雑だった。

 

 

「ソフィア、よく来たね!ゆっくりしていきなさい」

「ありがとうございます、アーサーさん」

「今からハリーを迎えに行くところなんだ。──ああ、少し遅れてしまったな、まぁ、うむ。大丈夫だろう」

 

 

アーサーは忙しなくソフィアに挨拶をすると腕時計をチラリと見てすぐにキッチンの奥にある暖炉へ向かった。

その後をロンと──何か企んでいるように、悪戯っぽく笑うフレッドとジョージが続く。

 

ソフィアは一瞬。

私も行きたい、そう言いかけたが口を閉ざした。

 

ハリーの今住んでいるところには、母親の姉が居る。少し会って話したい気持ちがあったが、ロンはともかく、フレッドとジョージの前で「私の母様は、あなたの妹のアリッサです」と言うわけにはいかない。

 

ソフィアとルイスはハリーといとこである。その事を知った日、ハリー達に誰にも言わないで欲しいと伝えていた。

ハリー達は困惑し、疑問に思っていたようだが、ソフィアとルイスがあまりにも真剣に、必死に懇願したため頷くしかなかったのだった。

 

 

赤毛の家族達が消えゆく暖炉を見て、ソフィアはきっといつか会える。──そう、信じていた。

 

 

 

 





追加 フレッドではなくジョージのミスです…ごめんなさいジョージ…!

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
  • ハリー
  • フレッド
  • ルイス
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