【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

166 / 467
166 さあ行こう!

 

 

翌朝モリーに叩き起こされたソフィアとハーマイオニーとジニーは眠そうに目を擦り何度も大きな欠伸をこぼす。緩慢な動作で服を着替えるが、袖に腕を通すことすら、億劫だった。

 

 

「おはよう…ハーマイオニー…ジニー」

「ああ…ふぁ…お、はよう…」

「おはよう…眠いわね…」

 

 

いつもは元気いっぱいなソフィアも、流石に4時間ほどしか寝ていない為、溌剌とした雰囲気は損なわれ閉じそうなほど目を細め、かくりと何度も船を漕ぎながら鞄から服を引っ張り出した。

 

ソフィアは真っ白のシャツに黒いワイドパンツを履き、上から丈の長く薄い桃色のカーディガンを羽織る。

ハーマイオニーからクリスマスプレゼントで貰ったバレッタを使う為に左右から髪を結い上げハーフアップにすると、落ちないようにしっかりと止める。頭を左右に振りずれてこない事を確認した後、ソフィアは杖を振り大きな姿見を出した。

 

 

「…眠そうだわ」

 

 

姿見に映るソフィアは眠そうにとろんとした目をしていたが、身なりだけはきちんと整えられ出掛ける支度はバッチリと決まっていた。

ハーマイオニーとジニーも服を着替え終わり、ソフィアが出した姿見の前で服装のチェックを済ます。

 

 

「下に──ふぁあ…──降りましょう。また、ママの雷が落ちるわ…」

 

 

ジニーは欠伸を噛み殺し、目に浮かんだ涙を指で拭いながらハーマイオニーとソフィアに声を掛ける。

ソフィアは姿見を消した後、2人の後に続いてキッチンへ降りていった。

 

既にハリー達は起きて白木の机に眠そうに頭を下げながら座っていた。顔色がどことなく悪いのは、間違いなく寝不足だからだろう。きっと私も同じ顔色ね──ソフィアはそうぼんやりと鈍い思考で考えながらハリーの隣に座る。

 

 

「おはよう」

「おはよう、ソフィア」

 

 

口々にいつもより覇気のない朝の挨拶を交わす。

ソフィアは目の前にある空のボウルにオートミールを入れ、カップに熱い紅茶を注ぎ眠気覚ましの為にミルクも砂糖もいれずにちびちびと飲んだ。

 

 

「どうしてこんなに早起きしなきゃいけないの?」

 

 

ジニーは目を擦りながらアーサーの隣に座り、どこか恨めしげにアーサーを見上げる。

 

 

「結構歩かなくちゃいけないんだ」

「歩く?…え?僕たちワールドカップ会場まで歩いていくんですか?」

 

 

アーサーの言葉に、きっと箒を使ったり、魔法バスを使ったり──とにかく、何か想像もつかない方法で移動するのだと思っていたハリーはその原始的な移動手段に驚いてアーサーを見る。歩けるほど、この家の近くに会場があるのだろうか?

 

 

「いや、いや。会場は何キロも向こうだ。少し歩くだけだよ。マグルの注意をひかないようにしながら、大勢の魔法使いが集まるのは非常に難しい。私たちは普段でさえ、どうやって移動するのかについては細心の注意を払わねばならない。ましてや、クィディッチワールド・カップのような一大イベントなら尚更だ」

 

 

驚くハリーにアーサーは微笑みながら説明をする。ソフィアはオートミールを食べながら、きっとルイスとドラコは馬車か何かで優雅に行くのね──とは思ったが、アーサー達の好意でクィディッチ・ワールドカップに招待されているんだ、何も文句は言うまいと言葉を飲み込んだ。

 

ふと、ソフィアは隣にいるハリーと、自分の前にいるロンを見て、昨夜遅くまでハーマイオニーとジニーとした()()()を思い出し──少し居心地の悪そうに足を動かした。

 

 

──ハーマイオニーはロンの事が好きで、ジニーはハリーが好きなのなら。私は協力すべきなのかしら?ああ、でも変にくっつけようとしたら…不審に思われちゃうわね、…あんまり、恋愛の事は…分からないし。

 

 

ソフィアは友人達の恋を応援したかったが、力になる事は──どうやら、自分の経験値の無さでは出来なさそうだ、と無言で残っていたオートミールを一気に食べた。

 

 

その後、静かな食事は突如モリーの叫びによって壊される。

こっそりとポケットに悪戯グッズを忍ばせていたフレッドとジョージにモリーは顔を真っ赤にして怒り狂った。

隠していた物全てを没収され捨てられたフレッドとジョージは見るからに不機嫌になり、顰めっ面のまま会場に向かう支度を乱暴にはじめた。

 

ハリー達はフレッドとジョージの問題に首を突っ込むのは得策では無いだろうと考え、食事が終わるといそいそと部屋に戻り鞄に色々な物を詰め始めた。

 

 

和やかな雰囲気とは言えない中、ソフィア達は隠れ穴を出発し、まだ暗い庭を進んだ。空には白く薄い月がまだ残り、地平線の彼方はぼんやりと白み始めている。

 

 

ソフィア達は会場に向かう手段──移動キーの説明を聞きながら隣村まで向かう。

村を通過する頃には夜空が少し明るい群青色に変わり、朝が近い事がわかる。

いつもならこの澄んだ空気を楽しむソフィアだったが、凍えるような寒さに震え、自分の腕をさすりながら懸命に足を動かす。

もはやソフィア達は会話する余裕もなくストーツヘッド・ヒルを登っていた。

薄暗い中で山道を登るのは簡単な事ではなく、ソフィアは何度か野ウサギの巣穴に足を取られ、夜露を多く含んだ茂みに躓いた。ルーモスが使えたなら、箒で飛べたならきっと簡単に頂上に辿り着くことが出来ただろう。

 

ソフィアは魔法が使えないマグルの不便さを、ありありと体験したが──もう2度と体験したくない、そう思った。

 

 

少し歩くだけ、にしては長い時間──それも山道を歩いたソフィア達は息切れしながら、やっとのことで頂上まで辿り着き、平坦な地面を踏み締めた。

 

 

「ふー!やれやれ、丁度いい時間だ。あと10分ある」

「ハーマイオニー、大丈夫?」

「わ、…脇腹が…」

 

 

最後に脇腹を抑え顔を顰めながらハーマイオニーが辿り着き、はあはあと荒い呼吸をなんとか整えようと何度も深呼吸をする。

 

 

「私も…喉が、痛いわ…」

 

 

ソフィアは荒い呼吸のしすぎて痛んだ喉を抑え、ごくりと唾を飲み込む。少しは痛みが和らいだが、この冷え切った空気を吸い込むたびに喉がチクリと痛んだ。

 

 

「後は移動キーがあればいい、そんなに大きいものじゃない。──さあ、探して…」

 

 

ソフィア達は目を凝らしバラバラになって探した。

しかし目に飛び込むのは土と雑草ばかりで、移動キーらしきものは見当たらない。

探し始めてほんの2、3分も経たない内に、大きな声がしんとした空気を破った。

 

 

「ここだ、アーサー!セド、こっちだ!見つけたぞ!」

「エイモス!」

 

 

丘の頂の向こう側に、星空を背にした影が二つ立ち、一つはこちらに向かって何かを持ち手を振っていた。

 

アーサーは褐色のたっぷりとした顎髭を持つ恰幅の良い魔法使い──エイモス・ディゴリーの元へニコニコと微笑みながら駆け寄り、しっかりと握手をした。

ソフィア達はアーサーの後に続き、エイモスと、その隣に立つセドリックを見上げる。

 

ソフィアは勿論、クィディッチ選手であるセドリックのことを知っていた。ハッフルパフ寮チームのキャプテンであり、シーカーだ。確かに優しく朗らかな顔で、女子からの人気が高いのも頷ける爽やかなカッコ良さだと、昨夜の話を思い出しながらソフィアは思う。

 

 

「みんな、エイモス・ディゴリーさんだ。魔法生物規制管理部にお勤めだ。…息子のセドリックは知ってるね?」

「やあ」

 

 

セドリックは少し手をあげ、ソフィア達ににっこりと微笑み挨拶をする。

ソフィア達は同じように軽く挨拶をしたが、フレッドとジョージは去年クィディッチでハッフルパフ寮に負けたことをまだ根に持ち、顰めっ面のまま頷いただけだった。

いつもの2人ならニヤリと笑い軽口を叩く余裕を見せていただろう「次は負けない」くらいは言いそうだが、残念ながら2人の虫の居所はとても悪かった。

 

 

「アーサー、随分歩いたかい?」

「いや、まあまあだ。村のすぐ向こう側に住んでいるからね。そっちは?」

「朝の2時起きだよ、なぁセド?こいつが早く姿現しのテストを受ければいいのにと思うよ。いや…愚痴は言うまい…クィディッチ・ワールドカップだ。たとえガリオン金貨一袋やるからと言われたって、それで見逃せるものじゃない──」

 

 

まぁ、チケットは金貨一袋ほど高かったのだが、とエイモスは肩をすくめ、アーサーの後ろにいる子供たちを見た。

 

 

「全員君の子かね、アーサー?」

「まさか!赤毛の子だけだよ。この子はハーマイオニーと、ソフィア。ロンの友達だ」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは軽く頭を下げ、エイモスもにっこりと笑う。

 

 

「こっちが、ハリー。この子もロンの友達だ」

「ハリー?ハリー・ポッターかい?」

「あ──ええ」

 

 

エイモスは驚いたように目を見開きハリーの顔──稲妻型の怪我を見るために、じろじろと見る。その舐めるような視線も、ハリーは既に慣れっこになっていたが、なんとなく落ち着かない気持ちになり肩をすくめた。

 

 

「セドが、勿論君のことを話してくれたよ。去年、君と対戦した事もね。私はセドにいったね…セド、そりゃ、孫子にまで語り伝える事だ!そうだとも…お前はハリー・ポッターに勝ったんだ!」

 

 

興奮し、これほど誇らしい事はないとセドリックの背中を叩きながらハリーに意味ありげな目配せをするエイモスを見て、ハリーは何と答えていいか分からず黙り込んだ。

フレッドとジョージも顰めっ面のままエイモスとセドリックを睨み、セドリックは困ったような顔で「父さん、ハリーは箒から落ちたんだよ…そう言ったでしょう、事故だって…」と居心地の悪そうに呟いた。

 

しかしエイモスはハリーは落ちたが、セドリックは落ちなかった、それが重要なのだと何度も自分の息子を持ち上げた。

 

 

「ハリーは、飛行術であの人を倒したわけじゃないのにね」

「まぁ、呪文学なら私たちの方が──孫子まで語り伝えられるわね」

 

 

ソフィアはハーマイオニーに囁き──流石に出会って間もなく、尚且つこの後一緒に試合会場に行くだろう大人に感情のままに、苦言を言うほどソフィアは子どもではなかった。いや、きっと数年前なら何も気にせず言っていただろう。ソフィアも場の雰囲気を読むようになり、成長した──と、言えるのかもしれない。

 

 

「そろそろ時間だ」

 

 

アーサーは服の下から懐中時計を引っ張り、無理矢理話題を変えた。

 

 

「エイモス、他に誰かくるか知ってるかな?」

「いいや、この地域には他に誰も居ないと思うが、アーサーはどう思うかね?」

「私も思いつかない。…さあ、あと1分だ。…準備しないと──移動キーに触っていればいい、指の一本でもいいから」

 

 

アーサーは移動キーの事を知らないだろうハリーとハーマイオニーに説明し、前に来るようにソフィア達の背を押した。

たった一足の古びたブーツを全員が触れなければならないが、鞄やリュックが嵩張りなかなか難しくソフィアは必死に手を伸ばし、踵の下をぐっと摘むように掴んだ。

 

 

「お、オーケーよ…」

「よーし…あと3秒…2秒…1──」

 

 

アーサーが1と言う前に、ソフィアはぎゅっと目を閉じ腹に力を込めた。すぐ後に臍裏から前に引っ張られるような感覚がし、両足が地面を離れる。

ソフィアは移動キーはたまに使った事はあったが、この浮遊感があまり得意では無かった。

肩にハーマイオニーとハリーがぶつかり、ぎゅっと左右から押し付けられ──突如、両足が地面にぶつかり、ソフィアはパチリと目を開け手を前に出し、転倒しないようにバランスをとった。なんとか倒れずに済んだ、と思ったが──。

 

 

「──きゃっ!」

「あぁっ!──ご、ごめんなさい、ソフィア!」

 

 

移動キーで移動した事など無いハーマイオニーはうまく着地する事が出来ず、ソフィアの上に重なるようにして倒れ込み、巻き込まれたソフィアも結局、そのまま地面に倒れてしまった。

 

 

「5時7分。ストーツヘッド・ヒルからとうちゃーく」

 

 

どこからともなく、アナウンスの声が響いた。

 

  

 

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
  • ハリー
  • フレッド
  • ルイス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。