【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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169 スタジアムにて!

 

ソフィア達は競技場の最上階貴賓席についた。

そこは小さなボックス席で、金色に輝くゴールポストの丁度中間に位置していた。全てを見下ろせ、尚且つ近い距離で選手達を見る事が出来るとてもいい場所に、ソフィアは目を輝かせ興奮から頬を赤くしながらボックス席の前の壁に手を乗せ身を乗り出した。

 

 

「凄くいい場所だわ!」

「本当、そうよね!ねぇ、プログラム見る?」

「ええ、ありがとう!」

 

 

ハーマイオニーは3冊のプログラムをソフィア、ハリー、ロンに手渡しながら自分でも熱心にプログラムを読む。

読む前にプログラムの表紙や背表紙の中で自由奔放に飛び回るスニッチをソフィアは手で捕まえるのに必死になっていた。

 

 

「ドビー?」

 

 

他のボックス席に誰か知り合いは居ないかと席を見渡していたハリーは、つい見覚えのある細い手足と蝙蝠のような耳を見て半信半疑で呼びかける。

ぴくりと肩を震わせた小さな生き物は恐る恐る顔を上げ指を開いた。大きな茶色の瞳と、トマト程の大きさの鼻が現れ、怪訝な顔でハリーを見つめる。

 

 

「旦那様はあたしのこと、ドビーとお呼びになりましたか?」

 

 

甲高い声でその生き物はハリーに尋ねた。それはハリーが想像したドビーでは無かったが、ハウスエルフには間違いなく、ソフィアとロンとハーマイオニーはくるりと振り向きよく見ようとした。ハウスエルフは数が少なく、裕福で由緒正しい家か特別な場所にしかいない。賃金が掛かるわけでは無いが、有名な場所に仕えることをハウスエルフ達は誇りとしているのだ。

ハウスエルフという中々会う機会のない生き物にアーサーも興味を持ち振り返った。

ソフィアは何度かマルフォイ邸に行った事があるが、その時もドビーを見た事は無かった。ハウスエルフが居れば家事をしなくて済むと思った事はあるが、きっと自分達の家には来ないだろう。

 

 

「ごめんね、僕の知っている人じゃないかと思って」

「でも、旦那様、あたしもドビーをご存知です!あたしはウィンキーでございます。旦那様──貴方様は、紛れも無くハリー・ポッター様!」

「うん、そうだよ」

「ドビーが、貴方様の事をいつもお噂しております!」

 

 

ハリーの頷きに、ウィンキーは尊敬で打ち震えながら、ほんの少し両手を下にずらす。ハリーを見ながらも、ちらちらとその先にあるグラウンドを見てウィンキーは体を細かく震えさせながら息を呑んだ。

 

ハリーはドビーが元気に過ごしているのか知りたかった。ハリーにとってドビーは友人で何度か──意図しない形で──助けられた。だが、2年生の終わりから全く姿を見ていない。マルフォイ家から解き放たれ自由になった筈だが、今はどうしているのだろうか。

 

 

「ドビーはどうしてる?自由になって元気にしてる?」

「ああ、旦那様──」

 

 

ウィンキーは首を振り、どれだけドビーが狂ってしまったのかを切々と嘆いた。

自由になったドビーはハウスエルフでありながら給料(お手当)を頂こうという身分不相応の高望みをし、勤め口がいつまで経っても見つからなかった。

ハリーは働く結果として、給料を何故貰ってはいけないのかウィンキーに尋ねたが、その問いかけ自体が恐ろしいと言うようにウィンキーは顔を半分手で覆い隠した。

 

ソフィアはウィンキーを見て、そのドビーというハウスエルフがかなりの変わり者なのだと理解した。ハウスエルフを見た事はなくとも、どんな存在か知っているソフィアは、その給料を貰おうとする事がドビーにとって──そして、ハウスエルフにとっていい事なのかわからなかった。

 

主人に非常に忠実であり献身的、言いつけを守る事を生き様としているハウスエルフは、嫌な事であっても遂行しなければならない。ウィンキーは高所恐怖症であったが、主人にこのボックス席を取るように言い付けられ、苦しみながらもそれを守っていた。

 

 

「ウィンキーは、ハリー・ポッター様、ご主人様のテントに戻りたいのでございます。でも、ウィンキーは言い付けられた事をするのでございます。ウィンキーは良いハウスエルフですから」

 

 

ウィンキーはボックス席の前端をもう一度恐々見て、ぶるりと身体を大きく震わせるとそれから完全に目を手で覆ってしまった。

 

 

「そうか、あれがハウスエルフなのか?…変な奴だね?」

「ドビーはもっと変だったよ」

「そうらしいわね」

 

 

ロンはもうウィンキーに興味を無くしたのか万眼鏡を取り出し、向かいの観客席にいる群衆を見下ろし、競技が始まる前にその万眼鏡の性能を試した。

ソフィアもようやくプログラムを開くと、選手達のプロフィールをじっくりと読んでいく。

 

 

「試合に先立ち、チームのマスコットによるマスゲームがあります」

「ああ、それはいつも見応えがある。ナショナルチームが自分の国から何か生き物を連れてきてね、ちょっとしたショーをやるんだよ」

 

 

プログラムを読み上げたハーマイオニーに、アーサーがにっこりと笑いながら説明をした。

 

 

それから30分の間に空席が多かった貴賓席も徐々に埋まってきた。アーサーは続けざまに握手をし、パーシーも何度も椅子から立ち上がりピンと背筋を伸ばした。

魔法大臣コーネリウス・ファッジが近くを通った時にパーシーはあまりに深々とお辞儀をしたせいで眼鏡が落ちて割れてしまった。ファッジの目の前でとんでもないミスをしたとばかりにパーシーは恐縮しきり椅子に身を縮こめて座るとそっと眼鏡を元通りにした後はずっと椅子に座っていた。

 

ファッジはハリーに気がつくと、昔からの友人のような、まるで父親のような仕草でハリーと握手をし、「元気か?」と朗らかに声をかけた。

 

 

「ご存知、ハリー・ポッターですよ」

 

 

ファッジは隣にいるブルガリアの魔法大臣に大声で話しかけたが、全く言葉がわからないようで、その魔法使いは何も言わず肩をすくめた。

 

 

「──なかなか通じないものだ。こうなるとバーティ・クラウチかジャック・エドワーズが必要だ。ああ、クラウチのハウスエルフが席を取っているな…いや、なかなかやるものだ。ブルガリアの連中が寄ってたかって、良い席を全部せしめようとしているし──ああ、ルシウスの到着だ!」

 

 

ソフィア達は急いで振り返った。

後列のアーサーの真後ろが4席分空いていて、そこに向かって席伝いに歩いてくるのは、他ならぬドビーの昔の主人であるルシウスと、ドラコ、そしてドラコの母のナルシッサと、ルイスだった。

 

 

「ルイス!」

「ソフィア!奇跡だ!──ああ、久しぶり!」

「久しぶりって、1日じゃない?」

 

 

顔を顰めてマルフォイ一家を見るアーサーの後ろにソフィアは移動し手を振る、ルイスはぱっと顔を輝かせると身を屈め、ソフィアが背伸びをしながら広げる両腕にしっかりと収まり、背中に手を回して強く抱きしめた。

 

 

 

「夏休み中に離れるのって無かったでしょ?」

「まあ、そうね…」

 

 

ホグワーツではもっと長い間会えないこともあったが、長期休み中に離れたのは初めてであり、なんとなくいつもより長く離れていたような気がしたのだ。

ルイスはソフィアの頬にキスを落とし、ソフィアもルイスの頬にキスを返す。ルイスは満足気に目を細めてにっこりと上機嫌に笑いながらようやく身体を離した。

相変わらずの感動的で、やや大袈裟な挨拶に、ハリー達はルイスに声をかけようとしたがその前に言葉を発したのはルシウスだった。

 

 

「ああ、ファッジ。──お元気ですかな?妻のナルシッサとは初めてでしたな?息子のドラコもまだでしたか?」

 

ルシウスは微かに微笑みファッジのところまで来ると手を差し出して挨拶をした。

名前を呼ばれた時にナルシッサとドラコは軽く頭を下げ、気品のある笑みを浮かべる。きっと、ドラコは昔からこうするように教育されているのだと、ソフィアとルイスは思った。

 

 

「これはこれは、お初にお目にかかります」

 

 

ファッジは笑顔でナルシッサにお辞儀をした。

 

 

「ご紹介しましょう。こちらはオブランクス──オバロンクスだったかな…とにかく、ブルガリア魔法大臣閣下です。どうせ私の言っている事は一言もわかっとらんのですから、まあ、気にせずに。ええと、他には──アーサー・ウィーズリー氏はご存知でしょうな?」

 

 

双方の不仲を知らないファッジはアーサーを紹介し、一瞬緊張が走る。

アーサーとルシウスはお互いに睨み合い、ソフィア達は過去書店で彼らが大喧嘩をした時のことを思い出した。

今は止めるジャックが居ないが、流石にルシウスもファッジのいる前で掴みかかる事はないだろう。

 

 

「これは驚いたアーサー。貴賓席の切符を手に入れるのに、何をお売りになりましたかな?お宅を売っても、それほどの金にはならんでしょう」

 

 

ルシウスは冷たい眼差しでアーサーを見下ろし、低い声で呟く。ナルシッサは口元を手で隠し嫌そうにアーサーを見たが、ドラコはくすくすと嘲笑しそれを眺めた。

幸運なのか、その言葉はブルガリアの魔法大臣になんとか通訳をしようとしていたファッジの耳には届かなかった。

 

 

「アーサー、ルシウスは先ごろ、聖マンゴ魔法疾患障害病院に、それは多額の寄付をしてくれてね。今日は私の客としての招待なんだ」

「それは──それは、結構な」

「席を後2つ欲しいと言われた時は驚いたが、その少年は?」

「ああ、この子は──」

 

 

ルシウスの目がアーサーからルイスに移り、ルイスはファッジに向かって頭を下げて微笑む。

 

 

「初めまして、ファッジ魔法大臣閣下。ドラコの友人の、ルイス・プリンスです。ご招待頂き、ありがとうございます」

「ルイス…?はて、その名前と…顔、何処かで見覚えが……」

 

 

ソフィアは去年、3本の箒で初めてシリウスが守り人だと言う事実──最もそれは嘘だったが──を知った時、ファッジが居た事を思い出した。ルイスもそれを聞いていた為、少し表情を硬らせる。この場で何か──父に関係する事を言われるわけにはいかない。ここにはハリー達がいる。

 

 

「ああ!思い出した。君、ジャックの所の子どもだろう。彼とは個人的に仲が良くてね」

「あ──はい。そうです、妹の、ソフィアも…そうです」

「今晩は、ソフィア・プリンスです」

 

 

ソフィアはほっと胸を撫で下ろし、気を取り直すように微笑みファッジに軽く頭を下げる。ファッジはソフィアとルイスを見てにっこりと笑った。

 

 

「ドラコ、ルイス。──席に行こう」

 

 

ルシウスはハーマイオニーに冷たい目を一瞬向けたが何も言わずにドラコとルイスを促した。ドラコはハリー達に向かって小馬鹿にしたような視線を投げたが、ソフィアには優しく微笑みかける。

 

 

「ソフィア、また」

「ええ、ドラコ楽しんでね!」

「ソフィア、また明日家でね!」

「またね!」

 

 

ルシウス達は自分の席まで進み、ドラコとルイスはルシウスとナルシッサに挟まれるようにして座った。にこにこと楽しげにパンフレットを広げ会話するドラコとルイスを見てハリーは嫌そうに顔を顰める。

 

 

「ムカつく奴だ」

 

 

ロンが声を押し殺して言い、ハリーとハーマイオニーは深く頷いた。

 

その瞬間バグマンが貴賓席に勢いよく飛び込み「みなさん、よろしいかな?」と声をかける。

 

 

「大臣、ご準備は?」

「君さえよければ、ルード。いつでもいい」

 

 

ファッジの返答に、バグマンは自分の喉に杖を向け声を拡大させると満席のスタジアムから湧き立つ群衆に向かって呼びかけた。

 

 

「レディース・アンド・ジェントルメン!第422回、クィディッチ・ワールドカップ決勝戦にようこそ!」

 

 

群衆が叫び、拍手が響き、足が踏み鳴らされる。何千という国旗が打ち振られ、両国の国家が興奮をさらに盛り上げた。

ついにクィディッチ・ワールドカップがはじまる。

 

 

「前置きはこのくらいにして、早速ご紹介しましょう。──ブルガリア・ナショナルチームのマスコット!」

 

 

真紅一色のスタンドの上手から、わっと歓声が上がった。

 

 

「一体何を連れてきたのかな?──あっ!ヴィーラだ!」

 

 

席から身を乗り出していたアーサーが現れたヴィーラに気づくと急いで眼鏡を外し、ローブで曇りを拭う。

 

 

「なんですか、ヴィーラ…?」

 

 

ハリーの疑問の答えは、するすると現れた百人ものヴィーラが答えてくれた。

 

美しい音楽に乗ってヴィーラ達は舞い踊る。月の光のように肌は輝き、風もないのに髪を美しく靡かせるヴィーラの踊りはとても美しく、男性を魅了させた。

音楽が早くなるに連れヴィーラの踊りも激しくなり、ハリーは胸の鼓動がうるさくなり頭が霞みがかったようにぼんやりとした、纏まらない思考の中で何か目立つ事をして、ヴィーラの気を引きたい──そう思ったとき、ソフィアの声が飛び込んだ。

 

 

「ハリー、危ないわよ?」

「──えっ?」

 

 

ハリーの服を掴みながらソフィアはくすくすと笑っている。もやが晴れたようなハッとした顔でソフィアを見たハリーは片足をボックス席の壁にかけ身を乗り出そうとしていた。

 

 

「僕…?」

 

 

ハリーが困惑していると、音楽が止みヴィーラの踊りが終わる。スタジアム中から怒号が飛ぶ中、ハリーは呆然とソフィアの目を見ていた。

 

 

「ヴィーラはね、人を魅了して惑わせるの。特に男の人は魅せられやすいのよ。子どもだと、余計にね」

 

 

ソフィアは笑ったままヴィーラの特性を説明し、ロンを顎で指す。ロンは自分の帽子の三つ葉のクローバーをむしり取っており、アーサーが苦笑してロンの方に身を乗り出して帽子を取った。

 

 

「きっとこの帽子が必要になるよ。アイルランド側のショーが終わったらね」

 

 

アーサーはそう言うが、ロンはまだ信じられないのかむっつりとした怪訝な表情で「はあ?」と嫌そうな声を出す。

 

 

「まったく、もう!」

 

 

ハーマイオニーはすっかりヴィーラに魅了されてしまったロンを見て大きく舌打ちをし苛々と腕を組む。何故そんなに苛々としているのか、それがわかったのはソフィアだけだっただろう。──誰だって、想い人が他の女性に心を奪われているのを見るのは嫌だ。

 

ソフィアはちらりとルイスとドラコのいる席を見た。2人ともぼんやりとした顔でピッチの片側に整列しているヴィーラを熱のこもった目で見ている。ルシウスとナルシッサはすっかり魅入っている2人を見て顔を見合わせ「仕方のない2人だ」と言うように苦笑していた。

 

 

「さて、次は──どうぞ、杖を高く掲げてください!アイルランド・ナショナルチームのマスコットに向かって!」

 

 

次の瞬間、大きな緑と金色の彗星のようなものがピッチに音を立てて飛び込んできた。

それは二つに分かれそれぞれ両端にあるゴールポストに向かって飛び、美しく煌めく虹の橋をかける。

分かれていた二つは合流し、今度は大きなクローバーのシャムロックを作り空高く駆け上がる。

美しい光景に観客は声を上げて喜び歓声を響かせた。

 

大きな光の球になったそれは、金色の雨のようなものを降らせ始めた──金貨だ。

 

 

「すごい!」

「レプラコーンだ!」

 

 

群衆の割れるような大喝采の中、アーサーが叫ぶ。

金貨や黄金を出す事が出来るレプラコーン達は沢山の金貨をばら撒けば、観衆達は椅子の下に落ちた金貨を拾おうと探し回り奪い合った。

 

 

「ほーら!万眼鏡のぶんだよ!これで君、僕にクリスマス・プレゼントを買わないといけないぞ!やーい!」

 

 

ロンは足元に散らばった金貨を一掴みハリーに押し付けるとにこにこと楽し気に笑う。

ソフィアは、レプラコーンの作る金貨は時間が経てば消えてしまう事を知っていたが──あまりのロンの嬉しそうな表情を見ると言い出せず、まぁ後で教えよう、と何も言わなかった。

 

 

余興も終わり、バグマンが入場した選手たちの解説をし──ついに試合が始まった。

 

 

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
  • ハリー
  • フレッド
  • ルイス
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