【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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172 おつかれさま!

 

ソフィアとルイスは何があったのか、どうなったのか困惑しながらも有無を言わせないセブルスによりべッドに向かうよう告げられ、しぶしぶ寝転んだ。

2人はクィディッチ・ワールドカップの興奮と、その後の緊張と、家に帰って来れた安心感から──ジャックが再び戻ってくるまで起きていようとおもったが、すぐに身体は疲れを思い出し寝てしまった。時間にして既に夜の3時を回っていたため、仕方がないだろう。

 

 

セブルスは2人が寝静まった後、静かにその寝室を訪れた。

それぞれのベッドの中ですやすやと眠る子ども達の柔らかな髪を優しく撫でれば、いい夢を見ているのか、ソフィアもルイスもふにゃりと微笑む。

 

暫くセブルスはそうして2人の様子を見ていたが、居間の方から物音がし顔を上げる。

 

 

「…セブ、…ここにいたのか」

「ジャック…」

 

 

邪魔してるぜ。と言いながらジャックは寝室の扉を開け、ベッドの側に立つセブルスの隣に並んだ。

早朝からクィディッチ・ワールドカップの警備や移動キーのトラブル処理にあたり、無事に試合が始まった事に安堵していたら、試合後に死喰い人の騒動があり──ただマグルの家族が宙に吊り上げられただけなら、処理を済ませすぐに帰る事が出来ただろう。

だがそのあと打ち上げられた闇の印に関わる騒動を鎮め、一刻も早くこの場から離れ帰宅したいと苦情を言う帰宅者の為に──苦情を言うものは全て姿現しが苦手な者ばかりだった──小さな子どもの居る家庭を優先し、即席の移動キーを作り各家庭に送り届けた。

その後、すぐに帰りたかったが混乱する場を1人離れるわけにもいかず──本業でないにも関わらず魔法省へ赴き様々な事務処理を済ませ、気がつけばもう夜明け前になっていた。

 

疲労感の滲む顔をしていたジャックだったが、幸せそうなソフィアとルイスの顔を見ると、少し表情を緩め笑う。子ども達が幸せである事、それのためなら自身の苦労など、微塵も苦にらない。

 

 

「…向こうで話そう」

「…ん、そうだな」

 

 

セブルスに促され、ジャックは優しげに見ていた瞳を真剣なものに変えると居間へ向かった。

 

 

「紅茶でいいか」

「…いや、珈琲で。濃いやつで頼む。今日は徹夜だな…今日だけで済めば良いけど…」

 

 

ジャックは肘掛け椅子に座りながらセブルスの言葉に答え、大きなため息をこぼし顔を手で覆う。セブルスはかなり疲れた様子のジャックに無言で珈琲を入れると、その前の机に置いた。

「ありがと」と小さく呟いた後、ジャックはかなり濃く、苦い珈琲を飲んでぶるりと身体を震わせ顔を顰めた。

眠気覚ましの為に珈琲を少しずつ飲んでいるジャックの対面にある椅子に座ったセブルスは、じっと彼を見つめ話し出すのを待っていた。

 

 

「…結局、誰が闇の印を上げたのかはわからなかった」

「…死喰い人の残党だろう」

「そうだとすれば…マグル達を襲撃した者達とは別だ。アイツらそれを見て逃げ出したからな…。…しかもさぁ…打ち上げられた真下に居たのはハリー、ロン、ハーマイオニーの3人だった」

「……何?」

 

 

セブルスは怪訝な顔をしてジャックを見る。ジャックは苦笑し、背もたれに深く体を預け再びため息をこぼした。

 

 

「後は、バーティのハウスエルフも居た。…闇の印を上げたのはハリーの杖だった。…まぁ、誰かがハリーの杖を拾って印を上げ、それをハウスエルフが拾って──って事だろう。ハウスエルフは闇の印を上げれない、方法を知っていたとしてもアイツらは杖なんて使わないからな」

「……」

 

 

眉間に深い皺を刻んだセブルスは苦々しい顔で黙り込む。毎年騒動の中心に何故かいるハリーとその周辺。それは偶然なのか、それとも必然なのか──こう、何年も連続しているとなるとそういう星の下に生まれたのだと、思うしかないだろう。

 

 

「一応、俺が知ってて…すぐに会える死喰い人達はその場に居なかったことを確認してる」

「……そうか」

 

 

セブルスは目を伏せ、普通の珈琲を飲む。

ジャックが血相を変え急に家の中に現れた時は驚いたが、あの行動にはそのような意味があったのか。

 

 

 

 

その時セブルスはホグワーツでの新年度を迎える事務処理を行なっていた、ソフィアとルイスが居ない時間の方がその仕事が捗る為、気がつけばかなり遅い時間になりそろそろ明日──いや、時刻的には今日だろう──戻る2人を迎える為に寝ようかと思っていた時、突如ジャックが姿現しで現れたのだ。

 

他人の家に姿現しをするなど、余程の緊急事態でなければあり得ない。セブルスはジャックがクィディッチ・ワールドカップに関わっている事を知っていた為、すぐに側に駆け寄り何があったのか──ソフィアとルイスは無事かと問い詰めた。

 

 

「セブ!…よし、いるな。じゃあ!」

「待て!何かあったのか?ソフィアとルイスは?」

「会場近くのキャンプ場に闇の印があげられた。──2人は無事だ!お前はここで待て!」

 

 

ジャックはそれだけを伝えると、驚愕するセブルスを残しすぐに姿をくらます。

この時ジャックはまだソフィアとルイスの無事を確認していなかったが、それをセブルスに伝える事はとても出来なかった。

 

 

残されたセブルスは暫し固まっていたが、その言葉の意味をようやく飲み込むと大きな舌打ちをこぼし、不安と焦燥感から部屋の中をうろうろと歩き回っていた。

駆けつけたいが、クィディッチ・ワールドカップにあまり興味が無くその場所を知らないセブルスは姿現しで向かう事が出来ない。

ソフィアとルイスが無事なら、ジャックの言うように大人しく待つのが得策だろう。

そうわかっていても、闇の印の意味を知るセブルスは──静かに待つなど出来ずただ気持ちだけを焦らせた。

 

1時間もしない内にジャックはソフィアとルイスを連れて戻って来たが、セブルスにとってはあまりにも長く感じた1時間だった。

 

 

 

 

「…印、濃くなってるよな」

「ああ…」

 

 

ジャックは左腕の袖を捲り、赤黒い闇の印を露出させた。

数ヶ月前までは薄かったそれが、少し前から日に日に濃く変化していた。セブルスも勿論それに気が付いている。だが、その理由を、2人はわからない──いや、予想はしているが、果たしてそれが正しいのか判断できないと言うべきだろう。

 

 

「…まさか──そんなこと、無いよな?」

 

 

ジャックの言葉に、セブルスは何も返答することが出来ず厳しい顔でカップの中の珈琲を飲む。

まさか、ヴォルデモート卿が蘇る兆しなのか。キャンプ場の森で上げられた闇の印は、それを示唆するものなのか。

 

 

「…どっちにしろ。ソフィアとルイスはあと1週間程度でホグワーツだ。ヴォルデモートはダンブルドアがいる場所には──まぁ、こないだろう」

 

 

セブルスはジャックがヴォルデモートと呼んだ時、僅かに肩を震わせた。だがジャックは肩をすくめて「悪ぃ」と呟くだけで心の底から悪いとはちっとも思ってなさそうだ。

 

 

「…ジャック。私は明日にはホグワーツに向かわねばならない。…その間、ソフィアとルイスを頼めないか?」

「んー……」

 

 

ジャックは困ったように眉を寄せ、暫く天井を見つめ唸りながら考えていたが、ゆっくりと視線をセブルスに戻すと首を振った。

 

 

「…孤児院で預かることはできる。けど──俺は、殆ど居ない。また朝には魔法省に行かなきゃならねぇし…。…セブは俺に見てて欲しいんだろ?」

「そうか……」

 

 

信頼の出来るジャックにソフィアとルイスのことを頼みたかったが、無理だと分かるとセブルスは顰め面のまま考え込む。

セブルスが死喰い人だと言う事を知る者はあまり、多くはない。だがどこでそれが漏れるかわからない。──ごく一部だが、この家の場所を知る者もいる。勿論マルフォイ家の者は裏切る事はないとは思うが、何か薬を盛られこの場所を告げてしまうかもしれない。

 

闇の印を上げたものが、アズカバンへ行く事無く ヴォルデモート(我が君)を裏切り、寝返り…のうのうと日常に戻り暮らしている死喰い人達への報復を考えているのなら──。

 

 

まだ闇の印が上がった理由も、犯人もわからない中で、ソフィアとルイスだけを家に残していくのはとても不安だった。

 

 

「んな顔すんなって。…あ、じゃあこれ貸してやるよ」

 

 

苦渋に満ちた顔で黙り込んでしまったセブルスに、ジャックは苦笑いをするとベルトポーチの中を探り、二つの手鏡を取り出した。

 

 

「これ、両面鏡っていうんだけど。対になってる方の様子を見る事が出来るんだ。居間に置いておけば様子を好きに見れるし、声をかければ対の向こう側に居る人と顔を見て話す事も出来る。中々便利だぜ?」

 

 

ジャックはひとつをセブルスに手渡し、その中を覗いてみろ、と視線で訴えた後椅子から立ち上がり、どこか悪戯っぽい顔をして居間から出て行ってしまった。

セブルスは両面鏡を見た事がなく、本当にこれで相手の様子がわかるのか、とあまり信じられずしげしげと見ていたが、試しに「ジャック」と小声で低く呼んでみた。

 

 

その鏡には自分の顔は映らず、その代わりに「しーっ」と唇に人差し指を押しつけ楽しげに目を細めるジャックと、ベッドの中ですやすやと眠っているルイスが映った。

 

 

「──な?見えるだろ?」

「…本当に、通じているのか?」

「ああ、どれだけ離れても大丈夫だから安心しろ」

 

 

ソフィアとルイスの寝室に居るとわかると、セブルスは2人を起こさないように、より声を潜め、ジャックもくすくすと笑いながら小声で答える。

効果がわかったのなら、ここに居る必要はもうないだろう、とジャックは最後にルイスとソフィアの頭を優しく撫でた後、セブルスが待つ居間へ戻った。

 

 

ジャックが居間へ戻っても、セブルスは気難しい顔で手鏡を裏返したり、縁の装飾を手で撫でていた。きっと、初めて見る魔法道具の構造が気になっているのだろう。

この手鏡は──実は、中々希少で高額なものであり、本来はおいそれと人に貸せるものでは無いのだが、セブルスがジャックを信頼しているように…ジャックもセブルスの事を1番信頼していた。

 

 

「これで少しは安心できるだろ?」

「ああ…。……ありがとう」

「どういたしまして!…ただ、セブは困った事になるかもしれないな?」

「…何がだ」

 

 

ジャックは手に持っていた手鏡を机の上に置き、くすくすと笑う。

 

 

「ソフィアとルイスが絶えず話しかけてきて、仕事にならないんじゃ無いか?」

 

 

セブルスはその言葉を聞いて、緩みかけていた眉間の皺を再び深く険しくさせた。

あり得る。2人はきっとこの鏡を通してどんなにつまらないことでも気にせず話しかけるだろう。

そして、自分はきっとこの手鏡を伏せて置く事は出来ない。それをすると彼方の様子を見る事が出来なくなる。──ソフィアとルイスの声が聞こえなくなるとしても、何をしているのか、異変は無いのか心配し、どっちにしろ…仕事にならないだろう。

 

ジャックは苦虫を噛み潰したような顔でどうするか悩んでいるセブルスを面白そうに見ていたが、カップに残ったかなり濃い珈琲を一気に飲むと、真剣な顔でセブルスを見つめた。

 

 

「ルイスとソフィアには…セブと俺が死喰い人(そう)だったって事は…言わないんだよな?」

「ああ、…言わない」

「…良いんだな?去年みたいに、先に知ってしまうかもしれないぜ?」

「…、…そんな事…あり得ない」

 

 

セブルスは苦く答えたが、ジャックはじっとセブルスを静かに見つめる。

ジャックとセブルスはホグワーツの一年生の時からの付き合いだ。きっと、アリッサ亡き今、彼の心を理解できるのはジャックだけだろう。

セブルスはかなり優しい人間だが、酷く不器用で、そしてかなり傷付きやすい。

敵も作りやすく、誤解されやすい。何せ、その優しさを見せる事は自分の弱さに繋がると思っている節があるセブルスは、唯一ソフィアとルイスにのみ、直接的な包み込むような愛と優しさを向ける。

 

もうソフィアとルイスは子供では無い。かといって、大人でも無いが、自分で考えられる人間に成長しつつあると言えるだろう。

何故死喰い人になったのか、何故、投獄されずに生きているのか──それくらい、2人に伝えても良いのではないかとジャックは思っていたが、セブルスはそれで2人が悩み悲しむ事と──自分の心が傷付く事を恐れていた。

勿論、心が傷ついたとはいえ、それだけで挫けてしまうセブルスではない。学生時代の酷く辛い虐めや死喰い人としての日々、自分の大きな過ち、愛しい家族の死──傷付く事は数多あった。だが、傷付き倒れそうになる身体をなんとか奮い起こし、今まで生きてきたのだ。

表面ではなんとも無いように取り繕う術を、セブルスはそれこそ幼少期から知っていた。

 

たが、付き合いの長く、そして深いジャックにはセブルスが何を思い──何故言えないのか、何となく察していた。

 

 

「…セブが良いなら、いいけど。──じゃあ俺はもう戻る。またな、セブルス」

「ああ…」

 

 

ジャックはため息をつき立ち上がると、軽く手を振りその場から姿をくらませた。

残ったセブルスは、空になったカップと二つの手鏡を見つめ、ぐっと手のひらを強く握った。

 

 

 

 

 

 

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
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