【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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180 尻尾爆発スクリュート!

 

 

ソフィアは時間割を受け取り、マグル学と古代ルーン語が被っていることに気付く。

結局、ハーマイオニーは逆転時計を使い、授業をこなすことに耐えられずマグル学と占い学を辞めた。その事により授業時間が重なる事はなく、逆転時計を使わずに今年一年こなせるようになったが…ソフィアが辞めたのは占い学のみである。マグル学を学ぶ事はおもしろく、辞めるのは勿体ない──そう思っていたソフィアはマグル学を辞め、時間割を()()に戻す事を選ばなかった。

 

 

「ミス・プリンス。話があります、今から授業までの時間に…少し来てくれませんか?」

「マクゴナガル先生…はい、わかりました」

 

 

声をかけられ振り向けば、後ろにグリフィンドールの寮監であるマクゴナガルが静かに立っていた。ソフィアはぐいっと紅茶を飲み干しハリー達に「先に薬草学の所へ行っててね」と告げ、背筋を伸ばし踵を返すマクゴナガルの後についていく。きっと、時間割の話だろう事はわかっていた。年度末に逆転時計は一度返却した為、ソフィアの首には何もかけられていない。

 

 

変身術の研究室まで着き、マクゴナガルはソフィアを先に通すと自分も入った後にしっかりと扉を閉めた。

 

 

「ミス・プリンス。…今年も逆転時計を使用する許可がおりました。勿論、留意点などは言わずとも理解しているものと思います」

「わかりました、ありがとうございます」

「くれぐれも、過去を変える事のないように…逆転時計の事は、他言無用です」

「はい、わかりました」

 

 

マクゴナガルが差し出した逆転時計をそっと両手で受け取ったソフィアは、首にそれをかけしっかりと服の下に隠した。

去年はこれを使い沢山の科目をこなした。それだけではなく、ヒッポグリフとシリウスの救出という、とんでもない事までしてしまった。

正直、そのことを知っているダンブルドアは逆転時計の使用許可を出さないのではないかと思っていたが…それは杞憂に終わったようだ。

今年度はハーマイオニーは居ない、ひとりで全てを管理しなければならないが、重複しているのはたった一つの科目であり、それに要領もよくある程度手を抜く大切さを知っているソフィアには、問題がないだろう。

 

 

「変身術の個別授業ですが…もし、余裕があり、あなたが受けるつもりなのであれば──」

「是非!受けたいです、去年は受けられなかったですし…!」

 

 

ソフィアは目を輝かせ食い気味に何度も頷く。マクゴナガルは目元を緩めると、満足げに一度頷いた。

 

 

「ええ、では。木曜日の夜8時から9時まで…少々遅い時間ですが。今年は特別な行事がありますから──私もこの時間しか空きがありません」

「勿論、大丈夫です。…すみません、忙しい中…遅い時間なのに…」

「いいえ。気に悩む事はありません。…木曜日の放課後、楽しみにしていますよ」

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

ソフィアはにっこりと微笑み、頭を深く下げた。

その後直ぐに授業の為駆け足で薬草学が開始される温室へ向かった。

かなり時間ギリギリになってしまったが、何とかグリフィンドール生とハッフルパフ生が集まる──去年と同じく、薬草学はハッフルパフと合同だった──第三温室にたどり着いたソフィアは胸を撫で下ろし、ハーマイオニーの隣に並ぶ。

 

 

()()話だったの?」

「ええ、そうよ。…今年も、頑張らないとね…」

「無理はしないでね、ソフィア…あれ、凄く…頭がおかしくなりそうだったもの…」

 

 

ハーマイオニーは心配そうな顔で囁く。

逆転時計がどれほど危険と大いなる可能性を孕むものがよく知っている彼女は、ソフィアが独りで過去に戻り授業をこなさないといけない事を、かなり心配していた。

だがソフィアは安心させるために微笑み「大丈夫よ」と囁いた。

 

 

 

第一回目の薬草学の授業は、大きな黒いナメクジのような見た目のブボチューバーの膿を集める、というものだった。これはニキビによく効く薬の素材となるのだがあまり楽しい授業とはいえなかっただろう。

何せブボチューバーは石油のような独特の悪臭を放ち、指で突くとどろりと黄緑色の膿を吐き出すだけの──至極、簡単で退屈な授業だった。

 

その後の魔法生物飼育学は、ソフィアが好きな授業であり、おそらくたった1人だけ目を輝かせて授業の開始を待っていた。

ハリー達は、ハグリッドが好きだ。だからといって魔法生物飼学が好きかと言われれば、曖昧な返事しか返せないだろう。

去年から選択科目となったこの授業は、初めのヒッポグリフの授業を除けばかなり退屈で面白みがちっとも無かった。

それに、ハグリッドは人と異なる感性を持ち──おおよそ、一般的には危険だと言われる魔法生物を愛していた。

 

 

ソフィア達グリフィンドール生はハグリッドの小屋へ向かった。

今回、彼はどんな魔法生物を連れて来るのか…せめて、危険なものでなければいいが、とソフィアを除いた生徒達が不安げにこそこそと話し合いながら小屋の前にたどり着いけば、既にハグリッドは満面の笑みで生徒達の到着を待っていた。

 

 

「おはよう!スリザリンを待った方がええ、あいつらもコイツを見たいだろう?」

 

 

ハグリッドは足元にある木箱を自慢げに指差しながらおおらかに言う。

その木箱からは奇妙なガラガラという音と、時折何かが爆発するような小さな音が聞こえていて、ハリーとロンとハーマイオニーは顔を引き攣らせた。間違いなく、()()()な生き物ではない。

 

 

「尻尾爆発スクリュートだ!!」

「きゃあああっ!!?」

 

 

ハグリッドがさっと木箱の蓋を開け、近くにいたラベンダーが悲鳴を上げて飛び退いた。

 

殻を剥かれた奇形海老のような姿のそれは青白くぬめぬめとした光沢があり、胴体にはにょきにょきと脚が沢山生えている。一箱に100匹ほどが折り重なり、蠢きあってるさまは、甲殻類よりも、虫を思わせた。腐った魚のような鼻を刺す悪臭に、ハリーとロンとハーマイオニーは服の袖で鼻を覆い顰めっ面をして一歩後ろに下がる。

 

 

「いま孵ったばっかしだ!だから、お前さん達が自分で育てられるっちゅうわけだ!そいつをプロジェクトにしようと思っちょる!」

「まぁ!まだベイビーなのね?ぴょんぴょん跳ねて、可愛いわ!尻尾爆発スクリュート…初めて見たわ!」

 

 

化粧をし、下着を新調し、女性らしさの階段を登ったとはいえ…ソフィアはソフィアである。

たった1人だけ嬉しそうに木箱の中を覗き込み、パンパンと爆発しながら10センチは宙を浮くスクリュート達を愛おしげに見つめていた。

 

 

「それで、我々が何故そんなのを育てなきゃならないのでしょうねえ?──なんの役に立つんだろう?」

 

 

いつの間にか到着していたスリザリン生の軍団の1番前に立っていたドラコはいつものような気取った冷ややかな声で笑った。

流石のハリーも──今回ばかりはドラコに同意見だった。いや、ソフィア以外の全員が同じ気持ちだろう。

ハグリッドは口篭り、視線を彷徨かせながら必死に考え──ぶっきらぼうに答えた。

 

 

「マルフォイ、それは次の授業だ。今日はみんな餌をやるだけだ。俺はコイツを飼ったことがねぇんで、何を食べるのかわからん。アリの卵、蛙の肝、それと毒のねぇヤマカガシをちぃっと用意してある。──全部ちぃっとずつ試してみろや」

 

 

ソフィアはすぐにぐにゃりと柔らかい蛙の肝を掴み、木箱の中に差し入れ「ご飯ですよー?」とスクリュートを誘ったが、スクリュートは口らしきものはなく、うぞうぞと興味なさそうに蠢くだけだった。

 

 

「いたっ!こ、こいつ襲った!尻尾が爆発した!」

「尻尾爆発スクリュートだもの…ディーン、大丈夫?」

 

 

ソフィアは隣の木箱に餌をやっていた一団の中から上がった悲鳴に心配そうに駆け寄る。ハグリッドも──ヒッポグリフの一件を思い出したのか、顔をさっと青くして心配そうに真っ赤になったディーンの手を見た。

 

 

「ああそうだ、こいつらが飛ぶときにそんな事が起こる。手を近づけすぎないように気をつけなきゃならん」

「きゃーーっ!ハグリッド!あの尖ったものなに!?」

 

 

ディーンの隣にいたラベンダーがまた叫び、思わず近くにいたソフィアの背に隠れ恐々と身を震わせる。

ラベンダーは木箱の中にいる1匹のスクリュートを指差し、信じられない、という嫌そうな顔をしていた。

 

 

「ああ。針を持ったものもいる。たぶん、雄だな。雌は腹に吸盤みてぇなもんがある…血を吸う為じゃねぇかと思う」

 

 

ハグリッドは長い針を掲げるスクリュートを、まるで我が子を見るような温かい眼差しで見ていたが、その言葉を聞いた後木箱に手を突っ込み餌を入れようとする者は現れなかった。

 

 

「血を吸うのなら…その針と、吸盤が口なのかしら?吸血魔法生物なのかもしれないわね!」

「おお、成程成程…たしかに、そうかもしれん。ケナガイタチの死体を準備してみるか…」

 

 

ハグリッドはソフィアの言葉にうんうんと頷くが、それがわかった所で──この魔法生物は、本当に何の役に立つのだろうか。

 

 

「おやおや。なぜ僕たちがこいつを生かしていようとするのか、これでよくわかったよ。火傷させて、刺して、噛み付く。これが一度に出来るペットだもの、誰だって欲しがるだろう?」

 

 

ドラコの冷ややかな声に、スリザリン生がくすくすと同調するように笑う。グリフィンドール生は、笑いはしないものの──それを止める事も無かった。

 

 

「たしかに、その通りだね。プレゼントの中にこっそり忍ばせておけば…奇襲できそうだ」

「まぁルイス?こんな可愛い子に、そんな酷いことをさせるなんてダメだわ!」

「…うーん。可愛いかなぁ…僕、正直…ちょっと、見た目が…蜘蛛みたいで…無理だよ…」

 

 

ドラコの背に隠れるように立っていたルイスは、目を極限まで細め、なるべく木箱の中を見ないようにしながら呟いた。

このスクリュートという魔法生物は、奇襲以外に何の役に立つのだろうか。少なくとも、プレゼントされて喜ぶのはハグリッドとソフィアだけだろう。

 

 

「そうよ、可愛くないからって役に立たないとは限らないわ。ドラゴンの血なんか、素晴らしい魔力があるけれど…誰もペットにしたいと思わないでしょう?──ソフィア以外はね」

 

 

ハリーとロンはハーマイオニーの言葉に顔を見合わせてニヤリと笑う。

ドラゴンをペットにしたいと思っているのはソフィアだけではなく──苦笑いを浮かべるハグリッドもだと、ハリー達は知っていた。

 

 

残念ながらスクリュートはハグリッドが用意した餌を食べる事はなく、授業終了のチャイムが校庭に響く。

こんな魔法生物のそばには居たくないとばかりに生徒達が駆け出す中、ソフィア達も昼食をとりに大広間へ向かっていた。

 

 

「まぁ、少なくともスクリュートは小さいからね」

「そりゃ、いまはそうよ」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは険しい顔をして声を昂らせる。今は、孵ったばかりであり小さいが、ハグリッドが餌を見つければすぐに巨大になり、その爆発の威力は凄まじいものになるだろう。

 

 

「私、ちょっと疑問なんだけど…」

「何の役に立つかって事かい?アイツらが船酔いとか何とかに効くってなりゃ、問題ないだろ?」

 

 

ロンがソフィアに向かって悪戯っぽく笑いかけたが、ソフィアは真剣な顔で首を捻らせながらそのからかいの言葉には反応しなかった。

 

 

「ハグリッドは、何を食べるのかわからないって言ってたじゃない?私も尻尾爆発スクリュートなんて、初めて見たし…図鑑で見た事が無いの。ハーマイオニーは知ってる?」

「そういえば…そうね、私も初めてみたし…魔法生物が大好きなハグリッドが、あんな危険そうな生き物の生態を知らないなんて…ちょっと変だわ」

 

 

ソフィアは尻尾爆発スクリュートという魔法生物を知らなかった。

勿論、魔法界にいる全ての魔法生物を知っているわけではないが、魔法生物が大好きなソフィアの知識はかなり膨大だといえるだろう。そのソフィアだけでなく、教師であるハグリッドもその生態を知らないなんて──なんとなく、嫌な予感をソフィアは感じていた。

 

 

4人は大広間にあるグリフィンドール生が集まる長机につき、大皿に盛られているラムチョップやポテトを自分の皿に盛った。

ハーマイオニーは席に着くや否や猛スピードでポテトを口の中に詰め込み、リスのように頬を膨らませもぐもぐと咀嚼する。

 

 

「ハーマイオニー、どうしたの?」

「あ、それってもしかしてハウスエルフ擁護の新しいやり方?断食をやめて、吐くまで食べることにしたんだ?」

 

 

あまりの勢いにソフィア達は驚き目を丸くしたが、ハーマイオニーは今度は芽キャベツを口一杯に頬張ったまま「違うわよ」と呟き、頬を膨らませながらも威厳を保とうとツンと顎を上げてハーマイオニーはロンを見た。

 

 

「図書館に行きたいだけよ」

「えーっ?ハーマイオニー、今日は1日目だぜ?まだ宿題なんて出てないだろ?」

 

 

ハーマイオニーは肩をすくめ、まるで何日も何も食べてないかのように食事を掻き込むとすぐにハッと立ち上がった。

 

 

「私、行くわ!ソフィアはどうする?占い学をやめて、空き時間が一つあって…そのあと数占いよね?」

「うーん…そうね、私もマグル学の予習をしに図書館に行くわ」

「じゃあ、先に行ってるわね!ハリー、ロン、夕食の時に!」

 

 

ハーマイオニーは鞄を掴むとハリーとロンの返事を待たずに慌ただしく大広間を出て行ってしまった。

 

 

「ソフィアもハーマイオニーも…勉強しすぎで疲れないの?」

「私はハーマイオニーほど真面目じゃないもの」

 

 

ハーマイオニーが消えた扉を見つめていたロンがくるりとソフィアの方を振り返り、怪訝な顔で聞いたが、ソフィアは肩をすくめて温かいコーンスープをゆっくりと飲んだ。

 

 

 

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
  • ハリー
  • フレッド
  • ルイス
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