【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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183 久しぶりの個別授業!

 

夕食後、ハーマイオニーはまた一人で図書館へ行き、ハリーとロンは占い学の宿題を済ませるために談話室へ戻り、ソフィアはマクゴナガルとの個人授業のため、彼女の研究室へ向かった。

 

 

去年は受講出来なかった個別授業を今年は受けることが出来る喜びに、ソフィアは闇の魔術に対する防衛術の授業で見た恐ろしい光景を意識の外に追いやる事が出来た。

どうしても、自分の母と兄が亡くなった時の事を考えてしまっていた。

あの蜘蛛のようにあっさりと、あっという間に命は尽きたのだろう。…兄様は、まだ幼くて…何が起こったのかも、わからなかったかもしれない。

 

 

ソフィアは扉の前で自分の頬を軽く叩き気持ちを切り替え、トントンと扉をノックした。

 

 

「ソフィア・プリンスです」

「どうぞ」

「失礼します」

 

 

ソフィアが入れば、マクゴナガルは教卓の前にいつものような威厳のある佇まいでソフィアを待っていたが、眼差しだけは優しかった。

 

 

「ミス・プリンス。今年も1年間…この個別授業があなたにとって実りのある物になると、私は信じています」

「ありがとうございます、頑張ります!」

 

 

ソフィアはマクゴナガルの前まで駆け寄ると、促されるままに最前列の座席に座り、既に用意されていた特級変身術書を開いた。

 

 

「さて──ミス・プリンス。あなたは既に沢山の変身術を知り、自在に操れるようになりました。無機物を生き物に、生き物を無機物に…今年は、生き物を別の生き物に変える術を学びましょう」

 

 

マクゴナガルは静かな声で伝えた。

ソフィアはいきなりレベルが上がった事に目を見開き、一呼吸置いて真剣な顔で「はい」と告げる。

 

生き物を、別の生き物に変える。

それは変身術の中でもとりわけ難しいものであり、大人でも習得出来ない者もいる。何故なら──単純に、元に戻せない可能性がとても高く、変身後の性質を残したまま一生解けなくなる事例も存在している。

 

 

「ミス・プリンスは…たまたま、ムーディ先生の変身術をご覧になりましたね。…まぁ、勿論、人を動物に変えるのは誉められたものではありません。場合によっては罪になります。何故だかわかりますか?」

「えーっと…。人としての尊厳を奪いますし…動物に変わっている間は、その動物としての意志と知能しか持てません。もし逃げ出して見つからなくなれば…その人は、一生自分が人であった事も忘れ、動物としての生涯を過ごす事になるから…ですか?」

「ええ、その通りです。…実際、動物に変わり悪事を働こうとした魔法使いが──その者は犬に変わったのですが──逃げ出し、なんとか見つかった時には他の野良犬と家族を持っていた事例があります」

「それは……それは…」

 

 

言葉を無くし、何と言っていいのかわからない複雑な表情を浮かべるソフィアに、マクゴナガルは厳しい目をふと緩めた。

 

 

「その者は、結局人生…いえ、犬生を全うする方が良いだろうとなり、穏やかに暮らしたそうです。最も…私はそれが最善とは、勿論思いませんが」

 

 

犬生。確かに犬としての知能と思考しかなく、人であった事も忘れているのなら…その犬の家族と暮らした方が、幸せなのだろうか?

 

 

「最終目標は、人を別の動物に変える事です」

「えっ…で、でも。誰を?」

「勿論、私ですよミス・プリンス」

「マクゴナガル先生を!?そ、そんな…も、もし間違えたら…?魔法が一部解けなかったら…?」

 

 

当然のように言うマクゴナガルに、ソフィアは驚愕し狼狽え、恐々と聞いた。

しかしマクゴナガルは特に気にする様子もなく、「ミス・プリンス」と柔らかい声でソフィアの名を呼ぶ。

 

 

「勿論、今すぐにその魔法を使うのは…私も遠慮します。今後、貴方が他の生き物で試し、自信がついた後の話です」

「…、…頑張ります…」

「よろしい。貴方の母…アリッサは、過去、私を大きなライオンに変え、見事戻して見せましたよ」

「母様が?」

「ええ、…きっと、あなたも出来るようになります」

 

 

尤も、アリッサがマクゴナガルをライオンに変える術を試したのは六年生の後半だったが、マクゴナガルはそれをソフィアには伝えなかった。

ソフィアは、アリッサ以上の才能がある。きっとそれよりも早く人を動物に変える術を習得するだろう。

 

 

「それでは、教科書20ページを開いてください」

 

 

マクゴナガルの声に、ソフィアは真剣な顔で頷き教科書を開き──今までとは比べ物にならないほど複雑な呪文や論理、生き物を別の生き物に変える仕組みが書かれた内容を読んだ。

 

 

第一回目の個別授業は、杖を使い変身術をする事はなかった。それほど慎重に、真剣に取り組まなければならないステージに上がったのだとソフィアは理解し、頭の中で覚えたばかりの論理が流れていくのを感じながら壁掛け時計が9回、低くボーンと鳴るのを聞いた。

 

 

「今日はここまで。来週までに今日の内容をしっかりと理解し、城の中から鼠を1匹、連れて来なさい」

「はい、わかりました」

 

 

ソフィアは今しがた学んだ鼠を金魚に変える変身術を思い出しながら頷く。

貸し出された特級変身術書や羽ペンを鞄の中に片付け、帰る支度をするソフィアをじっと、マクゴナガルは見つめていた。

 

 

「ミス・プリンス。…貴方は、アニメーガスに興味はありませんか?」

 

 

突然の言葉にソフィアは羊皮紙を丸めていた手を止めて首を傾げる。

 

 

「え?…も、勿論ありますけど」

「会得するには…生半可な努力では不可能であり、簡単なことではありません。…しかし、興味があるのなら…挑戦してみてはどうですか?私が推薦します」

「ほ、本当ですか!?是非、よろしくお願いします!」

 

 

優しげなマクゴナガルの瞳を見て、ソフィアはぱっと表情を輝かせる。

気にはなっていたが、アニメーガスは高度な技術…と言うより、アニメーガスになるための魔法薬を作る為にはかなりの忍耐が必要だ。特別な呪文を使う事なく、意のままに動物に姿を変える事が出来る。それに、普通の変身術とは違い、動物になっても人間としての知能と思考を失う事がない。

 

 

「母様は…アニメーガスにはならなかったのですか?」

「ああ…7年生になり挑戦していたのですが、──いろいろな事情があり断念したのです」

 

 

言い淀むマクゴナガルの顔に一瞬後悔の色が滲む。

首を傾げていたソフィアは──もしや、と気付いた。

母様は、 リュカ(兄様)を在学中に授かっていた。自分の体を動物に変える、その事により腹の中の胎児がどうなるのかは、どの文献にも書いてなかったが、間違いなくあまり、良くないのだろう。

 

言い淀むのは、私が兄様の事を知っている事を知らないからだ。優しさから、この人はずっと今まで黙っていた。

 

それなら、と、ソフィアはそれ以上追及せずに「そうなんですね」とだけ呟き少し笑った。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

ソフィアは個別授業を終えた後、グリフィンドール寮の談話室へと戻った。肖像画に合言葉を言い、高い場所にある穴を登る。

広い談話室に居るのは、ハリー、ハーマイオニー、ロンの3人だけだった。

暖炉近くのソファに座り、何やらハーマイオニーが胸を逸らしながら掲げるようにロンとハリーに小さくきらりと光る物を見せている。

 

 

「私たちの短期的目標はハウスエルフの──」

「何の話?」

 

 

ソフィアはハーマイオニーの隣に座り、威厳たっぷりに朗々と語り出そうとしていたハーマイオニーの言葉を遮り首を傾げる。

ハーマイオニーはぱっと表情を明るくすると、ソフィアの胸あたりに持っていた『S.P.E.W』と書かれたバッジをさっとつけた。

キョトン、としていたソフィアだが、上からその文字を見て──怪訝そうに眉を顰める。

 

 

「反吐?」

「違うわ! ハウスエルフ(しもべ妖精)福祉振興協会の略よ!エス、ピー、イー、ダブリュー!」

「へぇ……初めて聞いたわ」

「そう、私が作ったもの。ハリーとロンは入ってくれるから、ソフィアも入ればメンバーは4人になるわ!」

 

 

ソフィアはにっこりと満面の笑みで言うハーマイオニーを見て、とても入らないと言える雰囲気ではなく──ちらりとハリーとロンを見たが、2人とも言葉も無く「いつのまにかメンバー入りが確定してる」という事に唖然としていた。

 

沈黙する3人を気にする事なく、ハーマイオニーは声高らかにS.P.E.Wの短期的目標を語った。

 

 

「それで…そんなに色々、どうやってやるの?」

 

 

ようやく、衝撃を乗り越えたハリーがおずおずと聞けば、ハーマイオニーはうっとりと悦に浸った表情で笑った。

 

 

「まず、メンバー集めから始めるの。入会費2シックルと考えたの。それでバッジを買う。その売上を資金に、ビラ撒きキャンペーンを展開するのよ。ロン、あなたが財務担当。ハリー貴方は書紀よ。だから私が今喋ってる事を一字一句記録しておくといいわ。第一回会合の記録として。そして、ソフィアは宣伝よ。私と一緒に活動を知らせるの。ソフィアは他寮に友達が多いからピッタリだわ!」

 

 

にっこりと笑うハーマイオニーを見て、ソフィア達は何も言えなくなった。

ハリーはハーマイオニーに呆れ、どうしたものか──どうすればその会合を平和的に辞められるのかと考えていたが、4人の間に落ちた微妙な沈黙を破ったのはトントン、と窓を叩く小さな音だった。

 

ソフィア達は自然とその音がした窓を見てその先に真っ白の梟を見つけた。

 

 

「ヘドウィグ!」

 

 

ハリーは歓声を上げ、椅子から飛び降り窓の元に駆け寄り勢いよく開けた。

すっと談話室に飛び込んできたヘドウィグは部屋を横切り、ハリーが先程まで書いていた占い学の宿題の上に舞い降りた。

 

 

「待ってたよ!」

「手紙を持ってる!」

 

 

ハリーはずっと、シリウスからの返事が来るのを待っていた。ハリーは急いで先ほどの椅子に座り、ヘドウィグの足に結び付けられた汚い羊皮紙をさっと取った。

 

ヘドウィグは任務を達成し、きっとハリーは喜び自分を褒めるだろうと──それを期待してハリーの膝の上に乗ると優しく「ホーホー」と鳴いた。

 

 

「何て書いてあるの?」

 

 

ハーマイオニーもハウスエルフの事はすっかり忘れ、息を弾ませてハリーに聞いた。

ハリーははやる気持ちを抑え、急いで書いたようなその手紙を読み上げた。

 

 

「ハリー。既に北に向かって飛び立つつもりだ。数々の奇妙な噂が、ここにいる俺の耳にも飛び込んでいるが、君の傷痕の事はその一連の出来事に連なる最新のニュースだ、また痛む事が有ればすぐにダンブルドアに言いなさい──マッド・アイ・ムーディを隠遁生活から引っ張り出したということは、ダンブルドアは何かの気配を読み取っているに違いない。またすぐ連絡する。ロンとソフィアとハーマイオニーによろしく。ハリー、くれぐれも用心するよう…シリウス…」

 

 

ハリーは全てを読んだ後、目を上げてソフィア達を見た。

北。北とは、まさか──このホグワーツを指しているのだろうか。

 

 

「北って…まさか、ここに帰ってくるって事かしら」

 

 

ソフィアは小声でつぶやいた。まさか、とは思うがハーマイオニーもそれを思い当たったのだろう、心配そうに眉を寄せている。

 

 

「ダンブルドアは、何の気配を読んだんだ?──ハリー、どうしたんだい?」

 

 

ロンは当惑しながら呟き、ハリーを見て驚き声を上げた。

ハリーは自分の額をばんばんと手で叩いでいるところで、ソフィアは「駄目よ!」と叫び慌ててその手を止めようとしたが、ハリーはソフィアに腕を掴まれても顔を苦しげに歪めながら額を叩く手を止めなかった。

膝が揺れ、ヘドウィグが驚きの声を上げて振り落とされる。

 

 

「シリウスに言うべきじゃなかった!手紙のせいで、シリウスは帰らなくちゃいけないって思ったんだ!」

 

 

悲痛な、激しい口調でハリーは叫ぶ。

その声に滲む強い後悔に、ソフィアはぐっと唇を噛んだ。

ハリーは、今度は机の上を強く叩き、ヘドウィグは怒ったようにばさばさと羽を広げロンの肩に避難した。

 

 

「戻ってくるんだ!僕が危ないと思って!僕は何でもないのに!」

 

 

たった1人の、家族になれる人、自分の名付け親であり、後見人が危険を顧みずここにきてしまう。指名手配はまだ解かれていない、もし、移動中人に見つかって捕まれば──僕のせいだ。

ハリーは激しい後悔と自分の考えの至らなさに胸の奥がざわつき、叫び出し全てめちゃくちゃにしたい気持ちにかられながら、ギリギリと奥歯を噛み締める。

 

任務を終えたのに褒められずおやつも貰えないヘドウィグはねだるようにハリーに向かって嘴を鳴らしたが、それすらもハリーはイラつき──ヘドウィグが手紙を配達できなければよかった、ととんでもない八つ当たりの気持ちがハリーの胸を締めていた──強い目でヘドウィグを睨む。

 

 

「お前にあげるものなんて、何もないよ!食べ物が欲しかったらフクロウ小屋に行けよ」

 

 

冷たい声で言うハリーに、ヘドウィグは傷つき非難の目でハリーを見て、開け放した窓の方へと飛び去る。ハリーの頭上を通り過ぎるさい、ヘドウィグは白い羽でぴしゃりとハリーの頭を叩いた。

 

 

「ハリー…」

 

 

ソフィアが落ち着かせようと宥めるようにいい、ハリーの怒りから震える手に自分の手を重ねたが、ハリーはぱっとそれを振り払い男子寮へと向かった。

 

 

「僕、寝る。また明日」

 

 

後ろからソフィア達の視線を感じながら、ハリーは言葉少なくそれだけを言うと返事を聞かずに階段をかけ上がった。

 

 

残されたソフィア達は顔を見合わせ、小さくため息をこぼした。

 

 

 




アンケートご協力ありがとうございます!
締め切りは28日いっぱいとさせていただきますので、よろしくお願いします!

ソフィアはダンスパーティ、誰と踊りますか?

  • ドラコ
  • ハリー
  • フレッド
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