昼食はハグリッドに進められ、お手製のビーフシチューを食べた。
しかし、大きな器の中には肉に混じって鉤爪がぷかりと浮いていて──ハリー達は、スープの部分だけを僅かに食べただけで、残念ながら完食は出来なかった。
ソフィアは何の肉が入っているのか聞きたかったが、ハーマイオニーにより必死に止められてしまった。「世の中には知らない方がいい事もあるのよ」と真剣な表情で小声で囁かれ、ハリーとロンも顔を青くしながら何度もこくこくと頷いていた。
昼過ぎから小雨が降り、しとしととした微かな雨音を聞きながらソフィア達はクィディッチ・ワールドカップの話や、三校対抗試合について話した。
どんな課題が出されるのか、どれほど危険なのか、誰が選ばれるのか──話題は尽きず、どんどん熱を孕み口々に言い合う。どうやらハグリッドは教員として何かを知っているらしいが、何度ソフィア達が言わせようとやんわりと誘導し、時には直接頼み込んでもハグリッドは珍しく口を滑らせる事は無かった。
5時半になると雨を降らせる曇天のせいなのだろう、外は薄暗くなり始め、そろそろ帰る支度をしなければならない、とソフィア達は立ち上がる。
ろくな昼食を食べていないソフィア達はかなり空腹だったし──なにより、この後大広間で三校対抗試合の代表者が発表される、素晴らしいハロウィーンの晩餐会も魅力的だが、今年はそれよりも代表選手の発表の方に心を奪われていた。きっと、それはソフィア達だけではない。
「俺も一緒に行こう。ちょっと待っちょれ」
ハグリッドが繕い物を片付けながら言い、ベッド脇の箪笥のところまで向かうと何かをごそごそと探し始めた。
ソフィア達は特に気に留める事も無くローブを羽織っていたが、突如とんでもない悪臭と刺激臭が鼻を強く刺激し、鼻を袖で押さえながら怪訝な顔をしてハグリッドを見た。
「ハグリッド、それ、何?」
ロンがあまりの刺激臭に咳き込みながら聞く。ハリーとハーマイオニーとソフィアも、目まで滲みるその臭いに顔を顰め何度も瞬きを繰り返した。
「はあ?気に入らんか?」
ハグリッドが巨大な瓶を片手に振り返る。
気に入らんか、と言う事は、彼はこの匂いを気に入りわざとその匂いを振り撒いているということだ。ソフィアは玉ねぎとアルコールと何やらとびきり甘い匂いを混ぜたような悪臭にくぐもった声で「ワックスか何か?」と聞いた。
「あー…オー・デ・コロンだ。ちとやり過ぎたかな、…落としてくる。待っちょれ…」
頬を赤くしたハグリッドが気まずそうにモゴモゴと髭の奥で呟き、どすどすと足音を響かせ小屋から出て行った。窓から外の様子を覗き見れば、桶に入った水で乱暴に体を洗っているのが見える。
「コロンだって?ソフィアのとは全然違うね」
「んー…まぁ、人の好みは色々だもの…」
ソフィアはまだ小屋の中に漂う悪臭を少しでもマシにするために窓を開け外から新鮮な空気を呼び込んだ。雨が少し小屋の中にはいってしまうが、今はこの臭いをどうにかするのが先決だろう。
「ソフィアのは凄く良い匂いよね…マルフォイの母親と同じって言うのが…ちょっと
「まぁ…そんな事、言っちゃダメよハーマイオニー?匂いを褒めてくれるのは嬉しいけど…」
ハーマイオニーはソフィアの首元に顔を近づけくんくんと匂いを嗅ぐ。ふわりとさわやかな甘い匂いが鼻腔をかすめ、小屋の中でここだけが唯一澄んだ空気だとハーマイオニーは思った。この匂いがマルフォイの母、ナルシッサと同じだと──あの人を見下すような冷たい目をする女性と同じだと思うと、良い気はしなかったが。
「ハグリッドがオー・デ・コロンなんてね…」
「今日は、凄くおめかししているわよね?」
「髪もちょっと…あー…いつもの方がマシだよね」
ハーマイオニーはごしごしと顔を洗っているハグリッドの様子を見ながら訝しげに呟く。ハグリッドと出会ってから一度だってオー・デ・コロンをつけている姿なんて見た事がない。いくら客人が来ているからといって、気合が変な方向に入りすぎではないだろうか?
ハリーは声を低くしながら無理矢理べっとりと堅められ結われている髪を見て呟く。それにはソフィアとハーマイオニーも同意であり、無言のままに3人は顔を見合わせ頷いた。
「見て!」
ずっと窓の外を見ていたロンが小声で叫ぶ。ソフィア達はすぐに窓の外を見て──先程には比べ物にならないならないほど頬や耳を赤く染めたハグリッドを見た。
ハグリッドは馬車から降りてきたマクシームとボーバトン生達の集団に近づくと、マクシームと顔を赤くしたまま何かを話し、そしてそのまま玄関まで向かってしまった。
「ハグリッドったら、あの人と一緒に行くわ!私たちを待たせてるんじゃなかったの?」
ハーマイオニーは憤慨したように言う。ボーバトン生のつんとすまたような顔、そして少しも友好的では無かった彼らに、ハーマイオニーは良い印象を持っていない。大広間での彼らはどう見てもダームストラング生とは違い、偏屈な気がしたのだ。勿論それはハーマイオニーの偏見も混ざっているが、大広間での彼らを見ればそう思ってしまうのも仕方のない事だろう。
「ハグリッド、あの人に気があるんだ!」
「えっ!?そうなの?」
「ああ、見ろよ。あの顔!…もし2人に子どもができたら、世界記録だぜ?2人の赤ん坊なら、きっと重さ1トンはあるな」
ロンの確信めいた言葉にソフィアは驚きながら遠ざかっていくハグリッドとマクシームの背中を見つめた。
ハグリッドのあのおめかしは、マクシームに見せるためだったのか。それならば…確かに、恋をしているのかもしれない。同じように大柄な2人は、たしかに──お似合いかもしれない。
「僕たちも行こうか」
ハリーはソフィア達を促し、小屋を出て扉を閉めた。雨がしとしとと降る外は真っ暗になりとても寒く、ソフィア達は駆け足になりながら必死にローブを身体に巻きつけ芝生の斜面を登り始めた。
4人が入った時には、蝋燭の灯りで照らされた大広間はほぼ満員だった。
炎のゴブレットは玄関ホールから空席であるダンブルドアの席の正面に移されている。
フレッドとジョージも髭をすっかりと無くしたいつもの姿で席についていた。炎のゴブレットに名前を入れる事はかなわなかったが、どうにか気持ちを切り替えこの素晴らしい祭りごとを楽しむ気持ちになったらしく楽しげにリーと話している。
ソフィア達はフレッドとジョージのすぐ隣に座り、ソフィア達を見たフレッドはニヤリと笑いながら「アンジェリーナだと良いよな」と声をかけた。
「私もそう思うわ!」
「きっと、もうすぐ答えが出るはずよ!」
何とかグリフィンドール生が代表選手になってほしい、ソフィア達だけで無く、グリフィンドール生全員がそう思っているだろう。机の中程に座っているアンジェリーナは緊張した表情だったが友人達に代わる代わる声をかけられ「きっと選ばれるよ」と励まされているうちにいつもの溌剌とした明るい笑顔を取り戻していた。
ダンブルドアが大広間に現れ、まずはハロウィーン・パーティが開催された。大皿には豪華な料理が並ぶが、いつもなら心奪われるこの光景もどこか色褪せて見える。大広間にいる全員がハロウィーン・パーティよりも炎のゴブレットに注目し、早く代表選手が誰なのかを知りたかった。
ついに金の皿がきれいさっぱりと元の状態になり、ダンブルドアが立ち上がった。
いよいよだ。それを察した生徒達は一瞬にして鎮まりかえり、ダンブルドアを期待と緊張、そして興奮の熱が篭った目で見つめる。
生徒だけでは無く、教師やマクシーム、カルカロフもどこか緊張した面持ちでダンブルドアの言葉を待つ。クラウチだけが、疲れたようなうんざりとした顔をしてにこりともせずむっつりと気難しい表情を崩さなかった。
「ゴブレットはほぼ決定したようじゃ。わしの見込みでは後1分程じゃの。さて、代表選手に選ばれたらその者たちは、大広間の1番前に来るがよい。そして教職員テーブルに沿って進み、隣の部屋に入るよう。そこで、最初の指示が与えられるだろう」
ダンブルドアは教職員テーブルの後ろにある扉を指差した後、杖を取り大きく一振りした。
とたんにジャック・オ・ランタンを残して後の蝋燭が全て消え、部屋はほとんど真っ暗になった。
炎のゴブレットは大広間の中で一際大きく煌々と輝き、キラキラとした青白い炎が目に痛い程だった。
1分。今までの中で最も長いその時間に、誰もが緊張と興奮の入り混じる顔でゴブレットや、自身の腕時計を見ていた。
「──来るぞ」
ハリーの2つ離れた席にいたリーが腕時計を見ながら呟いた。
1分。
それが経過した途端ゴブレットの炎が突如赤くなった。火花を散らせながら先ほどより大きな炎が燃え上がり、高く伸びる。
炎の先から焼け焦げた小さな羊皮紙が一枚、ハラリと降りてきた。
ダンブルドアは器用にその羊皮紙を捕らえ、再び青白くなった炎の灯にかざしながら書かれた名前を読んだ。──全員が、固唾を飲む。
「ダームストラングの代表選手は。──ビクトール・クラム!」
力強く、はっきりとしたその言葉に大広間中が歓声を上げ拍手を大きく鳴らした。
「そうこなくっちゃ!」とロンは喜び一際大きく痛いほど手を叩く。
クラムはスリザリンのテーブルから立ち上がり、前屈みになりながらダンブルドアの前まで歩き、一度軽く頭を下げた後、教職員テーブルの前を通り奥にある部屋の中に消えた。
「ブラボー!ビクトール!わかっていたぞ、君が選ばれると!」
カルカロフの興奮した声は、拍手喝采の中でもよく響いた。それを聞いたクラム以外のダームストラング生達は重いため息を吐き、沈黙した。カルカロフがクラム贔屓だというのは今に始まった事ではない。彼らは最終候補生に残ったものの──どこか、そうなるだろう予感はしていた。
「残念だったね、ヴェロニカ」
「ああ…。まあ、ビクトールを応援するとしよう」
ルイスの言葉に、ヴェロニカは小さく頷いた。
ヴェロニカも代表選手に選ばれたい気持ちは勿論あったが、ゴブレットの決定なのだ、仕方のない事だとすぐに気持ちを切り替え友人の勝利を願った。
拍手とお喋りが収まり、再び大広間に沈黙が落ちる。今や生徒達は再び赤く燃え上がったゴブレットに注目していた。次はボーバトンだろうか?それとも、ホグワーツから選ばれるのだろうか?
2枚目の羊皮紙が飛び出し、ダンブルドアは同じように力強く言う。
「ボーバトンの代表選手は、フラー・デラクール!」
また大きな歓声と拍手が響く。
優雅に立ち上がったフラーは白く美しい顔を僅かに赤く染め、胸に手を当てて恭しく頭を下げた。はらりと流れたシルバーブロンドの髪を後ろに払い、フラーは堂々と滑るようにダンブルドアの前へと向かう。
「まぁ、見てよ。みんながっかりしてるわ」
ハーマイオニーは残されたボーバトンの生徒の方を顎で指した。選ばれなかった女の子が2人、机に伏せてわっと声を上げて泣いている。彼女達もまた、どうしても選ばれたかったのだろう。
デラクールも部屋の中に入ると、今度はすぐに沈黙が訪れる。残すのは、ホグワーツの代表選手だけだ。興奮と緊張で張り詰められた空気がホグワーツ生の肌を突き刺した。
皆、我が寮の寮生が選ばれてほしい──それをただ願っていた。
三度炎が赤く燃え上がる。
吐き出された羊皮紙を捕らえたダンブルドアは、生徒達を見回してゆっくりと、朗々と告げた。
「ホグワーツの代表選手は──セドリック・ディゴリー!」
「ダメ!!」とロンは叫んだが、その声は隣にいたハリーにしか聞こえなかっただろう。ハッフルパフ生が総立ちになり喉が枯れるほどの大歓声を送り、叫び、足を踏み鳴らす。
セドリックはにっこりと笑いながらそれに答え、教職員の後ろの扉へと向かった。
アンジェリーナが選ばれなかった事に、やはりグリフィンドール生としてソフィアは残念に思ったが、セドリックは悪い人ではない。むしろかなり優等生であり模範生だと聞いている。ホグワーツ生として、彼を応援しようとすぐに気持ちを切り替えた。
大歓声と拍手がようやく終わった頃、ダンブルドアは手を広げ「結構、結構!」と嬉しそうに生徒達に呼びかけた。
「さて、これで3人の代表選手が決まった。選ばれなかったボーバトン生も、ダームストラング生も含め、皆揃って、あらんかぎりの力を振り絞り、代表選手を応援してくれる事と信じておる。選手に声援を送る事で、皆が本当の意味で貢献でき──」
ダンブルドアは言葉を不自然に止めた。
それを怪訝な目で見つめるものは居ない。
誰もが、
火花が迸り、空中高く炎が上がり、そして、羊皮紙を吐き出した。
ダンブルドアがすぐにその羊皮紙を掴み、今までの笑みを消して真剣な目で食い入るようにそこに書かれた名前を見つめた。
ダンブルドアだけではない、大広間にいる全員が、それを見つめる。
長い間、ダンブルドアは沈黙していた。
そして、咳払いを一つ零し、低い声で名前を読み上げる──。
「ハリー・ポッター」
その名前が言われた途端。
ハリーは全ての目が自分に向けられたのを感じながら、ただ立ち上がる事も、動く事も出来ずぽかんと口を開けて座っていた。
驚愕し顔を蒼白にさせているハリーの横顔を見たソフィアもまた、他の皆と同じように驚きハリーを見つめる。
誰も、拍手はせず、驚愕の後に訪れたのは激しい怒号であり、その騒音は大広間を震わせた。
凍りついたように座ったままのハリーをよく見ようと立ち上がる生徒までいる。
上座のテーブルではマクゴナガルが立ち上がり切羽詰まった表情でダンブルドアの側によると何かをダンブルドアに囁いていた。ダンブルドアは微かに眉を寄せ、彼女の方に体を傾け耳を寄せている。
ハリーはソフィア、ロン、ハーマイオニーの方を振り返った。
グリフィンドール生全員があんぐりと口を開け、ハリーを見つめている。
「僕、名前を入れてない。…名前を入れてない事、知ってるだろう」
ハリーは自分の喉が酷く乾いていることに気づいた。口から出た言葉は掠れ、震えている。
ソフィア達は愕然としたまま、ハリーを見つめ何も言う事が出来なかった。
「ハリー・ポッター!」
ダンブルドアがまたハリーの名前を呼び、マクゴナガルも「ハリー!ここへ来なさい!」と叫びながらハリーを呼ぶ。
「ハリー、行かないと…」
ソフィアがハリーに囁いた。
ハリーは立ち上がりざまにローブの裾を踏んづけてよろめきながら、グリフィンドールとハッフルパフのテーブルの間を進む。
ハッフルパフ生達は冷たく、憎しみにも似た眼差しででハリーを見つめ、近くを通った途端口々に暴言を吐いた。
ダンブルドアの前に立ったハリーは、自分を見つめるその目が少しも微笑んでいない事に気がつく。
「さあ…あの扉から、ハリー」
静かな声で促されるまま、ハリーは教職員テーブルの前を通り3人の代表選手達が入った扉に手をかける。──ノブを掴む手が、震えていることにハリーだけが気がついた。
パタン、と小さな音をたて扉が閉まり、ハリーの姿が見えなくなった途端再びそこかしこから怒りの声が上がる。
特に、ハッフルパフ生とスリザリン生からの声が大きいだろう。グリフィンドールと犬猿の仲であるスリザリンはハリーがズルをして代表選手になったに違いないと怒りを爆発させ抗議にも似た叫びをあげる。
ハッフルパフ生は普段はグリフィンドールと友好的な関係を築いていたが、セドリックが代表選手に選ばれた後、水を差すようなハリーの仕打ちが許せなかった。
ダンブルドアは少しも静かになることのない生徒達を見て、静かな目で杖を振るう。パンパンと杖先から花火と爆竹のような音が上がり、漸く──ありありと不満げな顔をしていたが──生徒たちは静まり返った。
「代表選手の発表はこれで終了じゃ。──夜も更けた、皆すぐ就寝するように」
ダンブルドアはそれだけを言うとすぐに教職員たちと共に後ろにある部屋に向かう。
静寂が落ちていた大広間に、また怒りの声がそこかしこから上がる。
何の説明もないダンブルドアに、17歳以下にも関わらずホグワーツ2人目の代表選手として選ばれたハリーに、誰もが激しく怒っていた。
しばらく騒ついていた生徒たちだったが、ここにいても埒があかないとわかり、ぱらぱらと各寮へ戻った。
グリフィンドール生達は、まだ暫く座ったままでポカンとしていた。流石に、この雰囲気の中でハリーが選ばれた事を喜ぶ事が出来るものなど居ない。
まず、アンジェリーナが立ち上がり友人達に連れ添われ大広間から出て行った。それにつられて何人かがようやく思い出したように立ち上がり、こそこそと話し合いながらグリフィンドール塔へ向かう。
ハーマイオニーとソフィアは殆どのグリフィンドール生が戻った後ちらりと視線を交わし、無言のまま頷くと立ち上がった。
しかし、ロンはまだハリーが消えた扉の先をぽかんと口を開いたまま見つめている。
「ロン、行きましょう」
ハーマイオニーが促して、ようやくロンは視線を扉から外すと「ああ──うん」と心無い返事をして立ち上がった。
ロンは不自然なまでに無言のまま、足早にグリフィンドール塔へ向かう。
グリフィンドール寮の前では既に殆どのグリフィンドール生が集まり、談話室に入ることなく太ったレディと、その隣にいる魔女の話す言葉を興味津々で聞いていた。
どうやら、この魔女は選手たちが集められた部屋にいたらしい。何があったのか、あの中でどんな会話がなされたのかを詳細に披露する魔女の言葉を聞いたグリフィンドール生達は談話室に入った後グリフィンドール生達は自分達の寮から──なぜなのかはわからないが──代表選手が出た事実に歓喜し、大盛り上がりしていた。
グリフィンドール生は、基本的な性質として祭りごとや馬鹿騒ぎを好む、楽しければいいと楽観的に考える者が多く、彼らにとってハリーが自分で名前を入れたかどうかは重要ではない。
彼らにとっては、グリフィンドール生が選ばれた。──それが何よりも重要だった。
「ロン!ハリーはどうやって年齢線を超えたんだ?俺たちに方法を教えてくれればよかったのに!」
「まじですげえ!流石ハリーだ!俺らとは違う!」
きっと、仲のいいロン達ならその秘密を知っているに違いないと談話室に足を踏み入れた途端、すぐにフレッドとジョージがロンに駆け寄り肩を組んだ。
だがロンは身を捩り振り払うと、俯いたまま「僕、知らない」と小声で呟き興奮に湧くグリフィンドール生をチラリと見た後すぐに男子寮へ走って行ってしまった。
フレッドとジョージは「なんだ?」と言いながらも特に気にすることは無く、リー達がハリーの健闘を祈り興奮する中にすぐに戻って行った。
「…部屋に、いかない?」
「ええ、そうしましょう」
ハーマイオニーの誘いに、ソフィアはすぐに頷いて興奮する生徒達の間を縫い、女子寮への階段を上がった。
部屋にはまだラベンダーとバーパティは居なかった。きっと、他の生徒と談話室で話し込んでいるのだろう。
ソフィアは自分のベッドの上に座り、ハーマイオニーもすぐにその隣に座った。
暫く、2人の間に沈黙が落ちる。
「ハリーは、入れてないわ。…だって、選ばれた時…ハリー凄く動揺して、真っ青だったもの」
ソフィアは指を組みながらハーマイオニーを見つめ真剣に伝えた。ハーマイオニーも、同じ気持ちであり頷く。
「私も、そうだと思う。…けど…みんな、信じてなさそうね」
「そうね…。……もし、課題中の事故に見せかけてハリーを殺す目的があるのだとしたら…本当に、大変なことよ。…誰が…何故…?」
ソフィアは目を伏せ、じっと何もない床板を見た。
考えられるのは、やはり、
「…わからないわ。…でも、…本当に心配だわ…。…ハリーもだけど──ロンの事も」
「…ちょっと、様子がおかしかったものね。ロンは…ハリーが入れたのだと思っているみたいだし…」
ハーマイオニーは唇を噛み、動揺を必死に隠そうとしているようだったが、そわそわと体が動いている。ロンはハリーが選ばれて喜ぶ事も無く、ただ奇妙なまで無言で──苛立ち、不機嫌そうだった。
「…きっと──ハリーの口から直接聞けば、ロンはわかってくれるわ。ハリーが入れたんじゃないって…。…そうよね、ソフィア…」
「ええ、きっと…大丈夫よ。今は混乱してるだけだと思うわ」
不安げに目揺らすハーマイオニーの肩を引き寄せれば、ハーマイオニーはソフィアの肩に頭を預け「うん…そうよね」とぽつりと呟いた。