【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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196 先生の物真似!

 

 

 

第一の課題が行われる前の週の土曜日、三年生以上の生徒は全員ホグズミード行きを許可された。

ソフィア達はずっとこの城に居るよりは、少し気晴らしに外に出た方がいいとハリーに進め、ハリーは初めは勿論そのつもりだったが──日刊預言者新聞が発行された後、その気持ちは萎んでいた。

村人達もきっとあの日刊預言者新聞を読んでいるだろう、もし沢山の魔法使いに囲まれた話しかけられてしまえば──そんな所をホグワーツ生に見られたら、また何を言われるかわかったものじゃない。

 

 

「ハリー、ホグズミード行くよな?ハニーデュークスに行って新商品が無いか見てみようぜ!」

「そうよ、ゾンコにも行きたいし、三本の箒のバタービールが飲みたいわ!」

「新しい羽ペンも欲しいの、ねぇハリー、どうかしら?」

 

 

ロン、ソフィア、ハーマイオニーの必死の誘いに、ハリーは悩んだものの、結局頷いた。

 

 

「…うん、僕もいくよ…でも、透明マントを被っていく」

 

 

こうしてハリーは寮で透明マントを被り、ソフィア達とホグズミードに出かける事となった。

 

ホグズミードでは沢山のホグワーツ生が居て、楽しそうに友人達と話しながらハニーデュークスの新商品陳列棚を覗き込んでいたり、ゾンコの悪戯専門店の店主が掲げるゲロゲロガムを遠巻きに眺めていた。

 

前を歩くソフィアとロンとハーマイオニーの後ろをこっそりとつけながら、ハリーは素晴らしい解放感を噛み締めていた。

ホグワーツ生の殆どが「セドリック・ディゴリーを応援しよう」のバッジをつけていたが、ハリーに意地の悪い野次を吐くことも、あの記事について揶揄うことも無かった。

 

 

ハニーデュークスについたソフィア達は商品を見物するフリをしながら何気なくハリーが他の人たちとぶつからないように背に庇いながら奥へ進む。

 

 

「あっ!ソフィア見て、このチョコレートすごく美味しそう!」

「うわー!本当だわ、お昼ご飯の前に…ちょっと味見しない?」

 

 

ハーマイオニーが指差したチョコレートは真っ白なクリームがたっぷりと挟まれたものだった。中々に重そうで甘そうなチョコレート菓子だが、食べ盛りであり若い2人には関係のない話だろう。

すぐにハーマイオニーとソフィアはそのチョコレートを手に取るとレジに向かう。

 

 

「…そこに居るよな?…おい!これ見てみろよ、星屑ヌガーだって!食べたら目の中に星が出来る…へぇ!1袋買ってわけないか?」

 

 

ロンは新商品のポップが付いている青いヌガーが数個入った袋を手に取り、ハリーがいるだろう空間に向けて話しかけた。

しかし、いくら待っても返事はなく──ロンはキョロキョロと辺りを見渡す。もっとも、見渡したところで見えるものでもないが。

 

 

「…おい?…いないのか?いるんだろ?」

 

 

1人、小声でボソボソと話すロンに気づいた見知らぬ下級生の集団が怪訝な顔でロンを見て数歩遠ざる。ロンはその集団に向けて曖昧に笑った後、むすりとした表情で商品棚を見つめた。

 

 

「──あ、ごめん、さっきのチョコ僕も食べたくて、ソフィアに頼んでたんだ…何か言った?」

 

 

人にぶつからないように器用に避けながらハリーはロンの元に戻ると、その不機嫌そうな顔を見てもしかして自分がいない間に話しかけていたのかと、すぐにマントの中からロンのローブを掴み、引っ張った。

ロンはちらりと見えない何かに引っ張られているローブを見て、眉を寄せたままぶつぶつと呟く。

 

 

「…今度はみんな、僕をチラチラ見ることになるな。僕が独り言を言ってると思って…」

「ごめんごめん。…見られるのって、嫌だろ?」

「…ああ、こんな注目はごめんだね」

 

 

ハリーはマントの下でニヤリと笑う。

ロンも──ハリーの顔が見えていないにも関わらず──同じようにニヤリと笑った。

 

また独り言を言っているように見えるロンに、遠巻きにしていた集団がまた怪訝な目でロンを見て指差しながらコソコソと話していた。

流石に気まずくなったロンは星屑ヌガーを一袋掴んだまますぐにその場を離れてレジに向かった。

 

 

「これ、一緒に買わないか?」

「勿論、いいよ。──はい、これ」

 

 

レジに並びながらロンは星屑ヌガーの包みを少し上げる。すぐにハリーは頷き、ロンの空いている片手にガリオン金貨を一枚乗せた。

 

星屑ヌガーを購入したロンは、外にいるソフィアとハーマイオニーを見つけると無言でハリーに「出るぞ」と指で合図をし、人混みを掻き分け表へ出た。

 

ソフィアとハーマイオニーは幸せそうにクリームたっぷりのチョコレートを頬張り、両手で頬を押さえながらその味を堪能していた。

 

 

「うーん!美味しいわね!」

「そうね!けど…喉が乾くわ」

「三本の箒でもいく?」

 

 

ロンは星屑ヌガーの包みを開けて一つ口の中に放り込んだ。甘い味と、パチパチとソーダのように口の中でヌガーが弾ける。

目がむずむずと痒くなってきたような感覚にロンは何度も瞬きをしながらハーマイオニーとソフィアを見た。

 

その瞬間──。

 

 

「あはは!ロ、ロン、目が──!」

「ぷっ…あはははっ!!す、凄いことになってるわよ!?」

「な、なんだよ?──え?そんなにやばい?」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは危うく口の中に入れていたチョコレートを吹き出しそうになり、慌てて口を押さえながら身を捩って爆笑した。

目に涙を浮かべながら笑うソフィアとハーマイオニーに、ロンはそんなにすごいの?とハリーが居るだろう方向を振り向く。

 

 

「──ぶっ!!──げほっ!ごほっ!」

 

 

ロンの目はキラキラとマグル界にある昔風の少女漫画顔負けな程にキラめいていた。瞬きのたびに星屑がパチパチと弾けるだけではなく、ロンの目の中には星が輝き、宝石のようになっている。

 

あまりの滑稽さに、ハリーは思い切り吹き出してしまい、声を抑えようとするあまりに盛大に咽せてしまった。

 

こうやって、ソフィア達が笑っているのは久しぶりかもしれない。ふとロンはそう思うと悪戯っぽく笑い、ソフィアとハーマイオニーとハリーの前でこほん、と一つ咳をこぼした。

ずいっと背筋を伸ばし、やや見下ろすように顎をくいっと上げ──一体どうしたんだと、笑い震えながらソフィア達が見守る中、ロンはぎゅっと眉をひそめ眉間に皺を作り、口をへの字にして自分が出せる精一杯の低い声を出した。

 

 

「我輩の授業は魔法薬の真髄を学ぶ!」

「──ぶっ!!」

「──くっ!!」

「っ─ちょっ…!」

 

 

ロンが誰の真似をしているのかわかり──それも、絶妙に似ている──ソフィア達は真っ赤な顔をしてぷるぷると震えた。

 

 

「ポッター!グリフィンドールに200点の減点だぁっ!!」

「ははははっ!や、やめて、やめてロンっ!!」

「だ、だめっ!お、お腹痛っ…あははは!」

「目、目がっ…目がきらめいてるスネイプって…!しかも、似てるんだけど!?」

「なぁにを笑っているミス・プリンスっ!今日も罰則だっ!」

 

 

ロンは眉を寄せ口をへの字にしたままハーマイオニーとソフィアを睨み見る。だが、その目は乙女のようにキラキラと輝き続けている。

あまりのギャップ。それに無駄に完成度の高い声真似に、ソフィア達は明日、間違いなく腹筋が筋肉痛になるだろうと思った。

 

ソフィアは笑い過ぎて過呼吸のようになり、無言でばしばしとロンの肩を叩き、ハーマイオニーは笑いすぎてまともに立てずロンの腕にしがみつき、ハリーはその場にしゃがみ込み必死に笑い声を押し殺す努力をした。

 

道の真ん中で震えながら爆笑しているソフィアたちを見た者たちは、迷惑そうな目で睨みひそひそと遠巻きにしていたが、久方ぶりに愉快な気持ちになったソフィア達は、そんなこと微塵も気にしなかった。

 

 

ロンがヌガーを食べ終わり、目が通常通り戻った頃、ようやくソフィア達は何とか笑いの渦から脱却する事が出来、笑いすぎて喉が渇いたソフィア達はちょっと休憩しよう、と三本の箒へ向かった。

 

 

「ああ…ロン、スネイプ先生の声真似、すっごくうまいわ!特技に出来るわ…!」

「ダメよソフィア!お、思い出させないで!」

 

 

三本の箒の空いている4人がけの席に着いたソフィアは頬を赤くしてくすくすと笑う。ハーマイオニーは思い出しただけでまた笑いが込み上げてきてしまい、必死に頬を何度も叩き必死に堪えようとしたため、笑っているような真面目なような、なんとも複雑な顔をしていた。

ロンは隣の何もない空間から押し殺した笑い声が聞こえてくる事に、満足そうににっこりと笑った。

 

温かくてとびきり幸せな甘さのバタービールを飲みながら、ハリーはロンの隣に座り、ソフィア達の話に耳を傾けていた。

時々、小声で頷きくすくすと笑う。

 

ふと、ハリーはもし自分が代表選手に選ばれていなかったらどうなっていただろうか、と考えた。

きっと、ここでソフィア達と第一の課題はなんだろうかと楽しげに話し合っているだろう。

ソフィア達は、課題について何も言わなかった。きっと、気を遣ってくれているのだろうと、ハリーにはわかっていた。

何の心配もなく、100年ぶりの三校対抗試合に胸を高鳴らせ、セドリックをホグワーツ生として心から応援していただろう。

 

 

 

「見て!ハグリッドよ!」

 

 

ハーマイオニーの言葉に、ソフィア達は扉を見た。しかし、ハグリッドは扉から入ってきたのではなく、元から店内に居たようだ。

あの大きな体のハグリッドがいたなんて、何故気が付かなかったのだろうかとソフィアは思ったが、その隣にムーディがいる事に気がついた。

どうやらハグリッドは身体を屈めてムーディと話していたらしく、そのおかげで人混みに紛れていたのだ。

 

 

ハグリッドはいつものように巨大なジョッキを置いていたが、ムーディは自分の携帯用酒瓶から飲んでいて、何も注文していなかった。

 

 

ジョッキが空になったハグリッドは、女店主のマダム・ロスメルタに一言二言話した後立ち上がり、扉に向かった。

ソフィア達はハグリッドが気がつかないかと手を振ったが、残念ながらこちらには全く目を向けなかった。

 

しかし、ムーディは立ち止まると、店内の隅のテーブルに着くソフィア達の方を魔法の目で見てハグリッドの背中をちょんちょんと叩き、何事か囁いた。

 

 

「あ、ムーディ先生は気付いたみたい」

 

 

ソフィアが呟いたのと同時にハグリッドとムーディは引き返し、ソフィア達のテーブルにやってきた。

 

 

「元気か?ハーマイオニー、ソフィア、ロン?」

「こんにちは」

「ええ、とっても元気よ!」

「めちゃくちゃ面白い事があったからね」

 

 

ハグリッドの大声に、ハーマイオニーとソフィアは笑顔で答えたが、ロンは悪戯っぽくニヤリと笑い、それにつられて忘れかけていたセブルスの物真似を思い出したソフィア達はまた小刻みにぷるぷると震えた。

 

 

ムーディが片足を引き摺りながらロンのそばに来た時、ハリーは慌てて立ち上がり壁にぴたりと張り付いた。

きっと、ムーディは空席に見えて座るつもりだろう、足が悪いし。なら退かないと居るとバレてしまう。

 

 

ハリーはそう思ったが、ムーディはロンの側に立ったまま、低い声で笑った。

 

 

「いいマントだな、ポッター」

「先生の目…あ、あの…見える?」

「ああ、わしの目は透明マントを見透かす。そして、時にはこれがなかなか役に立つぞ」

 

 

まさか気がつかれているとは思わず、ハリーは驚いた。いや、ハリーだけでなくソフィア達も目を見開きムーディを見る。

ハグリッドも、きっとムーディがここにハリーが居ると教えたのだろう、彼の目にハリーは映らないが、にっこりと笑いハリーが居る場所を見ていた。

 

 

「ハリー、今晩、真夜中に俺の小屋に来いや。そのマントを着てな」

 

 

ハグリッドはメニューを読んでいるふりをしながら身を屈め、ハリーにしか聞こえないほど小さな声で囁いた。

 

身体を起こしたハグリッドはわざとらしく「ソフィア、ハーマイオニー、ロン、お前さん達に会えてよかった」と大声で言い、ウインクを一つ向けると、すぐにムーディと共に去っていってしまう。

 

 

「…ハグリッド、どうして真夜中に僕に会いたいんだろう?」

 

 

ハリーはロンの隣に座り直し、困惑した表情で呟く。まさかそんな事を言われていると思っていなかったソフィア達は驚き目を見張った。

 

 

「会いたいって?ハグリッドが?」

「一体何を考えているのかしら…行かない方がいいわよ、ハリー」

「うーん…何の用事なのかしら…シリウスとの約束もあるものね…」

 

 

ソフィアは注意深く辺りを見渡し、小声で呟く。

今日の夜はシリウスとの約束がある。

ハグリッドの元を訪れるならきっと時間ギリギリになってしまうだろう。

ハーマイオニーは行かない方がいい、と何度も言ったが、ハリーはハグリッドの用事が気になった。

 

 

「…僕、急いで行って、帰ってくるよ。…だって、ハグリッドが真夜中にこいだなんて…初めてだし」

「…確かに、そうね」

 

 

ハグリッドは夜中に校則を破って来いとは言わない。きっとその時間に見せたい何かがあるに違いない。

ハリーの言葉に、ソフィアは真面目な顔で頷いた。

 

 

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