【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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198 アクシオの練習!

 

 

 

ソフィア達は懸命に他の方法を探したが、ハリーが使えそうなものでドラゴンに効果的な魔法はついに、見つからなかった。

 

図書室から借りた沢山の本を抱え、ハリー達はまた花束を持つ少女の部屋へ戻っていた。

ハリーはもっと図書室で本を探したかったが、途中でクラムが現れてしまい、きっとファンの生徒達がすぐに現れうるさくなり集中出来ないから、とハーマイオニーが嫌がったのだ。

 

 

「うーん。あ!涙の呪い!…ああ、でも、難しそうね…」

「自分自身に呪いをかけるっていうのは?強くするの。難しいかしら…」

「ハリー、この前ゴイルにやった鼻呪いはどうだ?」

「ロン、ドラゴンの皮膚は魔法が効きにくいのよ、忘れたの?」

「ああーそうだった。うーん、もうクソ爆弾持っていったら?持ち込みは不可だっけ?」

「……ごめん、ちょっと黙っててくれない?僕、集中したいんだ」

 

 

口々に話すソフィア達に、ハリーはなかなか有効な魔法が見つけられない焦燥感からつい、苛立ってしまっていた。

ソフィア達は顔を見合わせぴたりと口を閉じ、黙々と本のページをめくった。

 

 

暫くは無言だったが、無言ならそれはそれでハリーの頭は真っ白になってしまい、本をいくら読んでも文字が全く頭に入ってこなかった。

ハリーは呻めきながら広げた本の上に額を押し付け頭を掻きむしる。

どうすれば良いのだろうか、ドラゴンをやっつける課題だったら、一撃で僕はぺしゃんこにされてしまうに違いない。それとも吐かれた炎で真っ黒焦げになるかどちらかだ。

 

 

「…ソフィア、君なら…どうする?」

 

 

ハリーは唸りながらソフィアに聞いた。

ソフィアはハリーが知る中で最も魔法を沢山知っているし、ドラゴンが好きだ、その生態についても詳しく知ってるかもしれない。

もしソフィアなら、どうしただろうか、何かヒントになる事はないかと、一縷の望みをかけたのだ。

 

 

「え?…うーん…ドラゴンの種類はなんだった?」

「えっ…えーと…ハンガリーなんとか…と、スウェーデン…ス…なんとかと、ウェールズ普通…なんとか…と、中国の火の…って言ってたような…」

 

 

ハリーは懸命にチャーリーがハグリッドに言っていた言葉を思い出した。どれも中途半端な情報だったが、ソフィアは少し考え込みながらも口を開く。

 

 

「ハンガリー・ホーンテールと、スウェーデン・ショートスナウト種と、ウェールズ・グリーン普通種と、中国火の玉種ね。──課題が、仮に…ドラゴンを行動不能にするものなら…。

ハンガリー・ホーンテールはこの4種の中で最も凶暴で吐く炎がとても危険なの、炎を吐くドラゴンは多いけど、かなり遠くまで炎を吐くのが特徴ね、15メートルくらいかしら。警戒心がとても強いわ。それと、尻尾にも棘があるわ。私なら…そうね…結膜炎の呪いを使わずに、なら──ホーンテールは寒さに弱いの、氷魔法を試すわ。

スウェーデン・ショートスナウト種は…うーん、この子すばしっこいのよね…でも長距離を飛ぶのが苦手なの。私なら降りた時に地面をねばねばしたガムに変えて動きを封じるわ。この子も火を吐くけど、距離はそこまで長くないの、せいぜい4メートルね。

ウェールズ・グリーン普通種はね!この子すっごく鳴き声が綺麗だし、ドラゴンの中ではかなり大人しいの。人間を襲った記録もないわ。無駄な戦闘を嫌って人間を避ける賢い子なのね。…だから眠らせ魔法を試すわ、神経が昂ってなければ、効くかもしれないし。

中国火の玉種はね、この子も大人しいの。でもすっごく素早くて、頭が良いのよね…。炎は真っ直ぐ進まなくて、球みたいなのを吐くから、それを避けつつ…そうね、ゆっくり地面をねばねばに変えるわ。

…参考になるかしら?」

 

 

ハリーとロンとハーマイオニーはぽかんと口を開けた。

ソフィアは3人からの視線に、間違ったことを言っただろうかと肩をすくめる。

 

ハリー達は、ソフィアがこれ程ドラゴンについて詳しいとは思わなかった。たしかに、ソフィアはドラゴンの事が好きだ。だがその生態や、ハリーが言ったあやふやな名前の情報から的確に判断するとは思わなかったのだ。

 

 

「参考に…うん、なるよ、ありがとう」

「そうね、魔法を地面にかけるっていう手もあったわ!」

 

 

正直なところ、参考になりそうなものはドラゴンの危険度ぐらいだろう。どの魔法もハリーが使えるものでは無く、難易度の高いものばかりだった。

だが、ハーマイオニーは周りにあるものに魔法をかけるという発想に目を輝かせ物凄い勢いで本を開いた。それなら何か良い魔法が見つかるかもしれない。

 

 

「ソフィアが戦いたくないドラゴンはなんだい?」

「どのドラゴンとも、戦いたくないわ」

 

 

ロンの言葉にソフィアはキッパリと断言した。

 

 

「だって、チャーリーは営巣中の母親ドラゴンって言ったんでしょう?…その時期のドラゴンは、とても神経が尖ってて凶暴なの。大事な卵を守ってる最中だもの…そんな子達を無理矢理連れてきて、課題にするなんて…可哀想だわ」

「…可哀想なのは、そんなドラゴンと戦う僕たちだよ」

 

 

ハリーの嫌そうな呟きに、ソフィアは「まぁ、そうだけど」と口籠った。

 

 

その後ソフィア達はなんとか良い魔法はないかと探したが、残念ながら見つかる事は無かった。

ダメ元でハリーはソフィアに結膜炎の呪いを教えてほしいと頼み込み、ソフィアはその魔法が書かれている本をハリーに見せたが──どう考えても1日2日で使いこなせなさそうだとわかったハリーは──何せ、ドラゴンに当てなければならない。その拒絶なドラゴンの小さな目に正確に当てる技術なんてハリーには無かった──諦めた。

 

 

 

 

 

その日の夜、ハリーはろくに眠れず、ロンのいびきを聞きながら何度も寝返りをうっていた。

ようやく微睡みかけた時には朝日が昇ってしまい、まだこの心地よい布団に包まれていたい、明日なんて来なければ良い──ハリーはそう思ったが、ロンに引っ張られ談話室へと降りていき、待っていたソフィアとハーマイオニーと共に大広間に向かった。

 

 

ドラゴンと戦うなんて、そんな事出来るわけがない、今すぐホグワーツから逃げ出したい、ハリーはそう考えていたが、大広間に広がる景色を見ているとその気持ちはすっと消えていった。

 

ホグワーツから逃げて、あのダドリーと一緒に過ごすくらいなら、ドラゴンに立ち向かった方が何倍もマシだ。

このホグワーツには、ハリーにとって何よりも幸せな思い出がつまり、かけがえのない友人達がいる。そして、密かに想いを寄せているソフィアも──…それを考えるだけで、ハリーの気持ちは少し落ち着いた。

 

 

「1限目は薬草学ね、行きましょう」

 

 

ソフィア達は授業開始のベルが鳴るギリギリまでハリーが皿の上のベーコンを食べ終わるのを待ち、立ち上がった。

 

ハリーはカボチャジュースを飲みながら立ち上がり、ふとセドリックもまた同じタイミングで立ち上がったのを見た。

 

 

ハグリッドにドラゴンを教えてもらった時、マクシームとカルカロフもドラゴンを見ていた。きっと、彼らはそれぞれの代表選手に課題のことを知らせるだろう。それなら、今選手の中でそれを知らないのはセドリックだけだ。──それは、フェアじゃない。

 

 

「後で温室で会おう。先に行ってて、すぐ追いつくから」

「でも、もうすぐ授業だぜ?」

「遅れちゃうわよ?」

 

 

ロンとソフィアの困惑した声に、ハリーは「大丈夫だから!」とだけ言うと扉から出ていったセドリックを追いかけた。

 

 

一体どうしたのかとハリーを見送ったソフィア達は顔を見合わせ首を傾げながら薬草学が行われる第三温室へ向かった。

 

 

 

ハリーは結局。授業開始のベルが鳴っても現れなかった。

ハリーが駆け足で現れたのは授業が始まり10分が過ぎたところであり、走った勢いそのままにスプラウトに遅刻を謝罪したハリーはすぐにソフィアの隣に並び小声で話しかけた。

 

 

「ソフィア、助けて欲しいんだ」

 

 

必死な言葉に、ソフィアはうっかりブルブル震える木の1番太い枝を──本来なら剪定する場所ではない枝を──切り落としてしまった。

しかしそれを少しも気にすることなく、ソフィアは心配そうに大きく目を開く。

 

 

「勿論よ、ハリー。どうしたの?」

「ソフィア、僕は呼び寄せ呪文を明日の午後までにちゃんと覚える必要があるんだ」

 

 

 

 

授業終了後、ハリーは何故 呼び寄せ呪文(アクシオ)が必要なのかをソフィア達に説明しアクシオの練習を始めるために足早に花束を持つ少女の部屋へ向かった。

 

アクシオを使い、ファイアボルトを手に入れドラゴンを翻弄する。たしかにそれはハリーが今使える可能性のある魔法の中で最も効果的戦略だろう。ハリーが誰よりも得意な事を生かす、これ以上にない方法だ。

 

 

「でも、ムーディ先生が教えてくれるのは意外ね」

「やっぱり、ほら、ムーディはハリーを守るために来たんじゃないか?シリウスもそう言ってたんだろ?」

「うん、僕もそう思う」

 

 

廊下を足早に進みながら不思議そうに言ったハーマイオニーの言葉に、ロンとハリーは息を弾ませながら答え、ソフィアも頷いた。

 

 

「きっとそうね。先生達は課題の内容を知ってるんだわ。ファイアボルトで、ドラゴンの目を回して行動不能にする事だって、きっとハリーには出来るわ!あなたは1番のシーカーだもの!」

 

 

ハリーはソフィアの言葉に、にっこりと笑った。

 

 

 

 

ロンが途中で大広間から取ってきたサンドイッチをつまみながら、花束を持つ少女の部屋で昼休みギリギリまでアクシオの練習に費やした。

 

 

「ハリー、じゃあまずは…いつも使ってる羽ペンからにしましょう。強く心の中でイメージするの、あなたの羽ペンがこの手の中にあることを…」

「うん、わかった…アクシオ!羽ペンよ来い!」

 

 

ハリーは全力で羽ペンを部屋の端から呼び寄せようとした。だがやはり上手くいかず、羽ペンは途中で失速し、ハリーの手に収まる事なく床の上を転がってしまった。

 

 

「ハリー、集中するの、集中よ」

 

 

ハーマイオニーは見守りながら何度も集中するようハリーに伝えた。

ハリーは懸命に集中しようとした、だが課題までに残された時間は短く、この魔法を使えるようにならなければ命はない。頭の中で獰猛なドラゴンの牙や轟轟とした炎がちらついてしまい、どうしても集中する事が出来ず、昼休み中に成功する事は無かった。

 

 

ハリーは授業をサボってアクシオの練習をしたかったが、ハーマイオニーは授業をサボる事を良しとせず「こんな時なんだから大目に見ても良いじゃない」というソフィアを無理矢理引き連れ数占いの教室へ向かってしまった。

ロンもあまりアクシオが得意ではなく、教える事が出来なかったために、ハリーはこんな事をしている場合じゃないのに、とぶつぶつ文句を言いながら占い学を終え、すぐに夕食を掻き込むように食べた後、再びソフィア達と花束を持つ少女の部屋で過ごした。

 

 

「さあ、練習開始よ!まずは、お手本を見せるわ。集中して、羽ペンが手の中にあるのを考えるの。羽ペンよハリー──ドラゴンじゃなくてね。…アクシオ!羽ペン!」

 

 

ソフィアは大きく杖を振るった。

その途端部屋の端にあった羽ペンは勢いよく飛び、磁石で引き寄せられるようにぴたりとソフィアの手に収まった。

 

 

「本当に、すごいね!」

「集中すれば、どんなものだって引き寄せられるようになるわ。…例えば…」

 

 

ハリーからの賞賛に、ソフィアは胸を逸らし誇らしげに笑顔を見せながら辺りを見渡す。そして、ぴたりとハーマイオニーで視線を止めるとにやりと悪戯っぽく笑った。

 

 

「アクシオ!ハーマイオニー!」

「きゃあっ!?」

 

 

びゅん!と勢いよくハーマイオニーはソフィアに引き寄せられ、ソフィアの胸の中に収まった。驚き、「もう!びっくりしたでしょ!」と怒るハーマイオニーに、ソフィアはくすくすと楽しげに笑った。

 

 

「人まで呼び寄せられるの?」

「まぁね。でも、目に見える範囲にした方が良いわ。じゃないとどこで何とぶつかるかわからないもの」

「…ファイアボルトじゃなくて、ソフィアとルイスを呼び寄せたらどうかな?」

 

 

ハリーは冗談で聞いたが、ソフィアは真面目な顔で「それは、ギリギリ違反になりそうね」と答えた。

 

 

 

アクシオの猛練習は夜の12時を過ぎても終わる事は無かった。

ハーマイオニーとソフィアは交代でハリーにアクシオを教え、ロンは声援を送り続けた。

 

ロンの声ががらがらになり声が掠れた午前2時ごろ、ようやくアクシオのコツを掴んできたハリーは部屋の端から大きくて重い辞書を手元に呼び寄せる事に成功した。

 

 

「よくなったわ、ハリー!」

「ええ、ちゃんと出来てるわ!」

「やったな、…げほっ…ハリー!」

 

 

ソフィア達は疲れきっていたが、それでも嬉しそうににっこりと笑う。

 

 

「うん、これから僕が呪文をうまく使えなかった時に、どうすれば良いかわかったよ」

 

 

ハリーは辞書をソフィアに手渡し、部屋の端まで下がった。今の感覚を忘れないうちに、もう一度成功させたかった。

 

 

「ドラゴンがくるって脅せばいいんだよ」

「追い詰められたら、いつもよりも力が出せるっていうものね」

「うん。…それじゃ、やるよ。──アクシオ!辞書よ来い!」

 

 

重い辞書がソフィアの手を離れて浮き上がり、ハリーの手に真っ直ぐ飛び込んで来た。

ロンは声援が出なくなった代わりにパチパチと大きく拍手をし、ハーマイオニーも嬉しそうに飛び上がる。

 

 

「ハリー、あなた、出来たわよ!」

「ええ、これなら明日も大丈夫ね!」

 

 

ソフィア達はハリーに駆け寄り、心からハリーを褒めた。ハリーもやっとアクシオを使えるようになり嬉しかったが、明日のことを──もう、今日だが──考えると気が重かった。

 

 

「明日うまくいくといいけど。ファイアボルトはここにあるものよりずっと遠くにあるんだ、城の中に。僕は外で競技場にいる…」

「距離は関係ないわ。本当に集中すれば、ファイアボルトは飛んでくるもの」

 

 

ソフィアはハリーを励ますように真剣な目で見つめ、ハーマイオニーも大きく頷く。

それなら良いけど、とハリーが小さく呟いた弱音は、タイミング良くロンの大きな欠伸で掻き消された。

 

 

「もう、寝ようぜ?少しは寝ないと…」

「そうね。…もうここで寝ちゃいましょう。透明マントを持ってきてないし、今出て、見回りの先生達にバレたら面倒よ」

 

 

ソフィアは杖を振り部屋の中央にあったソファや机を部屋の端に移動させると、鞄の中から羊皮紙を4枚出しふかふかとした寝袋に変えた。

 

ハリーは奇妙な興奮で目が冴えていたが、ロンとハーマイオニーとソフィアはハリーが無事にアクシオを習得出来た安堵で急激に眠くなり、すぐに寝袋の中に入ると気絶するようにことりと寝入ってしまった。

 

 

パチパチと暖炉の炎が爆ぜる音と、微かな寝息だけが聞こえる部屋の中、ハリーは隣で眠っているソフィアの横顔を見つめる。

 

見ていると、ハリーは、きゅん、と胸が締め付けられるような感覚がした。

そういえば、ゆっくりとソフィアの顔を見るのは久しぶりかもしれない。代表選手に選ばれてしまってからと言うものの、それどころでは無かった。

 

もし、3つの課題を無事に終えることが出来たら──もし、僕が優勝して、輝かしい栄光を獲得する事が出来たら…ソフィアは、少しは僕の事を見てくれるだろうか?かっこいいと、思ってくれるだろうか?

 

 

もし、優勝する事が出来たら、ソフィアに気持ちを伝えよう。

好きだって、言うんだ。

 

 

ハリーはそう心に決め、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

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