【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

202 / 467
202 ソフィアの恋!?

 

 

 

12月に入り、寒い冬がついに本格的に訪れた。

魔法生物飼育学では、ハグリッドが尻尾爆発スクリュートが冬眠するかどうかを調べる為に大きな木箱に枕とふわふわの毛布を敷き詰めスクリュートを寝かしつけるように生徒たちに指示したが──結果、スクリュートは冬眠しない事がわかった。

 

無理矢理箱の中に押し込められたスクリュートは怒り狂い爆発し、箱を粉々にするとカボチャ畑中に逃げ惑う生徒たちを追いかけた。

スクリュートは、既に全ての個体が2メートル以上になっている。爆発は以前と比べて格段に威力が上がり、食らってしまえば軽い火傷では済まされないだろう。それに、棘もかなり長く鋭くなっている。

 

殆どの生徒がスクリュートに追いかけられ慌ててハグリッドの小屋に逃げ込み、バリケードを作って立て籠った。

 

しかし、ハリーをはじめソフィア、ロン、ハーマイオニー、ルイス、そして何人かの生徒は残って逃げ暴れる10匹のスクリュートを捕獲しようとなんとか努力した。

 

ソフィアはすぐに杖を取り出したが、それをみてハグリッドは悲鳴をあげ「スクリュートに何をする!」と怒った為──仕方なく、皆魔法を使う事なく取り押さえる事となった。

擦り傷と火傷だらけになりながらなんとか全てのスクリュートを捕らえる事に成功し、ソフィア達が息を切らせながらぐったりとしていると、どこからともなく──日刊預言者新聞の記者、リータ・スキーターが現れ小屋の柵に寄りかかっていた。どうやら、騒ぎを見物していたらしい。

 

 

リータはハグリッドにこの生き物はどこで手に入れたのか──ぜひ取材をしたいと頼み、ハグリッドは渋々頷いていまう。ハリーは日刊預言者新聞が真実を捻じ曲げて嘘ばかり書くという事を知っていたため、何とかしてやめさせたかったが、それをリータの前で告げることは出来ず、ハグリッドとリータが取材の日程を決めるのを黙ってみてるほかなかった。

 

授業終了のベルがなり、ハリーはここにいてはまたインタビューされてしまう、とすぐにソフィア達と共に学校へ駆け戻る。

 

 

「あの人、ハグリッドが言うこと全部捻じ曲げるよ」

「スクリュートを不法輸入とかしてなければいいんだけど」

 

 

ハリーが声を顰めてソフィア達に囁けば、ハーマイオニーも深刻な表情で頷いた。

ハリーとロンは顔を見合わせる──間違いなく、ハグリッドがやりそうなことだった。

 

 

「それよりも、問題なのは…生物を生み出していないかどうかね」

「え?…スクリュートは、ハグリッドが作ったってこと?」

 

 

ソフィアの呟きに、ハリーとロンは首を傾げた。生物を生み出す、だなんてそんな事はたしてハグリッドに可能な事なのだろうか。

 

 

「それなら──不法輸入よりも、やばいわね」

「そうね、届出を出してるのならいいけれど、うーん…」

 

 

生物を生み出すことはかなり困難だが、不可能ではない。

あれからソフィアとハーマイオニーは度々図書館で尻尾爆発スクリュートについて調べてみたが、それらしい魔法生物は見つけられなかった。突然変異体ならば、一体だけのはずだ。だが、あれは──孵ったばかりだと、ハグリッドが言っていた。

 

きちんと届出を出し、然るべき組織にスクリュートの生態を審査してもらえれば、新たな魔法生物として登録されるだろう。だが、無許可のまま飼育していたとすれば、かなり事態は深刻だ。害をなさない生物ならまだ罪は軽い、だがスクリュートはどう見ても、無害では無い。闇の魔法生物に分類されるほどでは無いだろうが、飼育に許可と申請が必要な危険魔法生物だと、言えるだろう。

 

 

「まぁ、ハグリッドは今まで山ほど問題を起こしたけど、ダンブルドアは絶対クビにはしなかったよ。最悪の場合、ハグリッドはスクリュートを始末しなきゃならないだけだろ。…あ、僕、最悪って言った?最善の間違いだな」

 

 

ニヤリとロンが笑えば、ハリーとハーマイオニーもつられて少し笑った。だが、ソフィアだけは勿論悲しそうな複雑な表情をしていたが。

 

 

 

その後昼食を取ったソフィア達はそれぞれ占い学と数占い学に向かうために別れた。

数占い学の教室に向かうまでの道で、ソフィアはぐるりと周りを見渡し近くに人がいない事を確認し、意をけっしたようにハーマイオニーの袖をぐい、と引っ張った。

 

 

「どうしたの?」

「あのね、ハリーの事なんだけど…。…ハリーって、私の事…その、好きだと思う?」

 

 

頬を染め、困ったように眉を下げながら言うソフィアに、ハーマイオニーは目を見開き息を飲み、「こっちに来て」と、近くの空き教室へと引っ張って行った。

 

 

「…どうして、それを聞こうと思ったの?」

 

 

ハーマイオニーは、もしかしてソフィアはやっぱりハリーのことが好きなのか、と思った。

特に他の男子と比べてハリーの事を意識しているようには見えなかったが、日刊預言者新聞での記事を読んだ時のソフィアの反応は──本人は気がついていなくとも、少しは意識しているのだとその表情が雄弁に物語っていた。

ソフィアは恋愛に対してかなり疎い。何か悩みがあるなら勿論、相談に乗るつもりであるハーマイオニーは優しく聞いた。

 

 

「あー…その、ルイスとジャックと、父様と…そんな話になって。ルイスはハリーが私の事好きなんじゃないのかって思ってるみたいで…」

「ちょ、ちょっと待って!その話をしたときに、スネイプ先生も居たの?」

「ええ…そうだけど…?」

「ああ──ソフィア…あなたって……残酷だわ…」

 

 

ハーマイオニーはぱちんと額を押さえ、大きなため息をついた。ソフィアはハーマイオニーの反応に戸惑い、「どうして?」と首を傾げる。

 

 

「…あのね。…ソフィアは、スネイプ先生が好きだから気がつかないかもしれないけれど…。スネイプ先生にとって、ハリーは最も憎い相手の子どもよ。それも、瓜二つの。そんな相手が自分の娘と…だなんて、嫌でしょ?」

「え?……あっ」

 

 

ソフィアもようやくハーマイオニーが何を言いたいのか察し──そして、数日前セブルスがハリーに対してあれ程まで拒否感を示したのがわかった。

聡いソフィアにしては、その結論に至るにかなり時間がかかってしまっただろう。勿論、セブルスがハリーの事を恨んでいるとは知っていたが、自分の恋愛話に関わるほどまで根が深いとは思っていなかったのだ。

ソフィアにとって、ジェームズとセブルスの問題はあくまで2人の問題であり、それに巻き込まれ八つ当たりをされるハリーは不憫だとは言え、その矛先が自分にも向かうとは思わなかった。

 

 

「…そうね。だから…父様、怒ったのね…」

「…そりゃあ…面白くはないでしょうね。……え?…ソフィア、ハリーが好きだって、スネイプ先生に言ったの?」

 

 

スネイプ先生が怒る、ということは、ハリーの事が好きだと、まさか父親に向かって宣言したのだろうか。とハーマイオニーは狼狽した。もしそれが本当なら、無自覚にとんでもなく傷付けているだろうし、ハリーは次の魔法薬学で死ぬかもしれない。そう、ハーマイオニーはかなり真剣に思った。

 

だがソフィアは慌てて首を振り「違うわ!」と小声で叫んだ。

 

 

「言ってないわ!ただ、その…ハリーが、私の事好きなのかなって話題になっただけで…。…それで、私、ちょっと…色々考えてて…ハーマイオニーに相談したくて…」

 

 

ソフィアは胸の前で指を組むともじもじと落ち着きなく指を擦り、視線を彷徨かせた。

なんともいじらしく、可愛いソフィアの行動にハーマイオニーは胸をきゅん、とときめかせながら、その落ち着かないソフィアの手を両手で包み込むように握った。

 

 

「勿論よ!それで?何を相談したいの?」

「あのね…多分、もうすぐ知ると思うんだけど…他の人には内緒ね?」

「ええ、なあに?」

「…クリスマスに、ダンスパーティが開催されるそうなの。それでね、ジャックは気になってる人とか恋人をパートナーにするっていって、ルイスにも気になる人がいるみたいで…。あ、それはいいんだけど。…それで、ルイスがハリーが私を誘ったら、きっと()()()()()()()。って言って…それで、その、私の考えすぎだとは、わかってるわ!でも、その…もし、誘われたらどうしたらいいの?」

 

 

「それで、それで」と何度も言葉に詰まりながら何とかソフィアは言いたい事を一気にハーマイオニーに話した。

ソフィアにとって、一番信頼できて、頼りになるのはハーマイオニーである。

あの日以来、ソフィアはふとした時にハリーの横顔を見つめ、目で追っている自分に気がついた。きっとあんな事をルイスが言うから、意識してしまっているだけだと自分に言い聞かせ、何とか平静を装いいつも通りに振る舞っていたが──そろそろ、限界だった。もう12月に入ってしまったのだ、きっと、もうすぐダンスパーティの事がマグゴナガルから言われるだろう。

 

ハーマイオニーはソフィアのしどろもどろな言葉を何とか理解すると、真剣な顔をしてソフィアの揺れる緑色の瞳を見つめた。

 

 

「私は、…そうね…誘われると思うわ、きっとね。…ソフィアは、ハリーと踊りたいの?」

「で、でも……ジニーが、悲しむわ。だって…ジニーはハリーが好きなんでしょう?」

「……。…ああ──成程ね」

 

 

ソフィアの不安げな瞳を見て、ハーマイオニーは理解した。

 

ソフィアは、誰にでも優しい。常に人の為に行動できる、素晴らしい勇気と優しさを持っている。それは──家族は特別だとしても──誰にでも分け隔てなく平等に向けられ、そこに優劣の差はない。差がないからこそ、ソフィアはハリーの気持ちを受け入れることも、ジニーの悲しみを作ることも出来ない。ソフィアにとっては、2人とも幸せになってほしい相手であり、明確な差がないのだ。

 

 

 

──残酷だわ。

 

 

 

その考え、博愛主義の思想は、責められるものではないが、行き過ぎた博愛は結局のところ、周りを傷付ける。

この世界にたった1人へ向ける愛情のベクトルがある限り、どうしてもそこに悲しみは生まれるのだ。

まだソフィアはそれを本当の意味で理解できるほど、精神的に成長していないのだろう。そういえば、ソフィアは誰にでも優しいが──何かに強く執着することは無い。

 

平等に愛し、平等に慈しむ。

そこに差が生まれない限り、ソフィアは心の底から誰かを愛することは出来ないのかも、しれない。

ソフィア本人の性格もあるだろう、しかし、──幼少期の環境が、そうさせているのだろうか。

 

 

「…ハーマイオニー…?」

 

 

黙り込んでしまったハーマイオニーを、ソフィアはおずおずと覗き込む。

ハーマイオニーは言葉を選ぶようにゆっくりと呟いた。

 

 

「そうね…。ジニーの事は考えないで」

「でも…」

「あのね、ソフィア。自分の気持ちの問題なの。そこに他人が入る余地なんてないのよ。スネイプ先生が何を言おうが、ジニーが悲しもうが、──世間が何を言おうが。それは仕方のない事なの。誰か1人を愛するのは、そう言う事なのよ。みんながみんなハッピーエンドってわけにはいかないわ。失恋なんて当たり前のように起きているわ…嫉妬もね。──ソフィア、自分の気持ちを言わずに、考えずに…人のせいにするのは、それはとっても失礼な事よ。()()()()()()ね」

「……失礼な、事…」

 

 

ソフィアはハーマイオニーの言葉を小声で呟いた。

胸の深い所に刺さるような、言葉だった。

誰も悲しんでほしくない、幸せでいてほしい。だからこそ、どうすればいいのかわからなかった。

 

ここ数日モヤモヤしていたものと、ずっと見えなかった何かが掴めたような気がして──ソフィアはハーマイオニーの瞳の奥に何かを探すようにじっと見つめた。

 

 

「ええ、あなたはどうなの?ソフィア。あなたは、ハリーが好きなの?1人の男の人として、愛しているの?」

「……愛…」

 

 

ソフィアは真剣に考えた。

ハリー・ポッターという少年のことを、深く考えた。

 

 

ハリーの事は好きだ。

優しいし、勇気もある、少々父親に対する暴言で失望する時があるのも事実だが、1人の人間として尊敬している事が多い。

何より、一緒にいて楽しいし、幸せになってほしいと思う。今までたくさんの悲劇を乗り越えてきた彼が、誰よりも幸せになってほしい、そう、心から思う。

 

 

「…ハーマイオニー。もし、ロンが他の女の子とキスしてたらどうする?」

「え?…うーん。…悲しいし、多分襲う(呪う)わね」

 

 

いきなり自分の話題になったことにハーマイオニーは少し頬を染めたが、真剣な顔で物騒な事を呟いた。

 

 

「ジャックがね。気になっている人が他の誰かとキスをしている想像をして、呪いたくなったらそれは愛だって言ったの」

「へえ…それで?」

「…ハリーが、ジニーとキスしてたら…。…私、多分、そうね、悲しいわ」

「それなら──」

「でもね」

 

 

それなら、愛していると言っているようなものではないかとハーマイオニーは口を開いたが、ソフィアは困ったように眉を下げた。

 

 

「でも、()()()()()()()()の」

「…えぇ?」

「だから、私…ハリーの事は好きだわ。けど、愛してるのかって言われると…うーん…わからないの、本当に…本当に、わからないの…。でも、多分…もし、ハリーに誘われたら、私は…()()()()()()わ」

「……それは、…あまり、よくないわね」

「…そうよね、うん。さっきのハーマイオニーの言葉を聞いて、だめなんだなって…わかったわ」

 

 

ソフィアは大きなため息をつき、肩を落とした。

 

ソフィアは、ジニーの悲しい顔が見たくない、だが、ハリーの悲しい顔も同様に見たくないのだ。

ただの友達として誘ってくれるかもしれないが──しかし、ジャックのいうようにダンスのパートナーに選ばれるというのは、一種特別な意味を持つ。その後にお互い意識し、恋人になる事は十分にあり得るし、パートナーに選ぶ事イコール告白のようなものだと、捉えている子どもも多いはずだ。

 

 

「ソフィア。…場に流されるのだけは、絶対にダメよ」

「…そうよね…」

「……こんな事、聞くのおかしいかもしれないけれど。……男女が何するかわからないわけ──」

「流石にわかってるわ!」

 

 

ソフィアは真っ赤な顔で叫んだ。

流石にわかってるわよね、とハーマイオニーは少し安堵した。それならソフィアが──まぁ、本気で嫌なら男女間の出来事があっても、拒絶は…流石にするだろう。

 

 

 

「じゃあ、ソフィアは結局ハリーが好きかわからないのね」

「ええ、そうなの…でも、その…うーん…──嫌な気持ちにはならないわ」

 

 

ソフィアは視線を逸らして呟いた。

ハーマイオニーは耳まで赤いソフィアを見て、これは、以前よりソフィアが自分の感情を掴みかけているのではないか、とふと思った。前までは「そんな事ないわ!」ときっぱりと言っていたソフィアがこうも言い淀んでいる。

つまり、まだ胸を締め付ける苦く甘い感情に名前をつける事は出来ていないが──その存在は、たしかにあると言う事だ。無ければここまで悩んでいないだろう。

 

 

ならば、時間の問題かもしれない。

きっと、ハリーに対する感情が、親愛なのか愛情なのか、遠くない未来にわかる時がくるだろう。

 

 

だが、きっと──これは、ソフィアが1人で気が付いた方がいいのだ。

ソフィアは優しく、真剣に捉えすぎてしまう。ここで今、私が「それは恋よ」といえば、ソフィアはこれが恋なのだと本気で受け止めてしまうだろう。

恋なのかどうかも、本人がわからないまま名前をつけるのは賢いやり方ではない。

 

 

「…まぁ、ほら。多分ハリーはソフィアを誘うでしょうけど。友達として誘うかもしれないじゃない?」

 

 

勿論ハーマイオニーはハリーの気持ちを知っている。ハリーがソフィアを誘うと言う事は、そう言う事である理解もしているが──賢いハーマイオニーはそれを黙っていた。

 

 

「…そうね。だって、ハリーって私の事が好きって感じしないもの。みんなに優しいし、対応も…ハーマイオニーと私と変わらないでしょう?」

「……、…そう、かもね」

 

 

ハーマイオニーは心中で嘆いた。

ああ、ハリー。あなたの気持ちちっとも伝わって無いわよ。鈍感なソフィアを射止める為にはもっと積極的にいかないとダメよ──と。

 

 

しかし、ハリーはかなり奥手であった。仕方がない、初恋なのだ。

何をすればいいのか、どうアピールすればいいのかも分かっていない。胸に秘めたハリーの恋心に気がついているのは、聡いハーマイオニーとルイスだけであり、親友で最も近くにいる鈍感なロンもまた一切気がついていないのだ。ソフィアが気がつかないのも、仕方のない事だろう。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。