【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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207 たくさんの考え!

 

 

ソフィアとハリーは一度大広間へと向かったが、まだ夕食の時間には些か早いようで机の上に料理は並んでいなかった。

ロンとハーマイオニーもいないことから、一度グリフィンドールの談話室へ戻ろうか、という事になり、2人はグリフィンドール寮へ向かう。

太ったレディに合言葉を告げ談話室に入れば、ロンが隅で膝を抱え蒼白な顔をして座り込んでいるのが見え、ハリーとソフィアは驚いてロンに駆け寄る。

近くにハーマイオニーの姿は見えず、ジニーが低い声で慰めるように話しかけ、その丸まった背中を撫でていた。

 

 

「ロン、どうした?」

 

 

ハリーに声をかけられたロンは恐怖が滲む顔でハリーとソフィアを見上げ、呆然と呟く。

 

 

「僕、どうしてあんなことやっちゃったんだろう。どうしてあんな事をする気になったのか、わからないんだ!」

「何をしたの?」

 

 

ソフィアは優しく聞いたが、ロンは視線を彷徨かせて口籠る、それを見たジニーが代わりに「ロンは、あのフラー・デラクールにダンスパーティに行こうって誘ったのよ」と、その滑稽さで笑ってしまいそうになるのを必死に抑えていたが、口先は僅かに緩んでいた。

 

あの、美しいフラー・デラクールをダンスパーティに誘った。

その言葉はなかなか衝撃的であり、ついハリーは「何だって?」と驚き聞き返す。

 

 

「どうしてあんな事をしたのかわからないよ!一体、僕、何を考えていたんだろう…沢山人がいて──みんな周りにいて、僕、どうかしてたんだ!…僕、玄関ホールでフラーとすれ違ったんだ、フラーはディゴリーと話してた…そしたら、急に僕、取り憑かれたようになって──あの子に申し込んでたんだ!」

 

 

ロンは呻めき、両手に顔を埋めた。

自分の行動が自分自身で信じられないのか、絶句したまま低い声でロンは喋り続ける。

 

 

「フラーは僕のこと、ナマコか何かを見るような目で見てた──答えもしなかったんだ。そしたら、僕、なんだか正気に戻って…」

「あの子にはヴィーラの血が入ってるんだ。君の言った事が当たってた、おばあさんがヴィーラだったんだ。杖調べをしたときにフラーが自分で言ってた」

「そうだったの…」

 

 

ハリーは代表選手が必ず受けなければならない杖調べをしたとき、フラーがおばあさんのヴィーラの毛を芯にした杖を使っていると言っていた事を思い出して懸命に慰めた。

ソフィアは初めてフラーがヴィーラの血を引いていると知ったが、確かにあの美しさは人間離れしている程だと納得する。

 

 

「きっと、フラーがディゴリーに魅力を振り撒いているときに、君が通りかかったんだ。それで…その魅力に当たっちゃったんだよ」

「…まぁ…ロン、それなら仕方がないわ。きっとロン以外にも申し込んだ人はいるわよ、気にしない方がいいわ」

「うう…でも、たくさんの人に…。…ああ…最悪だ…」

 

 

ロンは頭を掻きむしり、さらに小さく縮こまってしまう。ハリーとソフィアとジニーは顔を見合わせ、これはかなり重症だ──フラーのことから話題を変えなければ、と同じ事を思った。

 

 

「まぁ、ほら、他の人を誘いましょう?」

「うん…でも、他にまだ誘われてない子っているかな…相手が居ないのは僕たちだけだったりして──まぁ、ネビルは別として。あ!ネビルが誰に申し込んだと思う?ハーマイオニーだ!」

「ええっ!?」

 

 

ハリーは「僕はもうパートナーが決まったよ」と言おうとしたが、それよりもネビルがハーマイオニーを誘ったという衝撃のニュースに気を取られてしまい、大声で叫んだ。

ソフィアはそんな驚かなくても、ハーマイオニーは誰よりも素敵だし、誘われるのは当然だわ──と思ったが、ロンの蒼白だった顔色が少し戻り、楽しげな笑顔が浮かんでいたのを見て口を閉ざした。

 

 

「そうなんだよ!魔法薬学の後、ハーマイオニーは図書館に行っちゃって。…その後ネビルが話してくれたんだ!あの人はいつもとっても優しくて、僕の宿題とか手伝ってくれて…って言うんだよ──でも、ハーマイオニーはもう誰かと行く事になってるからってネビルを断ったんだって!へん!まさか!?ネビルと行きたくなかっただけなんだ!…だって、誰があいつと行くんだ?」

「笑うのはやめてよロン!」

「…ロン、ネビルを悪く言うのもやめなさい。ハーマイオニーは素敵な女の子だもの、その魅力に気がつく人は多いわ」

 

 

くすくすと笑うロンに、ジニーが当惑したように叫び、ソフィアも静かな声でぴしゃりと言い切った。

ハーマイオニーが魅力的な女の子?──と、ロンは怪訝な顔をしていると背後でパタンと肖像画が開く音が響く。

 

 

「あら、こんな所にいたの?みんなどうして大広間に来なかったのよ」

 

 

噂をすればなんとやら。丁度その時、ハーマイオニーが肖像画の穴を這い登り、不思議そうな顔をしてロンの隣にすとんと座った。

 

 

「どうしてって…ロンがダンスパーティに女の子を誘って断られたばかりだからよ!」

「…説明ありがとうジニー」

 

 

ロンは、授業でいつも失敗ばかりのネビルを少し下に見ている。そんなネビルの面白おかしい話をしていて少し調子が戻ってきていたが、ジニーにフラーの事を暗に告げられ、ムッとしたように口を尖らせた。

ハーマイオニーは呆れながら首を振り、つん、と顎を上げる。

 

 

「可愛い子はみんな予約済みってわけ?ロン?──ま、きっとどこかには、お二人を受け入れてくれる誰かさんがいるでしょうよ」

 

 

ハーマイオニーの言葉は刺々しいものだったが、ロンはまじまじとハーマイオニーを見つめながらソフィアの言葉を思い出し、囁くように呟いた。

 

 

「ハーマイオニー、ネビルの言うとおりだ。君は──れっきとした女の子だ…」

「まぁ、よくお気付きになりましたこと」

 

 

ハーマイオニーは辛辣に言うが、ロンはどこか興奮したように目を輝かせ、ぐっとハーマイオニーに向かって身を乗り出す。

 

 

「そうだ!君が僕たち2人のどちらかといけばいい!」

「お生憎様」

「ねえ、そんな事言わないでくれよ。僕たち、相手が必要なんだ…他には皆いるのに、僕たちだけいなかったら…本当に間抜けじゃないか…」

「私、一緒には行けないわ。だって、もう他の人と一緒に行く事になってるんだもの」

 

 

ロンの必死な願いも虚しく、ハーマイオニーは頬を赤らめながら言ったが、ロンは信じられなかったのか──認めたくないのか、勢いよく立ち上がり「そんなわけない!」と叫ぶ。

 

 

「それは、ネビルを追い払うために言ったんだろ!?」

「あら、そうかしら?あなたは、3年もかかってやっとお気付きになられたようですけどね、ロン、だからといって、他の誰も私が女の子だって気付かなかったわけじゃないわ!」

 

 

ロンは暫くじっとハーマイオニーを見下ろしていたが──にやりと笑い、降参だと言うように手を挙げて揶揄うように、軽い口調で喋り出した。

 

 

「オーケー、オーケー。僕たち、君が女の子だって認める。これで良いかい?さあ、僕たちと行くかい?」

「だから言ったでしょ!他の人と行くんです!」

 

 

今度は怒りから顔を赤くしたハーマイオニーが叫ぶように言い、その勢いのまま立ち上がり再び肖像画の元へ走り、寮を出て行ってしまった。

 

 

「あいつ、嘘ついてる」

 

 

ロンがハーマイオニーの後ろ姿を見ながらキッパリと言ったが、今までロンとハーマイオニーの様子を見守っていたソフィアが重いため息を吐き、ロンをじろりと睨んだ。

 

 

「嘘じゃないわ。誘われたときに私もそばに居たから」

「…じゃ、誰と?」

「言わないわ。ハーマイオニーと内緒にするって約束だし…」

 

 

ロンは口を強く結んだままどすんと座ると、少し苛つきながら足をゆする。

その表情が現しているものは困惑と、焦燥感だろうか。

ロンはハーマイオニーは女の子だと、今まで意識していなかった。紛れもない友人であり、ハリーと同じような──いや、少しは違うが──大切な友達だった。

そのハーマイオニーの、確かな女の子としての姿を初めて知ったロンは、何故こうも自分がイラつくのかわからなかった。

 

 

「こんな事やってられないぜ!ジニー、お前がハリーと行けばいい。僕は──」

「私、だめなの。…私…ネビルと行くの。ネビル、ハーマイオニーに断られた後…私を誘ったの。私…だって、誘われないとダンスパーティに行けないと思って…」

 

 

ジニーは顔を赤くし、心の底から残念そうに呟く。ちらりとハリーを見たが、ハリーはその視線の意味に気が付かずにロンを見た。

 

 

「僕もジニーとは行けないよ。だってソフィアと行くから」

「え?ソフィアと?でも、ソフィアってルイスと──」

「…ソフィア、本当?ハリーと行くの?」

 

 

ロンはハリーの言葉を聞いて、確かソフィアはルイスと踊ると言っていなかったかと首を傾げたが、ジニーは急に真顔になりソフィアを見つめ、硬い言葉でソフィアに問う。

 

ソフィアは硬い石か何かを飲み込んだかのように言葉に詰まった──ジニーの気持ちを知っているからだ──が、直ぐに頷いた。

 

 

「そうなの。…さっき、誘ってくれて」

「…そう。…私、夕食に行くわ」

 

 

ジニーはぐっと拳を握って何か言いたげな──一瞬、傷ついたような目でソフィアを見たが、すぐに視線を逸らし立ち上がると、項垂れたまま肖像画の穴の方に歩いて行った。

 

ソフィアは、腰を浮かし手を伸ばしたが──なんと声をかければいいのか分からず、その手はジニーの腕を掴むことは無かった。

 

 

「ハリーはソフィアと…。…どうしよう、残るは僕だけだ」

 

 

ロンは自分1人だけまだパートナーがいない事に呆然と呟く。

ハリーとソフィアは顔を見合わせ、どうしたものかと頭をひねる。

丁度ジニーと入れ替わりでパーバディとラベンダーが肖像画の穴をくぐり談話室に現れたのを見たハリーは、ロンの腕を肘で小突いた。

 

 

「何だよ…」

「ほら、パーバディかラベンダーを誘ってみたら?」

「…あー……よし。これで無理なら僕は諦める」

 

 

ロンはちらりとパーバディとラベンダーを見ると、ぐっと表情を引き締め立ち上がった。

パーバディにぎこちなく声をかけ、彼女たちのくすくす笑いが大きくなっていくのを見ながら、ハリーとソフィアは影から「頑張って」と無言で応援する。

 

少しの間ロンとパーバディとラベンダーは喋っていたが──一際大きくラベンダーとパーバディがくすくすと笑い、ロンから離れ、途中で振り返り手を振りながら女子寮の階段を駆け上がる。

 

ロンは達成感のある表情を浮かべながらハリーとソフィアの元に戻り、大きく息を吐いた。

 

 

「…パーバディと行く事になった」

「良かったね!」

「おめでとう、ロン。ちゃんとエスコートするのよ?」

 

 

ロンは「そうだね」と答えたが、ダンスパーティの相手がようやく決まったというのに、心ここに在らず、というようなぼんやりとした返事だった。

 

 

「私、ハーマイオニーを探してくる」

 

 

ソフィアは立ち上がりハリーとロンにそれだけを言うと、すぐに肖像画へと向かった。

 

 

 

大広間のグリフィンドール生が多く座る長机の後方にハーマイオニーとジニーが2人並んで座っていた。

ソフィアはすぐに空いている2人の前の席に座り、目の前にある大きな鍋からビーフシチューを掬い皿の中に入れた。

 

 

「ハーマイオニー。…後少し早ければ良かったわね」

「……何のことだかわからないわ」

 

 

ハーマイオニーはマッシュポテトを食べながらフンと鼻を鳴らす。

後数日、ロンがハーマイオニーは女の子だと気付き誘う事が出来ていれば、ハーマイオニーはきっとロンとダンスパーティに行っただろう。

 

不機嫌な表情を隠すことのないハーマイオニーに、ソフィアは肩をすくめてビーフシチューをスプーンで掬い食べた。

ふと、ジニーからの視線に気がつき──ソフィアはハッとしてスプーンを置くと、真剣な顔をしてジニーと向き合った。

 

 

「ジニー…あの…」

 

 

しかし、何と言えばいいのだろうか。

ハリーと踊る事になってごめんなさい?ジニーの気持ちを知っていて、こんな事になってごめんなさい、と謝るべきなのだろうか?

だが、その言葉は──ジニーの尊厳を傷付けるだけではないかと、ソフィアは思い沈黙する。

 

ジニーは困った顔をするソフィアを見ていたが、長いため息を吐くと視線を外し皿の上にあるベーコンをフォークで突いた。

 

 

「…ソフィアは…ハリーと行くのね」

「…ええ…ルイスとも踊るけど、それでもいいって…誘われたから…」

「……そう。…ねぇ、ソフィア。……好きなの?」

 

 

ジニーは周りに聞こえないよう、小声で問いかけた。誰を、とは言わないがその隠された人物をすぐに読み取ったソフィアは──困った顔をして少し笑った。

 

 

「好きよ。──けれど、友達としてね」

「…はぁー…。私も、ソフィアのこと、大好きだもん…あの人のことも、勿論好きだけど……ああ、ソフィア、私のことは気にせずダンスパーティを楽しんでね!」

 

 

ジニーは大きなため息をついた後、すぐに──少しわざとらしく──明るく言った。

痩せ我慢させているに違いない、とソフィアは苦しげに眉を寄せ「ジニー…」と呟くが、ジニーはそんな顔をさせたいわけではない。

 

ジニーにとって、ハリーは異性として好きだ。一目惚れ、だった。

だが、ソフィアの事は姉のように愛している。優しい人であり、大切な人に変わりはない。そんな大切なソフィアの、困った悲しげな顔は見たく無かった。

 

 

──でも、ハリーがソフィアを誘ったって事は…ルイスと踊ると聞いても、諦めずに誘ったって事は……。

 

 

しかし、ジニーはどうしても──胸がチクチクと痛んだ。

それも仕方がないだろう。ジニーはハリーと出会ってから今まで、秘めた恋心を抱いていた。それが叶わないのかもしれない、と思う痛みは強く…それに、ハリー(想い人)の相手はもう1人のかけがえのない大切なソフィアである。

 

まだ3年生のジニーには、すぐには受け入れられない程、複雑な気持ちが胸を渦巻いていた。悲しい、心が痛い、ただ、大切な人たちには幸せになって欲しい──その気持ちは、ソフィアがジニーに対して抱いている感情とよく似ていた。

 

 

「私、本当にソフィアの事が好きなの!お姉ちゃんならいいなって、ずっと思ってるもの。…私は、大切な人が幸せなら…嬉しいわ」

「…私も、ジニーが幸せなら嬉しいの。……ああ、私──私、やっぱり一緒に踊るなんて、言わない方が…」

「ソフィア、それは言わないで。…虚しくなるだけだわ」

 

 

ジニーは表情を硬らせ、低い声で呟く。

その僅かに滲んだ怒りに、ソフィアは口を閉ざし、困惑しながらも頷いた。

 

 

──ハリーが好き、その気持ちに嘘はない。ソフィアが好き、それも本当だわ。…けれど、だからこそ、情けをかけられたくなんてない。

 

 

ジニーは表情を緩め、フッと笑うと立ち上がり「ダンスパーティ、楽しみね!とびっきりおめかしするんだから!」と明るく言うと、言葉を探して何も言えないソフィアに手を振り、すぐに大広間から出て行ってしまった。

 

 

「…ああ…ジニー…」

「ソフィア、仕方がないわよ」

 

 

がっくりと項垂れ、他に何かかける言葉があったのではないか、やはり間違った選択をしたのではないか──と後悔をしているソフィアの頭を、ハーマイオニーは手を伸ばしぽんぽんと撫でた。

 

 

「ソフィアが断っていても、あの人があなたを誘ったのだとジニーが知ったら…結局、ジニーは同じ気持ちになったわ」

「…そんな…。…そうかしら…」

「ええ、だから、ジニーの言うように…ダンスパーティを楽しめばいいのよ。一緒に踊ったからといって、付き合うわけでもないでしょう?」

「…そうね…」

「そうよ!当日はおしゃれして、お化粧もいつもよりして…ああ!髪も綺麗に結いましょうね?ジニーも誘えばきっと喜ぶわ!ソフィアの髪を結ってみたいって言ってたもの!」

 

 

そうだ、確かにダンスパーティに誘われたからといって、付き合うわけではない。

ジニーはネビルと参加すると言っていたし、一緒に化粧をし、髪を結って身を飾るのも、楽しいだろう。

 

ハーマイオニーの励ましに、ソフィアは少しだけ微笑んだ。

 

 

 

 

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