【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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211 友達不在!

 

 

 

クリスマスの翌日は、皆が朝寝坊した事だろう。

ソフィアもダンスパーティの興奮と疲れからいつもより3時間はたっぷり寝てしまった。しかし、まだクリスマス休暇は数日残っている。少しくらい寝過ごしても問題はないだろう。

 

 

ハーマイオニーとロンは今日の大喧嘩には触れない事にしたようだ。お互い何故あれほど論争することになったのか触れず、表面上は仲良く過ごしていた。嫌に丁寧に話しかけることはあったが──無視するよりはいいだろう。

 

ハリーはハーマイオニーにもハグリッドが半巨人であることを伝えたがハーマイオニーはロンとソフィアほどショックを受けていないようだった。

 

その差は間違いなく、魔法界で暮らしていたか否かだろう。

幼少期から巨人により殺された人や動物のニュースを聞いているロンとソフィアはどうしても巨人と聞いて色んな感情が駆け巡ってしまう。

 

本当は人を傷つけたくないにも関わらず、その性質を持ってしまった人狼とは異なり、巨人は自ら人や動物を殺す。その差は大きく──流石のソフィアも巨人を庇うつもりはなかった。

しかし、半巨人はまた別だと理解はしている。

半巨人を理性のない恐ろしい怪物だと言う人もいる、それは巨人の血を使い悪い事をする半巨人が少なからず居るからだろう。

 

 

ソフィアは半巨人を差別はしないが、リーマスの時のようにもしこれが広まったら…きっと、ハグリッドは耐えられないだろうと思った。

 

 

ハリーはハグリッドの件よりも、自分には別の問題が差し迫っている事に否応なく気付かされた。クリスマスを境に、次の課題の日である2月24日がぐっと近付いてしまった気がしたのだ。

 

セドリックから貰ったヒントを考えてもよくわからず──ハリーはソフィア達にその事を聞く事にした。

 

 

「そういえば、クリスマスパーティの後、卵の事でセドリックからヒントを貰ったんだけど…卵を連れて風呂に入れって…ゆっくり湯船に浸かって考えれば良い案が浮かぶって言ってた。どう言う意味だと思う?」

「え?うーん…。…それはもう試したの?」

 

 

ソフィアは首をかしげる。卵を連れて風呂に入る──それが何を意味するのか、ソフィアだけでなくハーマイオニーとロンもわからなかった。

 

 

「ううん、まだだよ」

「風呂なんてあるか?僕らが使えるのはシャワールームだけだろ?」

 

 

監督生ではない数多の生徒は、白い猫足バスタブが数百は並ぶシャワー室を使っている。天井にシャワーのみがついている場所であり、一応湯を溜めれなくもないが…あまりそうしている生徒はいない。

 

 

「監督生専用の風呂場があるんだって」

「あーそういえば。パーシーが言ってたな…」

 

 

ハリーの答えにロンは監督生専用風呂場の素晴らしさを自慢げに話すパーシーの顔を思い出し少し嫌そうに顔を顰めた。

 

 

「なら、ハリー。あなたはそれを試すべきよ」

「そうね。とりあえずお風呂にはいるしかないわ」

 

 

ハーマイオニーの言葉にソフィアも賛同した。ハリーが透明マントと忍びの地図を持っていることを知っている彼女たちは、ハリーなら夜1人で抜け出して風呂場に向かう事なんて容易いだろうと考えている。

ハリーは頷きつつ──何となく、胸の中にもやりとしたものが溢れてくるのを感じた。

 

 

「でもさぁ、ハリー。君はディゴリーに第一の課題はドラゴンとの戦闘だって教えただろ?セドリックのやつ、卵の謎が解けたんならもっと教えてくれてもいいのにな」

 

 

ロンが怪訝な顔で呟いた言葉を聞いた途端、ハリーは自分が何故こうもセドリックに対してもやもやしているのかがわかった。

 

 

──そうだ、僕は課題の内容を教えたのに、セドリックは教えてくれなかった。それに、腹を立てているんだ。

 

 

ソフィアとハーマイオニーも、ロンの言葉を聞いて同じように少し当惑したような表情で黙りこんでいた。

 

 

「まぁ、とりあえず…お風呂に入ってゆっくり考えればいいわ。──セドリックの事もね」

 

 

ソフィアの言葉に、ハリーはしぶしぶ頷いた。

 

 

ーーー

 

 

 

 

ハリーは休暇中に監督生の風呂場にこっそりと行くつもりだったが、どうやら夜に校内の見張りを命じられている監督生の達は夜中にいつでも風呂に入る事が出来るようだ。おそらく、監督生になった生徒が校則違反などするわけがないという性善説からきた特別処置なのだろう。

何度か忍びの地図を使い、監督生の風呂場を見てみたが、その度に黒い小さな点が監督生専用風呂場の中にいた。

なかなかチャンスがやってこないまま休暇は終わってしまい、新学期の1日目を迎える事となった。

 

 

薬草学が終わり、魔法生物飼育学を受けるためにハグリッドの小屋へ向かったソフィア達だったが──その小屋の前にいたのはハグリッドでは無く、見たこともない老魔女だった。

 

 

「さあ、お急ぎ。鐘はもう5分前になってるよ」

 

 

雪に足を取られ中々進めない生徒たちに、魔女は大声で呼びかけた。先頭を歩いていたロンとハリーは驚き困惑しながら、不機嫌そうな老魔女を見つめる。

 

 

「あなたは誰ですか?ハグリッドはどこ?」

「私はグラブリー・プランク。魔法生物飼育学の代用教師だよ」

 

 

グラブリーは名前を名乗り代用であっても教師ができる事が嬉しいのか誇らしげに胸を張った。ハリーは「ハグリッドはどこなの?」とロンと同じ事を聞いたが、グラブリーは「あの人は気分が悪くてね」と軽く答えそれ以上は説明しなかった。

 

 

「寒かったし、風邪でもひいたのかしら…」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは心配そうな顔をしたが、ハグリッドが風邪をひく──あまり、想像が出来ず、顔を見合わせていた。

 

 

「こっちへおいで」

 

 

グラブリーは集まった生徒に向かって声を張り上げ、手でついてくるようにジェスチャーをした。ソフィア達はボーバトンの巨大な天馬が震えている囲い地に沿って歩きながら、カーテンが全てしまっているハグリッドの小屋を振り返った。

病気なら、誰にもうつさない為にたった1人で小屋に篭っているのだろうか?それとも、医務室にいるのだろうか?ハグリッドが寝られるようなベッドがあるようは思えないが──。

 

 

ハリーはグラブリーに何度もハグリッドはどこが悪いのかと聞いたが、グラブリーはハリーの言葉を無視し禁じられた森の端に立つ一本の木のところへ生徒達を連れて行った。

 

 

その木には、大きな美しい一角獣(ユニコーン)が繋がれていた。

ユニコーンの輝くような白さは、周りの白い雪ですらどこか灰色がかっているように見せた。美しいユニコーンに、女生徒達は歓声をあげて喜ぶ。

 

 

「男の子は下がって!ユニコーンは女性の方がいいんだよ。女の子は前へ…気をつけて近づくように。さあ…」

 

 

グラブリーは近づこうとしていたハリーの胸あたりに腕をさっと伸ばし行く手を遮りながら女生徒へ向かって告げる。

 

グラブリーと女子生徒達はゆっくりとユニコーンに近づき、ハリー達男子生徒は囲い地の柵のそばに立ってそれを眺めていた。

 

 

 

「ユニコーンは特に純潔の処女を好むんだ。ユニコーンの機嫌を損ねず撫でるにはね…。心配しないで、この会話は男子達には聞こえないだろう──さて、撫でてみたい女の子はいるかな?」

 

 

 

純潔、という言葉に女子生徒達は頬を赤らめくすくすと笑いながら互いにどう(・・)なんだというように視線を交わした。

ソフィアは誰も一歩踏み出さないのを見て、皆経験済みなのかと少し頬を染め驚いたが──勿論、全員が経験済みというわけではない。だがなんとなく一番初めに一歩踏み出すのは恥ずかしかったのだ。

 

 

「私、撫でてみたいわ!」

「よしよし。…さあ、手を出してごらん?お気に召したら、ユニコーンは擦り寄ってくるからね」

 

 

グラブリーはソフィアが手を挙げたことに少し安心したように目元を緩めた。

ユニコーンの性質上仕方がないとはいえ、他の生徒に自身に性経験があるかどうかを知られるのは──年頃の女の子は嫌がる。グラブリーもこのクラスにいる女子全員が経験済みだとは思っていないが、1人目が名乗りを上げなければ皆無言を貫いたかもしれない。

 

 

ドキドキとしながらソフィアはユニコーンの前に立ち、そっと手を差し出した。ユニコーンはじっとソフィアを見ていたが、その手に自分の顔を擦り付けぱたりと尻尾を揺らした。

 

 

「わぁ…!なんて、滑らかで…美しいの…!」

「うんうん、ちゃんと触れたね。グリフィンドールに5点加点しよう」

 

 

ソフィアは目を輝かせ、ユニコーンの立髪や体を撫でた。

ユニコーンは優しい目でソフィアを見つめ、くるくると小さく鳴き声を上げる。

その様子を見ていたハーマイオニーはすぐに自分も触れてみたいと──勿論、ハーマイオニーも処女である──ユニコーンに近付き、手を差し出した。ユニコーンは同じようにハーマイオニーの手のひらに顔を擦り付け触れる事を許した。

 

 

その後もソフィアとハーマイオニーに触発され、何人もの女子生徒達がユニコーンに近づき、その美しい体を撫でた。

数人、一定の距離を保ったまま、少し頬を赤らめ近付く事のない生徒が居たが──つまり、そう言うことだ。

 

 

「残りの女の子も来なさい。ユニコーンはいま機嫌がいいから…きっと、触れるよ」

 

 

羨ましそうな目で見ていた数人の女子生徒にグラブリーは優しく告げる。処女ではない彼女達は顔を見合わせ、恐る恐るユニコーンに近付き、ユニコーンが特に後ろ足で蹴ったり唸ったりしない事を確認して、そっとその滑らかな体を撫でた。

 

 

女子生徒全員がユニコーンの周りに集まったのを見て、グラブリーは満足げに微笑むと柵にいる男子生徒達にも聞こえるように声を張り上げ、ユニコーンの魔法特性を話し出した。

 

 

 

「──さて、つまり。ユニコーンは男性よりも女性であり、純粋な者の方が感触がいいんだよ。ユニコーンは穢れなき身を好むからね。ユニコーンは全身に魔力がみなぎっているのは知っているかな?

ユニコーンの鬣はよく杖の芯に使われるし、角も魔法薬の材料になる。その血は、瀕死であっても命を続ける。…けれど、なによりも穢れなき純粋なユニコーンを傷付けると──呪われてしまう。鬣や角でもね。落ちていたものを使うしかないんだ。

さて、ユニコーンの血は絹のような銀色で、その血を得る為に傷つけ、その血を口をつけた途端呪われてしまうが…たった一つ、呪われずに血を得る方法があって──そこの生徒!ちゃんと聞いてるの?」

 

 

グラブリーは途中で説明を止め、小声で言い争っていたハリーとドラコを叱った。

 

ソフィアはチラリとドラコの意地悪げな目と、ハリーの悔しそうな顔を見てまた何かドラコが余計な事をしたのだと思い、呆れたような目でドラコを見た。

 

 

グラブリーの授業は、かなり好意的に受け入れられた。誰だって尻尾爆発スクリュートやレタス食い虫の世話よりも、美しいユニコーンと触れ合える授業の方が好きだろう。

代理じゃなくてずっといてほしい、そう思った生徒は少なくはない。

 

 

ハーマイオニーとソフィアはユニコーンの美しさとその魔法特性を話し合いながら軽い足取りで大理石の階段を駆け上がり大広間へと向かう。久しぶりの充実した授業に、2人は一瞬ハグリッドの事をうっかり忘れていた。

 

 

「とっても良い授業だったわね!」

「そうね!私、ユニコーンについてグラブリー先生が教えてくださったことの半分も──」

「これ、見て!」

 

 

嬉しそうにするソフィアとハーマイオニーに、ハリーはドラコから渡されていた日刊預言者新聞を突き出した。

2人は驚きながら新聞を掴み書かれている記事を読む。2人は読み進める内に口をぽかんと開け、信じられないと動揺した目でハリーを見た。

 

 

「あのスキーターって嫌な女、なんでわかったのかしら?ハグリッドがあの女に話したと思う?」

「思わない」

 

 

ハリーは怒りのままに先立ってグリフィンドールの机に向かい、ドサッと腰を下ろした。

 

 

「僕たちにだって、一度も話さなかったろ?──僕の悪口を聞きたかったのに、ハグリッドが言わなかったから腹を立てて、ハグリッドに仕返しするつもりで書いたんだろうな」

 

 

机の上にあるポテトを摘み、苛々としながらハリーは低く答える。

ソフィアとハーマイオニーとロンも椅子に座り、神妙な面持ちでそれぞれの昼食を手に取りながら暫く、何故スキーターがハグリッドが半巨人だと何故知っているのかを考えた。

 

 

「ダンスパーティで、ハグリッドがマダム・マクシームに話しているのを聞いたのかしら?」

「それだったら、僕たちがあの庭でスキーターを見てるはずだよ!」

 

 

ソフィアの静かな声に、ロンはすぐに首を振る。たしかに、その場にはロンとハリーしか居なかったと聞いている。どこかにうまく隠れていたのだろうか?それとも、何か特別な方法がスキーターにはあるのかもしれない。

 

 

「とにかく、スキーターはもう学校には入れない事になっているはずだ。ハグリッドが言ってた。ダンブルドアが禁止したって…」

「スキーターは透明マントを持っているのかもしれない。あの女のやりそうな事だ。草むらに隠れて盗み聞きするなんて!」

 

 

ハリーにとってハグリッドは教師である、というよりも大切な友人だ。その友人の秘密を白日の元に曝け出し、さらに事実を湾曲している事に──少なくとも、全生徒がハグリッドを恐れ怖がってはいないし、嫌ってもない──怒り、チキン・キャセロールを鍋から掬い自分の皿に入れる際に手が震え沢山こぼしてしまった。

 

 

「半巨人の事もだけど。尻尾爆発スクリュート…やっぱりハグリッドが作り出した魔法生物なのね…届出をだしてたらいいけど、これも面倒な事だわ…」

 

 

ソフィアは温かなミネストローネを飲みながらため息をこぼす。しかし、魔法界で暮らして居なかったハリーは魔法生物を生み出す事がどれほどの罪なのかわからず、ムッツリとしたままチキンを食べた。

 

 

「ハグリッドに会いにいこう!今夜、占い学の後だ。戻ってきてほしいってハグリッドに言うんだ。…ソフィアとハーマイオニーも、そう思うだろう?」

 

 

ハリーの強い目に、ソフィアとハーマイオニーはたじろいだがすぐに頷く。

 

 

「ええ、勿論よ。今までのハグリッドの授業も、素晴らしかったし、私は大好きだもの!」

「私──そりゃ、初めてキチンとした魔法生物飼育学らしい授業を受けて、新鮮に感じたのはたしかだわ。──でも、ハグリッドに戻ってきてほしい。勿論、そう思うわ!」

 

 

ハリーの激しい怒りの視線にたじろぎ、ハーマイオニーは慌てて最後の言葉を付け加えた。

 

 

その日の夕食後、ソフィア達はハグリッドの小屋へ向かい何度も閉じられた扉や窓を叩いたが、中からはファングの鳴き声が聞こえるだけで、ハグリッドの声も啜り泣きも何も聞こえなかった。

 

 

ハグリッドはそれから、食事の時も教職員のテーブルに姿を見せず、校庭で庭番の仕事をしているわけでも、医務室にいるわけでもない。

姿を見せないハグリッドに、ソフィア達は顔を見合わせ肩を落とした。

 

 

 

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