【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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214 いつまで経っても怪しい人!

 

 

次の日の呪文学の授業は、追い払い呪文の訓練だった。

教室中のそこかしこに生徒が散らばり、クッションを正確な場所へと追い払う。

騒がしい教室ではハリー達のひそひそとした会話などだれも気にしない。ハリーは昨夜何があったのか──卵の謎も含めて──全てソフィアとハーマイオニーとロンに話した。

 

 

「まぁ、ムーディ先生はいつも敵がすぐそばにいるかも…って疑心暗鬼になってらっしゃるのよね?教師達の研究室を捜索くらい、しそうだわ」

「確かに、そうだな…」

 

 

ムーディがセブルスとジャックの部屋中を捜索したらしい、という言葉にソフィアは少し考えたがあまり気にする事はないと思ったのか、軽い口調で答えた。

ロンは晩年のムーディがどのような状況か知っていた為、小さく呟く。

 

 

「ムーディは、カルカロフだけじゃなくて…スネイプと…ジャックも監視するためにここにいるのかな?」

「ダンブルドアはそれを頼んだかどうかわからない。──だけど、ムーディは絶対そのつもりだな」

「ええ?…ジャックは、ムーディ先生とかなり仲良いのよ?確かに…ジャックはスネイプ先生もカルカロフ校長とも知り合いみたいだけど…だからって監視するかしら」

 

 

ジャックとセブルスは、ソフィアにとって大切な家族である。その家族が元闇払いに疑われているなんて──怪訝な顔をするソフィアに、ハリーとロンは顔を見合わせ考え込んだ。

 

 

スネイプだけを見張るのならわかる。スネイプもカルカロフも怪しい。けど……ジャックは、どうして?

しかし、考えても答えは全く出なかった。

 

 

「…ムーディが言ったけど、ダンブルドアがスネイプをここに置いてるのは、やり直すチャンスを与えるためだとか…なんとか…」

「なんだって?」

「やり直すチャンス?」

 

 

ロンは目を丸くし、ソフィアはその言葉の意味が理解できず困惑した。

やり直すチャンス──セブルス(父様)がホグワーツの教員になったのは、自分達が1.2歳の頃…母様と兄様が亡くなってからだと聞いている。

だが、何をやり直す?なんのチャンスなんだろう?──文脈を読めば、父様は何か過ちを犯し、それを挽回するためホグワーツで働いている…という事だろうか。

 

 

「ハリー……もしかしたら、ムーディはスネイプが君の名前を炎のゴブレットに入れたと思ってるのかも!ジャックはスネイプと仲良いから、調べられたとか?」

「でもねえロン。前にもスネイプがハリーを殺そうとしてるって思った事があったけど、あの時スネイプはハリーの命を救おうとしてたのよ、覚えてる?」

 

 

ハーマイオニーは首を振り、呆れながら言った。ソフィアはようやく、ハーマイオニーが自分の父親を擁護してくれたと少し嬉しくなりながら──今までは散々だったのだ──同調するように頷いた。

 

 

「スネイプ先生はハリーの事が嫌いみたいだけど…殺そうとまでしてないわ」

「…そうかなぁ?いつも視線だけで殺されそうだし」

「まぁ、キツイのは確かね」

 

 

ハリーは眉間に皺を寄せ嫌そうに吐き捨てる。ソフィアも、セブルスのハリーへの対応の酷さは知っていた為、間違っても「そんな事ないわ」とは言えなかった。

 

 

「ムーディが何を言おうが、私は気にしないわ。ダンブルドアは馬鹿じゃないもの。ハグリッドやルーピン先生を信用なさったのも正しかった。あの人たちを雇おうとしない人は山のようにいるけれど──だから、ダンブルドアはスネイプについても間違ってない筈だわ」

「少なくとも、10年以上ここで教師をしてるわけだものね…私も、ムーディ先生の言葉なんて気にしないわ。スネイプ先生は確かにかなり贔屓だし、罰則ばかりだし、ハリーにキツイし…嫌になる時もあるけど。私──嫌いではないもの」

「ええっ!?…正気?僕は大っ嫌いだね!」

「僕もだ!」

 

 

ソフィアの言葉にロンとハリーは驚愕し──その瞬間杖を振り上げすぎて追い払い呪文がかけられたクッションは天井からぶら下がるシャンデリアにガシャンと当たった。

 

 

「…スネイプ先生やジャックの事より…私は、クラウチさんが何故スネイプ先生の研究室に来たのかが気になるわ」

 

 

ソフィアはロンとハリーの嫌そうな視線を無視して杖を振った。クッションはぴゅんと綺麗な放物線を描いて飛び、きっちりと箱の中に収まった。

 

 

「そうね。ダンスパーティにも来れなくて、仕事はずっと病欠……なのに、夜にホグワーツに来るなんて…おかしくない?」

「今後、クラウチさんがずっとお休みだったら……怪しいわね。…まさか、クラウチさんがハリーの名前を…?」

 

 

 

ソフィアはぽつりと呟いた。

いや、それは考え難い──だが、今までの行動から怪しいのもまた、事実だ。

 

 

「暫く、様子を見ましょう。──ハリー、あなたは課題の事も考えないといけないもの」

「そうだね…でも、ソフィア──僕はスネイプがやり直すチャンスを貰う前に何をしたのか、知りたいんだ」

 

 

ハリーのその言葉は自分でも驚くほど厳しいものだった。ソフィアは、きっとセブルスの弱みを握りたいのだろうと思い、小さくため息をつく。

 

 

「ジャックに聞いてみたらどうかしら?スネイプ先生は卒業してから教師になるまで、何をしていましたか?…って。後ろ暗い事がなければ教えてくれるんじゃないかしら?」

 

 

ソフィアは二つ目のクッションを箱の中に入れながらハリーの目を見ずに答えた。

そして──確かに、卒業してから教師になるまで、セブルス(父親)には空白の期間がある。その間何をしていたのか、ソフィアは少し気になり──今度本人に直接聞いてみようと思った。

ちょうど、ハリーの手元に忍びの地図はない。夜に罰則という名の密会をしても、変には思われない筈だ。

 

 

「…あ、確かに、そうだね!」

 

 

ハリーはあれほど2人は──何故か──仲が良いのだ、きっと何があったか知っているに違いない。今度ジャックに聞いてみようと思いながら杖を振り、見事クッションを箱の中へと着地させた。

 

 

 

 

その後、ハリーはなかなかジャックとの時間をとる事が出来なかった。

廊下ですれ違う事や、食事時に大広間に居るのを見かける事はあれ、高確率でジャックのそばにはセブルスか、生徒が居た。

いや、セブルスがジャックに付き纏っているのではない、ジャックがセブルスに付き纏っていると言えるだろう。

セブルスは嫌そうに自分の後ろをついて歩くジャックを見るが、止める事はない。ニコニコと人当たりのいい笑顔を浮かべ楽しげに話しかけるジャックを見たハリーは、何故スネイプなんかと友人でいられるのか不思議でならなかった。

 

 

流石にそばにいるセブルス本人を前にして「スネイプって卒業してから何してたの?」などと、聞けるはずはない。

 

 

ハリーはとりあえずホグワーツで起こった事はなんでも伝えて欲しいというシリウスに、ムーディとセブルスとジャックの会話を覚えている全てを書き、クラウチがセブルスの研究室に居たことも忘れずにしっかりと書いた。

 

 

今、ハリーにとって早急に知らなければならないのはセブルスが何をしたかではなく、水の中で1時間どう生き延びればいいのか、という問題だ。

 

 

「アクアラングがあったらなぁ…」

「何それ?」

 

 

フクロウ小屋から談話室へ向かう廊下でハリーがぽつりと呟き、魔法界で暮らすソフィアとロンは首を傾げた。

すぐにハーマイオニーがアクアラングの説明をしたが、2人は不思議そうに目を瞬かせる。

 

 

「またアクシオを使ったら?その、アクアラング?っていうやつをマグルの村から呼び寄せるんだ!」

 

 

ロンはまたアクシオを使えば良いと言ったが、ハリーは難しそうな顔をした。

アクアラングは、ダイビングをする時に使うものであり、これをつけていれば酸素ボンベから酸素が送られ溺れる事はない。だが──かなり、大きいアクアラングは鳥や未確認飛行物体に見間違えられる事はないだろう。

 

 

「無理よ!アクアラングなんて…ハリー?使ったことあるの?」

「あー…無いね」

「もし、呼び寄せたとしても使いこなすまでに1時間経つわ!それにきっと国際魔法秘密綱領に触れて、失格になるわ。マグルの村から飛んでくるアクアラングを誰も見ないなんて…不可能だもの!」

「わかってるよ!…アクアラングみたいに、水の中で空気が吸える魔法があったらなぁ…」

 

 

ハリーも、アクアラングを呼び寄せる事は現実的ではないとわかっている。

だが、水の中で息をできなければ──自分は1時間ぷかぷか浮いて過ごすことになる。

 

ハリーが悔しそうに言い、ロンとハーマイオニーは「うーん…」と唸った。

ソフィアはきょとん、とした顔で3人を見つめるとすぐにニヤリと悪戯っぽく笑った。

 

 

「私、知ってるわよ!水の中でも呼吸が出来る魔法!」

「ええっ!?」

「本当なの!?」

「うわー!よかった!」

 

 

ソフィアはふふんと胸を逸らせ「泡頭魔法って言うの。それで水の中でも呼吸が出来るわ!悪臭を防ぐのによく使われているわね」と泡頭魔法の説明をする。

ハリーはほっと表情を緩め、これで第二の課題はなんとかなりそうだと胸を撫で下ろした。

 

 

「ただね、ハリー。…あなた、泳げるの?この魔法は、呼吸はできるようになるけれど、泳げるようになるわけじゃないの」

「ぼ…僕……その、泳げるようになる魔法とか──」

「それは…足をプロペラか、水中人のヒレに変えたりするしかないわね…」

 

 

ハリーは、泳ぎについて全く自信がなかった。

ホグワーツに来るまでにダドリーはスイミングスクールに通っていたが、勿論ハリーが通わせてもらえるわけがない。そんな金の無駄な事をあの家族は行わない。

運動神経の良いハリーは、軽くバタ足をしたり、少し潜る事は可能だろう。

だが──二つ目の課題は、何かを水中で探さなければならないらしい。それも、おそらく湖底に住んでいるも水中人に会わなければならない。水中人の住処を見つけ出し、何かを水中人から受け取る課題だとするのなら…たとえ呼吸ができたとしても、それ程深く潜れると思わなかった。

 

 

ハーマイオニーは歩みを止めてくるりと振り返る。

いきなり止まったハーマイオニーに、ソフィア達は驚き、慌てて急停止した。

 

 

「じゃあ、私とロンで他の方法を図書館に探しに行く、ハリーとソフィアはあの部屋で泡頭呪文の練習をする!どうかしら?」

「ええ、いいわよ!」

「図書館か…よし、頑張ろうぜ!」

「ありがとう、ハーマイオニー、ロン。…ソフィアも、よろしくね!」

 

 

ちょうど左右でそれぞれの目的地に分かれる廊下であり、ハーマイオニーとロンは図書館へ、ハリーとソフィアはあの部屋──花束を持つ少女の部屋へ向かった。

 

 

花束を持つ少女の肖像画がある廊下にたどり着いたとき、突き当たりに飾られた花束を持つ少女の肖像画がぱたりと開いた。

 

ソフィアとハリーは少し離れたところでそれを見て──中からルイスが先にぴょんとおり、ヴェロニカに手を差し伸べちゃんとエスコートしながら廊下へと降ろしているのを見た。

 

 

「ルイス、ヴェロニカ!」

「──あ、ソフィア、ハリー」

 

 

ルイスはまさかソフィアと会うとは思わず驚いた顔をしたが、少し頬を赤らめてにっこりと取り繕うように笑う。

 

 

「この部屋使いたいんだけれど…いいかしら?」

「ああ、大丈夫だ」

「僕たちは図書館に行くから。…でも、珍しいね。2人って」

 

 

ルイスはその後ろにハーマイオニーとロンの姿がない事に気が付き首を傾げる。

まさか喧嘩──は、してないはずだ。

 

ハリーは「2人は図書館なんだ」と答え、そうだ──ルイスにも一応、上手に泳ぐ魔法について聞いておこうと思った。

 

 

 

「ルイス、上手に泳げるようになる魔法…とかない?」

「え?泳ぎ…?」

 

 

いきなりの話題にルイスはきょとんとしたが、すぐにあっさりと頷いた。

 

 

「あるよ」

「ええっ!?ほ、本当に!?」

「…ハリーが使える魔法よ?」

 

 

潜水艦に変身する事や足を水中人のように変える事はハリーには不可能だろう。

ハリーは「どんな魔法!?」と期待で目を輝かせルイスに詰め寄ったが、ルイスは「うーん」と少し言葉を濁した。

 

 

「魔法じゃないけど。…うまく泳げる──というか、(エラ)(ヒレ)が出来て、水中人みたいに水の中を自在に泳げるようになる薬草があるんだよ。──ハリーが必死になるって事は、第二の課題絡みかな?」

「う、うん!…そ、その…教えてくれないかな…?」

「鰓昆布っていうものだよ。…だけど、これかなり貴重で、高価なんだよね…授業では絶対使わないし…」

 

 

鰓昆布。

ハリーとソフィアは初めてその言葉を聞いたがルイスの説明が正しいのなら、間違いなくハリーに必要なものだ。

 

 

「…通販とかで買えるかなぁ?」

 

 

実はかなりの資産家であるハリーは、名前さえわかってるのなら、なんとかなるかもしれないと期待で胸を高鳴らせた。

ルイスは腕を組み顎を撫でながら「どうだろ…」と呟く。

 

 

「わからないや。僕も買ったことないから…」

「そっか…」

「ルイス、よく鰓昆布?なんて知ってるわね?どれだけ難しい本に載ってたの?」

 

 

ソフィアは魔法薬学は苦手だが、筆記試験は完璧である。勿論それなりに予習をしているため、四年生が知らないレベルの魔法薬学の知識は、あった。

しかし鰓昆布など、聞いたことがない。

ソフィアが驚き半分、尊敬半分の眼差しでルイスを見ていると、ルイスは誇らしげにちょっと胸を逸らせた。

 

 

「ほら、僕はスネイプ先生の個人授業を受けてるでしょ?──かなり進んでてね。その時使った地中海の魔法水生植物の本に書いてあって…。──あ、鰓昆布、そういや先生の研究室にあったなぁ…」

「本当に!?──よし、ハリー。最悪盗むしかないわ」

「……、…第二の課題より難しそうだね…」

 

 

 

スネイプの研究室に鰓昆布がある。

それはかなり有益な情報だが、ただでさえ先日研究室にはクラウチが入り──スネイプはそれを知らないが──警戒しているだろう。

 

──万が一バレたら、全ての盗みがポッターの仕業だったのかと思うに違いない。……確かに、二年生の時は僕たちが盗んだけど。

 

 

それに、忍びの地図がなければ研究室が無人かどうかはわからない。鰓昆布は呼吸の問題だけでなく、泳ぎの問題もクリアしていて喉から手が出るほど欲しかったが──しかし、今のハリーにセブルスの研究室に入り盗む勇気は無い。

 

 

「鰓昆布って、どんな見た目なの?」

「えーっとね……灰緑色で、ネズミの尻尾をくるくる丸めたみたいな…(ぬめ)りがあって──本気で、盗むつもり?」

「時と場合によるわね」

 

 

真剣な顔をするソフィアに、ルイスは呆れたような目をして「スネイプ先生、かなり怒ると思うよ」と呟き肩をすくめた。

 

 

「まだ時間はあるし、僕も他の方法を探してみるね。──ヴェロニカ、行こうか」

 

 

ルイスは隣に立つヴェロニカに優しく微笑みかける。ヴェロニカは頷き、ハリーとソフィアに手を振り、2人はいつもよりも近い距離でゆっくりと図書館へと向かった。

 

 

その後ろ姿を見送ったソフィアとハリーは顔を見合わせる。あの2人は恋人になったらしい、確かに──なんとなく、他の人とは違う雰囲気を2人は纏っていた。

 

 

 

「よし!ハリー、とりあえず泡頭呪文を頑張りましょう!」

「そうだね、せめて潜れるように…」

 

 

ソフィアはハリーの背中を優しく叩き、ハリーはせめて──見苦しい姿を見せないように頑張ろう、と心に決めた。

 

 

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