【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

218 / 467
218 まさかの結果!

 

 

ハリーはソフィアとガブリエールを抱え、遠くにある光を目指した。

 

 

最も早く人質達の元に辿り着いていたが、他の選手達が来て、人質達を助けたところを確認しなければ、ハリーはその場をとても──離れられなかった。

途中でセドリックがチョウを、クラムがハーマイオニーを連れて海面へ向かったが、フラー・デラクールは現れなかった。

ハリーにとってガブリエールは交流もない、見知らぬ少女であったが、見捨てることは出来ず、二人を両腕に抱え必死に足を動かした。

 

周りには水中が取り囲むようにしている、まさか、1時間経過した途端ソフィアとこの少女を引き摺り込むつもりなんだろうか。そんなこと、させてたまるか!絶対、無事に、無事に2人とも助けるんだ!

 

 

ハリーは鰓昆布の効力が消え、普通の足で懸命に水を蹴った。口の中には冷たい水が流れ込み、酸素を得られない脳はくらくらとくらみ、肺は悲鳴を上げる。

息ができない、酸素が欲しい。やめることはできない。やめてたまるか──!

 

 

 

その時、頭が水面を突き破るのを感じた。

冷たく澄んだ空気を胸いっぱい吸い込み、ハリーは喉の奥に溜まっていた水を吐き出し、むせ、喘ぎながら水中に浮かぶソフィアとガブリエールを引き上げた。

 

水中人がハリー達の周りを囲み、ぼうぼうと伸びる緑の髪を水面に広げながら顔を出す。どの水中人も、ハリーに温かく笑いかけていたが、必死なハリーは気が付かなかった。

 

 

「ソフィア!ソフィア、起きて!」

 

 

ただでさえ白いソフィアの顔は今は蒼白で、ハリーは少し強めに髪が張り付いたソフィアの頬を叩く。

 

 

「う──んん……けほっ!──ハリー。…ああ、おはよう」

 

 

呻き声と共に目を覚ましたソフィアは、口から水を吐き出した後、にっこりと笑った。

ハリーはほっと胸を撫で下ろし──つい、立ち泳ぎしていた足を止めてしまって少し沈む。もう、疲れ切っていた。

 

 

「う──きゃっ!?ソ、ソフィア…!」

「あら、ガブリエール?大丈夫よ。ハリーも、ゆっくりでいいから……岸にいきましょう」

 

 

ガブリエールは強い日差しにきょとんとしていたが、すぐに身を刺すような湖の冷たさに体を震わせソフィアに抱きつく。

ソフィアはポケットを探り杖を取り出すと、進行方向とは逆に風を起こし、ゆっくりと風の力を借りて水面を移動した。

 

 

「ハリー、ガブリエールまで助けたの?」

「う、うん…フラーが現れなくて、この子を残しておけなくて──だって、1時間たったら…永久に戻らない……そうだろ?」

「うーん、それは嘘なの。あの歌は制限時間に戻れるように歌っていただけで……ダンブルドア先生が私たちを溺れさせるわけないでしょ?」

 

 

岸へと向かいながらソフィアが悪戯っぽく笑う。

たしかに──冷静になってみればそうかもしれない。だが、水中人は鋭利な槍を持っていて、本当に人質を殺してしまいそうだった。

 

ハリーは馬鹿な事をしたのかと憂鬱な気持ちになったが、ソフィアはガブリエールを掴んでいた腕を離し、ぎゅっとハリーの首元に抱きついた。

 

 

「──でも、とてもあなたらしくて、そういうところが好きよ」

 

 

ソフィアは優しくハリーの頬にキスを落とし、にっこりと照れたように笑って体を離した。

ハリーは今、とても冷たい水の中にいるというのに──何故か体が燃えるように熱くなったような気がした。

 

 

「え、ソフィア、それって──」

「さあ、ハリー、ガブリエール!後少しよ!」

 

 

ソフィアはハリーが全てを言う前に再度杖を振り、風を使いながら岸辺へ向かう。

なんとか足が着くようになったころ、ソフィアとハリーは幼いガブリエールを支えながら立ち上がった。

20人余りの水中人は護衛兵のようにハリー達に付き添い、恐ろしい悲鳴のような歌を歌っている。

 

 

ポンフリーが忙しなく湖に入っていた代表選手と人質達の世話をするのが見えた。みんな分厚い毛布に包まり、暖をとっている。

ダンブルドアとバグマンが岸辺から近づいてくるハリーとソフィアににっこりと笑いかけていた。

 

 

「ソフィア!!」

 

 

蒼白な顔をしたルイスが観客席のスタンドを乗り越え湖に飛び込み、水飛沫を上げソフィアに駆け寄るとその濡れた体を強く抱きしめる。

 

 

「ルイス、どうしたの?」

「どうしたのって…!時間を過ぎても戻ってこないから、フラーが、もう、死んだって泣いてて…!」

「大丈夫よ、ダンブルドア先生が私たちに危害を加えるわけないじゃない!」

 

 

ソフィアは笑ったが、観客たちは嘆き半狂乱になっていたフラーを見ていた。

何度も妹の名を叫に、湖の中に戻ろうともがくフラーに、誰もが最悪の結果を予測したのだ。三校対抗試合は、過去に死者が出ている──そのせいもあるだろう。

 

 

「ガブリエール!ガブリエール!!あの子は生きているの!?怪我してないの!?」

 

 

フラーが叫んだが、浅瀬まで到着したハリーは疲労困憊で座り込んでしまい応える余裕は無く、フラーに向かって小さく頷いたがフラーには伝わらない。

少しして涙を流しながら叫んでいたフラーはマクシームの静止を振り切り、ガブリエールに駆け寄り強く抱きしめた。

 

 

「水魔なの……私、襲われて……ああ、ガブリエール!もう、ダメかと……」

「ほら、こっちへ」

 

 

ポンフリーが湖の近くに作られた控え席からハリー達に呼びかける。ソフィアとルイスは座り込んでしまっていたハリーを左右から支えて立ち上がらせ、ゆっくりと岸へと登った。

 

ポンフリーはソフィアとハリーをハーマイオニーや他の選手がいるところに引っ張り、肩を強く押し座らせると分厚い毛布で包んだ。

すぐに熱い煎じ薬を一杯喉に流し込まれ、ソフィアもハリーもカッと喉から胃にかけて熱くなり、すぐに身体全体がポカポカと温まった。耳からは湯気が吹き出してしまい、それを見た2人は思わず笑ってしまった。

 

 

「よくやったわねハリー!出来たのね、やり方を見つけたのね!」

「えーっと……」

 

 

同じように毛布に包まれていたハーマイオニーが嬉しそうに目を輝かせて叫ぶ。

ハリーは口ごもり、ドビーのことを伝えようとしたが──カルカロフが自分を見つめている事がわかると「うん、そうさ」と彼に聞こえるようにわざと声を張り上げた。

 

他の審査員が選手の元の駆け寄っているのに、カルカロフだけは審査員席を離れずハリー達が無事戻ったことに喜びも安堵もしていなかった。

 

 

「髪にゲンゴロウがついているよ、ハームオン、ニニー」

 

 

クラムはハーマイオニーの意識がハリーに向いていることが面白くなく、関心を取り戻そうと声をかけたがハーマイオニーは鬱陶しそうに髪についたゲンゴロウを掴むと湖に向かって放り投げた。

 

 

「でも、あなた…制限時間をかなりオーバーしたのよ、私たちを見つけるのにそんなに長くかかったの?」

「ううん、すぐに見つけたけど……」

「ルイスもオーバーしたって言ってたわね……そんなに過ぎちゃったの?」

「多分、15分は過ぎたわね」

「そうなの……」

 

 

ハリーは残念そうなソフィアの声を聞き、馬鹿な事をしたという気持ちが募った。クラムもセドリックも他の人質に構わなかった、きっと、ダンブルドアが人質を死なせないように安全対策を講じているとわかっていたのだろう。

 

気持ちが沈み、ハリーが後悔し始めているなか、ダンブルドアが水際にかがみ込み水中人の長らしい一際荒々しく、恐ろしい水中人と話し込み始めた。

水中人は水から出ると悲鳴のような声を発するが、ダンブルドアの口からも同じような声が出ている。水中人と言葉が話せるからこそ──この課題が実現したのだろう。

 

 

「どうやら、点数をつける前に協議せねばならんようじゃ」

 

 

ダンブルドアは立ち上がると審査員に向かって言い、4人は誰にも話が聞かれないよう防音魔法を周りにかけ秘密協議を行う。

 

その時、ポンフリーに連れられフラーとガブリエールがハリーとソフィアのそばに現れた。フラーの顔や腕は切り傷だらけでローブは破れていたが、フラーは全く気にせずポンフリーが綺麗に治そうとしても断った。

 

 

「さきに、ガブリエールを診てください」

 

フラーはそう言うと毛布にぴっちりと包まれ、元気爆発薬を飲んだガブリエールを見てようやく、険しかった表情を緩め、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「あなた、妹を助けてくれました。あの子は…あなたの人質では無かったのに……」

「うん…」

 

 

フラーはハリーを見て言葉を詰まらせる。

ハリーは、他の人質達を置いてくればよかったと、心からそう思っていたが、ふと目の前が翳り──美しいフラーの顔面が近づいてきた。

 

フラーは身を屈め、感謝を込めてハリーの頬に二回ずつキスをした。ハリーは驚き困惑し、少し頬を染めたがそれほど嬉しくはなく──むしろ、ソフィアに見られた事に激しく動揺していた。

 

 

「それに、あなたもです。ありがとう」

 

 

フラーはソフィアの前で身を屈め、頬に一度キスをした。ソフィアは嬉しそうに微笑み「大した事はしてないわ」とくすくすと笑う。

 

 

「──レディースアンドジェントルメン!!」

 

 

その時、バグマンの魔法で拡張された声がすぐそばで轟き、ソフィア達は飛び上がった。あまりの大きさにソフィアとハーマイオニーは耳を押さえ「うるさい!」と悲鳴を上げたが、その声も続くバグマンの声にかき消され、スタンドにいる観衆は結果を聞き逃すまいと静まり返る。

 

 

「──審査結果が出ました。水中人の長、マーカスが湖底で何があったかを仔細に話してくれました。そこで、50点満点で各代表は次のような得点となりました……ミス・デラクール。素晴らしい泡頭呪文を使いましたが水魔に襲われ、ゴールに辿り着けず、人質を救出できませんでした。得点は25点!」

 

 

スタンドから拍手が起こったが、フラーは眉を下げ「私は0点の人です」と頭を振りながら喉を詰まらせた。

 

 

「ミスター・ディゴリーはやはり見事な泡頭呪文を使い、最初に人質を連れてきましたが、制限時間の1分をオーバー。そこで47点を与えます」

 

 

ハッフルパフから大きな声援が湧いた。

1分オーバーで47点なら、きっと自分は最低点だろう。そうハリーは思いがっくりと俯き肩を落とした。

 

 

「ミスター・クラムは変身術が中途半端でしたが、効果的な事には変わりありません。人質を取り戻したのは2番目でした。得点は40点」

 

 

沢山の拍手が送られる中、カルカロフが満足げな顔でとびにり大きく拍手をした。

 

 

「ミスター・ポッター。彼の鰓昆布はとくに効果が大きい。戻ってきたのは最後でしたし、1時間の制限時間を大きくオーバーしていました。しかし、水中人の長によれば、ミスター・ポッターは最初に人質の元に到着したとのことです。遅れたのは、自分の人質だけでなく、全員の人質を安全に戻らせようと決意したせいだとの事です」

 

 

ハーマイオニーは半ば呆れ、半ば同情するような目でハリーを見た。

ソフィアはぽんぽんと優しくハリーの背を叩いたが、ハリーは俯いたまま顔を上げる事が出来ない。

 

 

「殆どの審査員が──これこそ道徳的な力を示すものであり、50点満点に値するとの意見でした。しかしながら……ミスター・ポッターの得点は45点です」

 

 

ハリーは思いもよらぬ結果にばっと顔をあげ、信じられない目でバグマンを見つめた。

バグマンはハリーにパチンとウインクをし、ダンブルドアとマクシームと共に割れんばかりの拍手を送る。カルカロフだけが、嫌そうに顔を歪ませおざなりな拍手を送った。

 

ソフィアとハーマイオニーはきょとんとしてハリーを見つめたが、すぐに笑い出し、観衆と共に力一杯拍手し「やったわね!」と歓声を上げた。

 

 

「やったわ!ほら、やっぱりあなたのそういうところは、みんな大好きなのよ!」

 

 

フラーも笑顔でハリーに拍手を送り褒め称えていたが、クラムは嬉しくないのか、何とかハーマイオニーに話しかけようとしていたが──ハーマイオニーはハリーに声援を送るのに夢中でクラムの話など耳に入らなかった。

 

 

「第三の課題。最終課題は6月24日の夕暮れ時に行われます。代表選手はきっかり1ヶ月前に、課題の内容を知らされることになります。──諸君、代表選手の応援をありがとう!」

 

 

──終わった。

 

 

ポンフリーが他の代表選手や人質達の濡れた服を着替えさせるためにみんなを引率し城へと歩き出す中、最も後方でハリーはそう、思った。

 

 

──終わったんだ、6月24日までは何も心配しなくていいんだ……それに、セドリックと同点一位通過……もし、優勝出来たら……。

 

 

ハリーは自分の前を歩く、ソフィアの濡れた後ろ姿を見ながら、ぎゅっとローブの下で拳を握った。

 

 

──ソフィアに、思いを告げるんだ。本当に、今なら……不可能じゃない気がする。

 

 

輝かしい未来を掴めそうな予感に、ハリーは胸の奥が一杯になりながら──次、ホグズミードに行ったらドビーに一日一足として、一年分の靴下を買ってやろう、そう思っていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。