ハーマイオニーへの中傷の手紙はそれから1週間は途切れる事なく続いた。それだけではなくソフィアにも、ハリーとの仲を応援し、ハーマイオニー・グレンジャーなんかに取られるなという内容の手紙が届いたが、ソフィアは初めの1通だけ読み、そのあと届いた見知らぬ相手からの手紙は全て中を読まずに捨てた。
ハーマイオニーもあれから1通も開封しなかったが、中には吠えメールで送ってくる者も居て、週刊魔女を読んでなかった生徒にもハーマイオニーとクラムとハリーとソフィアの四角関係の噂を知る事となる。
ハリーとソフィアは噂好きの生徒に付き合っているのかと聞かれるたびに、お互い恋人同士ではない、と否定していたが──ハリーは否定するたびに胸がちくりと痛んだ。
これを噂にはしたくない。だが、ソフィアがそばにいる時に噂を肯定するわけにもいかず、渋々否定するしかないのだ。
ハーマイオニーもまた、ハリーの事なんてどうとも思ってないし、ソフィアは大切な親友だと何度も弁解せねばならなかった。
「そのうち収まるよ。僕たちが無視していればね。……前にあの女が僕のことを書いた記事だって、みんな飽きてしまったし──」
またも噂好きの女生徒達にハリーとソフィアとの関係を揶揄いながら聞かれ、機嫌を損ねたハーマイオニーにハリーは慰めるように言った。
「学校に出入り禁止になっているのに、どうして個人的な会話を立ち聞きできるのか、私それが知りたいわ!」
「…よく考えてみれば、私がホグズミードに行かないことも……少しの人しか知らなかったはずなのに…」
ソフィアがホグズミードに行かないと話したのはハリー達と、たまたま校庭で会ったルイスとヴェロニカにしか言っていない。どう考えても彼らからその事が漏れるとは思えず、やはりスキーターは人に気付かれず盗み聞きする術を持っているのだとしか思えなかった。
次の闇の魔術に対する防衛術の授業の後、ハーマイオニーは教室に残りムーディに第二の課題の時にスキーターが居たかどうかを聞いた。ムーディは確かに居なかった、と断言し、ハーマイオニーは先に教室から出ていたソフィア達と合流するなり難しい顔をしながら考え込む。
「リータは透明マントを使ってないわ!ムーディは第二の課題の時に、審査員席の近くでも…湖の近くでも見なかったって言ってたわ!」
「ハーマイオニー、そんな事やめろって言っても無駄か?」
「無駄?私はなんでビクトールとの会話を聞いたのか知りたいの!それに、ハグリッドのお母さんの事を知ったのかもよ!」
怪訝な顔をするロンに、ハーマイオニーは怒ったように噛み付いた。何としてでもスキーターをギャフンと言わせなければ、ハーマイオニーの気は治まりそうに無い。
ロンはハーマイオニーがまたスキーターに食ってかかり、また酷い目に遭うかもしれないと考えての忠告だったのだが──怒るハーマイオニーにその思いは届かない。
「もしかして、君に虫をつけたんじゃないかな?」
「虫をつけた?」
「…?スキーターは虫と話せる力を持つって事?」
ソフィアとロンはハリーの言葉に首を傾げる。虫、とはマグル界で盗聴マイクや録音装置の事を指すのだが、魔法界で暮らしていたソフィアとロンは勿論その事を知らず、ハリーの説明を興味深そうに聞いた。
「でも、ホグワーツではマグルの機械は使えないのよ?──つまり、その、えーと…盗聴マイク?みたいな魔法道具か魔法を使ってるのかしら…」
「それは有り得るわね。盗聴の魔法……そうに違いないわ!それが何なのかわかったら──それが非合法なものなら、こっちのものなのに!…ソフィア、何か知ってる?」
ハーマイオニーは焦ったそうにソフィアに聞いたが、ソフィアは腕組みをし首を傾げていたが──どれだけ考えてもそんな魔法を聞いた事はなく、首を振った。
「うーん、知らないわ」
「他にも心配する事はあるだろ?この上スキーターへの復讐劇まで始めるつもりか?」
「何も手伝ってくれなくていいわ!1人でやります!」
ロンの呆れたような言葉に、ハーマイオニーは怒りながらキッパリと言うとツンとそっぽを向き大股で廊下を歩く。
「私も行くわ、ハーマイオニー!」
ソフィアは慌ててハリーとロンに「また後で!」と告げハーマイオニーの後を追い、小走りになりながら隣に並んだ。
「ソフィア、私一人でできるわ!」
「ううん、私もちょっと調べたい事があるし──図書館に行くんでしょう?……それに、噂の事もあるし、1人にならない方がいいわ」
ソフィアはチラリとすれ違った生徒たちを見て顎で指す。
噂を否定しているとはいえ、まだ完全に信じている生徒ばかりではない。コソコソとハーマイオニーとソフィアを見て話す見知らぬ生徒の視線に気付いたハーマイオニーは、悔しそうに唇をぎゅっと噛んだ。
「──あの女!絶対許さないんだから!」
「本当ね。…ハーマイオニーが私に愛の妙薬を盛らなくても、こんなに相思相愛なのにね?」
怒るハーマイオニーの手を繋ぎ、ソフィアは悪戯っぽく笑う。
ハーマイオニーはソフィアの言葉に少々呆気に取られたが、それでも「そうね!」と嬉しそうにはにかんだ。
図書館に着いたハーマイオニーはすぐに沢山の本を抱え、盗聴魔法について必死に調べ始める。ソフィアは同じように沢山の本を抱えていたが、数々の呪文が書かれた本だけではなくルーン語やマグル学についての本も同じように沢山積み上げていた。
正直なところ、ソフィアはスキーターの謎を解明するよりも──自分の宿題や授業の予習の方が危機迫っていた。ハーマイオニーもソフィアが盗聴魔法だけではなく、他の事を調べていると直ぐに気が付いたが、それに対し怒るような心の狭い彼女ではない。
むしろ、忙しい中に自分のそばに居てくれるだけで、充分嬉しかった。