【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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225 切ないイースターエッグ!

 

 

ヘドウィグはイースター休暇が終わった後、ようやく戻ってきた。

しかし、ヘドウィグが持つのは手紙ではなく大きな紙袋であり、朝食中に受け取ったハリーはその重さに少し驚く。

 

 

「なんだろう?」

「多分、ママじゃないかな。…色々持たせるのが好きだから」

 

 

まさか、またいつものお手製サンドイッチだろうかとロンが恥ずかしそうに頬を染め嫌そうに言ったが、中から出てきたのは大きなイースターエッグだった。

 

 

「チョコのイースターエッグだ!君たちの分もあるよ!」

 

 

パーシーからの返事が無かったことが気になったが、ハリーは初めてイースターエッグを受け取り嬉しそうにドラゴンの卵ほど大きなチョコを両手に抱える。

 

モリーの手作りチョコエッグは、それぞれの名前が彫られていた。

ハリー、ロン、ソフィア、ルイスの4人はどれも大きなチョコエッグだったが──ハーマイオニーの名が彫られたものは、鶏の卵より小さい。

明らかな差に、ハーマイオニーは片手で十分に収まる卵を傷付いたような目で見下ろし息を呑み──がっくりと、肩を落とした。

 

クィディッチ・ワールドカップの時は優しかったモリーが、何故こうも悲しい事をするのか──聡明なハーマイオニーは、すぐにわかった。

 

 

「あなたのお母さん、週刊魔女を読んでるのね……ロン?」

「ああ、料理のページを見るのにね」

 

 

早速チョコエッグを齧り、中につまっていたヌガーを頬張りながらロンが頷く。

 

 

「…ハーマイオニー、私、今…ヌガーをこんなに食べられないから──わけましょう?」

「……いいの、ソフィア。それは、あなたのだもの…」

 

 

ハーマイオニーは悲しそうに笑い、小さなチョコエッグをぱくりと一口で食べた。

 

 

「あっ!僕の卵の中に、パーシーからの手紙が入ってる!」

 

 

チョコエッグを齧っていたハリーは、中に少しベタついた手紙が丸められて入っていたことに気付き、手紙にくっついていたヌガーを剥がして食べながらソフィア達に見えるように開けた。

 

 

 

『日刊預言者新聞にもしょっちゅう言っているのだが、クラウチ氏は当然取るべき休暇をとっている。クラウチ氏は定期的にフクロウ便で仕事の指示を送られる。実際にお姿は見ていないが、私は上司の筆跡を見分けることくらいはできる。そもそも私はいま、仕事に手一杯で馬鹿な噂を揉み消している暇もないのだ。よほど大切なこと以外で、私の手を煩わせないでくれ。ハッピー・イースター。パーシー』

 

 

「…かなり、イラついてるわね」

 

 

ソフィアは手でチョコを割り、口の中で溶かして食べながら走り書きのような文章を読み率直な感想を告げた。

 

 

「うーん、パーシーもクラウチの姿は見てないのか…」

「でも、指示を出してるのは本当のようね」

「けっ!どうせろくな仕事なんてしてないさ!」

 

 

ハーマイオニーとハリーはこれだけではクラウチが今何をしているのか明確には分からず、気難しい顔をしたが、ロンは嫌味ったらしいパーシーの手紙に嫌そうに鼻を鳴らし、次々と甘いヌガーを口の中に入れた。

 

 

「とりあえず、スナッフルズに伝えましょう」

 

 

ハーマイオニーの言葉にハリーは頷き、一限目が始まる前に手紙を書くと、すぐにフクロウ小屋へと向かった。

 

 

 

 

その日の夜、ソフィアはいつものようにスープだけをサッと飲むとすぐに立ち上がった。

 

 

「もういいの?まだ、一杯しか飲んでないわよ?」

 

 

ソフィアの顔色は一時と比べ良くなったとはいえ──あれからほぼ毎晩、ソフィアはセブルスの研究室を訪れホットチョコをたっぷり飲んでいた──流石に少量すぎないかとハーマイオニーは心配そうにソフィアを見上げる。

しかし、ソフィアは無言のまま嬉しそうににっこりと笑うと、大広間の縦に長い窓を指差した。

 

既に夜であり、夜空には満天の星と満月が輝いている。

 

 

「──あっ!今日なのね!?」

 

 

ハーマイオニーはソフィアの嬉しそうな表情と、窓からの景色を見てすぐに理解すると「行ってらっしゃい!」と笑顔でソフィアの背中を優しく叩いた。

ソフィアは何度も頷き、ハーマイオニーに向かって手を振り大広間から出て行く。

 

 

「何が今日なんだい?」

 

 

ローストポークを食べていたハリーは、ソフィアが消えた先の扉を見つめ不思議そうに首を傾げた。

ハーマイオニーは「信じられない」というような唖然とした顔をしたが、すぐに窓の外を指差す。

 

 

「ほら、見て。今日は満月よ?」

「…あのなぁハーマイオニー、みんな君みたいに察しがいいと思ったら大間違いだぜ?」

「もう!アニメーガスよ!今日は満月だから、ようやくソフィアの口の中に葉がある生活が終わるのよ!」

 

 

察しの悪いロンとハリーに、ハーマイオニーは少し怒りながら言う。今までソフィアがずっと努力してきたことを知っているのに、何故こんな大切な事を忘れてしまうのかと信じられなかった。

 

 

 

 

ソフィアは大広間を出てすぐにマクゴナガルの研究室へ向かっていた。

ソフィアが出る前に、マクゴナガルがソフィアを見て「待ってますよ」と言うように、意味深な微笑みを見せながら大広間を出た事をちゃんと確認していた。

 

この日を指折り数え心待ちにしていたソフィアは、はやる気持ちを抑え、何度か深呼吸してから研究室の扉を叩いた。

 

 

「ソフィア・プリンスです」

「どうぞ、お入りなさい」

 

 

柔らかい声が扉の向こうから聞こえ、ソフィアはすぐに扉を開け、机の前で微笑みながら立つマクゴナガルの元に溢れんばかりの笑顔で駆け寄った。

 

 

「先生…!」

「よく頑張りましたね、ミス・プリンス。今宵はいい満月です。瓶はこちらにあります…ようやく、不自由な生活から脱却出来ますね」

 

 

マクゴナガルは机の上に置いてあった小さな瓶をソフィアに手渡す。

笑顔で受け取ったソフィアは、カバンの中から本を取り出し、アニメーガスについて書かれた項目を何度も読み、一度大きく頷くとマクゴナガルを見た。

 

 

「やり方はわかっているようですね。材料は全て揃えてあります。──さあ、どうぞ」

 

 

ソフィアは真剣な顔でコルク栓を抜くと、慎重に口の中からふやけたマンドレイクの葉を取り出し、そっと瓶の中に入れる。そのまま瓶の淵に口を近づけ、レモンの事を考え──溢れ出てくる唾液を流し入れた。

 

 

「…これくらいで大丈夫ですか?」

「ええ、問題ないでしょう」

 

 

充分に葉を唾液で浸したソフィアはすぐに窓へと向かい、空に浮かぶ満月に向けて、瓶を掲げた。

 

満月の光を浴びたマンドレイクの葉は、瓶の中でくるくると回る──本に書かれていた通りの現象に、ソフィアはほっと胸を撫で下ろし、机まで戻ると七日間日光に当たらなかった露小匙一と、ドクロメンガタスズメの繭を瓶の中に入れ、しっかりとコルク栓で蓋をした。

 

 

「雷雨の日までは、私が預かりましょう」

「お願いします!」

 

 

マクゴナガルは杖を振り、小さな箱を出現させ蓋を開いた。ソフィアはそっと瓶をその中に入れ、ようやく──ようやく、ややこしい作業はほとんど終わったと胸を撫で下ろした。

 

 

「明日の朝から何をするのかは──わかってますね?」

「はい。日の出と、日の入りにアニメーガスの呪文を唱える──ですね」

 

 

雷雨の日まで、毎日2回忘れずに唱えなければならない。何をしていても、必ず日の出と日の入りの時間でなければならず──ソフィアはカバンから天文学の本を出すと『日の出日の入り時刻表』をマクゴナガルに見せた。

 

しっかりと準備をしているソフィアに、マクゴナガルは満足げに微笑み「あと少しです。頑張るのですよ」と肩を優しく叩いた。

 

 

「アニメーガスの呪文を初めて唱える時は、心臓に違和感があると思います。身体が熱くなるような、強い鼓動を感じる事でしょう。何も、恐れることはありません。正常な反応です。季節的にも…おそらく、雷雨の日はそう遠くないでしょう」

「はい、頑張ります!」

 

 

ソフィアは笑顔で答えた。

イギリスは夏になると激しい雷雨が吹き荒れる天気になる事が多く、いつもなら薬草学や魔法生物飼育学の授業を受けるには外に出なければならず──かなり濡れてしまうことからやや憂鬱な季節だったが、今回ばかりは早く雷雨になってほしかった。

 

 

この分だと本当に、四年生の内にアニメーガスの術を会得出来るかもしれない。

ソフィアは期待と喜びと、何より1ヶ月間の緊張がようやく終わり心から晴れ晴れとし──。

 

 

ぐう、と控えめに腹の虫が鳴いた。

 

 

「あっ……その、まともに食べてなかったので…」

「そうですね、まだ夕食中です…さあ、戻って久しぶりの肉料理でも食べてきなさい」

 

 

緊張が無くなり、急に空腹感を思い出したソフィアは恥ずかしそうに腹を押さえて肩をすくめた。

 

 

「はい!今日は沢山食べます!」

 

 

ソフィアは「失礼します!」と元気に頭を下げると、すぐに扉へ向かった。

マクゴナガルはくすくすと小さく笑い、優しい目でソフィアを見送った後、手に持っている箱を誰の目にも触れない箪笥の奥へと隠した。

 

 

「アリッサ…あなたの娘は、どんな動物になるのでしょうね……」

 

 

ぱたん、と箪笥の戸を閉めたマクゴナガルは、柔らかい声音でぽつりと呟いた。

 

 

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