【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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226 クラウチはどこ?

 

 

「つまりこういうことになるわね。クラウチさんがビクトールを襲ったか、それともビクトールがよそ見している時に別の誰かが襲ったか」

「クラウチに決まってる!だから、ハリーとダンブルドアが現場に行った時に居なかったんだ!」

「違うと思うな…クラウチはとっても弱ってたから…」

「訳の分からない事を言うってことは、錯乱の呪文?……いや、違うわ…時々正気に戻ってた…」

 

 

ソフィア達は誰もいない談話室で額を突き合わせヒソヒソと話す。

 

 

数時間前、ハリーを含めた選手たちが最終課題の内容を聞きに行った。

ソフィアとロンとハーマイオニーは最終課題がどんなものであり、今後の対策を練るためにハリーが帰ってくるのを待っていた。かなり遅く帰ってきたハリーは顔色も悪く深刻そのものの表情であり、やはり最終課題だけあって今までの中で一番難しいのか──そう思ったが、切羽詰まった表情で聞かされたのは最終課題の事ではなく、クラウチの事だった。

 

クラムと森のそばで話していたハリーは心身衰弱し、狂った会話をするクラウチと出会い、クラムをクラウチの側に残しダンブルドアを呼びに行った──クラウチがダンブルドアに会わないと、と何度も呟いたからだ。

その後ダンブルドアとハリーがクラウチとクラムの元へ行った時にはクラウチの姿はなく、失神させられたクラムのみが残されていたと言う。

 

 

「この事も、シリウスに伝えましょう。もうすぐ夜明けだし…」

 

 

ソフィアは談話室の窓からうっすらと紫色になりつつある空を見上げた。

 

 

 

夜明けになり、ソフィアたちはこっそり寮を抜け出しフクロウ小屋へと向かった。

朝靄の立ち込める校庭は、初夏だとしてもまだかなり寒いが──眠気を覚ますにはちょうどいいだろう。

 

 

「ハリー、もう一回話してちょうだい。クラウチさんは何を喋ったの?」

「もう話しただろ。訳の分からない事だったって…」

 

 

何度も同じ事を言わされたハリーは眠さもあり少し苛立ったが、ハーマイオニーの強い眼差しにしぶしぶ昨夜のことを思い出しながら口を開いた。

 

 

「ダンブルドアに何かを警告したいって。バーサ・ジョーキンズの名前ははっきり言ってた。もう死んでると思ってるらしいよ。何かが、自分のせいだって、何度も繰り返してた……自分の息子の事も言ってたな」

「そりゃ、あの人のせいだわ」

「あの人、正気じゃなかった。話の半分くらいは奥さんと息子がまだ生きているつもりで話してたし、パーシーに仕事の事ばかり話しかけて命令していた」

「それと…あの人の事については、なにを言ってたんだっけ?」

 

 

ロンが恐る恐る、聞きたいような聞きたくないような声音でハリーに聞く。ハリーはこの事についても何度も言ってたため、半分くらい嫌になりながら「より強くなってる、だって」と答える。

 

暫く黙って聞いていたソフィアはハリーの言葉に──ヴォルデモートが強くなっている、という言葉を聞き黙り込んでしまったロンとハーマイオニーの代わりに、わざと明るく口を開いた。

 

 

「ハリー、あなたに虫をつけなきゃならないわね。毎年あなただけ重要な話を聞くみたいだし?」

「確かに、その方が何度も同じ事を言わずにすむね」

 

 

冗談だと捉え、ハリーは薄く笑う。

 

 

フクロウ小屋に着いたソフィア達はフクロウが少なくがらんとしている止まり木を見上げる。

時折、夜の狩から戻ったフクロウが一羽、ネズミを咥えてすうっと朝焼けの空から寝床に帰ってきていた。

 

 

「スネイプに邪魔されなけりゃ…間に合ったかもしれないのに。──校長は忙しいのだ、ポッター。寝ぼけた事を!──だってさ。邪魔せずに放っておいてくれればよかったんだ」

「もしかしたら、君を現場に行かせたくなかったんだ!たぶん──待てよ──スネイプが禁じられた森に行くとしたら、どのくらい早く行けたと思う?」

「…スネイプ先生は無関係だと思うわ。どう考えてもハリーとダンブルドア先生を追い抜くなんて無理だもの…万が一、可能な魔法を知ってたとして、ダンブルドア先生が現場に向かっているって知ってて…それをやると思う?」

「ああ…そうか…」

 

 

ソフィアはいつまで経っても疑いが晴れず、毎年犯人だと思われてしまうセブルス(父親)の事を思うと──今まではハリーとロンが偏見を持っているからだと思っていたが、そんな目で見られるセブルスの言動にも問題があるのではないかと、少しだけ考えてしまった。

それにしても、夜更けに父様はなぜダンブルドア校長の元に行っていたのかしら。──ふと、思ったが、夜間の見回りか何かだろう、とソフィアは深く考えはしなかった。

 

 

「ムーディ先生に会わなきゃ。クラウチさんを見つけたかどうか聞かなきゃ」

「ムーディ先生…忍びの地図持ってたの?」

「うーん。手にはなにも持ってなかった…かな」

「それに、クラウチが校庭から外に出てたら意味ないぜ?あれは学校の中の事しか見せてくれないし──」

 

 

忍びの地図を見ていれば、ぎりぎり校庭の範囲である禁じられた森の端での行動は確認出来ていたかもしれない。

クラウチがクラムを失神させ、逃げたのか──それとも、第三者が居たのかがはっきりわかるだろう。

 

 

「──しっ!誰かくるわ!」

 

 

突然ハーマイオニーがロンの言葉を制し、唇の前に人差し指をつけ、フクロウ小屋の扉を鋭く見た。

 

複数の足音と、口論する声が近付いている事にソフィア達は気付き、こんな夜明けに誰だろうかと黙り込み、緊張した目で扉を見る。

 

 

「──脅迫だよ、それは!それじゃ面倒な事になるかもしれないぜ──」

「──これまでは行儀良くやってきたんだ!もう汚い手に出る時だ。奴と同じにな。奴は自分がやった事を魔法省に知られたくないから──」

「それを書いたら、脅迫文になるって言ってるんだ!」

「そうさ。だけどそのおかげでオイシイ見返りがあるなら、悪くない。そうだろ?」

 

 

フクロウ小屋の扉が勢いよく開き、フレッドとジョージが敷居を跨いで現れた。

互いに静止し、面食らった顔をしていたがすぐにロンとフレッドが叫ぶ。

 

「こんな所で何してるんだ?」

「フクロウ便を出しに」

 

 

それに答えたのは、ハリーとジョージだった。

 

 

「えっ?こんな時間に?」

 

 

そのあと声を揃えたのは、ソフィアとハーマイオニーとフレッドだった。

 

 

一瞬、何とも言えぬ奇妙な感覚に──それぞれが別の立場であるにもかかわらず同じ言葉を話していたのだ──沈黙が落ちたが、すぐにフレッドはにやりと笑う。

こんな時間にわざわざフクロウ便を出しにくる。それはつまり──双方、誰にも知られたくない手紙を出しに来ている、そういう事だ。

 

 

「いいさ、君たちがなにも聞かなけりゃ、俺たちも君たちが何をしているか聞かない事にしよう」

 

 

フレッドはポケットから封筒を出し、宛名をさりげなく隠しながらフクロウを探す。

 

 

「さあ、皆さん。お引き止めはしませんよ」

 

 

フレッドは出口を指差し、演技かかった動作で恭しくお辞儀をした。

しかし、先ほどの口論を聞いてしまったソフィア達はこのまま何もなかった事には出来なかった。

 

 

「誰を脅迫するんだい?」

 

 

自分の兄達のことなのだ。ロンは硬い声でフレッドに聞いた。

フレッドの顔から笑みが消え、じっと真顔でロンを見つめる。

ジョージはちらりとフレッドを横目で見て、それから安心させるようにロンに向かって笑いかけ肩を叩いた。

 

 

「馬鹿言うな。単なる冗談さ」

「そうは聞こえなかったけどな」

「……前にも言ったけどな、ロン。鼻の形を変えたくなかったから引っ込んでろ」

「誰かを脅迫しようとしているなら、僕にだって関係があるんだ!ジョージの言うとおりだよ、そんな事したらすごく大変な事になるかもしれないぞ!」

 

 

ロンはフレッドの鋭い言葉にも臆する事なく強気で言った。

ロンにとってフレッドとジョージは兄弟の中で一番自分に近い兄だった。年齢の事もあるが、性格的に最も合うのはフレッドとジョージだ。

そんな2人が誰かを脅迫しようとしている。大好きな兄達を犯罪者になんてできない。

 

 

ロンは真剣に言ったが、フレッドは面倒臭そうにロンを見据え、ジョージは「冗談だって、言ったじゃないか」と軽く言いながらフレッドの手から封筒を取り、一番近くにいたメンフクロウの脚に手紙をくくりつけ始めた。

 

 

「お前、少しパーシーに似てきたんじゃないか?ロン。このままいけばお前も監督生になれる」

「そんなのになるもんか!」

「そうか。それじゃ他人に何かしろって煩く言うな」

 

 

いつも規則を守りガミガミとうるさかったパーシーに似ていると揶揄われ、ロンは顔を赤くして言い返したが、ジョージに言い合いで敵うわけもなく、あっさりと言いくるめられてしまった。

 

 

「…本当に、悪い事はしてないのよね?」

 

 

ソフィアは静かにジョージを見つめる。

ジョージは少し、黙ったが──いつものようににっこりと笑うとソフィアの頭をぽんぽんと叩き「当たり前だろ?」と軽く言うとフレッドに続いてフクロウ小屋から出て行ってしまった。

 

 

2人の足音が遠ざかっていった後、ソフィア達は顔を見合わせる。

 

 

「フレッドとジョージ、どうしたのかしらね…」

「もしかして、何か知ってるんじゃない?クラウチの事とか…」

 

 

人に優しく思いやりのある──悪戯はするが──2人が、他人を脅迫するなんて考えられず、ソフィアは不安げ目で閉じられた扉を見つめた。

ハーマイオニーはまさか2人が何か知ってしまい──その秘密を黙っている見返りとして、何かを要求するのだろうかと考えた。

 

 

「いや……。あれ程深刻なら…二人とも誰かに話してるはずだよ。普通ダンブルドアとかに話すだろう?」

 

 

ハリーは流石にそんな真似をしないだろうと首を振り、同意を求めるように二人の弟であるロンを見る。だが、ロンは不安げな表情を浮かべ、落ち着きなくそわそわと指を動かす。

 

 

「どうしたの?」

「…あの二人が誰かに話すか…僕、わからない。あの二人…最近金儲けに取り憑かれてるんだ、談話室の端でそんな話をよくしてるし…悪戯専門店を、本気で始めたいらしいんだ。ホグワーツ卒業まで後一年しかないし、将来の事を考える時だって。──パパは二人を援助できないし…だから、二人は店を始めるのにお金がいるって、いつもそう言ってるんだ」

「…あの、カナリアクリームも、資金集めのためだったのね…」

 

 

そういえば、二人は談話室の端でこそこそと顔を突き合わせ何かを相談したり、下級生に何かを売りつけている場面をよく見る。

色々な魔法道具を発明しているとロンから聞いて知っていたが──お小遣いでも稼ぐ為なのかと思っていたが、本当に店を始めるための資金集めだったのか。

 

将来の事を具体的に考えているのは素晴らしい事であり、悪戯専門店はフレッドとジョージにぴったりだろう。むしろ、それ以外の道はないように見える。あの二人が肩にハマったローブを羽織り、魔法省で勤務している未来よりはよっぽど想像しやすい。

 

しかし、資金集めに躍起になるあまり──人を脅迫しているのなら、流石にそれは人として最悪な行いだ。

 

 

「でも…フレッドもジョージも、お金のために誰かを脅迫だなんて…しないでしょう?」

「しないかなぁ。…わかんない。だって、2人は規則破りを気にするような性格じゃないだろ?」

 

 

ソフィアの疑問にロンは腕を組み首を傾げたが──すぐに首を振った。

最近の2人は鬼気迫る勢いで金に執着しているように見える。大金を得るためなら、人を脅迫する事くらいしそうだとロンは思った。──何せ、貧乏の辛さはよく知っている。欲しいものが買えない辛さ、兄のお下がりばかりである辛さ。フレッドとジョージは底抜けの明るさでグリフィンドール寮のムードメーカーであるため、家の事を表立って言われた事は無い。だが、煩く馬鹿騒ぎが好きな2人を嫌うスリザリン生などはヒソヒソと家の貧乏さを笑っていた。

 

 

「でも…法律よ?校則とは違うわ!脅迫したら、罪になるのよ?──ロン、パーシーに言った方がいいんじゃないかしら…」

「正気か?あいつ、クラウチとおんなじように弟を突き出すぜ」

 

 

ハーマイオニーが神妙な面持ちで言ったが、ロンは首を振り嫌そうに吐き捨て、彼らが放ったフクロウが消えた空をじっと見た。

薄暗かったそらは時代に薄紫色に変わりつつある。ロンは気を取り直すように「戻ろうぜ、朝食だ」とソフィア達に言った。

 

 

「ムーディ先生に会いに行くのには…まだ早すぎるかしら?」

 

 

螺旋階段を降り朝焼けの空を眺めながらハーマイオニーが呟く。早く、ムーディが忍びの地図を使っていたかどうかが聞きたかった。

だが、流石にこの時間にムーディの部屋を訪れては寝込みを襲ったと勘違いされ、扉ごと吹っ飛ばされかねないというハリーの言葉に──ハーマイオニーは「それもそうね」と納得した。

 

 

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