【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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232 最終課題開始!

 

 

ついに最終課題が始まる。

ソフィアはハーマイオニーとロン、そしてビルとモリーと共に観客席に座っていた。

 

 

「ついに、始まるのね!」

「ハリー…頑張れよ…!」

「ああ、怪我をしなかったらいいんだけど…」

 

 

ソフィア、ロン、ハーマイオニーは口々に言いながら開始の時をソワソワと待っていた。

 

クィディッチ競技場だった場所には6メートル程の高さの生垣が生え、広大な土地をぐるりと囲っている。迷路だとハリーから聞いていたが、これでは中の様子が少しもわからないとソフィアは不安になりながら胸の前で指を組み、祈るようにじっと青々とした生垣を見つめた。

 

 

「紳士、淑女の皆さん。第三の課題、そして、三大魔法学校対抗試合最後の課題がまもなく始まります!──ルールは簡単、もう皆様もご存じの通り、迷路です。迷路の中心に優勝杯が置かれています。最初にその優勝杯に触れた者が満点です!勿論、ただの迷路ではありません、数々の障害物が選手達の行手を阻むことでしょう。もし、何か危険に巻き込まれ助けを求めたい時、選手は赤い花火をあげ課題を中断する事が出来ます──ただし、勿論その段階で脱落となります」

 

 

スタンドに進行役であるバグマンの声が響き渡る。何百という観客は足を踏み鳴らし、歓声を上げ、力強く手を叩いた。

 

 

「現在の得点状況をもう一度お知らせしましょう。同点1位、得点85点。セドリック・ディゴリー君とハリー・ポッター君!両名ともホグワーツ校!──3位、80点。ビクトール・クラム君、ダームストラング校!──そして、4位、フラー・デラクール嬢、ボーバトン校!」

 

 

ソフィア達も他の観客と同様、全ての代表選手達を激励するように大きく手を叩く。

スタートラインに立つハリーは観客席を見回し、ソフィア達に気づくと手を振った。ソフィア達は口々に「頑張って!」と言いながらハリーに手を振る。

 

 

──いよいよ、最終課題だ。これで、これでもし本当に優勝する事ができれば、僕はソフィアに思いを告げる。

 

 

ハリーはじっとソフィアを見上げた。

ソフィアもまた、ハリーを見つめ、にっこりと笑ってもう一度「頑張ってね!」と伝える。

声は遠すぎて届かなかったが、口の動きからその言葉を読む事は出来、ハリーは心の奥から温かな気持ちが沸き起こり──もし、優勝した時にソフィアがキスをしてくれたら、きっとそれは何よりも嬉しいだろう──と、素晴らしい想像に胸を高鳴らせ、気合いを入れるためにぐっと強く拳を握った。

 

 

「では──ホイッスルが鳴ったら、ハリーとセドリック!…いち──に──さん!」

 

 

バグマンがピッとホイッスルを鳴らし、ハリーとセドリックは急いで迷路に入った。

 

 

バグマンは腕時計を見つつ、時刻が近づくと「続いて、クラム!」と叫びホイッスルを鳴らす。

同じようにクラムが迷路に飛び込み、その後のホイッスルでフラーが入った。

 

 

暫く、ソフィア達観客はじっと迷路を見ていたが──しだいに騒めきが大きくなる。

 

 

「…これ、中の様子全くわからないわね」

「……確かに、そうね」

「第二の課題もこんな感じだったよ。1時間くらい僕たちは湖面を見続けたんだ!」

 

 

ロンはつまらなさそうにいうと、何か見えないだろうかと背伸びを必死に高い生垣を見たが、時々何かの爆発音や破壊音が聞こえるだけで、中の様子はちっとも見る事が出来なかった。

 

 

ソフィアは、ハッとした。

今、この課題なら密かにハリーを殺す事だってできるかもしれない。──いや、観客席にはダンブルドアがいる。それに中の様子を審査員が見ずに、課題の得点をつける事は出来ないだろう。今までのように、勇気や判断力、魔法センスが試されるのなら、何らかの方法で審査員は見ていてもおかしくは無い。

 

それに、迷路の周りには沢山の先生が巡回している。──流石に、この場でハリーを殺すことは、無い。……そう、信じたい。

 

 

ソフィアはチラリとハーマイオニーを見た。

ハーマイオニーも同じことを考えているのか、それともただ心配しているだけなのかわからないが、不安げな顔で生垣を見つめていた。

 

 

どれくらいの時間が経っただろうか。

突如赤い花火が真っ直ぐ迷路の上に上がり、数名の教師が迷路の中に飛び込んだ。

 

観客席からは騒めきと、誰が脱落したんだろうかという興奮の声が上がる。

ソフィアとハーマイオニーとロンは3人とも祈るように指を組み、どうかハリーではありませんように、と願った。

 

 

「──あっ!フラーだわ!」

 

 

ソフィアは小さく叫んだ。

マクゴナガルとスプラウトに支えられ、引き摺られるように生垣から姿を現したのはフラーであり、彼女はだらりと頭を垂れピクリとも動いていなかった。

観客席から息を呑むような悲鳴が上がり、不安げなざわざわとした騒めきが大きくなる。

 

 

「まさか、死んでないよな?」

「…た…多分…」

「死んでないに決まってるわ!」

 

 

ロンの不安げな声に、ハーマイオニーとソフィアはすぐに答えたが──微塵も動かないフラーを見ていると、その確証は持てなかった。

マクゴナガルは迷路から離れるとフラーを芝生の上に寝かせ、杖を振った。するとフラーの体はぴくりと動き、ゆっくりと目を開く。

どうやら、気絶していただけで死んではいなかったようだ。

 

それがわかるとソフィア達はほっと胸を撫で下ろす。途中で脱落してしまったが、フラーの健闘を讃え、他の観客同様大きな拍手をフラーに送った。

 

 

その後、10分程度は何も起こらなかっただろう。再び赤い花火が上がり、先生達が迷路の中に飛び込んだ。

 

暫くすると、ジャックに抱き上げられてクラムが現れる。2人目の脱落者はクラムであり、彼もまたぐったりとしていたがジャックに魔法をかけられ意識を取り戻していた。

 

ダームストラング生からはクラムの脱落に落胆する声があがったが──とくに、カルカロフは「くそっ!」と悔しそうに叫び舌打ちをした──フラーの時と同様、健闘を讃え拍手が起こる。

 

クラムはぼんやりとした表情で観客席を不思議そうに見ていたが、ジャックに付き添われ脱落した代表選手の一時控えテントへと向かった。

 

 

「…あとは、ハリーとセドリックね…」

「うう…緊張するわ…!」

「中の様子が見れたらなぁ!」

 

 

ハリーとセドリックは同点一位だ。つまり、どちらかが優勝杯を手にした段階で勝者は確定する。

ソフィア達は期待と不安と興奮が入り混じった表情で、優勝杯があるだろう迷路の中央をじっと見ていた。

 

 

 

ーーー

 

 

ジャックはクラムを控えテントへ連れて行き、ポンフリーに引き継いだ後再び巨大な生垣の側に戻っていた。少し離れたところには杖を構え生垣を苦い表現で睨むセブルスが居て、思わずジャックは小さく笑いながらセブルスの元に駆け寄る。

 

 

「セブ!ついにハリーとセドリックが残ったな?」

「…ポッターが優勝杯を取ることはない」

「どうだろうなぁ。最終課題の内容は──かなり、ハリーに有利だ。あの子はここ数年こんな課題とは比べ物にならない程の課題を乗り越えてきたからな」

 

 

くすくすと楽しげに笑うジャックは杖を指先でくるくると器用に回しながら高い生垣を見上げた。

セブルスは「幸運なだけだ」と吐き捨てたが、彼自身ももしや、とは思っているのだろう、その言葉は低く、ハリーが優勝するなど、信じたくないという強い響きが込められていた。

 

 

次はいつ赤い花火が上がるのか──それとも、何も上がらずにハリーかセドリックが優勝杯を掲げ、溢れんばかりの笑顔で戻ってくるのか、ジャックはその時を楽しみにしながら中で勇敢に課題に立ち向かっているだろう彼らを想像し、楽しげに目を細めていた。

 

 

暫くは、何も起こらなかった。

それが起こったのは何の前触れもなく突然であり、セブルスとジャックはびしりと表情を強ばらせ自分の左腕を押さえた。

 

 

「なっ──」

「ま、さか……!」

 

 

セブルスとジャックは同時に小さく叫び、自分の左の袖を捲り上げ、闇の印が痛みと熱を持ち、黒く焼け焦げているのを信じられない思いで見下ろす。

 

 

「そんな、蘇った…?」

「──馬鹿な!そんな事、あり得るわけが…!」

 

 

ジャックの呆然と震える声で呟き、セブルスはすぐに鋭く叫び否定したが、彼の声もまた震えていた。

 

 

「セブ、どうみても、これは──奴が復活し、俺たちを呼んでいるんだ」

「そんな──何故…」

「今問題なのは、何故じゃない。──どうやって、だ」

 

 

ヴォルデモートが死喰い人を招集する時、この印は焼け焦げその場への道が繋がる。この印を持つものが、姿くらましをし──ヴォルデモートの元へと強く願えば、姿現し先は自動的にヴォルデモートの元に向かう。

だが、ここはホグワーツの範囲内であり、姿くらましと姿現しをする事は出来ない。

 

 

──何があった、どうして、今このタイミングでヴォルデモートが復活したんだ。その場へ行き、情報を収集しなければならない、だが、俺にはその手段が無い。

 

 

ジャックは苦痛に満ちた表情で荒々しく左袖の服を下ろし、緊張した面持ちでセブルスにむかいあった。

 

 

「セブはここにいろ!俺はダンブルドアの元に行く!」

 

 

ジャックはセブルスの返事も待たず、すぐにダンブルドアの居る審査員席へと走った。しかし、ここからダンブルドアの元に行くまでにはかなり距離がある。ジャックは「くそっ!」と悪態を吐きながら使いたくはない──ヴォルデモートに教わった魔法を使った。

 

 

「──ダンブルドア!」

「ジャック、どうしたんじゃ」

 

 

黒煙のようになったジャックは観客席の上を飛び、すぐにダンブルドアの元へ姿を現した。

そばにいたファッジやマクシームは息を飲み、見た事もない魔法に動揺したが──そばに居るはずのカルカロフは姿を消していた。

 

ジャックは空席を睨み、更に一つ舌打ちをこぼしたが何も言わず深刻な顔をするダンブルドアの側に寄ると、周りに聞かれぬよう、ダンブルドアの耳元に顔を近づけ声を顰めた。

 

 

「──帝王が、復活しました」

「何?──(まこと)か」

「はい、印が濃くなり、招集命令が降りました。しかし、俺──私と、セブルスはいけません、ここは、ホグワーツ範囲内です。──カルカロフは逃げたようです」

 

 

ダンブルドアは服に隠されたジャックの左腕を強く睨み見た後、真剣な目でジャックの瞳を見つめる。

ジャックもまた、ダンブルドアの青い瞳を見つめ──無言で頷いた。

 

 

「引き続き、警戒を頼む」

「はい──中止しますか」

「ならん。──いや、出来ん、と言った方がいいじゃろう。魔法契約により、課題は終了するまで、続けねばならんのじゃ」

「そう、ですか。──わかりました」

 

 

ジャックは強く歯を食いしばりながら唸るように呟くとすぐに身を翻し、再び黒煙になりその場を離れた。

 

ダンブルドアはその黒煙の向かう先をじっと見つめ──その目を、悲しみと苦痛で揺らせた。

 

 

 

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