【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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242 怒りと悲しみと!

 

 

「ハリー!ソフィア!──ロン、2人が来たわ!到着した音が聞こえなかったわ!ああ、元気なの?大丈夫なの?私たちの事怒ってた?怒ってたわよね。私たちの手紙が役に立たないことを知ってたわ──だけど、あなたに何も教えてあげられなかったの、ダンブルドアに教えない事を誓わされて。ああ、話したい事がたくさんあるわ、あなたもでしょう?吸魂鬼ですって!それを聞いた時…!それに、魔法省の尋問のこともよ!酷いじゃない?私、沢山調べたの、魔法省はあなたを退学に出来ないの、出来ないのよ。だって──」

「ハーマイオニー、ハリーに息くらいつかせてやれよ」

 

 

ハリーが扉を開けた途端、中にいたハーマイオニーが歓喜の叫びを上げ、そのままの勢いで押し倒さんばかりにハリーを抱きしめていた。あまりに突然だった為、ハリーが何も出来ずふわふわとしたハーマイオニーの髪に顔を埋め息を詰まらせていると、ロンがニヤリと笑いハリーに助け舟を出した。

 

 

「ああ!ソフィア!久しぶり!あなたは大丈夫だった?ごめんね、私、あなたにも何も書けなくて…!」

 

 

ハーマイオニーはロンの声にハリーを解放したが、次はソフィアを強く抱きしめ、ソフィアの冷たく凍えていた頬を温めるかのようにぴったりと自分の頬をくっつけた。

 

 

「ううん、いいのよ。ダンブルドア先生との約束は破れないもの」

「ソフィア…!」

 

 

ぎゅっ、とソフィアとハーマイオニーが熱い抱擁をする中、その頭上をすいっと白いフクロウ──ヘドウィグが飛び越え、ハリーの肩にとまった。

 

 

「ヘドウィグ!」

「このフクロウ、ずっとイライラしてた。この前手紙を運んだとき、僕たちの事を突っついて半殺しの目に合わせたんだぜ?ほら見ろよ」

 

 

ロンは肩をすくめながら右手の人差し指をハリーに見せた。もうほとんど治りかかっていたが、たしかに深い切り傷があり、しばらく酷く痛んだだろう事がわかる。

だが、そんな傷の一つや二つ──僕の苦しみに比べたら大したものでは無い。

そう、ハリーは思い、ロンとハーマイオニーに出会えた温かな喜びの気持ちが急激に冷えていくのを感じた。

 

 

「へえ、そう。悪かったね、でも僕知りたかったんだ。答えが知りたかった。わかるだろ?」

「そりゃ…僕たちもそうしたかったさ。ハーマイオニーなんか心配で気が狂いそうだった。けど、ソフィアと一緒だったからきっと大丈夫だって…それに、ダンブルドアが僕たちに──」

「僕に何も言わないって誓わせた。ああ、ハーマイオニーがさっきそう言った」

 

 

ロンの言葉を遮り吐き捨てられたハリーのその声音はとても冷たく──間違いなく、苛立っていた。

 

ハーマイオニーは困ったような顔をしてソフィアから離れ、おろおろと胸の前で指を組む。ハリーはヘドウィグの白い羽を機械的に撫でながら、ハーマイオニーの指にも深い傷があるのを見たが、少しも可哀想だとは思わなかった。

 

ソフィアはハリーとロンとハーマイオニーを見比べ、小さくため息をつくとハリーの服の袖をくい、と引っ張る。

 

 

「ハリー。去年、あなた三校対抗試合に出場したくなかったけど、出なきゃならなかったわよね?」

「え?──それが、何?」

 

 

突拍子もないソフィアの言葉に、ハリーは怪訝そうに眉を寄せた。まだソフィアへの声音がほんの僅かに柔らかいのは、ソフィアもまたハリーと似た立場だ──と、ハリーは思っている──からだろう。

 

 

「それは、魔法契約は破棄できないからでしょう?あのね、ダンブルドア先生がロンとハーマイオニーに誓わせた──つまり、魔法契約を結んだのよ、きっとね。どうしても2人はハリーに何も言えなかったの。…そうよね、ハーマイオニー?」

「え、ええ、そうなの。ここにくる前に、何か署名させられて、もしここでのことを一言でも漏らしたら──…」

 

 

ハーマイオニーはぶるりと体を震わすと、それ以上何も言わずに腕を手で擦った。

 

 

「──大変な事になるって」

「ね?ハリー、あなたが何も知らされていなくて凄く嫌だったのは1ヶ月の間に散々聞いたわ!だけど、その事でハーマイオニーとロンに辛く当たるのは間違えてるわ。

何もできない2人も、きっとあなたと同じくらい、ずっと嫌で歯痒かったはずよ。だって親友が苦しんでいるのに、答えを求めているのに何も言えないなんて!辛いのはみんな一緒よ。──それに、答えが知りたかったのなら、ダンブルドア先生とか他の大人に聞くしか無いわね」

 

 

ハリーはソフィアの言葉にぐっと唇を噛み、一瞬目を吊り上げ睨むようにソフィアを見たが──しかし、大きく息を吸い込み、そのままヘドウィグの体に顔を埋め、「ふうーー…」と大きく、長く吐き出した。

 

 

「…そう、だね。ごめん、僕、──本当に、この1ヶ月苦しかったんだ」

 

 

ハリーはヘドウィグの羽毛に埋もれたままくぐもった弱々しい声で告げ、項垂れる。

ロンとハーマイオニーは顔を見合わせ、あからさまにほっと安堵の表情を見せた。ロンはハリーのそばに駆け寄ると肩に手を回し、そのまま古びたベッドにひっぱり無理矢理座らせる。

 

 

「悪かったよ、ハリー。本当に言えなかったんだ、でも──」

「僕は──僕は、何か起きるかもしれないって、マグルの新聞を得るためにゴミ箱を漁ったり、何時間も花壇の下に隠れてニュースを聞いたり、毎日窓を開けてフクロウ便が手紙と届けるのを待ったり…それなのに何もなかった!何も!吸魂鬼が来た時ですら、ただ耐えなさいその場を離れちゃならない。それの繰り返しで、理由すらも、教えてもらえなくて!」

 

 

ハリーは自分の声が徐々に大きくなっている事に気づいた。一言喋るためにこの1ヶ月間燻っていた憤りと悲しみ、疑問が心の奥底から溢れ出し止まらない。2人は何も知らないかもしれない。だが、2人は本部にすぐにくる事が出来た、何故自分は行く事ができないんだろう。自分は除け者じゃないか。そう、毎日毎日思い、不貞腐れていたのだ。

 

 

「多分、僕の考えじゃ…ダンブルドアは君がマグルと一緒の方が安全だと考えたんだ」

「…へえ?吸魂鬼が来たのに?他にも吸魂鬼に襲われた人がいた?」

「そりゃ居ないさ。だけど…だからこそ、不死鳥の騎士団の誰かが夏休み中君たちの後をつけてたんだ」

 

 

ソフィア以外の皆が──僕を監視していたと知っていたんだ。

その事実に一度収まりかけていた怒りと失望がふつふつと沸き起こる。

 

 

「あら、やっぱりずっと監視はいたの?…うーん、それも当然といえば当然かしら…でもねぇ…それなら……」

「ダンブルドアはどうしてそんなに必死に…僕に何も知らせないようにしたんだろう」

「うーん…それは…正直、私は気にならないわ」

「え?…どうして?」

「だって、最長でも2ヶ月我慢すれば、夏休みは終わるもの。無限じゃないでしょう?手紙に書けなかったのは、ダンブルドア先生との契約だから、──契約してなくても、フクロウ便を使ってのやり取りなんて危険だわ、フクロウは弱いもの。誰に捕まるかわからないし。…私はそれよりも、何故、ハリーがあの場に居続けなければならなかったのか、それが気になるの。明確な理由があるはずよ。無ければおかしい──ダンブルドア先生は無駄なことはしないわ」

「わ、私──ダンブルドア先生と、2回ほど一瞬会えたの、ハリーとソフィアを早く連れてきてほしいって何度もいったの、心配だったから…!でも、ダンブルドア先生は『然るべき時に』としか仰らなくて…それに、それに──すごく、忙しそうで」

「然るべき時…私も、同じ事を言われてハリーのそばにいたのよ。…それも、何故私だったのか、理由を考えればそれらしい理由はなんとなく察しがつくわ。……だけど、それなら、やっぱりあの場所に留めておく理由が……」

 

 

ソフィアは自分の世界に入ったかのようにぶつぶつと呟き、じっとハリーの目を見つめた。

ソフィアにとって、ハリーが何も知らされなかったのは仕方のない事だと思っている。魔法族ではなく、マグルの家で暮らすハリーに魔法を使わずに情報を送るのは難しいだろうと思っていた。

だが、常に監視があったのなら、──それを知った今なら、その者を中継に僅かな情報を送る事だって出来ただろうとも思う。

それをしなかったのは自らトラブルに突き進んでしまう好奇心と勇気を持つハリーだから…色々なところにアンテナが立ちやすいハリーに、危険な目に遭って欲しくなかったから、だろうか。

 

 

しかし、どの理由でも。

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不死鳥の騎士団本部は間違いなく、ダンブルドアにより守りがかけられている。あの文字を見た人間のみがこの本部に入る事ができるのだろう。

ならば──ダンブルドア自身が守り人となっているのなら、ここが世界で一番安全じゃないだろうか?

自身の守りがかけられているこの本部よりも、あのなんの変哲も力もないダーズリー家が安全だと、ダンブルドアが思っているのが不思議で、どこか奇妙だった。

 

 

「私はハリーにとって必要なものだったから、おそらく1ヶ月間なるべく多くハリーと過ごさないといけなかった。…必要なもの、…私は、マグル界で隔離されているハリーの精神的安定のためだと思っていたけれど、ハリーの精神を安定させるなら、この本部に連れてきた方がいい、そうでしょう?」

「う…うん、そうだね」

 

 

ハリーは真剣なソフィアの目に射抜かれ、一瞬怒りを忘れて頷いた。

たしかに、ソフィアと過ごした1ヶ月は精神的に楽だった。辛くもやもやとした気持ちも、ソフィアが居たからなんとか爆発していない。まだロンとハーマイオニー──いや、騎士団に関わりのある全ての人へ対する怒りはあるが、叫び出し走り回りたいほどではない。ただ、怒りよりも除け者にされていた寂しさと、悲しさ。そして誰よりも自分がヴォルデモートに関する事柄の中心にいるのに、知る事が許されていない疑問が溢れている。

 

 

「つまり、ハリーはたとえ吸魂鬼に襲われても、ダーズリー家にいなければならなかった。この守りの強い家よりも、ダーズリー家で過ごす事、それにダンブルドアは重きを置いたの。……それにしても、何故必要だったのが私なのか…ロンとハーマイオニーでは無く、私でなければならない、と仮定するなら…」

 

 

ソフィアはハリーを見つめていたが、自分に質問するように囁く。

気がつけばロンとハーマイオニーもソフィアの言葉をじっと聞き入り、その先の結論を聞き漏らさんとばかりに息をひそめ、一言も話さなかった。

 

ソフィアとハリーの緑色の目が交わる。

2人の姿形は全く違うが、その目だけは、兄妹のようによく似ていた。

 

 

「──血縁、だから?」

 

 

ソフィアの呟きは静かな部屋によく響いた。

ソフィア自身も、自分の言葉に驚き目を見開くが、ハリー達もまた同じように驚愕し顔を見合わせる。

 

 

「血縁だから、ダーズリー家に居なきゃならない?…血縁だから、ソフィアが僕のそばに…?でも、なんで?」

「あっ!私、何かの本で読んだわ!血の魔法について…ああ、なんだったかしら──でも、魔法において血はたしかに、大切なものなのよ」

 

 

ハーマイオニーは興奮したように目を輝かせ、必死に思い出そうと頭を掻いたが、ロンとハリーは全くピンと来るものが無く、ただ首を傾げた。

暫く無言で考え込んでいたソフィアだったが、大きくため息をつくと緩く首を振る。

 

 

「何故かは、わからないわ。もし血縁だから、何かがあって…ダーズリー家に居なければならなかったのなら、何故今はハリーはここにいるの?という問題が出てくるし…。うーん、いい線いってるとは思うけれど、この少ない情報では全てを明らかにすることは無理ね。ダンブルドア先生に聞かないとわからないわ」

 

 

ソフィアはそう言うと空いているベッドにぽすん、と座り足を投げ出した。

 

 

「こういうのは、ルイスの方が考えるの得意なんだけれど…」

「あ、そういえばルイスはまだ来てないの?」

 

 

ハリーは今の今まで気が付かなかったが、そういえばルイスはソフィアと共に現れなかったと不思議そうに首を傾げた。

ルイスの名前に、ハーマイオニーは悲しげに眉を下げ、ロンはあからさまに嫌そうな顔をした。その表情を見たソフィアは、先にここに来ている2人は既にルイスがこの場にいない理由を知っているのだと思い──辛そうに微笑んだ。

 

 

「ルイスは、来ないわ」

「え?どうして?」

「…コンパートメントで、ルイスは言ってたでしょう?自分にとって正しいことをするって。…ルイスは、ドラコのそばにいる事を選んだの」

「えっ!?そんな…じゃ、じゃあ、ルイスは──」

 

 

まさか、死喰い人側に属するのか、とハリーは信じられず、愕然とした表情でソフィアを見た。

ソフィアはその先の言葉をハリーが言わなかった事に僅かに安堵したが──しかし、何が言いたいのかはわかり、俯くと足の上に置いた自分の手をじっと見つめる。

 

 

「ルイスは、死喰い人にはならないわ。だって──だって、母様と兄様を殺したのは例のあの人だもの。そんな人に忠誠なんて、誓わない。…けど、ドラコを護りたい気持ちがあるのは…間違いないわ」

「はっ!ほんと、マルフォイなんか放っておけばいいんだ!ルイスは馬鹿な選択をしたな!」

 

 

ロンが苛立ちを隠さず大声で吐き捨てベッドをぼすんと手で叩いた。

ハーマイオニーは何も言わなかったが、その視線がロンと同じ事を思っているのだとありありと物語っている。この時期、ハリーの友人であるにも関わらずドラコの側にいる事は──それは、ハリーに、いや、自分達に対する裏切りと宣戦布告ではないのかと、ハーマイオニーとロンは思っていた。

 

 

「…ルイスは、自分の心に従ったの。…『信じられなくてもいいから、僕はずっと君たちの友人だ』…ルイスからの、伝言よ」

 

 

ソフィアの言葉を最後に、痛いほどの沈黙が落ちた。今までルイスはハリー達にとってかけがえのない友であり、数々の困難をともに乗り越えた。ルイスが居なければ不可能な事も多かっただろう。

 

2年生の時はトム・リドルと戦い、3年生の時は共にペティグリューを追い詰めた、去年は鰓昆布について詳しく教えてくれた。

しかし──一方で、何があってもドラコの隣に居続けたのも、事実だ。

 

 

「──まぁ、それよりも。ここは不死鳥の騎士団の本部よね?私、不死鳥の騎士団についてあまり詳しくないんだけど…教えてもらえるかしら?」

 

 

重くなってしまった雰囲気を振り払うかのようにソフィアは無理に明るい声を出し、ハーマイオニーとロンに聞いた。

ロンはまだムッとしていたが「秘密同盟さ」と呟く。

ハーマイオニーも辛く眉を顰めていた表情を変えるとすぐに不死鳥の騎士団についての説明を始める。

 

 

「ダンブルドアが率いて、設立者なの。前回例のあの人と戦った人達よ」

「…誰が入っているんだい?」

 

 

ハリーの言葉に、ハーマイオニーとロンは顔を見合わせ指を折り数えていたが詳しい人数まで把握しているわけではなく「沢山よ、20人くらいと会ったわ」と答えた。

 

 

「それで?ヴォルデモートは何を企んでいて、どこにいるんだ?奴を阻止するために、何をしてるんだ?」

 

 

ヴォルデモートという言葉にソフィア達は身をすくませた。

 

 

「わからないわ。私たちは騎士団の会議に入れないの。未成年だからって、詳しくはわからない。…けど、大まかな事はわかるわ」

「フレッドとジョージが『伸び耳』を発明したんだ、あれはなかなかに使えるぜ?」

「伸び耳?」

「そうさ。ただ、最近は使えなくなった、ママが見つけてカンカンになってね。ママが耳をゴミ箱に捨てちゃうもんだから…フレッドとジョージは耳を全部隠さなきゃならなくなった。だけど、ママにバレるまではかなり利用したぜ。騎士団が面が割れてる死喰い人の様子を探ってるんだ」

「それに、騎士団に入るように勧誘しているメンバーもいるわ」

「あと、何かの護衛に立ってるのも何人かいるな。しょっちゅう護衛任務の話をしてる」

 

 

ハーマイオニーとロンが交互に伸び耳を使い会議を盗み聞きした事を話す中、ハリーは護衛任務の言葉にぴくりと反応し、「もしかして、僕の護衛の事じゃないかな」と皮肉ったが、ロンは素直に納得し頷くだけだった。

 

 

「会議に入れないなら、ロンとハーマイオニーは何をしていたの?」

「この家を除染してたの。何年も空き家だったから…ホール通ったでしょ?ぜーんぶ、あんな感じだったの。いろんなものが巣食ってて…厨房はなんとか綺麗にしたし、寝室も大体済んだわ。それから客室に取り組むのが明日よ」

 

 

ソフィアの疑問にハーマイオニーが部屋の中を見回しながら答えた。家具はどれも古くかび臭かったが、人が暮らせないほどでは無い。きっと何年もそのままならば、蜘蛛の巣やら何やらで酷い事になっていたのだろうとソフィアは思った。

 

 

「ああっ!もう!いい加減それやめて!」

 

 

バシッ、バシッと二度と大きな音がして、ハーマイオニーは驚き飛び上がった。ソフィアとハリーとロンはそんなハーマイオニーの大声に驚き、目の前に突然現れた得意げな顔をするフレッドとジョージを目を瞬きながらぽかんと見つめる。

 

 

「やあハリー、ソフィア。君たちの声が聞こえた気がしたんだ」

 

 

ジョージはにっこりとハリーとソフィアに笑いかけた。廊下に声が響くほど大声で話していただろうかとソフィアは口を押さえながら「こんばんわ」とフレッドとジョージに挨拶をする。

 

 

「2人とも、姿現しができるようになったのね?いいなぁ、私も早く使えるようになりたいわ!」

「勿論、優等生だった」

 

 

フレッドはパチンとウインクをし、手に持っていた長い薄橙色の紐をくるくると振り回した。

 

 

「階段を降りたって30秒もかからないのに」

「弟よ、時はガリオンなり、さ。──とにかく、もう少し静かにしてくれ。君たちの話し声が伸び耳の受信を妨げているんだ」

 

 

ハリーが怪訝な顔をしたため、フレッドが紐を少し掲げる。その紐の先は扉へと伸び、踊り場へ向かっていた。

 

 

「気をつけた方がいいぜ、ママがまたこれを見つけたら…」

「その危険を冒す価値ありだ。今重要会議をしてる」

 

 

ロンは伸び耳を見て声を顰め、ちらちらと扉の先を気にしながら囁いた。だが、フレッドの言う重要会議がどんなものなのか知りたい気持ちがあるのか、無理に止めようとはしない。

 

ソフィア達が扉を見つめていると、ふいにその扉が開き──モリーがやってきたのかと、ソフィア達はぎくりと肩を震わせた──長く綺麗な赤毛を靡かせながらジニーが現れた。

 

 

「ああ、ハリー、ソフィア、いらっしゃい。話し声が聞こえた気がしたの」

 

 

ジニーが明るい声で挨拶をし、床に垂れている伸び耳の紐をひょいっと手で掴み肩をすくめた。

 

 

「伸び耳は効果なしよ。ママがわざわざ厨房の扉に邪魔避け呪文をかけているの」

「どうしてわかるんだ?」

「トンクスがどうやって試すか教えてくれたの。扉に何か投げつけて、それが扉に接触出来なかったら扉は邪魔避けされてるの。私、階段の上からクソ爆弾を投げてみたけどみんな跳ね返されちゃった」

 

 

ジニーの言葉にフレッドとジョージはがっくりと肩を落とし、大袈裟なまでに嘆いてみせた。

 

 

「残念だ!あのスネイプのやつが何をするつもりなのか知りたかったのになあ」

「スネイプ!ここにいるの?」

「まぁ、スネイプ先生もいるの?」

 

 

ソフィアはてっきり死喰い人側の仕事についているのかと思ったが、まさかこの場に居るとは思わず心なしか嬉しそうに顔を綻ばせる。ハリーは全く正反対の表情で、嫌そうにフレッドとジョージを見た。

 

 

「ああ、マル秘の報告をしてるんだ」

 

 

ジョージが慎重に扉を閉め、ベッドに腰を下ろしながら言った。ジニーとフレッドも座り、ハリー達は顔を見合わせ声を顰めながら話し合った。

 

 

この中でセブルスの事を信頼しているのは、どうやらソフィアとハーマイオニーだけらしいという事がフレッド達の言葉や雰囲気からわかり、ソフィアはなんとも言えない気持ちになり沈黙してしまう。

まぁ、それも仕方の無いことだろう。ここにいる者は皆──いや、そもそも不死鳥の騎士団の大多数が──グリフィンドール生なのだ。

スリザリンばかり贔屓し、グリフィンドールを陥れるセブルスの事を良く思っている者など、存在しない。

 

 

ハリーとソフィアはセブルスだけではなく、ビルやチャーリーも不死鳥の騎士団員だと知った。外国に住む魔法使いを仲間にしたいダンブルドアの考えにより、チャーリーが勤務が無い日に色々と動いているようだ。

その流れでパーシーの話題になり──2人は、パーシーの名前が禁句なのだと初めて知った。

 

元より、パーシーはウィーズリー家では少々浮いていた。規律を何よりも重んじる彼はきっと今までにも思うところがあったのかもしれない。ダンブルドアの味方についたアーサーやモリーを侮辱し、魔法省に忠誠を違うのだと宣言した上で家を飛び出したのだった。

 

 

ソフィアはウィーズリー家に亀裂が入ってしまった事を悲しく思う。パーシーの事を説明するフレッドやジョージは怒ったように眉を吊り上げていたが、その目には悲しみが確かに滲んでいた。

 

 

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