【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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248 ついに5年目のホグワーツ!

 

 

翌朝、モリーに叩き起こされたソフィアとハーマイオニーは時計を見てさっと表情を変え慌てて服を着替えすぐに厨房へ降りた。

うっかり、この家にいる者殆どが寝過ごしてしまったらしく、時計の針は特急の出発1時間前を指していた。

屋敷の中は玩具箱をひっくり返したかのようにてんわやんわの大騒ぎになっており、叫び声とガタガタとぶつかる大きな衝突音が響く。

フレッドとジョージがトランクを運ぶ手間を省こうと、トランクに魔法をかけ下まで飛ばせた結果ジニーに激突し、ジニーは踊り場を二つ転がり落ちてホールまで転落してしまった。

 

 

「ああ、大丈夫かしら…」

「きっと大丈夫よ、ほら、応急処置をしてるわ」

 

 

シリウスの母親とモリーが声の限り叫ぶ中、ソフィアとハーマイオニーは厨房で机の上に置いてあったパンを口の中に詰めながら心配そうに首を伸ばしジニーの様子を見る。

ジニーは痛そうに頭を押さえているが、モリーがすぐに杖を振り氷を詰めた袋でコブを冷やしていた。

 

 

「ほら!早く出発しますよ!急いで支度して!」

「駄目だモリー。スタージス・ポドモアが来なければ護衛が1人足りん、出発する事は出来ない……」

「まぁ!そんな、待っていたら汽車が出発してしまいますっ!」

「だがな、モリー。念には念を重ねなければ、用心することに越した事は──」

 

 

モリーとムーディの声を聞きながらソフィアとハーマイオニーはミルクを飲み干しすぐに部屋へと向かった。

 

 

「きゃっ!」

 

 

扉を開けた途端、目の前に白いものが飛びかかってきてソフィアは驚き小さな悲鳴をあげた。

 

 

「あっ!ヘドウィグ!ああよかった、間に合わないかと思ったわ!」

「へ、ヘドウィグね…驚いたわ…」

「ホー」

 

 

ヘドウィグはソフィアの驚きなど微塵も気にすることなくハーマイオニーの肩に止まり、ハーマイオニーの両親からの手紙のついた足を突き出す。ハーマイオニーは急いでそれを外し、一瞬読もうか悩んだがそんな時間はなさそうだと判断しポケットの中に突っ込んだ。

 

 

「もうハリーとロンは支度が終わってるかしら?」

「流石に、終わってるでしょう?じゃないと遅刻よ!」

 

 

汽車に遅れちゃう!とハーマイオニーは悲鳴を上げながらトランクとクルックシャンクスを抱きかかえ、すぐに部屋を飛び出す。

ソフィアは「ティティ、おいで!」とベッドの上で丸まっていたティティを呼ぶ。ティティはソフィアの広げた手に収まる前にくるりと回転し、白いレースの上品なチョーカーへと変身する。それはふわりとソフィアの首に収まった。

 

 

「お利口さんね」

 

 

ソフィアは白いチョーカーを指先で撫でると自分のトランクを掴み、ハーマイオニーの後を追いかけた。

ハーマイオニーは既にハリーとロンの部屋の扉に手をかけていて、慌てた表情のまま勢いよく開いた。

 

 

「パパとママがヘドウィグを返してきたの!支度できた?」

「だいたいね。ジニーは大丈夫?」

「ええ、モリーさんが応急手当てしてたわ。だけど今度はムーディが護衛が1人足りないから出発出来ないって言って、ちょっと言い争ってたわ」

 

 

ソフィアはハリーのトランクからはみ出ているローブを押し込みながら答える。

 

 

「護衛?僕たちキングズ・クロスに護衛つきで行かなきゃいけないの?」

「あなたが、キングズ・クロスに護衛つきで行くの」

 

 

ハーマイオニーはクルックシャンクスの喉元を撫でながらきっぱりと訂正し、まだ荷造りが終わっていないロンを眉を寄せて睨む。

 

 

「どうして?ヴォルデモートはなりを潜めているはずだ。それとも、ゴミ箱の陰からでも飛びかかってきて、僕を殺すとでも言うのかい?」

「知らないわ。マッド・アイがそう言ってるだけ。とにかく、すぐに出かけないと、絶対汽車に遅れるわ……」

 

 

ハーマイオニーはロンから目を離すと自分の腕時計を見つめながら上の空で答える。ハリーの苛立ちに気付いたのはソフィアだけだったが、ソフィアもハリーが求めるような答えは持ち合わせていないため、仕方がないわ、と言うように肩をすくめた。

 

 

「みんな、すぐに下りてきなさい。すぐに!」

 

 

モリーの怒号が響き、ハーマイオニーは火傷したかのように飛び上がり、部屋から飛び出した。ロンとソフィアもすぐにその後を追い、ハリーは苛立ちながらヘドウィグを鳥籠に押し込み──ヘドウィグは非難めいた声で鳴いた──トランクを引き摺って階段を降りた。

 

 

ホールではシリウスの母の肖像画が怒り狂い吠えていたが、この騒音の中どうせすぐに目覚めさせてしまうと誰もカーテンを閉めようとはしていなかった。

 

 

「穢れた血!屑ども!芥の輩!!」

「ハリー、ソフィア、私とトンクスと一緒に来るのよ」

 

 

吠える肖像画の騒音に負けじとモリーが声を張り上げ、ソフィアとハリーを手招きする。

 

 

「え?私も?」

「ええ、あなたは一緒に居なければならないの。──トランクと籠は置いていきなさい。アラスターが荷物を後で持ってきてくれるわ……。ああ、シリウス!ダンブルドアがダメだっておっしゃったでしょう!」

 

 

大きな黒い犬がハリーの脇に現れた。離れてたまるかとばかりにハリーの脇にぴたりと寄り添い、決して離れない。ついにモリーは言い争っている時間はないと諦め「ご自分の責任でそうなさい!」と叫ぶと、黒犬は大きく尻尾を振りふん、と鼻息を荒くした。

 

ソフィアはトランクとティティの籠をホールの隅に置くと、そこかしこに置かれたトランクの山に足を取られているハリーの手を取り引っ張った。

 

 

「ハリー!大丈夫?」

「う、うん」

「さあ、行くわよハリー、ソフィア!」

 

 

モリーが玄関の扉を開け素早く辺りを見回す。ハリーとソフィアは手を繋いだまま玄関の扉をくぐり抜け、さっと足元を黒犬が素早く通り過ぎる。バタン、と後ろで扉が閉まった途端、あれほどうるさかった喧騒の音はぴたりと止まった。

 

 

「トンクスは?」

「すぐそこで待ってます」

 

 

モリーはハリーの問いに、硬い表情で低く答える。ハリーのそばで弾みながら嬉しそうに歩いている黒犬を見ないようにしているが、その口先は神経質そうにひくついている。

曲がり角で老婆に変身したトンクスと落ち合い、時刻を気にしながらキングズ・クロス駅へ急ぐ。

久しぶりに外に出ることが出来たシリウスはモリーの不安や緊張、苛立ちに気づくことなく嬉しそうに跳ね回り鳩に噛み付く真似をし、猫を追いかけた。

思わずハリーとソフィアは笑ったが、モリーは唇をぎゅっと結び、歩幅をさらに大きくしてずんずんと先に進む。

 

20分程歩いた頃、ようやくキングズ・クロス駅に到着し、ソフィア達は何気ない風を装い9と4分の3番線へと続く柵へと寄りかかり、するりと赤い汽車が濛々とした煙を吐くプラットホームへと進んだ。

 

 

「他の人も間に合えば良いけど…」

 

 

プラットホームには出発を待つ家族や生徒で溢れかえり、至る所でしばしの別れを惜しんでいた。

モリーが後ろを振り返り、プラットホームに架かる鉄のアーチを見上げ心配そうに呟く。時間後15分もないだろう、果たして後発隊は間に合うだろうか。

 

 

「ソフィア!」

 

 

沢山の人が話すガヤガヤとした喧騒の中、その声はすっとソフィアの耳に届いた。

ソフィアは勢いよく声のした方を振り向き、顔中に明るい笑顔を広げるとハリーの手を離し──ハリーはとても、残念に思った──自分の名を呼ぶ人の元へ駆け寄る。

 

 

「ルイス!」

「ああ、久しぶり!遅かったね、僕ずっとここで待ってたんだ!」

 

 

ソフィアはルイスが広げる腕の中に飛び込むと、その胸元に顔を埋めた。セブルスの匂いと似た、薬草の苦くも、どこか甘い匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。

 

ルイスもまたソフィアを強く抱きしめ、さらりとした髪を撫でて──自分の家の物ではないシャンプーの慣れない匂いに、ソフィアにバレないように悲しげに笑う。

 

 

「ごめんなさい、ちょっと色々あって…ルイスは1ヶ月間、大丈夫だった?」

「うん、なんともないよ。平和だったし…あ、ヴェロニカと会ったんだ。ソフィアに会いたがってたよ」

「まぁ!残念ね…私も会いたかったのに…次のチャンスに期待するわ」

 

 

1ヶ月見なかっただけだが、どこかルイスは大人っぽくなったし身長も伸びた気がする。とソフィアはルイスを抱きしめながら思う。以前は肩口に頭が乗っていたが、今自分の頭はもう少し下にぶつかっている。

 

 

「ルイス、身長伸びたんじゃない?」

「うん、成長期なのかな?夜に骨が痛くて…嬉しいけど、ちょっと困るよ」

 

 

ルイスは身体を離すと、今までより少し下がったところにあるソフィアの目を見つめにっこりと笑う。ソフィアも去年と比べれば身長は伸びているが、ルイスほどではない。男女の性差とも、言えるだろう。

 

 

「私ももう少し身長が欲しいんだけど…」

「ソフィアは今ぐらいの身長が1番可愛いと思うよ?」

 

 

ルイスはソフィアの髪を一房取ると、そっと口付けを落とし微笑む。

よくルイスがする動作だが、なんとなくソフィアは恥ずかしくてくすくすと照れたように笑った。

 

 

「ハリー達も、間に合ってよかったね」

 

 

ルイスはソフィアの少し離れた後ろにハリーとモリー、そして遅れてやってきたムーディとリーマス達を見た。

 

ぱちり、とロンとルイスの目が合い、ルイスはにっこりと笑って手を振ったが──ロンは何も返さずふっと視線を逸らす。

振っていた手をぴたりと止めたルイスは、一瞬悲しそうに目を伏せたが、瞬きひとつでいつものように笑い、その手を誤魔化すように頭に持ってくきて髪を撫でた。

 

 

「僕、もう行くよ。コンパートメントでドラコが待ってるから…まぁ、ドラコは監督生になったからずっと一緒ってわけにはいかないんだけど」

「……あら、ドラコも監督生になったの?グリフィンドールからは、ロンとハーマイオニーなの」

「へえ、そうなんだ!…うーん、今年も大変そうだね、色々と。──じゃあ、また後でね」

「ええ、また」

 

 

ソフィアはルイスがハリー達に挨拶をしない事がとても悲しかったが──だが、ルイスが選んだ道を否定する事はなく、名残惜しそうに手を強く繋ぎ、ゆっくりと離した。

ルイスの背が汽車の扉をくぐり、見えなくなってからようやく視線を外し、ソフィアはハリー達の元へと向かう。

 

ちょうどトンクスがジニーとハーマイオニーに別れの挨拶を告げているところで、トンクスは2人を抱きしめた後にソフィアも優しく抱きしめる。

 

 

「みんなに会えて嬉しかったよ。きっと、またすぐ会えるね」

「ええ、トンクス、またね!」

 

 

警笛がプラットホームに鳴り響き、まだホームにいた生徒達が急いで汽車に乗り込んだ。

 

 

「早く、早く!」

 

 

モリーはソフィア達一人一人を順番に抱きしめ、「気をつけてね」「風邪をひかないように」と涙声で告げる。

2度も抱きしめられたハリーは、足下にいた大きな黒い犬を見下ろす。──シリウスとも、暫く会えないんだ。

 

黒い目と緑の目が交差した瞬間、黒犬は後脚で立ち上がりハリーの両肩に前足をかけた。

 

言葉はいらない、ただ肩に感じる重みと暖かさ、少しの獣独特の匂いに、ハリーは胸の奥からぐっと寂しさが込み上げる。

 

 

「シ──」

「まったくもう!シリウス、犬のように振る舞って!」

 

 

ハリーがシリウス、と呼ぼうとした時、モリーがハリーを汽車のドアの方へ押しやり怒ったように囁いた。

 

 

「さよなら!」

 

 

汽車が動き出した瞬間、ハリーは開けた窓から黒犬に向かって呼びかけ手を伸ばす。

その伸ばされた手に、黒犬の湿った鼻先がちょん、と触れた。

 

 

ソフィア達も窓に寄り、口々にさよならを言いながら大きく手を振る。

リーマスやムーディ達の姿があっという間に小さくなったが、黒犬は尻尾を振り窓のそばを汽車と一緒に走った。

健気であり、愛らしい黒犬の様子に飛び去っていくホームの人影が黒犬を笑う。

 

ハリーは、何故か泣きそうになった。

今生の別れではないのに、また、きっと会えるのに。──なぜか、ひどく寂しかったのだ。ああ、きっとシリウスはこの別れをずっと昔から考えていて、落ち込んでいたのだろう。

 

 

汽車がカーブを曲がると、ついに黒犬の姿は見えなくなった。

ハリーには犬の大きな鳴き声が聞こえた気がしたが、汽車の吐き出す轟音に紛れ、それが自分の幻聴かどうか、わからなかった。

 

 

「…シリウスは一緒に来るべきじゃ無かったわ」

「おい、気軽に行こうぜ。もう何ヶ月も陽の光を見てないんだぞ、かわいそうに」

 

 

ハーマイオニーは心配そうな声で言うが、ロンは特に気にしていないのか軽く答える。

シリウスが黒い犬のアニメーガスだと、死喰い人達は知っている。流石のソフィアも、プラットホームであんなに目立つようなことをするとは思わず、少し心配していた。

 

何故なら──あの場には、沢山の魔法使いがいた。ドラコの父親であるルシウスや、クラッブとゴイルの親が居てもおかしくはない。彼らは、死喰い人なのだから。

 

 

「さーてと、一日中無駄話をしてるわけにはいかない。リーと仕事の話があるんだ。また後でな」

 

 

フレッドとジョージは通路を右へと消えた。

汽車が速度を上げるにつれて、足元が不安定にぐらぐらと揺れ、ソフィア達は思わず壁に手をついた。

 

 

「それじゃ、コンパートメントを探そうか?」

 

 

ハリーの言葉に、ロンとハーマイオニーは目配せをする。何も言わず自分の左手の爪をいじりながらじっと見つめるロンに、ハーマイオニーは内心でため息を吐き、少し申し訳なさそうに眉を下げる。

 

 

「私たちは監督生の車輌に行く事になってるの。ずっとそこに居なくてもいいとは思うけど、車内の通路のパトロールをしなきゃならないって手紙に書いていたわ」

「あ、そうなんだ」

「そうなの?じゃあ、3人でコンパートメントを探しに行きましょうか」

 

 

ホグワーツ特急の旅では、ずっとロンと一緒だった。ハリーはどうしようもなく寂しかったが、どうする事も出来ないのだと自分に言い聞かせ無理ににっこりとロンとハーマイオニーに笑う。

 

ロンとハーマイオニーはトランクや籠を引き摺りながら前方の車両に向かい、通路の扉がぱたん、と閉まった。

一瞬、沈黙が落ちガタンゴトンという車輪の音しか聞こえなかったが、くるり、とジニーが振り向き「そうそう」と手を叩いた。

 

 

「私は同級生を探すから、ハリーとソフィアは2人でコンパートメントを探して?」

「え?…ええ、わかったわ、また後でねジニー」

 

 

ジニーは自分のトランクを掴むとハリーとソフィアに向かって手を振り右側の通路へと向かう。

残されたハリーとソフィアは二つ残ったトランクを見て、顔を見合わせ、なんとなく少し笑った。

 

 

「行こうか」

「そうね、行きましょう」

 

 

ハリーはトランクを片手に持ち、もう片方の手でヘドウィグの籠を持って通路をゆっくりと歩いた。

 

 

たしかに、ロンがいないのは寂しい。けれど、ソフィアがいる。──うん、そんなに悪くないかも。

 

 

窓に映る自分の横顔が少し緩んでいた事に気付き、ハリーはきゅっと奥歯を噛むと誤魔化すようにコンパートメントのガラス越しに中の様子を覗き込んだ。

 

 

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