【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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250 セストラル!

 

 

ホグワーツ特急がホグズミード駅に到着する少し前、車内が降りる支度をする生徒で騒がしくなってきたのを監督するために一度通路へ出た。

ハーマイオニーはクルックシャンクスをソフィアに、ロンはピッグウィジョンをハリーに頼んだが、ハリーは自身のフクロウであるヘドウィグの籠を持たねばならない、生徒達の騒がしい雰囲気に当てられたのか、ピッグウィジョンは落ち着きなく騒ぎ出し、片手で籠を持つのに苦労していると、ルーナがハリーの代わりにピッグウィジョンの籠を掴んだ。

 

 

「あたしが持つよ」

「あ…うん。ありがとう」

 

 

ハリーはルーナにピッグウィジョンを任せていいのか悩んだが、このままだと進めないのも事実であり「よろしくね」と再度念を押し、4人は生徒達を掻き分けホームに降りた。

辺りは薄暗く、冷たい風がふわりとソフィア達の頬を撫でる。広大な湖に沿って生えている松の青々とした匂いを吸い込みながら、ハリーはハグリッドを探した。

 

毎年、ハグリッドが一年生を引率していた、きっと今年もそうに違いない。と、ハリーは思ったが、ハグリッドの巨体は見えず、あの特徴的な声も聞こえない。

代わりに一年生を呼んでいるのは、キビキビとした女性の声だった。

 

 

「一年生はこっちに並んで!全員、こっちへおいで!」

 

 

手にカンテラを持ち一年生を呼ぶのは、去年ハグリッドの魔法生物飼育学を暫く代行した魔女だった。

 

 

「ハグリッドはどこ?」

 

 

ハリーは思わず声に出し足を止め呆然と魔女を見た。

ハリーの後ろにいたソフィアは自分達が人の流れを止めて混雑の原因になっていると分かると、トントンとハリーの背を叩く。

 

 

「ハリー、ここで止まってると後ろが詰まっちゃうわ。駅の外に向かいましょう」

「あ…そ、うだね」

 

 

ハリーは後ろ髪が引かれる思いでホームを見ながら駅の出口へと向かう。

駅の外では月夜に照らされ雨上がりの地面が鏡のように光っていた。

人波に揉まれているといつのまにかネビルとルーナと離れてしまったが、ハリーとソフィアははぐれることなく──ソフィアがハリーのローブを掴んでいたからだ──二年生以上が城へ向かう馬車へ駆け寄る。

 

 

「ハグリッド、どうしていなかったんだろう」

「んー…ほら、去年…大切な任務をダンブルドア先生から任されていたでしょう?その関係じゃないかしら」

「そうか!…でも、そんなに、長くかかるのかなぁ…」

「わからないわ、けど……多分、そうよ」

 

 

ソフィアは腕に抱いているクルックシャンクスを撫で、小声で囁く。あまり、ハグリッドがしている事を他の人に聞かれるのは良くないだろう。

クルックシャンクスはソフィアの首に巻かれているレースのチョーカーに鼻を近づけふんふんと匂いを嗅ぎ、尻尾を揺らめかせ「にぁあ」と甘えるように鳴いた。

 

黒い百台を超える馬車のそばまでたどり着いた時、ハリーはいつもの()()()()()()ではない事に気付き、ぎょっとして一歩後ずさった。

 

馬車の(ながえ)の間に、見た事もない奇妙な生き物が居た。

馬のような姿形をしているが、皮膚は爬虫類のようにテラテラとしていて肉がなく、骨と皮だけの痩せ衰えた体だ。

骨の一本一本がくっきりと浮かび上がり、骸骨のようなその顔は馬というよりも、ドラゴンに似ている。瞳のない目は真っ白に濁っている。背中の隆起した部分から蝙蝠のような巨大な羽が生えていた。

まるで、地獄への使者のような不吉な姿に、ハリーはごくりと唾を飲み「あれって──」とソフィアを振り返った。

 

 

「──ピッグはどこ?」

「えっ、あ、あのルーナって子が持ってるよ」

 

 

突如後ろからロンの声が聞こえ、ハリーは視界の端に映る奇妙な馬のことをなんとか意識の端に追いやり、ロンの問いに答えた。

確かにこの馬のことも気になる。だが、何故ハグリッドがここに居ないのか、ハリーはロンとハーマイオニーとも話し合いたかった。

 

 

「ねえ、ハグリッドはどこにいると思う?」

「さあ…無事だといいけど」

 

 

ロンもハグリッドが居ないことに気付き──ハグリッドの巨大は探さなくとも目立つのだ──心配そうにしながら辺りを見渡す。

 

ちょうど少し離れた場所でドラコがルイス、クラッブ、ゴイル、パンジーを連れて大人しそうな二年生を押し退け馬車一台を独占しようとしていた。

 

よろめいた二年生はその場に尻をつけ、怖々とドラコ達を見上げたが、ドラコ達は少しも気にすることなく当然というように馬車に乗り込んだ。

ルイスは尻餅をついた二年生の手を取り立たせると、泥で汚れたローブに向けて杖を振るい汚れを清め、申し訳なさそうに眉を下げ「ごめんね」と小声で囁くとドラコが待つ馬車に入ってしまう。

 

 

「…ルイスは、ルイスだね」

「……ふん、どうだか」

 

 

それを見ていたハリーの呟きにロンは低い声で吐き捨てたが、その声には軽蔑や疑惑というよりも、悲しみが多く混じっていただろう。

 

 

「ああ、いた!」

「ハーマイオニー、大丈夫?」

「ええ。──マルフォイのやつ、あっちで一年生にほんとにムカつく事をしてたのよ、絶対に報告してやる!ほんの3分でもバッジを持たせたら前よりもっと酷いいじめをするんだわ!なんでルイスが監督生じゃないのか疑問ね!」

「まぁ…ドラコはスリザリンの顔、みたいなところがあるから…」

 

 

ソフィアは怒れるハーマイオニーに苦笑しながら腕に抱いていたクルックシャンクスを手渡す。ホグワーツでの生活が始まって1日目でこれならば、きっと毎日のようにドラコとハリー達はぶつかることとなるのが目に見えていて──ソフィアは今から少々気が重かった。

 

 

「クルックシャンクスをありがとう、ソフィア。──さあ、馬車に乗りましょう、満席にならないように」

「ピッグがまだだ!」

「きっとすぐ来るわよ」

 

 

ロンは人混みの中からルーナを探していたがまだ見つかることは無い。

ハーマイオニーはどうせ向かう先は同じなのだからいつか会えると気にすることなく空いている馬車へと向かった。

 

 

「ねえ、こいつら一体なんだと思う?去年までは居なかったのに…」

「こいつらって?」

 

 

ハリーは気味悪い馬を顎で指しながらソフィアとロンに聞いた。2人は顔を見合わせ、ハリーが指した方を見たが──ただ、首を傾げた。

 

 

「なんのこと?」

「この馬だよ──」

 

 

きょとんとしたソフィアの言葉に、ハリーが焦ったそうに言った時、人混みを掻き分けながらルーナが両腕に鳥籠を抱えて現れた。

ロンはほっと表情を緩め、ルーナから鳥籠を受け取り、ロンに会えた喜びから興奮したように囀り羽をばたつかせるピッグウィジョンの羽をそっと撫でた。

 

 

「可愛いチビフクロウだねぇ?」

「あー…うん、ありがとう。──えーと、じゃあ乗ろうか。ハリー、なんか言ってたっけ?」

「うん。この馬みたいなもの」

 

 

ソフィアとロンとルーナの4人でハーマイオニーが乗り込んでいる馬車の方に歩きながら再度ハリーが言った。

だが、ロンはソフィアと同じく不思議そうな目をしながら馬車を見て首を傾げ「どの馬みたいなもの?」と言うだけだった。

 

 

「馬車をひいている馬みたいなもの!」

 

 

近いのはほんの1メートル先にいるというのに、何故この黒い骨張った馬が見えないのか、からかっているのかとハリーは苛立ちながらつい大声で叫んだが、ロンは何度も馬車を見て、心底わからないと言うように──不安そうに、肩をすくめ首を振った。

 

 

「これの事だよ!ねえ、ソフィア?ここにいる馬みたいなもの、ロンに教えてやってよ!」

「何が見えてるの?」

「な、何がって……まさか、君たち、見えないの?馬車をひいているのが…?」

 

 

ハリーはようやく、自分にしかこの馬が見えていないんじゃ無いかという事に気付いた。当たり前だ、ロンならこんな奇妙な動物を見るだけで嫌そうな顔をして文句を言うだろうし、ソフィアなら──飛び上がって喜ぶだろう。

 

呆然とするハリーに、ソフィアは暫く黙っていたが、「もしかして」と小さく呟く。

 

 

「黒くて、骨と皮だけみたいで…顔はドラゴンに似ていて……羽は蝙蝠かしら?」

「そうだよ!見えてるんじゃないか!」

 

 

ハリーは今見ているものと、ソフィアがいう特徴が全く同じことに安堵したが、ソフィアの表情が複雑な色をしているのが気になった。

 

 

「馬車をひいているのは、セストラルね。彼らを見るには一定の条件が必要なの」

「条件…?」

「あたしにも見えるもん。ここにきた最初っからね」

「ルーナ…そうなの…。……セストラルは見た目は確かにユニークだけど、とっても賢いわ。今までも彼らが馬車を牽引していたなら特に問題は無いわ──さあ、乗りましょう」

 

 

魔法動物が好きで、生徒中では誰よりも詳しいソフィアは、セストラルを見ることができる条件を知っていた。

何故、ハリーが今年からセストラルを見る事ができるようになったのか、そして、何故ルーナが一年生の時から見えていたのか──ソフィアはわかってはいたが、説明は何もせず困惑したままのハリーとロンから視線を外し、ハーマイオニーの待つ馬車の内部へ乗り込んだ。

 

 

 

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