【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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251 組分け帽子の警告!

 

 

ホグワーツ城に到着したソフィア達は新学期の宴が行われる大広間へと向かった。

 

大広間にはそれぞれの寮の長机が並び、既に生徒の半数以上が着席し、久しぶりに会えた友人達と談笑していた。

 

ソフィア達はグリフィンドールのテーブルにつき、広間の1番奥にある教職員テーブルを眺める。

だが、そこにはやはり──ハグリッドの姿は無かった。

 

 

「あそこには居ない…」

「辞めたはずないし…」

「もしかして、怪我してるとか…そういう?」

「任務、だと思うわ。多分…それなりに危険なものなのよ…」

 

 

ソフィアの言葉にロンは納得したが、ハーマイオニーは唇を噛みながらそれを裏付ける何か証拠はないかと教職員テーブルをじっと見ていたが、見知らぬ魔女がいる事に気付き、テーブルの中央あたりを指差した。

 

 

「あの人、誰?」

「闇の魔術に対する防衛術の先生じゃないかしら?」

「──アンブリッジだ。僕の尋問にいた、ファッジの下で働いている!」

 

 

一年と教師が続かない呪われた科目である闇の魔術に対する防衛術は、毎年お決まりのように教師が変わる。

ハリーはその新しく教職員のテーブルに座っているのが自分を嫌味っぽく尋問したアンブリッジだとすぐに気付いた。

あの特徴的な青白いガマガエルのような顔と、けばけばしいピンクの服は忘れられない。

 

 

「ファッジの下で働いているの?…それは…」

「まさか!違うわ、まさか……」

 

 

ソフィアとハーマイオニーはハリーの言葉に顔を顰め、真剣な目でお互いを見る。

その目には全てを言わなくてもその先に隠された言葉をありありと語っていた。

 

魔法省が、ついにホグワーツに手を伸ばしたのだ。間違いなくあのアンブリッジという魔女は魔法省からのスパイであり、魔法省にとって不利益な事をしないか監視するのだろう。

ハーマイオニーは自分自身で否定はしていたが、それは願望がありありと含まれた否定で──ソフィアは、ただ真剣な顔で頷くだけだった。

 

 

ハリーとロンはまた2人は何が通じ合っているな、と思ったが敢えて聞くことは無く、むしろ今しがた現れた去年度のハグリッドの代行教師だったグラブリー-プランクの方に気を取られていた。

グラブリー-プランクはテーブルの端まで進むと、いつもハグリッドが座っていた席に着いてしまった。

 

すぐに扉が開かれ、怯えて不安そうな表情をした一年生が入場する。マクゴナガルの後ろに長い列を作っている一年生は誰もが顔色が悪く、居心地悪そうだった。

 

 

ついに組み分けの儀式が始まる。

大広間の喧騒は次第に収まった頃、一年生達は教職員テーブルの前に立ち、生徒たちの方を向いた。

マクゴナガルが毎年使う小さな丸い椅子と、組み分け帽子を大切そうに起き、一度後ろに下がった。

 

 

学校中が、組み分け帽子は今年どんな歌を歌うのだろうか、と息を殺してその時を待った。

帽子のつばの裂け目がぱかりと割れ、組み分け帽子は大きな声で歌い出す。

 

 

その歌は──ソフィア達が今まで聞いたことの無い警告が含まれていた。

 

例年通りならば四寮の特性と組み分け帽子の役割を語るだけだが、今年はホグワーツで何があったのか──創立者4人の不和により、スリザリンがこの場を離れたこと、そして外からの敵が恐ろしく、内のつながりを強固にしなければならないと歌い上げた。

そうしなければ、ホグワーツが内部から崩れるだろう、そうはっきりと明言した警告に、帽子が歌い終わった後いつものように拍手が起こったが、呟きと囁きで萎みがちだった。

 

教師達は特に動揺を見せていないが、生徒達は隣同士でヒソヒソと意見を交換している。

 

 

ソフィアはちらりと教職員テーブルに座るセブルスを見たが、いつもと同じように静かに控えめな拍手をするだけで、他の教師と同じく何とも思っていないようだった。

 

 

「これまでに警告を発したことなんて、あった?」

 

 

ハーマイオニーが不安げな声で隣に座るソフィアに囁く。

ソフィアは首を振ったが──それと同時に、ふわりとグリフィンドールのゴーストである殆ど首無しニックが現れ、「左様。あります」と物知り顔で答えた。

 

 

「あの帽子は、必要ならば自分の名誉に掛けて、学校に警告を発する責任があると考えているのです──」

 

 

ニックはその先にもまだ何か言おうとしたが、マクゴナガルがお喋りを辞めない生徒達を鋭く睨んだため、優雅に唇に人差し指を当ててふわりと飛んでいってしまった。

 

 

組み分けが最後の1人まで終わり、マクゴナガルが帽子と丸椅子を取り上げ歩き去ると、ダンブルドアが立ち上がった。

 

 

「新入生よ、おめでとう!古顔の諸君よ、お帰り!」

 

 

ダンブルドアはいつものような微笑を湛え両腕を大きく広げ朗々と言った。

ソフィアはいつもと変わらないその姿を見て、ほっと胸の中が暖かくなるのを感じた。きっとそれはソフィアだけではないだろう。日刊預言者新聞を信じ、ダンブルドアに対し不信感を持つ生徒も、先ほどの不吉な組み分けの歌を聞いた後では──いつも通りの優しい微笑みを浮かべるダンブルドアに、言いようのない安心感を覚えていた。

 

 

「挨拶するには時がある。今はその時にあらずじゃ。──掻っ込め!」

 

 

茶目っ気たっぷりなダンブルドアの言葉に、嬉しそうな笑い声と拍手が湧く。ダンブルドアはすぐに椅子に座り長い髭が食事の邪魔にならないよう後ろに流した。

いつの間にか、空だった皿に沢山の豪華な料理が現れ、5卓のテーブルが重さで唸っていた。

 

 

「いいぞ!」

「お腹ぺこぺこだわ…」

 

 

汽車の旅ではお菓子を沢山食べる時間がなかったロンとハーマイオニーは待ちきれないとばかりに1番近くにあった肉料理の皿を引き寄せた。

 

 

「組み合けの前に何か言いかけてたわね?帽子が警告を発する事で…?」

 

 

ハーマイオニーは行儀良くフォークとナイフを使い骨つき肉を切りながらニックを見上げる。

ロンが骨つき肉を手に持ち勢いよく齧り付いてる様子を羨ましそうに見ていたニックは、にっこりと笑い大きく頷いた。

 

 

「左様、これまでに数回、あの帽子が警告を発するのを聞いております。いつも学校が大きな危機に直面していることを察知した時でした。そして勿論のこと、いつも同じ忠告をします。団結せよ、内側を強くせよ──と」

「どうして学校の危機がわかるのかしら」

 

 

ソフィアはビーフパイを食べながら首を傾げる。確かに広い魔法界でも2つとない優秀な帽子だろう。だが、何故危機を察知出来るのかわからない。

 

 

「私にはわかりませんな。勿論、帽子はダンブルドアの校長室に住んでいますから、敢えて申し上げれば…そこで感触を得るのでしょうな」

「ああ…成程、確かに…ダンブルドア先生の独り言とか、聞いているのかもしれないわね」

「帽子が全寮に仲良くなれだなんて…とても無理だね」

 

 

ハリーはローストポテトを食べながらスリザリンのテーブルをチラリと見る。ドラコが王様のように踏ん反り返り、自分の皿に料理を入れる事もなく下級生に命令し、僕のように給仕させていた。

 

 

「さあ、さあ、そんな態度ではいけませんね。平和な協力、それこそが鍵です。我らゴーストは各寮に分かれておりましても、友情の絆は保っております。グリフィンドールとスリザリンの競争はあっても、私は血みどろ男爵と事を構えようとは夢にも思いませんぞ」

「単に恐いからだろ」

 

 

ロンがぼそりと揶揄えば、ニックは大きな気分を害したようにロンを睨む。

 

 

「恐い?痩せても枯れてもニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿。命ありし時も絶命後も、臆病の汚名を着たことはありません。この体に流れる気高き血は──」

「どの血?まさか血があるの?」

「言葉の綾です!私が言の葉をどのように使おうとも、その楽しみはまだ許されていると愚考する次第です。たとえ飲食の楽しみこそ奪われようと!──しかし、私の死を愚弄する生徒がいることには、この(やつがれ)、慣れております!」

 

 

ニックは憤慨し、体をワナワナと震わせ低い声で告げる。体が震えすぎてその首が今にもだらんと落ちそうだとハリーは思い、なるべくその断面を見ないようにと料理に視線を落とした。

 

 

「ニック!ロンはあなたのことを笑い物にしたんじゃ無いわ!」

「ちが、ぼっ、きみ──きぶ、がぃ──する──」

 

 

ハーマイオニーの言葉と強い一瞥に、ロンは直ぐに「違う、僕は君の気分を害するつもりはなかったんだ」と弁解しようとしたが、不運にも口の中はリスの頬袋のようにはちきれそうな程の料理が詰め込まれており、それはちゃんとした言葉にも、謝罪にもならなかった。

 

ニックは充分な謝罪には到底思えず、ふん、と鼻を鳴らすと空中に浮き上がり、テーブルの端へ飛んでいってしまった。

 

 

「お見事ね、ロン」

「何が?簡単な質問をしちゃいけないのか?」

「もう、いいわよ」

「…ま、少し考えれば…血が通っていないのはわかるでしょう。血が今でも通っているのなら…この料理達に降り注ぐわ」

 

 

ソフィアの苦笑混じりの言葉に、ロンはぴくりと片眉を上げ遠くにいるニックの後ろ姿を見て──むっつりと黙り込み口にパイを詰め込んだ。

ハーマイオニーとロンはその後も互いにツンとして無視をし合っていたが、それはいつものことでありソフィアとハリーはあまり気にせず、空腹を満たすことを優先した。

 

 

「ま、あの帽子とニックの言う事もわかるわ」

「仲良くしろって?スリザリンだけは、無理だね」

「うーん…そうね、今更無理だと私も思うわ。──けどね、内側の結束を強固にしなきゃ、スパイが潜り込みやすくなるわ。それに、弱点にもなる…もしスリザリンとその他の寮の仲が悪くなければ──理想論かもしれないけれど──色々な悩みは存在しないもの」

「…スリザリンと仲良くなんて、逆立ちしたって無理だね」

「……だから、理想論ね」

 

 

嫌そうに吐き捨てられたハリーの言葉に、ソフィアは肩をすくめた。

 

 

たくさんの料理の皿が空になり、腹が満たされた生徒達は満足げな顔で近くの友達と話す。大広間がまたガヤガヤとした喧騒に包まれ始めた頃、ダンブルドアが再び立ち上がった。

 

みんなの顔がダンブルドアを見て、すぐに話し声は止まる。

ダンブルドアはにっこりと笑い両手を広げると、いつものように1年間の注意事項を述べた。

それは禁じられた森に入る事は出来ないという事と、休み時間に廊下で魔法を使ってはいけないという事など、とくに例年と変わりはない。

新しい教師の科目と名前を言い、クィディッチの寮代表選手の選抜の日を伝えようとした時、ダンブルドアは言葉を切りアンブリッジを見た。

 

背の低いアンブリッジが座っていても立っていてもそれ程見た目に差はなく、生徒たちはまさかアンブリッジがダンブルドアの言葉を遮るように咳をして立ち上がっているとは思わず、驚きながらそのピンク色の服に包まれるアンブリッジを見た。

 

どうやら立ち上がって、スピーチをしたいらしい。

ダンブルドアはほんの一瞬驚いたようだったが、すぐに優雅に腰をかけ、アンブリッジに耳を傾けるような顔をした。

 

今まで──少なくともソフィア達が知っている4年間──誰もダンブルドアの話を途中で遮ることはなかった。上座に座る教師達は誰もが怪訝な顔をし、ダンブルドアほど巧みに驚きを隠す事が出来ていない。むしろ、その顔に嫌悪を滲ませている教師すらいる。

 

 

「校長先生、歓迎のお言葉恐れ入ります。──さて、ホグワーツに戻ってこられて本当に嬉しいですわ!そして、みなさんの幸せそうな可愛い顔がわたくしを見上げているのは素敵ですわ!」

 

 

アンブリッジは甲高い声でそう言うとにっこりと微笑み、生徒達を見下ろす。

ハリーはぐるりと見回したが──1人として幸せそうな顔は無く、誰もがぽかんと口を開き子ども扱いされた事に愕然としていた。

 

 

「みなさんとお知り合いになれることを楽しみにしております。きっとよいお友達になれますわよ!」

 

 

この言葉には皆顔を見合わせ、くすくすと笑う。冷笑を隠さずひそひそと馬鹿にする生徒もいたが、アンブリッジは全く気にすることもなく、咳払いをこぼす。

先程までの甲高いため息混じりの甘ったるい声ではなく、はっきりとした口調でセリフを暗記したような感情の籠らない声になっていた。

 

 

「魔法省は、若い魔法使いや魔女の教育は非常に重要であると、常にそう考えてきました。みなさんが持って生まれた稀なる才能は、慎重に教え導き養って磨かねばものになりません。魔法界独自の古来からの技を、後代に伝えていかなければ、永久に失われてしまいます。我ら祖先が集大成した魔法の知識の宝庫は、教育という気高い天職を持つものにより、守り、補い、磨かれていかねばなりません」

 

 

アンブリッジは一息つき、同じ教師テーブルに座る教師達へ会釈したが、誰も会釈を返さない。マクゴナガルの細い眉がきゅっと吊り上がり、隣に座っていたスプラウトと意味ありげに目配せをしたのをソフィア達は見た。

 

 

「ホグワーツの歴代校長は、この歴史ある学校を治める重職を務めるにあたり、何らかの新規なものを導入してきました。そうあるべきです。進歩がなければ停滞と衰退あるのみ。しかしながら進歩のための進歩は奨励されるべきではありません。なぜなら、試練を受け、証明された伝統は手を加える必要がないからです。そうなると、バランスが大切です、古きものと新しきもの、恒久的なものと変化、伝統と革新──」

 

 

ダンブルドアが話をする時は大広間がしん、と鎮まっているが、今静かにしている生徒は少なかった。

誰もが額を合わせ友人と話し合ったり、鞄から雑誌や教科書を取り出し好きな事をしていた。ハリーとロンも腹が満たされた今、遠くから睡魔がやってきて頭は舟を漕ぎ始めていた。

 

ソフィアとハーマイオニーは他の教師達と同じように、じっとアンブリッジを見つめ話を聞く。特に面白い話では無いが──彼女は魔法省から来ている、この言葉には意味があるはずだ。

 

 

「──いざ、前進しようではありませんか。開放的で効果的で、かつ責任ある新しい時代へ」

 

 

アンブリッジが話を締めくくり、すぐに着席し、ダンブルドアが拍手をした。

殆どの生徒はいつアンブリッジの大演説が終わったのか分からず──気に留めていなかったため──不意をつかれたように慌てて数回拍手をする。この大演説をしっかりと聞いていたのは、教師を除けば片手の指にも満たな数だろう。

 

 

「ありがとうございました、アンブリッジ先生。まさに啓発的じゃった。──さて、先程言いかけておったが、クィディッチ選抜の日は…」

 

 

気を取り直すようにダンブルドアが話しの続きを話し、生徒達はちゃんとダンブルドアを見て口を閉じる。

ハーマイオニーとソフィアはちらりと視線を合わせ、他の者には聞こえないよう声を低くして囁いた。

 

 

「どう思う?」

「…間違いないわ、…まさに啓発的で…今年は、より大変そうね」

「そうよね…」

 

 

真剣な顔で頷き合うソフィアとハーマイオニーに、ロンとハリーは首を傾げる。

 

 

「面白かったなんて言うんじゃないだろうな?ありゃ、これまでで最後につまんない演説だった。パーシーと暮らしてた僕が言うんだから間違いない」

「面白い、じゃなくて…啓発的なのよ、ロン。アンブリッジの言葉で沢山のことがわかったわ」

 

 

ソフィアは声を低くしたまま、アンブリッジをじっと見据える。教師達もきっと彼女の演説の意味に気付いただろう。

 

 

「本当?中身のない無駄話ばっかりに聞こえたけど」

「言葉の端々に…魔法省が教育に干渉する、という事が隠されていたわ。…闇の魔術に対する防衛術だけならまだ良いけれど…あの言い方だと、ホグワーツそのものに干渉してもおかしくないわ」

 

 

ソフィアの言葉にハーマイオニーは頷き、ハリーとロンは信じられないのか怪訝な顔で顔を見合わせた。

 

 

ちょうどその時、ダンブルドアが解散と就寝を宣言し、椅子を引く音でがたがたと大広間中が煩くなった。

ハーマイオニーは慌ててロンを引き連れ、一年生を案内するために駆け出す。

 

 

「また後でね」

「ええ、また!」

 

 

ソフィアとハリーは不安げに身を寄せ合っている一年生の元へと向かうロンとハーマイオニーを見送る。こうしてみると、本当に一年生は細くて小さい。

いくら身長が低いソフィアでも、流石に一年生よりは大きく、少しだけ自分の成長と、一年生の時を思い出し懐かしそうに目を細めた。

あの時はスリザリンに組分けされず──ルイスと離れてしまい、絶望感に打ちひしがれていたっけ。

 

 

「ソフィア久しぶりね、夏休みはどうだった?前言ってた雑誌、持ってきたわよ!」

「化粧品のサンプルも、沢山持ってきたわ!」

「久しぶりねラベンダー、パーバディ!まぁ、ありがとう!」

 

 

生徒の間を縫い、ラベンダーとパーバディがソフィアの前に現れ、鞄の口を開け魅惑的な魔女がウインクをする雑誌と、キラキラと光る化粧品のサンプルをちらりと見せる。

夏休み前に、新しい化粧品や服を買いたいと相談されていた2人は、ソフィアのためにこうして用意していたのだ。

 

ハリーはなんとなくこの場に居づらくなり、「また後でね」とソフィアに告げると生徒達の意味ありげな視線を振り払うように一直線に大広間の扉へと向かった。

 

 

 

ソフィアはラベンダーとパーバティとグリフィンドール寮へ戻り、自室に置かれていたトランクの中身をきちんと棚に片付けた後一つのベッドに座り雑誌を囲み楽しく談笑していた。

 

少しすると監督生の仕事を終えたハーマイオニーが現れ、トランクの中身を片付けた後そのお喋りの輪の中に入った。

 

 

「見て!これね、ボディクリームなんだけど、凄く肌触りが良くなるの」

 

 

パーバティが小さな小瓶を3つ取り出すと、ソフィア達に手渡す。昔から化粧品のサンプルを沢山入手する事が出来るパーバティは、ソフィア達に惜しみなくわけていた。

 

 

「ベタつきも殆どないし、すっごく良いわよ」

「わぁ…!本当、良い匂いね」

「うん、嫌な匂いじゃないわ!甘いけど…少しスッとしてるし…」

 

 

小瓶を開け、手の甲に少し出したソフィアは伸びを確認しながら笑う。ハーマイオニーとラベンダーも体に塗り込みながらくんくんも自分の体から出る甘い匂いにうっとりと顔を綻ばせた。

 

 

「ソフィアが普段使ってるコロンの匂いと喧嘩もしないでしょ?…すっごく、良い匂いよね、どこのコロンなの?」

 

 

パーバティがソフィアの首元に顔を近づけ、匂いを嗅げば、ソフィアは少しくすぐったそうにしながら化粧棚へ向かって杖を振るい、中から丸い瓶を引き寄せるとパーバティに手渡した。

細い筆記体で書かれた文字を見たパーバティは「うわー!これ、高級ブランドよ!」と興奮したように言い、羨ましそうに香水を見つめた。

 

 

「頂いたものなの。もう無くなりそうだから…新しいものを買おうと思ってるんだけど…びっくりするほど高かったわ」

 

 

肩をすくめるソフィアに、パーバティは「学生には少し手が届かないわよね」と言いながら大きく頷き、落として壊す事ないよう慎重にソフィアの手に瓶を返した。

ハーマイオニーはその香水が、ドラコの母からの贈り物であると知っているため少し嫌そうにぎゅっと眉を寄せたが──良い匂いであり、ソフィアの雰囲気ととてもよく似合っているのも事実のため、何も言わなかった。

 

 

「ねえ、ソフィア、ハーマイオニー。あなた達ってハリーと仲良いわよね?その……例のあの人が復活したなんて、嘘よね?」

 

 

ラベンダーが少しも気にしていない、と言うように雑誌をぺらぺらと捲りながら呟く。

その手はページを巡っているが、目は動く事はなく、雑誌を読んでいるフリなのだと、ソフィアとハーマイオニーは察した。

 

 

「ラベンダーはどう思うの?」

「あー……パパとママが、復活なんて馬鹿馬鹿しいそんなわけないって言ってるわ。ダンブルドアも、色々あったでしょう?魔法省は認めてないし。──それに、ほら、ハリーって目立ちたがり屋なのは本当でしょう?」

 

 

ラベンダーは視線を下に向けたまま早口で言う。隣にいるパーバティは何も言わないが、ラベンダーと同じことを思っているのか彼女の言う事が当然だと、表情が物語っている。

ハーマイオニーはカッとして眉を吊り上げラベンダーの手から読まれていない雑誌を勢いよく奪った。

 

 

「何するのよ!」

「ラベンダー、ハリーのことについて──」

「ハーマイオニー、ラベンダー落ち着いて」

 

 

一瞬で険悪な雰囲気になってしまったハーマイオニーとラベンダーに、ソフィアはやんわりと──だが力強い声で2人を咎めるように名を呼ぶと、真剣な目で2人を見る。

 

 

「…復活を信じられないのは当然だわ。だってハリーとダンブルドア先生の証言しかないもの。でも……ラベンダー、あなたは4年間ハリーを見てきて、ハリーが目立ちたいからってダンブルドア先生と共謀して例のあの人が復活した、だなんて愚かな嘘を言う人だと思う?」

「それは……」

「ハリーのご両親や沢山の人が例のあの人や、死喰い人に殺されたわ。…ハリーは確かに──自分が望んで無いとはいえ──目立つ事をよくするけれど、人を傷つける嘘を言ったことは無いわ、そうでしょう?」

「…でも……それは…」

「わかってるわ。信じられないのも仕方がないって、証拠もないし世論は2人を否定しているもの。──でも、私はハリーとダンブルドア先生を信じているの」

 

 

ラベンダーはそれでも不安と疑念から複雑そうな表情をしていたが、ソフィアの真剣な言葉と、ハリーの今までの言動を冷静に考え──確かに、あんな嘘はつかないだろう、と思った。

だが、それでも例のあの人が復活しただなんて信じられないのもまた、事実だ。

 

 

「…でも…私は、信じられないの」

「そうね…それも、仕方ないわ。けど、ラベンダー、こんな事でハリーを馬鹿にしたり、噂を鵜呑みにしすぎるのも、駄目よ?ハーマイオニーも、いきなり雑誌を取るのは駄目」

「うーん……うん、ちょっと考えるわ…」

「…ごめんなさい、ラベンダー、私…カッとして…」

 

 

ハーマイオニーとラベンダーは顔を見合わせ、少し気まずそうにお互いに頭を下げた。

ソフィアは喧嘩に発展しなかったことに安堵しながらにっこりと笑った。

 

 

「ソフィアは、どうしてそこまでハリーを信じられるの?私も…正直、ラベンダーに同意だわ。ハリーがそんな嘘を言わないとはわかっているの。だから…例のあの人が復活する幻覚を見たのかなって、私は思ってたわ」

 

 

静観していたパーバティはため息を吐くように言いながら洋服棚からパジャマを取り出し、シャツのボタンを外し始めた。

 

 

「どうしてって…」

 

 

ソフィアは壁にかけられている時計を見て、かなり遅い時間を指している事に気付くとパーバティと同じように服を着替え始める。

ハーマイオニーとラベンダーもそろそろ寝る支度をしなければ、と服を着替えしはじめ、暫くは衣擦れの音しか聞こえなかったが、ぽつり、とふいにソフィアが呟いた。

 

 

「──好きだから」

 

 

その声はあまりにも小さく、ハーマイオニー達は聞き間違えたのかと思ったが、ソフィアの頬が少し赤いのを見て「ええっ!?」と叫ぶと服の着替えもそこそこにソフィアの元に駆け寄った。

 

 

「そうなの!?」

「まぁ、知らなかったわ!」

「ついに自覚したのね!?」

「あ──あー…うーん…」

「それなら、納得よ!だって好きな人の言う事は信じれるもの!」

「ソフィアもついに!…告白は?いつするの?」

「告白するときは、うんとおめかししないとダメね!」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 

目を輝かせた3人にマシンガンのように言われたソフィアは顔を真っ赤にしながら首をブンブンとふると、赤みをごまかすように両手で頬を包みながら「待って…」と恥ずかしそうに呟いた。

 

 

「その、好きだけど…あー……まだ、うーん…ハリーと恋人になってる様子をイメージ出来ないの。だから、ちょっと…この気持ちが友愛なのか、どうなのか…よく考えるわ。だから、誰にも言わないで、秘密にして…ね?」

 

 

いつもはっきりと意見を言うソフィアは、この手の話題になると急にしどろもどろになり恥ずかしそうにボソボソと話す。

ハーマイオニーとラベンダーとパーバティは顔を見合わせ、先程までのややぴりっとした雰囲気を一切感じさせず、ニンマリと笑うと大きく頷いた。

 

 

 

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