【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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256 友達として!

 

 

次の日の午前中、呪文学と変身術の授業があった。

フリットウィックとマクゴナガルはセブルスと同じように授業が始まる前にOWL試験の重要さを伝え、同じように沢山の課題を出した。

 

変身術の授業の後、ソフィアは今年も個人授業を受けられるかマクゴナガルに聞きに行ったが、今年はOWLの年であり、沢山の課題が出されそんな暇と余裕はないだろう、とマクゴナガルに諭されてしまい、残念ながら今年の個人授業は無しになってしまった。

 

ソフィアは既に7年生が受けるNEWT試験レベルの変身術は使えるため、個人授業が負担だと思った事は無かったが──だが、課題の山が着実に増えてきているのもまた、目を背けることのできない事実であり、残念に思いながらも頷く他なかった。

 

 

ハリーとロンは昼休みの1時間を魔法薬学のレポートを終わらせるために図書館で過ごしたが、ソフィアとハーマイオニーは自室で過ごした。

 

何故別々で過ごす事になったのかと言うと──昨夜、ハーマイオニーがハウスエルフを解放するために、服を受け取れば解放される彼らの性質を利用し、作ったお手製の帽子をゴミに紛れさせていたのだが、それを見たロンが「あれは服の内に入らないよ。とても帽子には見えなくて…毛糸の膀胱に近かったな」ととんでもない侮辱をしたため、怒って午前中一切口を聞かなかったのだ。

昼食を終えてもハーマイオニーの怒りは収まらず、こうして個々の親友と過ごし、彼らは別行動する羽目になったのだ。

 

ハリーとソフィアは、ロンとハーマイオニーが1日に何度も言い合いをすることに辟易していたが、2人の性格上どうしても衝突してしまうのは仕方のない事だと半分諦め、お互いの親友のケアに勤しむのだった。

 

 

ハーマイオニーとソフィアは変身術で見事に消失呪文を成功させた為課題は無かったが、昼休み中に呪文学の課題を終わらせ、2人で魔法生物飼育学の授業を受けるために校庭へ向かった。

 

 

「ハグリッドはきっとまだ来てないわよね」

「そうね…いつ戻ってくるのか…今年は戻ってこない可能性もあるわ」

 

 

授業を行う場所はハグリッドの小屋近くだが、生徒達が集まっている前にいるのはハグリッドではなくグラブリー–プランクだ。彼女は優秀な生物学教師であり、ハーマイオニーとソフィアは彼女の授業が好きだったが──勿論、ハグリッドの授業が嫌いだというわけでは無い。ただ、授業のレベルを考えたとき、比べてしまうのは仕方のない事だろう。

 

 

「早くハグリッドに戻ってきてほしいわ」

「…あの先生、とってもいい先生よ。勿論、ハグリッドの授業も…あー……素敵だけど。…ハリーに言わないでね、またカリカリするわ」

「はは…」

 

 

ハーマイオニーのうんざりしたような呟きに、ソフィアは苦笑し頷いた。

ハリーにとってハグリッドは初めて魔法界について教えてくれたかけがえのない友達だ。贔屓目に見てしまうのは仕方のない事だが、それ故に彼以外の魔法生物飼育学教師を目の敵にしている節があった。

 

 

ソフィアとハーマイオニーがハグリッドの小屋の前に到着すると、既に他のグリフィンドール生は集合し、少し離れた場所にハリーとロンがいた。ハリーの表情が苛立ちを含んでいる事にすぐにソフィアとハーマイオニーは気付き、ロンと目配せをして無言で教師を見る。

 

授業開始の前にはスリザリン生が現れ、全員が揃ったのを見てグラブリー–プランクが授業の開始を告げた。

 

 

「みんな集まったかね?──早速始めようかね。ここにあるのが何だか、名前がわかるものはいるかい?」

 

 

グラブリー–プランクの前には小枝がたくさん山積みされた架台が用意されており、それを指差しながら生徒達を見回す。どうみてもただの小枝だったが、それが何がわかったハーマイオニーとソフィアはパッと手を上げた。

 

 

小枝にとてもよく似た魔法生物──ボウトラックルだ。

ボウトラックルが飛び上がると前方にいたパーバティとラベンダーは「うわぁ!」と歓声を上げ、一歩後ろに下がったが目だけは興味津々というように輝きピクシー妖精のように小さく細いボウトラックルを見つめた。

 

 

「女生徒たち!声を低くしとくれ!──さてと、誰かこの生き物を知ってるかい?ミス・プリンス?」

「はい。ボウトラックルです。木の守番で通常は杖に使う木に棲んでいます」

「正解。グリフィンドールに5点。ミス・プリンスが答えたようにだいたいは杖品質の木に棲んでいる。何を食べるか知っている者は?──ミス・グレンジャー?」

「ワラジムシ。でも、手に入るなら妖精の卵です」

「よく出来た。グリフィンドールにもう5点」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは2人で大きな加点を出来た事にチラリと顔を合わせ、嬉しそうに微笑んだ。

グラブリー–プランクは用意したワラジムシが大量に入っている箱を指差し、その好物を使いながらボウトラックルを観察し授業終了までにスケッチを1人一枚作成する事を今日の課題とし、生徒たちは小さな黒い目を向けるボウトラックルが入っている架台に集まった。

 

 

「どの子にする?」

 

 

ハーマイオニーはボウトラックルの長い指を警戒しながら──何せ、ボウトラックルは人間の目を穿り出してしまうのだ──沢山のボウトラックルを指差す。茶色い個体、緑色の個体など様々な色の個体がいる中、ソフィアはパッと目についた鮮やかな緑色のボウトラックルに手を差し出す。

その掌にはワラジムシが数粒乗せられており、ボウトラックルは黒い目を輝かせるとひょこひょこと細い脚を動かしソフィアの掌の上にちょこん、と乗った。

 

 

「この子にしましょう。頭の葉っぱが3枚あって可愛いわ!」

「えースケッチ大変そうじゃない?葉が1枚の方が…」

 

 

ロンはぶつぶつと文句を言ったが、ソフィアは聞こえないフリをして細長い指を使い米粒のようなワラジムシを器用に掴んで食べるボウトラックルの頭の葉を優しく撫でる。

ボウトラックルはワラジムシを食べる事に夢中になり、葉が撫でられていようがとくに気にしていないようだった。

 

 

ソフィアは人の少ない芝生に移動し、そっと芝生の上にボウトラックルを放す。ボウトラックルは両手でワラジムシを掴み必死になって食べていて、逃げ出したり威嚇する事は無かった。

 

ハーマイオニーとロンもソフィアのそばに集まり、羊皮紙と羽ペンを取り出しボウトラックルのスケッチを始める。

 

 

「さっき、マルフォイがハグリッドは怪我をしたんだって…巨大すぎるものにちょっかいを出したって言ってた。何か知ってるのかな?…ほら、あいつの父親はアレだろ?」

 

 

少し遅れてやってきたハリーがソフィアとロンの間に座りながら小声でソフィア達に囁く。ボウトラックルをスケッチしていた手を止め、ソフィアは辺りを見回し近くに誰もいない事を確認するとボウトラックルの頭の葉ををよく見るふりをしながら声を顰める。

 

 

「何か知っていたとしても。ハリーを心配させたいだけよ。もしそれが──ルシウスさんが本当に死喰い人と仮定したとして──死喰い人の機密事項なら漏らすなんて馬鹿な事はしないわ、流石のドラコもね…」

「そうよ、ソフィアの言う通りだわ!それにハグリッドに何かあればダンブルドアがわかるはずよ。ハリー、腹が立っても無視しなきゃ」

「でも…」

 

 

ソフィアとハーマイオニーの言葉にハリーは焦ったそうに呟く。それでも心配なのは心配だし、何よりハグリッドを馬鹿にするドラコが憎くてたまらなかったのだ。

 

 

「──そうなんだよ。数日前に父上が大臣と話をしてねぇ。どうやら魔法省はこの学校の水準以下の教え方を打破する決意を固めているようなんだ。だから育ちすぎのウスノロが帰ってきてもすぐに荷物をまとめる事となるだろうな」

 

 

ドラコの人を馬鹿にするような声が1番近くのグループから聞こえ、ボウトラックルの手をよく見ようと触っていたハリーは思わず力を込めすぎてしまい、怒ったボウトラックルがハリーの腕を鋭い爪で思い切り引っ掻いた。

 

 

「あいたっ!」

「あー…ハリー、大丈夫?」

 

 

ソフィアは杖を出し羊皮紙をハンカチに変身させるとハリーの手に押し当て、芝生の上を逃げ惑うボウトラックルに向かってワラジムシを放り投げた。

逃げようとしていたボウトラックルはくるりと方向転換をすると、その場にしゃがみ込みぱくぱくとワラジムシを食べ始める。

 

白いハンカチはじわりと赤い血が滲み、それを横目で見ていたドラコはいい気味だとばかりにせせら笑う。

 

 

「…ハグリッドは悪い教師じゃないよ、ドラコ」

「ふん、グラブリー–プランクの方が何倍もマシなのは事実だろ?ルイス、君もあのウスノロの授業が良いっていうのか?」

「どっちも良いって事さ。ヒッポグリフも、僕は嫌いじゃないし」

 

 

ルイスはボウトラックルのスケッチをしながら自分達を憎々しげに睨むハリーとロンの視線を受け、人知れずため息をこぼした。

 

 

 

 

 

終業を告げるベルが鳴り、ソフィアは羊皮紙を丸め鞄の中にいれるとボウトラックルを元の架台へと連れて行き、ハリー達と薬草学のクラスへと向かった。

 

ハリーの耳の奥にはドラコの嘲り笑いが汚れのようにこびりついて残り──ここ数日はずっとなのだが──苛立ちが収まらず、苛々とした雰囲気を隠す事なく吐き捨てた。

 

 

「マルフォイのやつ。もう一度ハグリッドをウスノロって呼んでみろ…」

「ハリー、マルフォイといざこざを起こしてはダメよ。あいつが今は監督生だって事を忘れないで。あなたをもっと苦しい目に遭わせる事も出来るんだから…」

「へーえ、苦しい目に遭うって、一体どんな感じだろうね?」

 

 

ハリーは皮肉たっぷりに言い肩をすくめる。ロンは笑ったがハーマイオニーとソフィアは笑う事なく眉を寄せた。ソフィア達は暗雲が立ち込める空の下、重い足取りで野菜畑を横切る。

 

 

「僕、ハグリッドに早く帰ってきてほしい。それだけさ。それから、グラブリー–プランクばあさんのほうがいい先生だなんて、言うな!」

「そんなこと言うつもりはなかったわ」

 

 

ハーマイオニーはハリーの脅しにも似た言葉を聞き、静かに言うがソフィアはムッとして足を止めくるりと振り返る。

 

 

「ハリー。グラブリー–プランク先生はいい先生だわ」

 

 

ソフィアの強い言葉にハリーは足を止めると驚いたように目を見開いていたが、ぐっと拳を握り──怪我をした手がつきりと痛んだ──ソフィアを睨む。

 

 

「ハグリッドより良いって言うのか?」

「どっちもいい先生よ。ハリー、あなたがハグリッドの事が好きなのはわかるけれど、だからといってグラブリー–プランク先生を下に見るのは……ドラコと同じよ」

「あんな奴と同じじゃない!僕はウスノロなんて言わないぞ!」

「先生として認めてないのは事実でしょう?」

 

 

ハリーも今受けた授業が魔法生物飼育学の模範的な授業だったとよくわかっていた。だからこそ、自分1人だけでもハグリッドの方が優れていると思わなければならないと思ったし、何より──友達であるソフィアとハーマイオニーとロンも同じ思いでなければ許せなかった。ハグリッドに対しての裏切りのように感じてしまったのだ。

 

 

強く奥歯を噛み締めるハリーに、ソフィアはそれ以上何も言わずに踵を返すと足速に温室へと向かう。ハーマイオニーはハリーを一瞬見たが、ソフィアの後を追いかけた。

 

 

「なんだよ、ソフィアなら…わかってくれると…」

「あー…ほら、ソフィアってあの授業好きだからさ。誰が教師でも気にしないんだよ。魔法生物さえいればいいのさ」

 

 

ロンの不器用な励ましに、ハリーは無言でソフィアの背中を見つめる。ソフィアと言い合いをしたかったわけではなく、重い石を飲み込んだかのようにずっしりと気が滅入り、大きく肩を落とした。

 

 

ハーマイオニーはソフィアの隣に並ぶとちらりと表情を盗み見る。固く結ばれた唇に「珍しい」と思いつつソフィアの発言には概ね同意だったため、咎める事は無かった。

 

 

1番手前の温室の扉が開き、授業を終えた四年生がぱらぱらと溢れ出てくる中に、ジニーが居た。あまり他の学年の生徒と会う機会は無いのだが、ソフィアはジニーを見て少しだけ表情を緩める。

過去、ジニーは友達が出来ず、1人で過ごしていたせいでとんでもないことに巻き込まれたが、今では友達が出来て平穏に過ごしているようだった。

 

 

「こんにちは」

「こんにちは、ジニー」

 

 

ジニーはソフィアとハーマイオニーに気付くと朗らかに挨拶をし、少し離れた場所にいるハリーとロンともすれ違いざまに微笑んで挨拶をした。

その後生徒達の1番後ろからルーナがゆっくりと現れると先ほどの授業でついたのか、鼻先に泥をくっつけたままどこか興奮したように目を見開き今までのゆっくりとした歩みをいきなり早めると大股で一直線にハリーに向かう。

ソフィア達のクラスメイトや五年生のハッフルパフ生が何だろうと振り返る中、ルーナはハリーの前でぴたりと立ち止まると大きく息を吸い込み一息で言った。

 

 

「あたしは、名前を言ってはいけないあの人が戻ってきたって信じてるよ。それに、あんたが戦ってあの人から逃げてきたって信じてる」

「え──そう」

 

 

ハリーはいきなりの宣言にどう反応していいか分からず曖昧に答える。

ルーナの耳には大きなオレンジ色のカブがイヤリングのように揺れ、それを見たパーバティとラベンダーがくすくすと笑う。その笑いが聞こえたルーナはくるりと2人を見ると少し顎を上げ悠然と言い放った。

 

 

「笑ってもいいよ。だけど、ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角のスノーカックがいるなんて昔は誰も信じて無かったんだから!」

 

 

ルーナは自分の発言が笑われたのだと受け止めたが、彼女達が笑ったのはその珍妙なイヤリングである。

少しも気にした様子のないルーナの態度と言葉に、ハーマイオニーがつい「でも、いないでしょう?」と我慢ならないとばかりに口を出した。

 

 

「ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックなんていなかったのよ。ねえ、ソフィア?見た事ないわよね?」

「まぁ……まだ発見はされてないわね。けど、魔法生物は毎年新種が発見されているから今どの教科書に乗っていなくても、何年後かはわからないわ」

 

 

ソフィアは将来、まだ発見されていない魔法生物を見つけ出す旅がしたいと思っているため、ルーナの言葉を否定しなかった。ルーナは初めて否定されなかった事に大きく目を見開きソフィアの目を信じられない思いでじっと見つめる。

だが、この場にいるものは皆ハーマイオニーに同意であり、堪えきれず何人かが噴き出すように笑い出す。

ルーナは嘲笑に包まれる中、ハーマイオニーをぎろりと睨むと、カブをぶらぶら揺らせながら仰々しく立ち去った。

 

 

「僕を信じてるただ1人の人を怒らせないでくれる?」

 

 

授業に向かいながらハリーがちくりとハーマイオニーに言うが、ハーマイオニーは呆れたような目でハリーを見る。

 

 

「何言ってるの、ハリー。あの子よりましな人がいるでしょう?父親がザ・クィブラーを出してるくらいだもの、きっと全然証拠がないものしか信じてないんだわ!それに、ソフィアも本当は信じてないんでしょう?」

「うーん…魔法界は広いし、閉鎖的な森も多いわ。何がいても私はおかしくないと思うけれど」

「もう!現実を見なさい!」

 

 

ソフィアの言葉をハーマイオニーはばっさりと切り捨てる。ハーマイオニーは何よりも証拠がないと存在を認める事ができない。人生の全ては本に書いてあると思っているからなのだが──実際、魔法界も一枚岩ではなく他の魔法族が入る事が難しい秘境は沢山存在している。その中にしわしわ角スノーカックでは無いにしろ、まだ誰も知らない新種がひっそりと生息していてもおかしくは無いのだ。

 

 

「言っておきたいんだけど」

 

 

ハッフルパフ生の中を掻き分け、アーニー・マクラミンがハリーの前に近づくとよく通る大きな声を上げた。

まさかこの人数の前で「例のあの人なんて復活してない」と宣言されるのかとハリーは身構えたが、アーニーは少し胸を逸らし気取ったように言った。

 

 

「きみを支持しているのは変なのばかりじゃない。僕もきみを100パーセント信じる。僕の家族はいつもダンブルドアを強く支持してきたし、僕もそうだ」

「え──ありがとう、アーニー」

 

 

ハリーは不意をつかれたが嬉しかった。アーニーはこんな場面で大げさに気取るところがあったが、それでも臆する事なく宣言してくれるのはやはり嬉しい。何よりアーニーの言葉で何人かの顔から笑いは完全に消え、シェーマスの表情は混乱しているようにも、抵抗しているようにも見えた。

 

 

 

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