【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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268 悩みはあるけれど!

 

 

ソフィアとハリーが晴れて恋人となった次の日。

ハリーは一日中ソフィアと2人きりで過ごしたかったが、沢山の宿題をなんとか1日で終わらせなければあの最悪の授業ばかりの月曜日にまた地獄を見る事になってしまう。

 

結局、いつも通りハリー、ロン、ソフィア、ハーマイオニーの4人で談話室にある暖炉前のいつもの椅子に座り、必死に宿題をする羽目になってしまった。

しかし、明るい太陽の光が温かく降り注ぐ中、こんなところで背中を丸めて宿題をするなんて気が進まない。──と、昼間に大広間へ向かい、山のように並ぶサンドイッチやスコーン、ベーグル等を両手いっぱい抱え、湖のほとりの大きなブナの木の木陰で寛ぐ事にした。

 

ソフィアが杖を振りレジャーシートを出し、その間にハーマイオニーが手際よく大きな皿を出し、ロンとハリーが持っていた昼食を皿の上に綺麗に並べた。

ハリーとロンが持っているのは昼食だけではなく、宿題も勿論持ってきていたため──そもそも真の目的は気分転換に外で宿題をする事だ──いつもよりのんびりとサンドイッチを食べ、秋の名残の日差しを受けつつ、また、諦めたように宿題にとりかかった。

 

 

「あ!私、図書館に本を返すのを忘れていたわ!」

 

 

ソフィアはハリーの宿題を見ていたが、腕時計をちらりと見てハッと顔を上げ、すぐに立ち上がった。

無意識のうちにソフィアについて行こうと腰を浮かせかけたハリーの肩をハーマイオニーが勢いよく掴むと下におろし、「ダメ。宿題を終わらせなさい」と低い声で呟く。

残念だったが、ハーマイオニーを怒らせてしまえばまた最低な宿題を提出しなければならなくなる。──恋人になったからといって、ソフィアは宿題を写させてはくれないだろうし、ソフィアは魔法史は、苦手なのだ──と、ハリーは名残惜しそうに手を振るだけで我慢した。

 

パタパタと走っていくソフィアは、図書館には向かわず二階の奥にある花束を持つ少女の肖像画の元へ向かった。

肖像画の前で杖を振り、幾つもの可愛い花を出現させて少女に向ければ、少女は嬉しそうに微笑んですぐに道を開いた。

 

 

周りに人影がないのを確認し、ソフィアは肖像画の奥にある隠された部屋へと進む。

久しぶりに来たこの部屋はいつも通り温かく、ソフィアを迎え入れた。

 

いや、部屋だけではない。部屋の中央にある椅子に座るルイスもまた、優しく微笑みソフィアを迎えた。ルイスがその微笑みをソフィアに向けたのは久しぶりだろう。夏休み中も半分は会えなかったため、『久しぶり』と思う事が何故かとても悲しく、ソフィアはルイスに駆け寄ると両腕を広げるその胸元へ飛び込んだ。

 

 

「ソフィア、久しぶりだね」

「ええ…こんなに長い間話せないなんて…」

 

 

温かい抱擁と、優しい香りに身を寄せ、ソフィアは目を閉じる。ルイスもまたソフィアの背中に手を回し、しっかりと抱きとめ目を閉じた。

ドラコを支えるため、ソフィアやハリー達には極力関わらない事を決めたのは紛れもない自分自身だ。その為、不死鳥の騎士団に守られる事のない場所に身を置く今、ソフィアに気軽に話しかけることも難しくなっていた。

 

 

「…どうしたの?」

 

 

ルイスはソフィアの黒髪を撫でながらそっと身を離し、頭ひとつ分は差が空いてしまったソフィアの目を見つめる。

途端にソフィアはぽっと頬を染め、幸せそうに──だが、どこか悲しそうに──微笑むと、ルイスの手を引きソファに座り、昨日何があったかを話した。

 

 

「そっか…。ようやく、自分の気持ちがわかったんだね?おめでとう!」

「ええ…その、でも──」

 

 

ハリーとソフィアが恋人になった。その事は素直に嬉しく、ルイスは心から祝福したが、ソフィアは浮かない顔で言い淀む。

 

 

「父様の事だね?」

「……どう思う?言った方が……いいわよね…?」

 

 

ソフィアは揺れる瞳でルイスを見上げる。ルイスは今までのセブルス(父親)のハリーへの言動を考えた上で──真剣な顔でソフィアを見つめる。

 

 

「絶対。言った方がいい。でも、多分……嫌がるだろうし、祝福は期待しないほうがいい」

「そう…よね」

 

 

ソフィアは重いため息をつき、肩を下げる。

そんなソフィアを見ながら、ルイスはきっと セブルス(父様)は相手が誰でも苦言を初めは言うだろうと思った。しかし、その中でも最も許容出来ない相手がハリーなのは間違いなく、その事を聞いた瞬間怒鳴りつけるか、翌日ハリーが原因不明の昏睡状態になるのではないかと考えた。

 

 

「いつ言うの?」

「……父様に、将来の職業について相談したいって言ってあるの。多分、近々時間を作ってくれる筈だから……その時に言うわ」

「そっか……うん、頑張ってね」

 

 

ルイスはぽんぽんとソフィアの背中を優しく励ますように叩く。ソフィアは「ありがとう」と微かに笑ったが、すぐにまた大きなため息をついて肩を落とした。

 

 

──父様がハリーを嫌うのは、その見た目がハリーのお父さんのジェームズ・ポッターに似ているから。それに、母様の死の間接的な理由の人の息子だから。…でも、ハリーはジェームズ・ポッターでは無いわ。

 

 

「──もし、落ち込んでいたら慰めてね?」

「うん、勿論だよ」

 

 

不安げなソフィアのつむじに、ちゅ、と口付けを落としたルイスは優しく微笑んだ。

 

 

 

ーーー

 

 

次の日の月曜日。

ソフィアとハーマイオニーは1日分の教科書を詰め込んだ鞄を肩にかけ、寝室を出た。

 

 

「──あら?階段が無いわ」

「ああ…多分、男子がこっちに入ろうとしたのね」

 

 

いつもなら大広間へ続く螺旋階段がある筈だが、階段は石でできた滑り台のようになっていた。ハーマイオニーの言葉に、なるほど、これなら女子寮には忍び込めないわ、とソフィアは考えながら先に滑り降りたハーマイオニーに続き、石の滑り台を滑り降りた。

 

 

「おはよう、ハリー」

「おはようソフィア。大丈夫?」

「ええ、目が覚めるわ」

 

 

ハリーは下まで到着したソフィアに手を差し出し、ソフィアはにっこり笑いながらその手を取った。

そのままソフィアがハリーの頬に口付ければ、ハリーは顔を真っ赤に染めて照れたように笑う。

恋人になった日から、ソフィアはおやすみとおはようの挨拶をする時にハリーの頬にキスをするようになったが、ハリーは未だに慣れず、視線を彷徨かせながらドキドキと高鳴る胸を押さえる事に精一杯でありお返しのキスなんて出来なかった。──そもそも、ハリーはソフィアと違い、挨拶にキスをする習慣は無い。挙動がぎこちなくなる事も仕方がないだろう。

 

 

「あ、ソフィア。掲示板を見てほしいんだ!」

 

 

ハリーは頬を赤くしたままソフィアの手を引き先に掲示物を見ていたロンとハーマイオニーの元へ駆け寄った。

ソフィアはハーマイオニーの後ろから新しく貼られた告示文を読む。そこには3人以上の生徒が集まる事全てを解散すると書かれており、生徒が所属しているクラブやチーム等を再結成する場合には、高等尋問官であるアンブリッジの許可が必要であり、許可なくして結成し属している事が判明した場合、退学処分になると書かれていた。

 

あまりのタイミングの悪さにソフィアは表情を固くしてその文をじっと見つめる。ハーマイオニーの顔も同じように強張っていた。

 

 

「誰かがあいつにべらべら喋ったに違いない!」

「それは無いわ」

 

 

このタイミングは間違いなく誰かがアンブリッジに告げ口したに違いないとロンは怒ったが、ハーマイオニーは静かに低い声で否定した。

 

 

「君は甘い。君自身が名誉を重んじて信用できる人間だからといって──」

「ロン。ハーマイオニーがただみんなに署名させただけだと思う?」

 

 

ソフィアはハリーの手を離し──ハリーはとても残念に思った──ハーマイオニーの腕に手を絡め、不敵な笑みを浮かべる。ハーマイオニーはソフィアに皆に署名させた羊皮紙に呪いをかけたことを伝えていなかったが、やはりソフィアは悟っていたかと、どこか嬉しそうに笑うと、「ええ、そうよ」と大きく頷いた。

 

 

「誰かがアンブリッジに告げ口したら、確実にわかるの。私が羊皮紙に呪いをかけたから。誰かさんはとっても後悔する事になるわよ」

「そいつらはどうなるんだ?」

「そうね、こう言えばいいかしら。──エロイーズ・ミジョンのにきびでさえ、かわいいそばかすに見えてしまう。……さあ、朝食に行って、他のみんながどう思うか聞きましょう。…全部の寮にこの掲示が貼られたのかしら?」

 

 

 

 

大広間に入った途端、アンブリッジの掲示がグリフィンドールにだけ貼られたのではないとはっきりわかった。どのネクタイを締めた生徒も皆忙しなく行き来し、掲示の事を話し合っていた。

ホグワーツでは様々なクラブ活動があり、全て一度解体されるなんて前代未聞だろう。誰もが緊張した面持ちで話し合い、不満そうであり──不安げだった。

 

ソフィア達が長机に着くや否や、ネビル、ディーン、フレッド、ジョージ、ジニーが待ってましたとばかりにやってきて近くに座った。

 

 

「読んだ?」

「あいつが知ってると思うか?」

「どうする?」

 

 

皆がハリーとソフィアを見ていた。

2人は辺りを見回し、近くに誰も先生がいない事を確かめ声を潜めた。

 

 

「とにかくやるさ、勿論だ」

「変更はないわ。……ねぇ、みんながここに来ると多分、何かを企んでいると思われるの。──どの生徒も混乱してるけど──何でもない顔をしましょう」

「あっ、だめ。アーニーとアンナがこっちに来ちゃうわ!」

 

 

ハッフルパフ生がこちらに来るのはまずいとハーマイオニーが慌てて身振りで「あとで!話は後で!」と伝えるが、距離もありうまく伝わらず、ジニーが焦ったそうに「私、マイケルに言ってくる」と立ち上がると恋人のいるレイブンクロー生の机へと向かった。アーニーとアンナは何とかこちらに来る事を踏みとどまってくれたが、このままではレイブンクロー生達もここに集合しかねない。

恋人であればグリフィンドール生がレイブンクロー生の机にいても不思議はないだろう。ソフィアはベーコンマフィンを食べながらジニーがマイケルと話す様子を見つめる。

 

ジニーにも、ハリーと恋人になった事を言わなければならない。ソフィアは甘じょっぽいマフィンをかぼちゃジュースで流し込みながらぼんやりと思った。

 

異様な雰囲気に包まれた大広間での朝食が終わり、魔法史の教室に向かうさい、丁度ジニーとほぼ同時に大広間二重扉を通り過ぎたソフィアは、思わずジニーの手を取った。

 

 

「ジニー、少し話したい事があるの。…今、いいかしら?」

 

 

いきなり手を掴まれたジニーは驚いたような顔をしていたが、ふっと小さく笑うと「どうしたの?」と小首を傾げる。

流石に人の行き来が激しい扉付近で話す内容ではないだろう、とソフィアはハリー達に「先に行ってて」と告げ──ハーマイオニーはすぐにソフィアが何を話すつもりなのか理解し、ロンとハリーを連れて先に教室へ向かった──人の少ない廊下の隅へと移動する。

 

 

「その、実は──私、ハリーとお付き合いする事になったの」

 

 

ソフィアは真剣な顔でジニーに伝えた。

謝ることも、伺う事もしない。ただ、ジニーには自分の知らぬところで耳に入るのではなく、直接伝えるべきだろうと思ったのだ。

その告白を聞いたジニーは1度目をぱちくりと瞬かせると、すぐに満面の笑みを浮かべた。

 

 

「おめでとうソフィア!私の大切な2人が恋人になって嬉しいわ!」

 

 

ジニーはソフィアに飛びつくようにして抱きつき、ぎゅっと背に手を回した。ソフィアは目を見開き──すぐに嬉しそうに笑うと、ジニーを抱きしめ返し頬を擦り寄せた。

 

 

「ありがとう、ジニー」

「もし、何かあったら教えてね?恋人との関係については、私の方が少しお姉さんみたいだから」

 

 

ジニーは悪戯っぽく言うと、ソフィアの背を優しく叩いてから体を離す。

たしかに、恋人や恋愛についてはジニーの方が経験があるのは間違いない、とソフィアはくすくすと笑う。

ちょうどその時大広間から四年生のグリフィンドール生の集団が現れ、ジニーはぱっと目を向けると「じゃあ、またね!」と手を振りその集団に駆け寄った。

 

 

ジニーは、自分でもすんなりとその事を受け止める事ができた。

悲しさも、苦しさも無い。ただ「よかった。幸せになってほしい」と、そう思うだけだ。きっと落ち着いた気持ちで受け入れる事ができたのも、夏休みの間にソフィアの気持ちの片鱗を聞いて──すぐにハリーとソフィアは付き合う事になると思ったからだ。

それに、どう見てもハリーの視線はソフィアを見ていて、他の誰かが入る隙なんて少しもなかったのだ。

 

 

同級生に囲まれながら、ジニーはいつも通りの凪いだ気持ちで、廊下を歩いた。

 

 

 

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