【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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277 嬉しい知らせ?

 

 

ハリーはすぐに寝室へ駆け上がり透明マントと忍びの地図を取って談話室に戻ってきた。外の寒さに凍えないようソフィアとハーマイオニーがスカーフと手袋をつけて現れる5分前にはロンとハリーの支度は終わっていた為、「遅い」と言うようにロンが舌打ちを一つこぼした。「だって、外は寒いわよ!」とハーマイオニーが叫び、ソフィアも今回ばかりはハーマイオニーに同意した。

 

4人は透明マントに包まった。──ロンは一番身長が伸びて、屈まないと足が見えてしまうほどになっていた──時々立ち止まっては忍びの地図でフィルチやアンブリッジがいないか確認し、慎重に幾つもの階段を降り玄関ホールを忍び足で横切る。

 

静まり返った雪の校庭に、大きな足跡が残っている。その足跡はハグリッドの小屋へ続き、久しぶりに煙突から煙がくるくると立ち上っているのが見えた。

 

ハリーは先ほどの最低な気持ちを──ハーマイオニーの言うように──忘れ、心を躍らせながら足を進める。

早足になったハリーに追いつくために、ソフィアとロンとハーマイオニーは押し合いぶつかり合いながら何とか躓く事なくハリーの後に続く事が出来た。

 

小屋の戸口に立ったハリーは拳を上げ、木の扉を3回叩く。すると、今まで何も聞こえなかった部屋の中から狂ったように鳴く犬の声が聞こえた──ファングだ。

 

 

「ハグリッド、僕たちだよ!」

「よう、来たか!」

 

 

ハリーは鍵穴に顔を近づけハグリッドを呼べば、すぐに返事があった。

ハグリッドの声の調子は喜んでいるようであり、かなり元気そうに聞こえ、4人はマントの下で顔を見合わせ嬉しさからにっこりと笑った。

 

 

「帰ってからまだ3秒と経ってねぇのに……ファング、どけ、どけ、──どけっちゅうに、このバカタレ──」

 

 

閂が外され、扉が軋みながら開き、ハグリッドの頭が隙間から現れた。

その顔を見た途端、ハリーとロンは息を飲み、ソフィアは小さな悲鳴を上げ、ハーマイオニーは大声で叫んだ。

 

 

「おい、おい、静かにせんかい!例のマントの下か?よっしゃ、入れ、入れ!」

 

 

扉を開き、ハリーたちがいるだろう方を見下ろしながらハグリッドは慌てて言った。ハーマイオニーは自分の口を手で押さえていたが、暗いマントの下でも顔中の血の気がひいているのがわかる。

狭い戸口を4人でぎゅうぎゅうになりながら通り抜けハグリッドの小屋に入ると、4人は透明マントを脱ぎ捨てハグリッドに姿を見せた。

 

 

「ごめんなさい!私──私、ただ──まあハグリッド!」

 

 

ハーマイオニーが苦しそうに言い、驚愕した顔のままハグリッドの顔を恐々と見つめる。ハグリッドは必死に手を振り、「何でもねぇ、何でもねぇったら」と誤魔化しながら窓のカーテンを全部閉めた。

しかし、その誤魔化しが通用するハーマイオニー達ではない。

声は元気だが、見た目はかなりボロボロ──重傷だ。

 

 

ハグリッドの髪は赤黒い血でべっとりと固まり、顔は紫色やドス黒い打撲痕だらけで腫れ上がった左目が細い筋のように見える。

手も顔も切り傷だらけでまだ血が出ているところもある。

ゆっくりと歩く様子から、体のどこかの骨が折れているのは間違いないだろう。

 

 

ハグリッドは足を引き摺りながら暖炉に向かい、銅のヤカンに火をかけていた。

──どう見ても、何でもないなんてことはあり得ない。

 

 

「いったい何があったの?」

「言っただろうが、何でもねぇ。──茶、飲むか?」

 

 

ハリーは真剣な声で聞いたが、ハグリッドはキッパリと言い張る。

嘘やごまかし、とっさの言い訳が苦手なハグリッドは自分の口が軽いことも自覚している。きっと何を聞かれてもなんでもないと答えようと、予め決めていたのだろう。

 

 

「何でもないはずないよ、ひどい状態だぜ!」

「ハグリッド、せめて骨折は治さないと、変に癖がつくわよ」

「言っただろうが、大丈夫だ」

 

 

ロンとソフィアの言葉にも、ハグリッドは首を振り4人の方を見て笑いかけたが、笑おうとすると傷が引き攣り痛むのか、すぐに顔をしかめた。

 

 

「いやはや、おまえさんたちにまた会えて嬉しいぞ──夏休みは楽しかったか?え?」

「ハグリッド、襲われたんだろう?」

「何度も言わせるな、何でもねぇったら!」

「僕たちのうち4人の誰かが、ひき肉状態の顔で現れたら、それでも何でもないって言うのかい?」

 

 

ロンが怪訝な顔で突っ込んだが、ハグリッドは聞こえないと誤魔化すために紅茶の準備に一生懸命だというふりをした。

 

 

「マダム・ポンフリーのところに行くべきだわ、ハグリッド」

「ひどい怪我よ?まだ血が出てる所もあるもの…」

 

 

ハーマイオニーとソフィアの心配そうな眼差しにも、ハグリッドは自分で処置してると言い、頑なな態度を崩そうとはしない。

ハグリッドは小屋の真ん中にある大きな木のテーブルまで歩いて行き、置いてあった布巾をぐいと引いた。その下から現れたのは車のタイヤより少し大きい血の滴る緑がかった生肉だった。

薬や包帯が現れると思っていたハリー達は顔を引き攣らせ、ロンが「まさか食べるわけじゃないよね?毒があるように見える」とよく見ようと体を乗り出しつつ聞いた。

 

 

「それでええんだ。ドラゴンの肉だからな。それに食うために手に入れたんじゃねぇ」

 

 

ハグリッドは生肉を摘み上げ、顔の左半分にびちゃりとくっつけた。

緑がかった血が顎髭に滴り落ち、血生臭い臭いがツンと漂う。

 

 

「うーっ。──楽になったわい。こいつぁズキズキに効く」

「…そりゃあ、ドラゴンの血は麻痺作用があるもの……でも、薄めず使うなんて……」

 

 

ソフィアが床にポタポタと垂れる血をじっくり見ながら呆れたように呟いた。

人間には麻痺作用がキツすぎるが、半分巨人の血が入っているハグリッドには丁度いい塩梅なのだろうか。

 

 

「それじゃ、何があったのか、話してくれる?」

「できねぇ、極秘だ。漏らしたらクビになっちまう」

 

 

ハリーの言葉にハグリッドは渋い顔をして首を振る。

 

 

「ハグリッド、巨人に襲われたの?」

 

 

ハーマイオニーが静かに聞けば、ハグリッドは無事な方の右目を見開いた。摘んでいた生肉が指からずれ落ち、ぐちゃりとハグリッドの胸に滑り落ちる。

 

 

「巨人?誰が巨人なんぞと言った?おまえさん、誰と話をしたんだ?誰が言った?俺が何をしたと──誰がその俺の──何だ?」

 

 

胸に落ちた生肉を顔に貼り直しながらハグリッドは目に見えて狼狽し、血とは別の汗をだらだらと流す。

あまりの狼狽ぶりにハーマイオニーは慌てて「そう思っただけよ」と謝るように言った。

 

 

「ほう、そう思っただけだと?」

「私たち、ダンブルドア先生からマダム・マクシームとハグリッドが何処かへ行ったって知ってるから……ほら、それなら、答えは一つでしょう?」

 

 

ソフィアがそう言えば、ハリーとロンが頷く。ハグリッドは厳しい目でソフィアとハーマイオニーを見据えていたが、フンと鼻を鳴らし生肉をテーブルの上に放り投げ、お湯が沸きピーッと高く鳴っているヤカンのほうに足音を立てて歩いて行った。

 

 

「おまえさんらみてぇな小童は初めてだ。必要以上に知りすぎとる」

 

 

ハグリッドはバケツほど大きなマグカップ3個に煮立った湯を注ぎながらブツブツと文句を言った。

 

 

「褒めてるわけじゃあねぇぞ。知りたがり屋、とも言うな。お節介ども」

 

 

仏頂面であり、言葉だけ聞けばかなり怒っているようだが、ハグリッドの髭はひくひくと動き笑おうとしているようでソフィア達は追い出される心配は無さそうだとほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「それじゃ、巨人を探してたんだね?」

 

 

ハリーはテーブルに着きながらニヤリと笑う。ソフィアとハーマイオニーとロンも悪戯っぽく笑いながら同じように席についた。

4人の前に紅茶を置き、腰を下ろしてまた生肉を取り上げると顔にびたりと貼った。

 

 

「しょうがねぇ。──そうだ」

 

 

ハグリッドは渋々、自分とマダム・マクシームが何をしていたかを話した。

1ヶ月かけて巨人の集落を見つけ、巨人の(ガーグ)に貢物を渡す。ダンブルドアからの使いである事をしっかりと伝え数日かけて巨人達の期待値を上げ、巨人達と繋がりを作る予定だった。

しかし、巨人という存在は、その性質によりお互いを殺し合う事が多い。どれだけ数が減り、絶滅寸前だとしても少しのきっかけで殺し合いが起こってしまうのだ。

ハグリッドとマダム・マクシームがガーグと会い、いい感触を得た2日後──巨人達が殺し合いを始め、そのガーグは死に新しいガーグが生まれた。

ハグリッドとマダム・マクシームは新ガーグにも会いに行き貢物を渡したが、前ガーグと比べて友好的ではなく、ハグリッドが逆さ吊りにされてしまい、あわや殺されそうなところをマダム・マクシームが魔法で救い逃げたのだ。

魔法は好きだが、魔法を使われることを嫌う巨人族は怒り狂い2人を殺そうとした。

2人は洞穴に身を隠していると、死喰い人が現れガーグと交渉し始めた。凶悪な死喰い人と新ガーグは相性が皮肉にも良かったのだろう。

死喰い人は逆さ吊りにされる事なく受け入れられてしまったのだ。

このまま何も成果を得れず帰ることもできず──新ガーグについていけない巨人を探し、説き伏せていたのだ。

勿論、彼らはついてくることはなかった、ただ何かがあり山の中から外の世界へ出た時ダンブルドアが巨人に有効的だと覚えていれば、ダンブルドアに助けを求めれば──そう、ハグリッドとマダム・マクシームは願った。

 

 

「じゃ──じゃあ、巨人は1人も来ないの?」

「来ねえ」

 

 

ロンのがっかりした声に、ハグリッドは深いため息をつきながら答え、温くなった生肉をひっくり返した。

 

 

「だが、俺たちはやるべきことをやった。ダンブルドアの言葉も伝えたし、それに耳を傾けた巨人も何人かはいた。そんで、何人かはそれを憶えとるだろう。多分としか言えねえが、ガーグのところに居たくねえ連中が、山から降りたら、そんでその連中がダンブルドアが友好的っちゅうことを思い出すかもしれん……その連中が来るかもしれん」

 

 

ハグリッドのその言葉は、期待というよりも願いが込められていた。

 

雪がすっかり窓を覆い、誰も何も言えず大量の熱い紅茶を飲む音だけが響く。

 

 

「ハグリッド?」

 

 

暫くして、ハーマイオニーが静かに聞いた。

 

 

「んー?」

「あなたの……何か手がかりは…そこにいる間に……耳にしたのかしら……あなたの、お母さんのこと…?」

 

 

ハグリッドは開いている方の目でじっとハーマイオニーを見た。──興味やからかいではなく、自分のことを思って聞いているのかと判断するために。

ハーマイオニーはハグリッドの初めて見る複雑で静かな目の色に、聞くべきではなかったと気が挫けたように縮こまった。

 

 

「ごめんなさい。私……忘れてちょうだい──」

「死んだ。──何年も前に死んだ。連中が教えてくれた」

 

 

ぼそりとハグリッドが答え、ハーマイオニーは悲痛そうな顔をすると「ほんとうに、ごめんなさい」と消え入りそうな声で答えた。

 

 

「気にすんな。あんまりよく憶えてもいねえ。いい母親じゃあなかった」

 

 

ハグリッドは言葉少なく言ったが、その後の沈黙は先ほどよりも耐え難いものだった。

ハーマイオニーは何か話し出して欲しそうにチラチラとソフィア達の方を見たが、この場で何を話し出すべきなのか3人とも悩んだ。

 

 

「だけど、ハグリッド、どうしてそんなふうになったのか、まだ説明してくれてないよ」

「それに、どうしてこんなに帰りが遅くなったのかも。シリウスが、マダム・マクシームはとっくに帰ってきたって言ってた──」

「誰に襲われたんだい?」

 

 

ロンとハリーが交互に聞き、血の滴る傷をじっと見る。

ソフィアは、確かに今これほど新しい傷があるのはおかしいと気付いた。ハグリッドの話ぶりでは巨人達の住んでいる場所はかなり遠い山であり、そこで多少の怪我はしたようだが今血を流すことは無いはずだ。

ハグリッドの怪我は、まさにほんの数十分前に誰かに襲われたかのようなものだった。

 

 

「襲われたりしてねえ!俺──」

 

 

ハグリッドは語尾を強めたが、その後の言葉は突如猛々しく扉を叩く音によりかき消された。

ハーマイオニーが肩を震わせ息を呑み、手にしたコップが指の間を滑り床に落ちて砕けた。

寝入っていたファングも目を覚ましキャンキャンと扉に向かって吠え、小屋にいる5人全員が戸口の脇の窓を見つめた。

カーテンに透けてずんぐりとした背の低い人影が月明かりを浴び映っている。

 

 

「アンブリッジだ!」

 

 

ハリーは小声で叫ぶとすぐにソフィアを引き寄せ透明マントを被せ、ハーマイオニーとロンを急いで手招きした。

慌ててロンとハーマイオニーがマントの中に飛び込み、4人は身を寄せ合い部屋の隅に移動する。ファングは狂ったように吠えたて警戒し、ハグリッドは訳がわからず困惑してどうすればいいのかわかっていない。

 

 

「ハグリッド!私たちのカップを隠して!」

 

 

ソフィアの声に我に帰ったハグリッドはハリーとロンとソフィアのカップを掴み、ファングの寝床のクッションの下に押し込んだ。

 

戸に飛びかかるファングを押し退け、ハグリッドは警戒しながら戸を開く。

その先には、やはり、アンブリッジが立っていた。

 

 

「それで、あなたがハグリッドなの?」

 

 

アンブリッジはいつもの甘ったるい少女ような声ではなく、固く嫌悪感を滲ませながらやけにゆっくりとハグリッドに聞く。

ハグリッドが答える前に断りを入れることなくアンブリッジは無遠慮に小屋の中に入ると、目をぎょろつかせて小屋中を見回した。

 

 

「あー…失礼だとは思うが。いったいおまえさんは誰ですかい?」

「わたくしはドローレス・アンブリッジです」

「ドローレス・アンブリッジ?たしか、魔法省の人だと思ったが──ファッジのところで仕事をしてなさらんか?」

 

 

アンブリッジの目はハグリッドを見ず、ソフィア達がいる部屋の隅を二度も直視していた。姿は見えなくとも、音を出せば聞こえてしまう。ソフィア達は必死に息を殺し、じっと身動き一つしなかった。

 

 

「大臣の上級次官でした。そうですよ。──今は、闇の魔術に対する防衛術の教師ですが」

 

 

今度は小屋の中を歩き回り、壁に立てかけられた雑嚢から脱ぎ捨てられた旅行用マントまで、アンブリッジは何もかも観察していた。その目はそこに何かヒントがあるのではないかと思っているようだった。

 

 

「そいつぁ豪気なもんだ。いまじゃあの職に就く奴はあんまりいねぇ」

「──それに、ホグワーツ高等尋問官です」

「そりゃなんですかい?」

「わたくしも、まさにそう聞こうとしていたところですよ」

 

 

アンブリッジはハグリッドの問いには答えず、床に散らばったカップのカケラを指差した。ハグリッドは曖昧に唸りながら──よりによって──ソフィア達が隠れている場所へちらりと視線を向けた。

 

ハグリッドはしどろもどろにファングが割ってしまったから新しいカップを使ったのだと机の上に一つ置かれていたカップを指差す。

アンブリッジは到底納得せず、「誰かの声が聞こえた」と、静かにハグリッドを追い詰めるが、ハグリッドは「俺がファングと話していた」とそれらしい言い訳をした。

 

 

「城の玄関からあなたの小屋の入り口まで、雪の上に足跡が4人分ありました」

 

 

アンブリッジの言葉にハーマイオニーがあっと息を呑んだが、その口をすぐにロンが手で塞ぐ。幸運にもファングがアンブリッジのローブの裾を鼻息荒く嗅ぎ回っていたおかげで、アンブリッジにハーマイオニーの声は届かなかったようだ。

 

 

「さて、俺は今帰ったばっかしで」

「あなたの小屋から城までの足跡は全くありませんよ」

「はて、俺は……俺にはどうしてそうなんかわからんが…」

 

 

ハグリッドは神経質に顎髭を引っ張り、助けを求めるかのようにまたチラリとソフィア達のいる部屋の隅を見た。

お願いだからこっちを見ないで、とソフィア達は強く願ったが、残念ながらハグリッドにその気持ちは届かなかったのだろう。

 

アンブリッジは怪しみながら体の向きを変えまた小屋の中を注意深く見て回った。ベッドの下や戸棚の中、大鍋の中など人が隠れられそうな場所を全て確認したアンブリッジは、再びハグリッドに向き合い、再び尋問を始めた。

ハグリッドはあまり頭が回らず言い訳が苦手だ。隠し事ができない、とも言えるだろう。

 

「その怪我はどうしたのか」「どこに行っていたのか」「たとえば、山とか?」というアンブリッジの直接的な質問に、ハグリッドは脳が燃えるほど回転させ、なんとか──しどろもどろだったが──ごまかした。

 

 

「勿論、大臣には、あなたが遅れて戻ってきたことをご報告します」

「ああ」

 

 

アンブリッジは腕にかけたハンドバッグを少し上にずり上げながら言い、ここに誰も隠れていないと判断したのか小屋の中を探すことを諦め戸口へ向かった。

 

 

「それに、高等尋問官として、残念ながら、わたくしは同僚の先生方を査察するという義務があることを認識していただきましょう。ですから、まもなくあなたにお目にかかる事になると申し上げておきます」

「査察?俺たちを、査察?」

 

 

ハグリッドは呆然とアンブリッジの後ろ姿を見ながら呟く。

アンブリッジは冷めた目でハグリッドを見上げ「ええ、そうですよ」と静かに言った。

 

 

「魔法省はね、ハグリッド。教師として不適切な者を取り除く覚悟です。では、おやすみ」

 

 

アンブリッジは戸をバタンと閉めて立ち去った。

ハリーは透明マントを脱ぎかけたが、ソフィアはハリーの手を取り真剣な目で首を振る。

 

 

「まだ近くに居るいるかもしれないわ」

 

 

ハグリッドも同じ考えだったようで、小屋を横切りカーテンを僅かに開け注意深く雪の降る校庭を見た。

 

 

「城に帰っていきおる。──なんと、査察だと?あいつが?」

「そうなんだ。もうトレローニーが停職候補になった」

 

 

信じ難いという表情をするハグリッドに、ハリーがマントを脱ぎながら答えた。

 

 

「あの…ハグリッド、授業でどんなものを教えるつもり?」

「おう、心配するな。授業の計画はどっさりあるぞ」

 

 

心配するハーマイオニーに、ハグリッドは自信満々に答えるが、それで安心できる人はホグワーツ中を探しても──ダンブルドアだけだろう。

ソフィアは勿論ハグリッドの授業が大好きだったが、だからといってハグリッドの少々危険と隣り合わせな授業がアンブリッジのお気に召すなんて楽観的な考えは出来ない。

 

ハーマイオニーは必死にアンブリッジはハグリッドを追い出す口実を探しているから、OWLに出てくるようなつまらない魔法生物を教えてほしいと懇願したが、ハグリッドは全く気にせず、ふわ、と大きな欠伸をすると小屋の隅のベッドに視線を向け眠そうな顔をした。

 

 

「さあ、今日は長い一日だった。それにもう遅い。──ええか、俺のことは心配すんな。俺が帰ってきたからには、おまえさんたちの授業用に計画しとった、本当に素晴らしいやつを持ってきてやる。まかしとけ……さあ、もう城に帰った方がええ。足跡を残さねぇように、消すのを忘れるなよ」

 

 

ハグリッドは本気で自分の授業と彼が言う面白い魔法生物に自信があるのだ。ハリーはハグリッドのことが大好きでこれからも彼の授業を受けたかったが、もし、去年の尻尾爆発スクリュートのような魔法生物が現れたならば、ハグリッドは一発で停学にさせられてしまうな、と嫌な想像──しかし、十分ありえる想像──をしてしまった。

 

 

追い出されたソフィア達は城へと向かいながら暫くは沈黙していた。

 

 

「ハグリッドに通じたかどうか怪しいな」

「……せめて、去年のような違法魔法生物でなければ…まだマシなんだけど……」

 

 

ロンの言葉にソフィアが心配そうに小屋を振り返りながら呟く。

ハーマイオニーは消却呪文で足跡を消しながら「だったら私、明日も来るわ」と、決然と言った。

 

 

「いざとなれば私がハグリッドの授業計画を作ってあげる。トレローニーがアンブリッジに放り出されたって構わないけれど、ハグリッドは追放させないんだから!」

「私も、力になれることはなんだってするわ」

 

 

ソフィアとハーマイオニーはそう言ったが、ハリーとロンは果たしてハグリッドが2人の言うことをちゃんと聞くのかどうかかなり不安だった。

 

 

 

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