【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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282 マグル界と魔法界!

 

 

クリスマスが近づくにつれ、シリウスは皆がホグワーツでのクリスマスに負けないぐらい楽しく過ごせるようにしようと決意したのか、大張り切りで皆と掃除や飾り付けに精を出した。

きっと、今まで孤独だった事の反動なのだろう、なによりもハリーと過ごすことのできるクリスマスが嬉しくてたまらないというほど常に上機嫌であり、夏にいた不機嫌な家主の片鱗は少しも見えなかった。

 

 

ハリーはシリウスとリーマスが飾り付けをしている廊下に追加のクリスマス飾りがたくさん入った箱を抱えて向かった。

 

 

「シリウス、この色のモールでいい?」

「ああ!これを飾れば完璧だ!」

 

 

シリウスは満面の笑みで箱の中から金銀に輝く派手なモールを取り出すとうきうき──もしくは、ルンルン──という文字が見えそうなほどの浮かれっぷりだった。

リーマスは長らく見ていなかったシリウスの満面の笑みに、こちらまでその雰囲気に充てられてしまう。と幸せな気持ちになりながらヤドリギの飾りを肖像画の周りに飾った。

 

 

「あ──シリウス、その……伝えたい事があって」

「どうした?」

 

 

シリウスはすぐに手を止めくるりと振り返る。真剣なハリーの声に、リーマスは自分は聞かないほうが良いのかもしれない、と談話室に向かいかけたが、すぐにハリーが「リーマスにも聞いて欲しい」と引き留めた。

シリウスとリーマスは視線をチラリと交わし、周りに自分達以外がいない事を確認して少し身を屈める。

 

 

「その──僕、ソフィアと恋人になった」

 

 

ハリーは真剣な表情だったがその頬は少し赤く染まり、嬉しさが滲み出ていた。

真剣な顔をしているから一体何を報告されるのかと身構えていたシリウスは──彼はセブルスがまた何かハリーに嫌な事をしでかしたのかと思っていた──驚きつつも嬉しそうに笑い、ハリーの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 

 

「そうか!よかったじゃないか!」

「うん。──おめでとうハリー」

 

 

リーマスは祝福をする前に、脳裏にソフィアの父親──セブルス・スネイプの事を考えた。もしや、ソフィアの父が誰だか知ってしまった上での相談だろうか?ならば、我が友(シリウス)は間違いなく別れろと言うだろう。

 

 

「ありがとう。──それで、聞きたいんだけど、僕とソフィアは……その、いとこでしょ?あまり、恋人だって言わない方がいいかな?」

 

 

ハリーは小声で囁き、心配そうに眉を下げた。

いとこ。──確かに、2人はいとこである。

 

 

「いとこだからなんだ?よくある事だ」

「マグル界では珍しいのかな?魔法界ではよくある事だけどね」

「そう……シリウスとリーマスは、僕とソフィアが恋人でも変に思わない?」

 

 

ハリーのいじらしさすら感じる可愛らしい不安に、大人になった2人は眩しそうに目を細める。いつの時も、若者の恋愛話というものは大人の胸に甘酸っぱく──時に苦く──響くものだ。

 

 

「ああ、勿論だ。ブラック家はいとこ同士の結婚が多いしな」

「そっか……その、ハーマイオニーは、いとこだし、僕とソフィアのお母さんは双子だから……。──あ、も、勿論、結婚とかそんな事はまだ全然わからないんだけど!──でも、そうなったとき、駄目なんじゃないかって言ってて、遺伝子が近いから」

 

 

ハリーは途中でさらに頬を赤く染め首と手をぶんぶんと振りながら早口で伝えた。しかし、最後の言葉はもごもごと小さく呟く。──それに気づいた時、2人もハーマイオニーのように拒絶するのかと思ったのだ。

 

 

「いで──なんだって?」

 

 

しかし、シリウスとリーマスは不思議そうな顔をして首を傾げた。ハリーは「遺伝子」と再度呟いたが、それでもピンとくるものが無かったのか2人は僅かに困惑を見せる。

 

 

「その、いでんし?とは何だい?」

「え?あー──たしか、体の情報?理科の授業で昔聞いたことがあるような…」

「へぇ?マグルにはそのいでんしっていうところに体重とか身長とか出身地でも書いてるのか?」

「……え?」

 

 

検討はずれな事をいうシリウスに、ハリーはようやく本当に2人は遺伝子というものが何なのか知らないのだとわかった。

 

──そうか、魔法界には理科なんてないんだ。遺伝子のことなんてわかっていないのかも。だって、たしか遺伝子はなんだか大きな機械で調べるはず。そんなの、魔法界にはないんだ。

 

実際、魔法族にとって遺伝子、という言葉を知っているものは少ない。半純血だとしても、子どもが魔法界で暮らすのならそんな──魔法族にとって──必要のない知識を無理に教える事はない。

体に針を刺し、細胞を取り、機械をつかい遺伝子情報を調べる。その事を知っているのはマグル生まれの者だけだ。

 

ハリーは魔法界ならば、ソフィアと自分との関係を受け入れられるのだと思うとホッとして笑った。──そうだ、ロンも何も言わなかったじゃないか。ロンは遺伝子なんて知らないんだ。なら、いいじゃないか、だって、僕とソフィアが暮らしていく世界はこの魔法界だ。

 

 

「──何でもない!誰も気にしないなら、うん、いいんだ」

「そうか?──まぁ、何か悩み事があればいつでも言いなさい、君よりは少し長く生きているし、昔はそれなりにモテたからな。女が好きなプレゼントでも教えようか?」

「いや、君は今も吸魂鬼にモテてるよパッドフット」

「あいつらしつこいんだよなぁ」

 

 

嫌そうに眉を寄せ、やれやれとばかりに大袈裟に首を振るシリウスを見て、リーマスとハリーは楽しげに笑う。

シリウスは楽しそうな2人を見て嬉しくなり、何度目かのクリスマス・ソングを大声で歌い、その歌詞を覚えてしまったハリーも、シリウスと一緒にシリウスに負けず大きな声で歌った。

 

 

 

クリスマス・イブには館は見違えるような華やかで煌びやかになり、くすんだシャンデリアには蜘蛛の巣の代わりに綺麗なヒイラギの花飾りと金銀のモールが掛かり、擦り切れたカーペットには魔法の雪が積もっていた。

館の至る所にソフィアが魔法をこっそりとかけたミニ雪だるまがぽてぽてと歩き周り、マンガンダスが手に入れた大きなクリスマスツリーには本物の妖精が飾りつけられ、ブラック家の家系図を覆い隠していた。ハウスエルフの生首の剥製さえ、サンタクロース帽子を被り白髭をつけていた。

 

 

クリスマスの朝、目を覚ましたソフィアはベッドの脚元に沢山のプレゼントを見つけると飛び起きて駆け寄り、嬉しそうに笑う。

ここは騎士団本部であり、まさかプレゼントが届くとは思っていなかったのだ。届けられているプレゼントは全て騎士団に関わりのある者からであり、きっと特別なフクロウが配達したのだろう。

 

 

「メリークリスマス、ソフィア!」

「メリークリスマス、ハーマイオニー!」

 

 

ハーマイオニーは自身の沢山のプレゼントを開けながらクリスマスの特別な挨拶を言う。

2人はすぐに用意していたプレゼントを交換し、ソフィアはハーマイオニーからの綺麗な手鏡、ハーマイオニーはソフィアからの魔法懐中時計を見て嬉しそうな歓声を上げた。

 

 

「これは──あ、ルイスとジャックと……」

 

 

ソフィアは心を躍らせ一人一人の顔を思い浮かべながら包みを開いていったが、一際大きく長細い包みを手に持つと、首を傾げた。

 

 

「──あっ、これ、父様からだわ!」

「えっ?──うわぁ、すごく大きいわね…」

「何かしら…?去年までは本だったのに…」

 

 

ソフィアはメッセージカードに『メリークリスマス』とだけ書かれた独特の細い文字を読み、すぐにセブルスの筆跡だと気付いたが中に何が入っているかは検討もつかなかった。ハーマイオニーはセブルス・スネイプが何を送ったのか気になり興味津々という表情を隠す事なく「開けてみて!」と促す。

 

 

「これ──父様ったら……」

「……こんなところでも張り合うのね」

 

 

現れたのは美しい箒だった。

それもただの箒ではなく、魔法界で最も高性能で高価な箒と名高い、炎の雷(ファイアボルト)である。

 

このタイミングで箒を送ってきたという事は、間違いなくマクゴナガルからソフィアがシーカーに選ばれた事を聞いたのだろう。娘に良い箒をプレゼントする親心は充分に理解できるが、それにしても高性能であり自分には持て余すのではないかと、ソフィアは箒の滑らかな柄を撫でて苦笑する。

 

セブルスはハリーが誰からファイアボルトを貰ったのかを知らないはずだ。少なくともハリーはそんな事一言も漏らした事はない。

だが、騎士団員として過ごす中で、その事を知ったのだろうか。

それとも、ただ単にクィディッチのシーカーになったソフィアに、ハリー・ポッターより劣っている箒を持たせられるわけがない、というセブルス・スネイプという男の意地なのかもしれない。

 

 

「……これを見てハリーはどう思うかしら」

「物凄く羨ましがるわね。その顔を見たあの人はものすごーーく、意地悪な顔をすると思うわ」

 

 

ハーマイオニーは呆れ混じりに答え、全く同じ事を思っていたソフィアは、とりあえず箒を元のように包み、そっとプレゼントの山の中に戻した。

勿論、嬉しいのは嬉しいが、それにして露骨なセブルスの思惑に、もろ手を上げて素直に喜べないのは仕方のない事だろう。

 

 

「あ、ハリーからは……まぁ!綺麗な栞だわ!」

「本当、なかなかのセンスね」

 

 

細い箱に入っていたのは銀細工で出来た縦長の窓の形をした栞だった。ガラス部分は本当に窓の外の光景を映していて、細長い木には雪がたわわに積もり、美しい青空が広がっている。

ソフィアは早速鞄の中から読んでいた本を取り出し、本の中にそっと挟む。

日の光を受けた栞は、白いページの上に薄らと青い色を映していた。

 

 

「さあ、そろそろ着替えないと」

「そうね。みんなもう起きてるかしら?」

 

 

ソフィアとハーマイオニーはプレゼントを全て開け終わった後、寝巻きから着替え階段を降りる。館の中で色々な人が互いに「メリークリスマス」と挨拶しているのが聞こえ、ソフィアはここにセブルスが居ないかと僅かに期待した。仕事でも、言付けのためでも良い、ここに来ると選択した事に後悔はないが、それでもやはりセブルスとルイスにクリスマスの日に会えないのは少し、寂しかった。

 

途中で男子部屋から出てきたハリーとロンと出会い、4人は口々に「メリークリスマス」と言い合う。

 

 

「ハリー、素敵な栞をありがとう!早速使うわね」

「うん、気に入ってもらえてよかった!あっ、腕時計をありがとう!」

 

 

ハリーは袖を捲り、深い焦茶色の皮ベルトが特徴的な腕時計を見せにっこりと笑う。

今までハリーがつけていたのは太ったダドリーが付けられなくなった時計のお下がりだった。気に入っていたわけではないが、時間を見るために必要であり仕方なく付けていたのだ。

新しい腕時計は昔からつけていたかのように手首に馴染み、耳に心地よい音で秒針が動いている。

 

 

「それ、サラマンダーの皮と海水晶を加工したガラスで作られているの。かなりの衝撃にも耐えるし、炎とか水の中にいれても壊れないのよ!」

「炎の中に入れる予定はないけど、大切に使うね」

 

 

水の中はともかく、炎の中に入れると腕時計が無事でも、腕は無事ではないだろうとハリーは考えたが、ソフィアはくすくすと悪戯っぽく笑い「あら、あるかもしれないわよ」と言った。

 

 

ハリーとソフィアはロンとハーマイオニーのいつものちょっとした言い合いを聞きながら──今回の話題はハーマイオニーがクリーチャーにパッチワークのキルトをプレゼントする、という事についてだった──厨房へ向かう。

地下の厨房にはモリーだけがキッチン近くに立っていて、「メリークリスマス」と挨拶をしたその声は涙声だった。

モリーに何があったのかを知らないソフィアとハーマイオニーは心配そうな目をしてすぐに駆け寄ろうとしたが、ロンとハリーが慌てて止め、声を抑えながら「パーシーの事で、色々あったんだ」と伝える。

モリーの近くで話すことができる内容ではなく、簡潔に伝えただけだったがパーシーが今どんな立場であり、騎士団の事をどう思っているのか知っているソフィアとハーマイオニーは納得し神妙に頷くと足を止めて厨房脇にある納戸──ここが、クリーチャーの寝床だ──へゆっくりと足を向けた。

 

 

「ここがクリーチャーの寝床?」

「そうよ。……あ、ノックをした方がいいと思うけど」

 

 

ハーマイオニーはプレゼントの包みをぎゅっと掴み、少し緊張しながら言った。

納戸に手をかけていたロンは、やれやれといったように肩をすくめたが、一応ハーマイオニーの言う通り拳で戸をコツコツと叩く。

しかし、返事は無く、物音も一切しなかった。

 

 

「上の階をこそこそ彷徨(うろつ)いてるんだろ。──うえっ!」

 

 

ロンは扉を開けたが、すぐに身を引くと嫌そうに顔をしかめる。

納戸の中は旧式のボイラーで殆ど埋まっていたが、パイプの下の隙間にクリーチャーの寝床があった。

寝床、というよりも動物の巣に近く、床にはぼろ布やかび臭い古毛布が寄せ集められ積み上げられている。その真ん中に小さな凹みがあり、巣主がどこで丸まり寝ているかを示していた。あちこちに腐ったパン屑やカビの生えたチーズのカケラが散乱し、1番奥の隅にはコインや小物がきらりと光っていた。

 

シリウスが捨てたものをクリーチャーはゴミ箱から拾い、こうしてこっそり集めているのだろう。中には夏休みにシリウスが捨てたブラック家の家族写真もあり、ハリーはその中に映るベラトリックス・レストレンジを見つけ胃の奥がざわりと不吉に蠢いたのを感じた。

 

 

「プレゼントをここに置いておくだけにするわ。後で見つけるでしょう。それでいいわ」

 

 

ハーマイオニーはそっと中央の凹みに包みを置き、静かに戸を閉めた。

 

 

「──そういえば」

 

 

納戸を閉めた時、ちょうどシリウスが食料庫から大きな七面鳥を抱えて現れ、納戸の前にいるソフィア達に声をかけた。

 

 

「近ごろ誰かクリーチャーを見たか?」

「ここに戻ってきた夜に見たきりだよ。シリウスが厨房から出ていけって、命令していたよ」

 

 

ハリーが記憶を辿りながら答え、シリウスは顔をしかめ「ああ、俺もあいつを見たのはあれが最後だ」と呟いた。

 

 

「まぁ、上の階の何処かに隠れているに違いない」

「出て行っちゃったって事はないよね?つまり、出ていけって言ったとき、この館から出て行け、という意味にとったとか」

「いや、ハウスエルフは衣服を貰わない限り出て行く事はできない。主人の家に縛り付けられているんだ」

「本当にそうしたければ、家を出る事はできるよ。ドビーがそうだった。3年前、僕に警告するためにマルフォイの家を離れたんだ。あとで自分を罰しなければならなかったけど

、とにかくやってのけたよ」

 

 

ハリーの反論に、シリウスは一瞬不安そうな顔をしたが、やがて口を開き「後であいつを探すさ。どうせ、どこか上の階で俺の母親の服にしがみついて泣いてるんだろう。まぁ、乾燥用戸棚に忍び込んで死んでしまったということもありえるが、そんなに期待しない方がいいな」と低く笑う。

 

 

ロンは笑ったが、ハーマイオニーは非難するような目でシリウスを睨んだ。

 

 

「見つかったら、どこに行っていたのか聞いてみたらどうかしら?もし上の階のどこかなら、秘密の隠れ場所があるのかもしれないでしょう?次、クリーチャーを探すときに手間が掛からなくて済むわよ」

「ああ、確かにそうだな」

 

 

シリウスは足で納戸をぐいと蹴り開け、身を屈めて中を覗き込み、その奥にある写真たてやブラック家の家紋が彫られた小物入れを見て面倒くさそうにため息をこぼす。

 

 

「──こういったものを隠してる可能性があるしな」

 

 

写真たての中のブラック家の面々が高慢ちきな顔でシリウスを睨み上げたが、シリウスは疎ましそうに眉を寄せ、すぐに強く戸を閉めた。

 

 

 






遺伝子などの情報を知らないのではないか?というのは私の妄想が多く含みます。

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