ソフィアとハーマイオニーが友情をしかと感じ、その手を取り合う少し前、ルイスは豪華絢爛なハロウィーンの飾り付けが施された大広間であたりを見渡し、ソフィアがいない事に気づくと不安げに眉を寄せる。今日のハロウィーンディナーを、ソフィアはとても楽しみにしていた。来ないなんて有り得ない、ルイスはそう思い、すぐにハリーの元へ向かった。
「ねえ、ハリー!ソフィア見なかった?」
「え?ソフィア?…あ、本当だ…どこ行ったんだろう…ごめん、知らないや」
「そっか…ありがとう」
ハリーなら知っているかと思ったが、ハリーも不思議そうに首を振りあたりを見ていた、この様子だと本当に知らないようで、ルイスは期待していた答えはもらえず肩を落とした。
「どこいったんだろう…」
不安げに表情を翳らせたままスリザリンの机へと向かった。少し図書室に寄っていて、遅れているだけなら良いんだけど、と一人で呟き、豪華な料理の数々を眺める。
だが、食事が開始されてもソフィアは現れることはなかった。
ルイスは扉からソフィアが現れないかと思い、料理には手をつけずじっと扉を見ていた。
すると勢いよく扉が開き、クィレルが全速力で大広間に駆け込んできた。生徒たちは何事かと振り返りクィレルを見つめる。クィレルの表情は恐怖で歪み、今にも気絶しそうなほど顔色は悪い。
足をもつれさせながらなんとかダンブルドアの席まで辿り着くと、表情を険しくしてクィレルを見つめるダンブルドアに、喘ぎ喘ぎ、必死に告げる。
「トロールが…地下室に…お知らせしなくてはと思って…!」
しん、と静まり返っていた大広間にその言葉が響く。
クィレルは何とかそれだけを言うと、その場で気絶してしまった。
生徒たちは恐怖から悲鳴をあげ、不安げに辺りを見渡す、今にもここにトロールが来るのでは無いかと皆身体を震わせていた。
ダンブルドアは大混乱し騒つく生徒たちの気をひくために杖の先から紫色の爆竹を数回爆発させ、重々しく呟く。
「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」
その言葉に監督生達は立ち上がりすぐに生徒たちを引率し、時には恐怖から泣いてしまった生徒を宥め寮へと向かう。
ルイスは表情を硬らせてスリザリン生の軍団の中からそっと抜け出した。
「ソフィア…!」
ソフィアはトロールが来た事を知らないだろう、何処に彼女が居るのかわからない、だが自分だけ安全な場所に避難することはどうしても出来なかった。
ルイスは必死に辺りを見渡し、何度も大声でソフィアの名前を呼んだ、まず図書室に向かったが、そこには誰も居ない、皆が特別なハロウィーンディナーを食べに大広間に集まっていたのだ、司書すらも、いなかった。
「ソフィア!!いたら返事をして!!」
しかし、自分の声がこだまし響くだけで、返事は無かった。
舌打ちをこぼし、すぐにまた廊下を走り回る、息は上がり、喉が炎を飲んだかのように痛んだ。
トロールは地下室にいる、なら地下に行って、トロールを食い止めるべきだろうか?僕に、出来るだろうか──いや、やるしか無い。
ルイスは杖を出し、そのまま地下へと向かった。
「──ルイス!?」
「ハリー?ロン!?どうして、ここに!?」
ルイスが階段を駆け降りた時、丁度ハリーとロンが階段を駆け上がっていた。3人はぶつかりそうになったが何とか止まる事が出来、お互いを驚いた目で見る。
「ハーマイオニーはトロールが来た事をしらないんだ!」
「ハーマイオニーも!?そんな…!ソフィアもいなくて!」
1人見つけるのも大変だと言うのに、探す相手が2人になった事にルイスは言葉を無くした。
ハリーは突然ハッとしたようにルイスの腕を掴み必死な声で叫んだ。
「…!もしかしたら、ハーマイオニーとソフィアは一緒にいるかもしれない!ハーマイオニーの居場所は知ってる!──こっちだ!」
駆け出したハリに続き、ロンとルイスは階段を駆け上がる。なぜ一緒に居るのか、それを聞いている暇は無さそうだった。
「──待って!足音がする!」
「パーシーだ!」
ルイスは小声で叫び、ロンが囁く。ハリーは慌てて大きな石像の後ろに2人を引っ張りこんだ。今監督生に見つかれば、2人を捜索する事が出来なくなってしまう。
三人はそっと石像の陰から様子を伺った、しかし、現れたのはロンが想像していたパーシーではなく、険しい表情をしたセブルス・スネイプだった。
「何してるんだろう、どうして他の先生と一緒に地下室に行かないんだろう」
「…たしかに…」
「知るもんか」
ハリーとルイスは呟いたが、ロンは小さく吐き捨てた。
セブルスの足音が遠ざかって行ったのを確認して、三人はそっと足音を立てずに廊下を走る。
「スネイプは四階に向かってるみたい」
「四階…?」
「待って、何か臭わないか?」
ハリーとルイスの言葉を制するようにロンが手を挙げた、2人は顔を見合わせ鼻をひくつかせる、たしかに、どこか鼻を突く酷い悪臭が漂って来ていた。そして、その直後低い唸り声と共に巨大な足と何かを引きずり歩く音が聞こえた。
ロンが震える手で廊下の向こう側を指差した。闇の向こうで何か巨大なものが蠢いている。ルイスは動けない2人を引っ張り物陰まで引き摺ると身を縮めて息を殺した。
引き摺る音と、悪臭は段々強くなってくる。ロンは叫び出しそうな口を自分の手で強く抑え、悲鳴を飲み込んだ。
巨大で醜いトロールが、月明かりに照らされ目の前を通過した。巨大な棍棒を引き摺り、ゆっくりと歩いている。
トロールは三人の少し離れた向かい側にある扉の前で立ち止まると中をじっと見た、長い耳をぴくつかせ、何かを聞き取ったのか、前屈みになると頭をぶつけながら中に入った。
「鍵穴に鍵がついたままだ、あいつを閉じ込められる」
「名案だ」
ロンの声は恐怖で震えていた。
だが3人は強張り緊張しながらも頷きあい、じりじりと扉に近づくと、最後は飛びつくようにして扉をつかみ、素早く閉めるとハリーが鍵をかけた。
「やった!」
「さあ、早く2人を探しに行こう!」
三人はすぐにもと来た廊下を走り出したが、突如甲高い恐怖に立ちすくんだような悲鳴が聞こえた。
「しまった!」
「女子用トイレだ!」
「ハーマイオニーだ!」
「待って…ソフィアもいるんじゃ無いの!?」
3人は顔を青ざめながら慌ててトロールを閉じ込めた場所へと向かう。
何故気が付かなかったんだ、今閉じ込めたこの場所は女子トイレだ。ハリーはとんでもない事をしてしまった後悔に気付き顔を歪める。
ルイスは1番初めに駆け出すと扉の鍵をあける余裕もなく、走った勢いをそのままに足で強く蹴りあげた。ばきりと扉は破壊されけたたましい音を立てて開かれた。