【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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295 尋問官親衛隊!

 

 

ダンブルドアが校長職を退き逃亡し、アンブリッジが校長に就任した。

 

その事実は一夜にしてホグワーツ中に広まった。生徒の中で全てを正しく知っているのは校長室にいて目撃していたハリーとマリエッタだけだったが、ダンブルドアが逃亡する時に闇祓いを2人に高等尋問官、魔法大臣であるファッジ、下級補佐官であるパーシーを一撃でやっつけたと言う話が驚くほど正確に伝わっていてハリーはかなり驚いていた。──尤も、その話は時間が経つにつれ尾鰭がついていたが。

 

 

ソフィアとロンとハーマイオニーは夜遅く寮に戻ってきたハリーから何があったか、誰が密告者だったのかを聞いた。まさか退学か、と最悪の事態を覚悟していたが、マリエッタは防衛組織があった事は伝えたが、今まで行われていた事は認めず、会合を作ったのは法令が出る前であることをダンブルドアが告げ、結果──ダンブルドアアーミーと名付けられた事を追求され、ダンブルドアは逃亡したのだ。

 

あの名前のせいで、ダンブルドアが逃亡しなければならなくなったと思うと発案者であるハーマイオニーはかなり落ち込み項垂れ、ソフィアも参加者が書かれた羊皮紙を毎回持ち帰るべきだったと悔やみ唇を強く噛んだ。

 

 

マリエッタはハーマイオニーがかけた呪いにより顔に大きく『密告者』と形作る酷い吹き出物が現れずっと医務室に泊まり込んでいたため、自然とハリーが皆に直体験の話をせがまれる事となった。──ハリーはダンブルドアの魔法により何もわからず気が付いたら彼は消えていたと皆に説明した。本当の事を伝えたのは、ソフィアとロンとハーマイオニーの3人だけであり、彼らにも絶対にこれは言わないでくれと強く頼んだのだ。

 

 

「ダンブルドアはすぐ戻ってくるさ。僕たちが二年生の時も、あいつらダンブルドアを長くは遠ざけておけなかったし。今度だってきっとそうさ」

 

 

薬草学からの帰り、ハリーの話を熱心に聞いた後でアーニーが自信たっぷりに言った。実際、そう思っている生徒は多いのは事実だ。──何故なら昨夜、アンブリッジは校長室に入ることができなかった。ホグワーツは彼女を校長だと認めていないのだと皆が囁き、ダンブルドアの復職の時は近いと確信していたのだ。

 

 

「どうやらあいつ、相当癇癪を起こしたらしい」

 

 

アーニーはアンブリッジが校長室から締め出されたところを想像しニヤリと笑った。

 

 

「ああ、あの人、きっと校長室に座る自分の姿を見てみたくてしょうがなかったんだわ」

 

 

玄関ホールに続く石段を上がりながら、ハーマイオニーが冷ややかな声で言う。アンブリッジの事を心から嫌っているハーマイオニーの口からは、かなりキツい言葉が溢れ出ていた。

 

 

「他の先生より、自分が偉いんだぞって。馬鹿な思い上がりの、権力に取り憑かれたババアの──」

「おーや、君、本気で最後まで言うつもりかい?グレンジャー?」

 

 

ドラコがクラッブとゴイルを従え、嘲笑いながら扉の影からするりと現れソフィア達の行く手を阻む。青白い顔が隠すつもりのない悪意で歪み、ニヤニヤと意地悪く笑っている。

その後ろには、ルイスが静かに控えていた。

 

 

「気の毒だが、グリフィンドールとハッフルパフから少し減点しないといけないねぇ」

「監督生同士は減点できないぞ、マルフォイ」

 

 

アーニーが即座に言ったが、ドラコは余裕の表情でせせら嗤う。

 

 

「監督生ならお互いに減点出来ないのは知っているよ。しかし、尋問官親衛隊なら──」

「尋問官親衛隊?」

 

 

ソフィアは聞き慣れぬ言葉を繰り返し、ハーマイオニー達も怪訝な顔をして眉を寄せる。

ドラコは「ああ、そうさ」と胸を逸らし監督生バッジのすぐ下に輝く『(アイ)』の銀バッチを指差した。

よく見ればドラコだけではなく、クラッブとゴイル、そしてルイスの胸にも同じバッジが光っている。

 

 

「魔法省を支持する、少数の選ばれた学生のグループでね。アンブリッジ先生直々の選り抜きだよ。──とにかく、尋問官親衛隊は減点する力を持ってるんだ。……そこでグレンジャー、新しい校長に対する無礼な態度で5点減点。マクミラン、僕に逆らったか5点、ポッター、お前が気に食わないから5点、ウィーズリー、シャツがはみ出てるから5点、ソフィア、化粧が派手すぎるから5点減点だ。──ああ、そうだ。忘れていた、おまえは穢れた血だグレンジャー、だから10点減点」

 

 

ドラコがそう言った瞬間ソフィアとルイスは同時に杖を抜き鋭く振るった。

 

 

「──っ!?」

 

 

ドラコの目の前で弾かれた魔法は1つではなく、その後も無言魔法を駆使しドラコへ攻撃魔法を繰り出すソフィアと、盾の魔法を使いドラコの前に立ち守るルイス。弾かれた魔法は床や壁に激突し、巻き込まれては敵わないとばかりに見守っていた生徒達は慌てて2人から距離を取った。

 

ハーマイオニーは生徒達の叫びを聞きつつ──火の玉が生徒たちの側をかすめていった──「駄目よ!」と叫んだが、大切な親友であるハーマイオニーを侮辱されたソフィアに彼女の声は届かない。

 

 

「ルイス、退きなさい!」

「君が止めるならね、ソフィア」

 

 

ドラコは目の前で起こる爆風に喉の奥で悲鳴を上げ、さらにその場から後ずさる。ハリー達もまたソフィアを止める事も出来ず跳ね返った魔法から自分の身を守るだけで精一杯だった。

 

ソフィアとルイスの力はほぼ同格であり、頭に血が上っているソフィアだったがルイスを傷つけたい訳ではない、ルイスもまたソフィアを傷つけるつもりはない。それがわかってるからこそソフィアは歯痒くて苛立ちを抑えないままに強く足を踏み出し叫んだ。

 

 

「ドラコ!あなた最低よ!その言葉を言うなんて、あなたには知性の欠片もないわ!悪口しか言えないなんて、ルイスに守られるなんて、本当にお子様ね!?」

「──何だと?」

「悔しいなら私に魔法をかけなさいよ!決闘をしなさいよ!ちまちま減点するだなんて、いやらしいわね!

私はもう、何も覚えていない子どもではないわ、その言葉は二度と、言わないでと言ったでしょう!服を蛇に変えられるだけでは足りなかったの?──ああ、あなたは私とハーマイオニーに比べて知能が足りないから覚えてないのも仕方がないかしら?もう一度だけ言ってあげるわ。ハーマイオニーを、私の大切な親友を穢れた血だなんて呼ばないで!」

 

 

ソフィアは苦い顔をするドラコに怒りを込めて叫んだ後、震える手を下ろしルイスを睨む。

 

 

「あなた、友達の教育はしっかりしないよ。あなたの品性まで疑われるわよ、ルイス」

「親友は教育するものじゃないよ。それにこれはドラコの趣味だからね」

 

 

ルイスは杖を下ろし、くるりと指先で弄びながら軽く答える。

それでも納得のいかないソフィアは何かを言おうと口を開いたが、猛攻撃が終わった瞬間を見逃さずハーマイオニーとハリーがソフィアの腕を掴み引っ張り止めた。

 

 

「駄目よソフィア!また減点される!」

「離してハリー!減点くらいなによ!その分加点されたらいいのよ!」

「駄目よソフィア、あんな奴のせいで減点されるなんて、馬鹿馬鹿しいわ。あなたの言う通りあの人は減点でしか私たちを攻撃出来ない小心者のケナガイタチだもの。──さあ、行くわよ!」

 

 

まだソフィアは言い足りなかったが、引きずられ──ロンとアーニーが後ろから懸命にソフィアの背を押した──寮の得点が記録されている砂時計の前を通った。昨日まではグリフィンドールとレイブンクローが首位争いをしていたが、今は見る間に石が飛び上がって上に戻り、下に溜まっていた量が減っていた。

 

 

「おいおい楽しい事してるなぁ」

「俺らも混ぜてくれたら良かったのに」

 

 

騒ぎを聞きつけすぐに大理石の階段を降りてきたフレッドとジョージが楽しげに言いながら怒れるソフィアの肩を代わる代わるぽんぽんと叩いた。

 

 

「もう!ドラコ!許せないわ!」

「今マルフォイが僕たちから殆ど30点減点したんだ。またハーマイオニーを侮辱してソフィアがめちゃくちゃ怒ってたとこさ」

 

 

グリフィンドールの砂時計から、また石が数個上に戻るのを見ながらロンが説明し、ハリーも憤慨しながら頷く。

砂時計の石が減っていないのはスリザリンだけであり、彼らは些細なことで難癖をつけ他寮の得点を引いているのだろう。間違いなく、その尋問官親衛隊はスリザリン生しかいないのだと、説明を受けなくてもハリー達は理解していた。

 

 

「ああ、モンタギューのやつ、休み時間に俺たちからも減点しようとしやがった」

「しようとした、ってどう言うことさ?」

「最後まで言い終わらなかったのさ。俺たちが二階の姿をくらます飾り棚に突っ込んでやったんでね」

 

 

ニヤリと笑いながらフレッドとジョージが説明したが、ハーマイオニーはそんな事をすれば後で大幅減点──だけでは済まされず、罰則になると心配したが2人は全く気にしていなかった。

 

 

「とにかくだ……俺たちは、問題に巻き込まれることなどもう気にしない、と決めた」

「気にした事あるの?」

「そりゃ、あるさ。一度も退学になってないだろ?」

「俺たちは常に一線を守った」

「時にはつま先くらい出ていたかもしれないが」

「だけど、常に本当の大混乱を起こす手前で踏みとどまったのだ」

 

 

フレッドとジョージは愉快で少しスリリングな悪戯をする事はよくあるが、かと言って本当の意味で生徒達に危害を加え困らせたことはない。スリザリン生への悪戯でやり過ぎなかったかと聞かれれば嘘にはなるかもしれないが、それも彼らなりの正義故であり、怪我をさせた事は無かった。

 

しかし今、アンブリッジが校長になり、秩序が守られず今後もスリザリン生以外が不当な扱いを受けなんの楽しみもないホグワーツで過ごす──それは、彼らにとっての()()を超えさせるだろう。

 

 

「だけど、今は?」

「そう、今は──」

「ダンブルドアもいなくなったし」

「ちょっとした大混乱こそ」

「まさに、親愛なる新校長に相応しい」

「駄目よ!ほんとに、駄目!あの人たちあなた達を追い出す口実なら大喜びだわ!」

 

 

ハーマイオニーが囁き必死に忠告したが、彼らはからからと明るく笑った。

 

 

「わかってないなぁハーマイオニー。俺たちはもうここにいられるかどうかなんて気にしないんだ。今すぐにでも出ていきたいところだけど、ダンブルドアのためにまず俺たちの役目を果たす決意なんでね。──そこで、とにかく」

「第一幕が間も無く始まる。悪い事は言わないから、昼食を食べに大広間に入った方がいいぜ。そうすりゃ先生方もお前達は無関係だとわかるからな」

 

 

ソフィアはフレッドとジョージの何の迷いもない目を見て、本気で彼らがこのホグワーツから出て行くつもりなのだと悟った。

ホグワーツに明るく楽しい太陽のような2人が居なくなる。それを考えるととても寂しい気がしたが、確かに今のホグワーツは、彼らには狭すぎるのだろう。

 

 

「楽しみにしているわ。あなた達は何よりも自由であるべきだもの!」

 

 

ソフィアはにっこりと笑い、その勇姿を讃えるかのようにフレッドとジョージに抱きつき親愛を込めて頬にキスを送るフリをし口の中で舌を鳴らした。2人は悪戯っぽく笑うと、ジョージはソフィアの頭を優しく撫で、フレッドは背を叩いて大広間の方へ押し出した。

ハッフルパフ生であるアーニーは大広間に入ることはなく「変身術の宿題が終わってないから」と誰に言うわけでもなく呟くと今も目の前で寮の点数が引かれていくのを困惑して見ながらふらふらとハッフルパフ寮へ向かってしまった。

 

ソフィアはまだドラコに対してふつふつと滾るような怒りがあったが、取り敢えずフレッドとジョージの助言通りに昼食を取ろうと大広間の扉を開ける。

 

しかし、ソフィア達が大広間に入る前にその先で待ち構えていたフィルチがハリーの肩を叩いた。

 

 

「ポッター、校長がお前に会いたいとおっしゃる」

「僕がやったんじゃない」

 

 

ハリーはフレッドとジョージが言っていた企みの事を考えていたせいで、つい余計な事を口走ってしまった。途端にフィルチが意地悪く喉の奥を震わせて笑い「後ろめたいんだな?え?」と呟く。

 

 

「ついてこい」

 

 

ハリーは行きたく無かったし特に呼び出される理由もわからなかった。まさか昨夜のダンブルドアが逃亡した事をまた聞くつもりだろうか?漠然とした不安からハリーはソフィアとロンとハーマイオニーを振り返ったが、彼らもまた不安げな顔でハリーとフィルチを見比べていた。

 

 

「──…わかりました」

 

 

アンブリッジの命令なら、きっとここで拒否したとして何か理由をつけて呼び出すに決まっている。そう考えたハリーは渋々頷き、ニタニタと笑い先に歩くフィルチの後を追った。

 

 

「何なんだろう?」

「さあ……昨日の事かしらね…」

「後で聞きましょう。──お昼ご飯を食べましょう!怒ったらお腹すいちゃったわ!」

 

 

ソフィアは大股でグリフィンドールの机まで向かうと荒々しく座り、オートミールが入ったボウルを引き寄せる。

ロンのハーマイオニーはちらりと顔を見合わせ少しため息をつくと、すぐにソフィアの隣に座りそれぞれ好物が入った大皿を引き寄せ自分の皿に盛った。

 

 

「それにしても……フレッドとジョージ、大丈夫かしら…」

 

 

ハーマイオニーはこの大広間に入る事なくどこかへ行ってしまった彼らの事を考え心配そうに呟く。ロンはソーセージに齧り付きながら、少し複雑そうな顔で笑った。

 

 

「大丈夫さ。──まぁ、やることによっては…ママはブチ切れて2人は今度こそ花壇の花になるかもな」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは衝撃を受けた顔になったが、何も言わずポテトパイをもそもそと食べた。

 

 

ソフィアとロンとハーマイオニーはフレッドとジョージがいつ何を行うのか詳しくは分からなかったため、あまりウロウロするのは賢くは無いだろうと考え、腹が満たされても大広間から出ることは無く、ちびちびとかぼちゃジュースを飲んでいた。

 

 

その時は、何の前触れもなく突然起こった。

 

 

──ドンッ!

 

 

大広間の壁や床が揺れ、机に乗っていた皿がガチャガチャと音を立てて落下した。いや、皿だけでは無く衝撃で驚いた生徒の何人かは椅子からひっくり返ってしまっただろう。

「うわっ!?」「きゃああっ!」「な、なんだ!?」──その叫び声は一人ではなく、ほぼ大広間にいた生徒全員が口にしていた。城が揺れたのでは無いかと思うほどの衝撃が終わった後には絶えず破裂音が響き、ソフィア達は顔を見合わせてその音のする方へ駆け出した。

 

 

騒ぎを見ようと集まった生徒たちで溢れる玄関ホール。その先の階段を全身が緑と金色の火花で出来たドラゴンが何匹も行ったり来たりし、その度に火の粉を撒き散らし大きな音を立て破裂していた。

 

数えきれぬほどの直径1.5メートルはありそうな巨大なショッキングピンクのネズミ花火が城中を破壊してしまいそうなほどに激しく飛び回り、ロケット花火がキラキラ輝く銀色の星を長々と噴射しながら壁に当たって跳ね返っている。線香花火は勝手にアンブリッジへの悪態を文字で描き、爆竹が地雷のように爆発している。

あまりの光景に唖然としたのは一瞬で、後は巻き込まれてはたまらないと生徒たちはきゃあきゃあ叫びながら逃げ惑った。

 

不思議と花火は燃え尽きて消える事なく爆破し続け、ソフィア達は頭を低くし火の粉を払いながら安全な場所へ駆け出した。

 

 

「なんてこった!すっげえ!」

「ふふっ!最高ね!」

「凄いわね、どんな魔法なのかしら……あ、見て、アンブリッジよ──まぁ!いい気味だわ!」

 

 

3人は声を低くして囁き、必死に場を収集しようとしているがちっとも上手くいっていないアンブリッジを見てなるべく声を殺して笑った。

 

 

 

花火は燃え続け、その午後学校中に広がった。相当な被害を引き起こしたが、アンブリッジ以外の先生方はあまり気にしていないようだった。

教師達は自分の教室を跳ね回るドラゴンを見つけると「校長先生を呼んでくるように」と告げ、城中を駆け回り必死にドラゴンやネズミ花火などの処理にあたるアンブリッジを呼びつけた。

「花火を消失させていい権限が自分にあるかわからないから」とどの教師も口を揃えてそう言い、本来は簡単に場を収める事ができる彼らは面白そうな目で城中を舞い踊る花火と、よれよれになり駆け回るアンブリッジを見ていたのだ。

 

 

その夜のグリフィンドールの談話室で、フレッドとジョージはまさしく英雄だった。今のアンブリッジに対して不満に思わない生徒など、スリザリン生の一部のみだろう。アンブリッジが必死の表情をしているのがなんとも愉快でならなかったのだ。

 

こんなことをするのは彼らしかいない、皆がそう思い興奮し「スカッとしたよ!」「すごいや!」と叫ぶ。

違反に厳しいハーマイオニーですら、「素晴らしい花火だったわ!」と彼らを賞賛したほどだ。

 

フレッドとジョージは沢山の賞賛を受けにっこりと笑うと、寮生に向けてあの花火の説明をし、買いたいと手を上げる者の注文を受け始めた。

 

 

「本当に凄かったわね!」

「ええ、また見たいわ!」

 

 

ソフィアとハーマイオニーはフレッドとジョージに賞賛を言った後、ハリーとロンが座る席へ向かった。

自然とソフィアはハリーの隣に座り、ハーマイオニーはロンの隣に座る。

彼らはこんな素晴らしい気分の時に、宿題をやりたくなんてない、鞄の中に入っている宿題が勝手に片付いてくれないだろうか、とでも思っているような顔で鞄を睨み付けていた。

 

 

「まあ、今晩は休みにしたら?だって、金曜日からイースター休暇だし、そしたら時間はたっぷりあるわ」

 

 

ハーマイオニーは鞄の中から甘いヌガーを取り出しソフィア達に分けながら朗らかに言った。ハーマイオニーが宿題を後回しにするなんて、そんなことその5年間一度も無く、ロンは信じ難い目でハーマイオニーを見て「気分でも悪いのか?」と呟く。

 

 

「聞かれたから言うけど。なんていうか……今の気分はちょっと……反抗的なの」

 

 

ハーマイオニーは嬉しそうに茶目っ気たっぷりに言うと、ヌガーを口の中に転がしてニコリと笑う。

 

 

「まぁ!良いわね。私も今日はやめておくわ。記憶が戻って、ちょっと頭の中を整理したいし……」

 

 

ニコニコと笑いながらハーマイオニーから貰ったヌガーを食べたソフィアは、腕を上に伸ばし大きく伸びをする。

 

記憶が全て戻ったのは昨夜の事だ。あれからDAの事が密告されダンブルドアが逃亡しフレッドとジョージが花火を爆発させ──色々あり、記憶の事を考える暇が無かったのだ。

 

 

「ちょっと私に質問してほしいの。今までの5年間のことで…記憶に抜けが無いかどうか、調べないと後々面倒な事になりそうだわ」

「ああ、そうね。えーと……じゃあ──」

 

 

それから眠くなるまで、ハリーとロンとハーマイオニーはソフィアに今までのことを質問した。少し考え込む事はあったが、全てに答える事ができ、おそらく記憶の抜けは無いだろうとハーマイオニーは判断する。

たまに思い出せないささやかな事はあったが、5年間の日々を全て覚えることなど不可能だ。──むしろ、ソフィアより記憶を失っていないはずのロンとハリーの方が覚えていない事があり、ハーマイオニーが呆れたほどだった。

 

 

「そういえば、閉心術はどうするの?ソフィアは一旦止まっていたけど…また明日あるはずよね?」

 

 

ハーマイオニーは何気なく聞いたが、ハリーはそのことをすっかり忘れていたため嫌そうにしかめ面をしてしまった。

 

 

「うーん……明日、時間に行って聞いてみるわ。必要なければ、多分追い返されるだけでしょうし」

「それがいいわね。──あ、もうこんな時間だわ、そろそろ寝ましょうか」

 

 

ハーマイオニーはふと時計を見てそう言うと机の上に散らばっていたゴミに向かって杖を振り、暖炉の中へと投げ捨てた。ぼすん、と小さな音を立ててゴミは燃え尽き、一度大きくなった炎はまたいつもと変わらずゆらゆらと揺れ始める。

 

 

「おやすみハリー。心を静かにするの、頑張ってね」

「うーん…頑張るよ。おやすみソフィア」

 

 

ソフィアはハリーの頬にキスを落とし、ハリーも軽くキスを送った。

ロンとハーマイオニーはにやにやと笑っていたが、ハリーの心は他に得られようのない幸福感と充実感でいっぱいであり、ちっとも気にならなかった。

 

 

 

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