【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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299 気付いた違和感!

 

 

フレッドとジョージの自由への逃走はそれから何日も繰り返し語られた。

ソフィアは間違いなくこの話が生徒達の中で伝えられていく伝説になるだろうと考えた。

彼らがいなくなった後、その勇姿を引き継いだ何人もの生徒が2人から購入していたずる休みスナックボックスを使いアンブリッジの授業をボイコットした。

 

アンブリッジに反発したのは生徒だけではない。

フレッドの別れの言葉を胸に深く刻んだ悪戯の達人であるピーブズは狂ったように笑い学校中を飛び回り様々なものを壊しアンブリッジを嘲笑った。

アンブリッジにわざわざ手を貸す教職員はフィルチ以外誰もいなかった。それどころか、クリスタルのシャンデリアを外そうと躍起になっているピーブズに気付きながらマクゴナガルは無視し──「反対に回せば外れますよ」と口を動かさず助言していたのだ。

 

 

ホグワーツ中が異様な熱気に包まれる中、ハリーは少しばかり気の晴れる思いでソフィアと2人きりで廊下を歩いていた。

ソフィアには、シリウスから何故ジェームズがあれほどセブルスを虐めていたか、そしてどうやってリリーと結婚するにまで至ったのかを話していた。ソフィアは特に反論する事もなく、闇に深かった、という言葉を受け入れた。──実際、そうだったのだろう。セブルスに……父に何があったのかはわからないが、家にある書籍は中々外では読めないようなものも多く、彼は事実死喰い人になっていた。

何故死喰い人になったのか、初めからダンブルドアのスパイだったのか、それとも途中でヴォルデモートを裏切ったのかはわからない。ソフィアは、どうしてもその事を聞くことができなかった。

だが、だからといって虐めが正当化されるわけでもなく──たとえ互いに憎しみ合い呪いあっていたとしても──ハリーもそこはかなり引っ掛かっていたが、虐めた側にこれ以上話を聞いても何も変わらないだろう。

とりあえず、その後7年生の頃にはジェームズは落ち着きだし、リリーと付き合いだしたと聞いてハリーは無理矢理では無かったことに安堵しホッと胸を撫で下ろしたのだ。

 

 

「後は、この事をスネイプ先生に知られないようにしなきゃならないわね」

「……バレたら僕たちも箒に乗って逃亡する?」

 

 

ハリーが小声で冗談半分に言う。ソフィアはくすりと笑い「ファイアボルト2本の逃避行は、圧巻ね」と楽しげな声を上げた。

 

楽しげな会話もそこそこに暗い地下室へと向かう。たとえ学校中がフレッドとジョージに触発されていても閉心術の授業は平常通り行われ、ハリーはセブルスの研究室の扉の前で重々しいため息を一つ吐いた。

 

 

 

その日の閉心術の訓練で、ハリーはセブルスに未だにヴォルデモートの侵入を許している事に苦言と嫌味を言われたが、見られるわけにいかない記憶は、なんとか見られずに済んだ。

アンブリッジの部屋に侵入するところまでは見られてしまったが、それについてセブルスは特にハリーを責め立てる事は無かった。間違いなく彼も、アンブリッジに苦い思いをしているのだ。

ハリーも全くセブルスに対して無防備だったわけではなく、何度か侵入を塞ぐことに成功しており、少しずつだが進歩しているといえるだろう。

 

一方ソフィアも回数を重ねるにつれ閉心術の感覚を掴めるようになってきていた。勿論完璧とは言い切れず、いくつもの場面を見られてしまったが開心術により忘れていた場面を見る事が出来たのは無駄では無かったと言えるだろう。

 

ソフィアは、今年のクリスマス休暇で騎士団本部から帰る時の場面を見ていた。

そういえばその時にハリーはシリウスから何かを受け取っていた。閉心術で辛い事があればこれを使い知らせてほしい、と言っていた。それが何なのかわからないが、あれを使えばシリウスと問題なく話すことができたのでは無いか──と、ソフィアは思った。

しかし、もうシリウスと話す事はないだろう。ハリーはとりあえず落ち着いているし、次に会うのは夏季休暇だ。

 

 

「だんだん、コツを掴めてきたかも」

 

 

嬉しそうなハリーの声を聞き、ソフィアはハリーが危険を冒しシリウスと話したことは無駄では無かったのだと確信した。あのような事があり、心が乱されたままではきっと今回の閉心術でハリーはセブルスに秘密にしなければならない事を見られていた事だろう。

 

 

「でも、まだあの──ヴォ──ルデモートの事は、夢で見るんでしょう?」

 

 

ソフィアは少しヴォルデモート、と言う時に言葉を止めぶるりと震える。どうしてもソフィアはその言葉に嫌悪と恐怖を感じてしまうのだ。

 

 

「うん、まあね……最近はずっと神秘部の廊下なんだ。部屋を開けて、天井まである棚に、丸い──これくらいの──白い玉が数えきれないくらいあって、ヴォルデモートは多分、その中のどれかを欲しがってる」

「丸い玉……」

 

 

ソフィアはハリーが「これくらい」と言い手で丸い形を作るのを見て真剣な目をした。神秘部は魔法省の中でも秘密の多い部署であり、一般人に公開される事は勿論無い。

 

 

「……前までは扉の前だったのに…少しずつ、進んでるのね」

「う──ん。そうだね、多分、もうすぐそこなんだと思う。でも、ヴォルデモートは自分ではそれを取ることが出来ないって言ってた」

「決められた人しか取る事が出来ないのかしら?……ならそれを知ってるのになぜヴォル、デモート本人が神秘部に来るのかしら……人に発見される危険を冒して」

「え?…あ、そうだね」

 

 

ハリーはようやくその疑問に気付き足を止めた。たしかに、初めの頃はヴォルデモートが蛇に乗り移り神秘部に来ていた。

外で神秘部侵入に失敗した部下を叱責する様子を見たこともあった。いつからだろうか、ヴォルデモート本人が神秘部に向かい始めたのは。

ハリーは困惑してソフィアを見つめ、ソフィアも今まさに気づいた違和感に硬い表情をしてハリーを見返す。

 

 

「スネイプ先生は、ヴォ…ルデモートがハリーとの奇妙な絆に気付いたって言ってたわよね。あのアーサーさんの一件で……自分の見ているものが、ハリーに伝わっているって」

「うん、だから僕は閉心術を学ばなきゃいけないんだよね。僕がヴォルデモートの感情や思考に入り込む事ができるから、きっと逆も可能だか──ら──」

 

 

ハリーはそこまで言って息を飲み言葉を閉ざした。

そうだ、思い出したのだ。

あの日、ヴォルデモートが自分の中に別の存在があると気付いた日から、夢の内容が一部変化している。あの時までは神秘部にいたのは、蛇や別の死喰い人であり、ヴォルデモートは離れた安全な場所からそれを聞いていた。だが、その日からまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「もしかして、わざと見せられてる?」

「……どれくらいの頻度で夢を見るの?」

「えっと……週に一回は、かならず」

「どう考えてもおかしいわ。魔法省がそれだけの侵入を許すなんて……」

「でも何のために……神秘部にある武器の場所を僕に見せてるんだろう。もう何度も見るからどこの扉を通れば良いかもわかって──まさか」

 

 

ハリーは今思いついた事はあまりにも突拍子がない事だと思った。

 

まさか、ヴォルデモートがわざわざ夢を見せているのは、自分にその武器を持ってこさせるためなのだろうか?

実際、ハリーには神秘部に行けば迷う事なくその白い球を──ヴォルデモートがなによりも手に入れたがっているものを入手する事が出来る。行き道は、完璧に頭の中に入っている。後の問題は無数に陳列する玉の、どの玉が問題の武器かだ。

 

 

「ヴォルデモートは……僕に取りに行かせたがっている?──で、でも、僕はここにいる、神秘部なんて行けるわけがないし、ヴォルデモートでも取れないものなのに…」

「そうよね……。……今後、夢で何かを使って誘き出すつもりかもしれないわ。注意しなければならないわね」

 

 

ハリーは困惑しながらも頷いた。

信じられない馬鹿馬鹿しい話だと片付けるには、道筋が通っている。ソフィアの言うようにヴォルデモート本人が何度も魔法省にある神秘部を出入りしているとは考え難い。それが全て何ヶ月もかけたヴォルデモートの企みだった場合、この夢を見続ける事はたしかに危険だ。ダンブルドアがあれ程強く閉心術を続けるようにと言ったのも、頷ける。

 

 

「もし、夢が変わったら教えてね」

「うん、必ず」

 

 

ハリーは神妙な顔で頷くと、ソフィアと共に深く考え込みながらグリフィンドール寮へと戻った。

 

 

 

次の日の呪文学の授業中、ティーカップに足を生やし机の端から端まで移動させる練習をしている時、話題はフレッドとジョージがどうやってダイアゴン横丁に新店舗を構える事が出来たのか、という話になり、ついにハリーはソフィアとハーマイオニーとロンに去年の三校対抗試合で優勝した時の賞金を2人に譲ったのだと伝えた。

これ以上隠す必要はなく、むしろ早めに伝えなければ彼らの母のモリーはマンダンガスが盗品を売るように彼らを説得したのだとか、何かとんでもない事を思いつきかねなかったのだ。

ロンとソフィアは驚きつつも喜び、ハーマイオニーは少しムッとしていたが、賞金の使い道はハリーの自由であり、何も言わなかった。

 

 

「そうだ、昨日ソフィアと話していて気付いたんだけど──」

 

 

がやがやと煩い呪文学では秘密の話をするに好都合であり、ハリーは話題を変えるために昨日気付いた事をロンとハーマイオニーに話した。

ロンは蒼白な顔で唖然としていたが、ハーマイオニーは真剣な顔で何やら考え込み、「あり得るわ」と頷く。

 

 

「たしかに。何で今まで気が付かなかったのかしら。頻繁にあの人が神秘部に来るなんて、おかしいわ」

「そうよね?だってあの人は世間ではお尋ね者だもの、見つかるかもしれない危険を何度も冒すわけないわ。だって、本人にその武器を取れないって事は何ヶ月も前からわかってるんだもの」

「やっぱり、そうだよね。──あの白い玉、なんなんだろう…」

「何にせよ、おい、ハリー。もう見ない方がいいと思う」

 

 

ロンは恐々としながら呟き、ヒョロヒョロとした足が生えたカップがひっくり返っているのを杖先で突いた。

 

 

「閉心術の練習はどうなの?」

「うーん……たまに防衛出来てるけど、夢は見るから……まだ足りないんだろうな」

「そう……なんにせよ、夢の内容には注意しなければならないわね」

 

 

ハーマイオニーは杖を振るい、ハリーのカップが脱走し机から落下して割れてしまったのを元通りにしながら言った。

 

 

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