【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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謎のプリンス
307 2人きり!


 

 

夏休みが始まってからソフィアはルイスと2人きりの生活を送っていた。

セブルスは任務のため一度も家に帰ることはなかった。

フクロウ便も第三者に見られる可能性があるとしてジャックの両面鏡を使い、夏休みの初日に来年度が始まったホグワーツでしか会えない事を伝えられていたのだ。

 

 

「……父様、大丈夫かしら…」

 

 

ソフィアは不安げな声で呟き、何度目かわからない物憂げなため息を吐く。

リビングのソファに座り、本を読んでいたルイスは顔を上げ自分の膝の上に乗っているティティを撫でながら眉を下げた。

 

 

「きっと大丈夫だよ。ジャックもいるし……今まで大丈夫だったんだ」

「……そうよね」

 

 

ルイスの言葉は楽観的なものではなく、願望が含まれている切なるものだった。この休暇中、父は昔住んでた家で過ごすという。

死喰い人が訪れる可能性があるため絶対に近付いてはならぬ、もちろん手紙も送るなと散々忠告されたソフィアとルイスは流石に言いつけを破ることなく──何度も暖炉を見ていたが──ホグズミードにある新居で過ごした。

 

 

「僕、この後街に行くけど何か欲しいのとかある?」

「うーん……特にないわ」

「じゃあお菓子だけ買ってくるね。──このペースだと後二日も持たなさそうだし」

「まぁ、そうね」

 

 

食料品はまだ余裕があり、新年度の教科書リストが書かれたホグワーツの手紙が届くには早い。とくに欲しいものもなかったが確かに嗜好品のお菓子は無くなりそうだ、とソフィアは肩をすくめながら机の上に乗っている七色チョコチップクッキーを摘んだ。

 

 

──ソフィアとルイスがセブルスの様子を気にしている頃、遠く離れたスピナーズ・エンドにある家には予期せぬ来訪者が2名セブルスの元を訪れ、あまり広くはないその家に合計5人集まり深刻な密会と破る事のできない誓いを結んでいたが、ソフィアとルイスはそんな事知る由もなかった。 

 

 

 

 

 

コンコン、と窓を叩かれる後に2人は顔を上げ、すぐにソフィアが窓開けた。ルイスのペットであり、フクロウ便ならぬカラス便であるシェイドが2人の友人達からの手紙を届けに来たのだ。

 

 

「ご苦労様、シェイド」

「クー」

 

 

シェイドはソフィアに3通の手紙と、ルイスに1通の手紙を渡すと部屋の隅にある止まり木に降りて大きな羽を広げのんびりと水入れを突いた。

 

 

「ハリーとロンとハーマイオニーからだわ。──えぇっと──ハーマイオニーもロンも家に遊びに来てっていう内容で……ハリーは──」

 

 

ソフィアは嬉しそうにハーマイオニーとロンの手紙を読んでいたが、ハリーからの手紙に差し掛かると頬を赤く染めた。

 

 

「ラブレターでも届いたの?」

 

 

ルイスはソフィアの表情を見てにやにやと笑いからかい、ソフィアは「もう!からかわないでよ!」と少し怒りながらも否定はしなかった。

ルイスの元に届いた恋人であるヴェロニカの手紙も、愛をしたためた手紙であり、ルイスは愛おしさと幸せを噛み締めるようにヴェロニカの細く丁寧な筆跡を指先で撫でた。

 

 

「僕、何日か泊まるかも」

「えっ……でも、それは──」

 

 

流石に保護者の断りもなく外泊なんて危険すぎないかとソフィアは眉を寄せた。しかしルイスは全く気にせず「ヴェロニカの家に招待されたんだ」と嬉しそうに手紙を振る。

 

 

「イギリスじゃないし、死喰い人も来ないよ。それに、僕はソフィアと違って休暇中しか会えないしね」

「うーん……父様には無断で行くのよね?」

「そうなるね。だって連絡する術がないから」

「……でも…」

「ホグズミードまで迎えに来てくれるし、大丈夫だよ」

「……、……無理しないでね」

「うん。僕、返事を書いてくるよ」

 

 

遠距離恋愛を続けるルイスとヴェロニカを応援したい気持ちも勿論ある。いくらヴォルデモートの危険が及びにくいだろう外国だとしても不安が完全に無いわけではないが、頭ごなしに否定することは出来なかった。

 

ソフィアは嬉しそうなルイスの背中を見送り、広いソファに寝転び戸棚の上にある家族写真を見上げた。幼い自分とルイスがセブルスの腕に抱かれ、母の足元には幼い兄が引っ付きにこりと笑っている。

数少ない家族写真を見て、ソフィアは物憂げなため息を吐いた。

 

 

「きゅー…」

 

 

ソフィアの不安な気持ちを読み取ったティティは悲しげに尻尾と耳を垂らしぽてぽてとソフィアに近づく。ソフィアが自分の腹の上をぽんぽんと叩けば、ティティはぴょんと飛び乗り黒々とした丸い目でソフィアを覗き込んだ。

 

 

「はぁーあ。こんな広い家に1人だなんて、寂しすぎるわ」

「きゅ?」

 

 

ソフィアは呟きながらティティを撫でる。

小首を傾げたティティはソフィアの目をじっと見つめるとぶるりと身震いし、ぽん、と軽い音を上げ姿を変化させた。

 

体の上に感じていた重さがさらに強くなり、ソフィアは自分を組み敷くようにして現れた白いハリーを見て驚いたように目を見開き、本人だとは違うとわかっていてもあまりの近さに頬を赤らめた。

 

 

「──ティティ!もう──」

「ソフィア、シーリングワックス持ってな──何してるの?」

 

 

手紙を封蝋するためのシーリングワックスが切れてしまいソフィアに借りようとリビングに戻ってきたルイスは、目の前の光景に冷ややかな目を向けた。

まるで自分が望んでハリーを出現させたと思われてしまい、ソフィアは慌てて「違うの!ティティが勝手に変身したの!」と弁解し、すぐにハリーが消えるように願った。

 

ソフィアの上に乗っていた白いハリーは不思議そうにすると、もう一度体を震わせ──ようやく元の姿に戻ってくれるのかと安心したが、今度は白いハーマイオニーへと変身し、ソフィアの頬に擦り寄った。

 

 

「……まぁ、いいわ」

「きゅー」

 

 

自分に甘えるように頬をぴたりとくっつけるハーマイオニーに、ソフィアはまんざらでもないような顔をして白くふわふわとした髪を撫でた。

 

 

「新しいのは、多分そっちの棚の中に予備があったはずよ」

「ありがとう。──僕がいないからって、ティティを使って変なことをしないようにね」

「だから、これは事故なのよ!」

 

 

必死になってソフィアは説明したが、ルイスは「へぇー?」とあまり信じてなさそうな声を上げた。

 

 

「私、多分また夏休み後半は別の場所で過ごすと思うの。1人で大丈夫?この家には沢山の護り魔法がかかってるし、侵入者避けもあるけど……」

「大丈夫だよ、心配しないで」

 

 

ルイスは棚の中を探り、新しいシーリングワックスを見つけ出すとにっこりと笑った。

彼は不死鳥の騎士団に護られる立場では無い。──いや、正しく言うのならセブルスとジャックは何としてでもルイスを護るだろうが、沢山の大人が居るあの本部では護られないのだ。

ヴォルデモートが復活したと世間に知られるようになった今、未成年の子どもが1人で何日も過ごすのは避けなければならないが、残念ながら保護者の2人はルイスの側にいる事でその関係を疑われ、余計な危険に巻き込んでしまう可能性があるのだった。

 

 

「──よし、これで大丈夫。シェイド、帰ってきたばかりだけど頼んでもいいかな?」

 

 

封蝋した手紙をシェイドに渡せば、シェイドは大きく翼を広げ嘴にそっと手紙を咥えた。

シェイドの体を優しくルイスが撫でれば、シェイドは嬉しそうに目を細めゆっくりと羽ばたき窓の外の世界へと飛んでいった。

 

 

「じゃあ、僕買い物してくるね」

「ええ、気をつけて」

 

 

空の真上に太陽が昇っている昼間だとしても油断は出来ない。

ルイスは杖をポケットに差し込み、未だハーマイオニーの姿をしているティティに手招きをした。

 

 

「ティティ、おいで。外に出かけよう」

「きゅ!」

 

 

ハーマイオニーは──ティティは嬉しそうに鳴くとすぐにソフィアの上から飛び退き、ルイスの元へ向かうと体を震わせ真っ白な髪を持つ大人の男性へと姿を変えた。

扉近くのハンガーラックにかかっていた大人用のローブを慣れた手つきで羽織り、すっぽりとフードを被ると「準備オッケー!」と言うように笑う。

 

今、昼間のホグズミードであっても子ども1人で外出していると大人たちに注意され、保護者が迎えにくるまで──護るために──拘束されてしまう。一度2人は街に買い物に出かけた時に数時間拘束され、たまたま魔法省にいたジャックに連絡が行き迎えに来てもらった事があったのだ。ジャックの手が空いていたのは幸運だっただけであり、この後同じようできるとは限らないと知った2人は、ティティをたまたま街で見かけた特徴の少ない大人に変身させ、付き添わせていたのだ。

 

 

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 

 

ルイスは髪の白い大人になったティティと共にホグズミード村にある大メイン通りへと向かった。

 

 

「──ティティ。好きに村を散歩してていいよ、時計の短い針が2になって、長い針が12をさしたら、甘い匂いがする店で待ち合わせだ」

「きゅ!」

 

 

道の途中でルイスはティティに銀でできた懐中時計とガリオン金貨を数枚手渡し、待ち合わせ時間を告げる。ティティは嬉しそうに頷くと、そのまま跳ねるように駆けて行った。

ティティを見送ったルイスは、フードを目深に被ると辺りを見回し人気がないことを確認して家の近くにある森へと向かう。

木の幹の背に隠れたルイスは、ポケットの中から小瓶を取り出すと、中身をごくりと飲み──体を震わせた。

 

体の中を冷たいものが駆け巡り、体を震わせ目を閉じた後──そっと目を開き少し高くなった目線のまま自分の手や足をまじまじと見る。

 

 

「……そんなに身長伸びないのか…」

 

 

老け薬を飲み20歳前後の姿に成長させたルイスは残念そうに呟き──3本の箒へと向かった。

 

 

3本の箒は営業していたが、客は少なくやや閑散としていた。カウンターの向こうで不満そうにグラスを磨いているマダム・ロスメルタにバタービールを注文し、瓶を受け取ったルイスは店内の奥に見知った後ろ姿を見つけ近寄り、とん、と肩を叩いた。

 

途端にその人物──ドラコの肩は跳ね上がり警戒と恐怖に満ちた目で振り返ったが、相手がルイスだと分かるとすぐにほっと眉を下げる。

──そう、ルイスはドラコと会うためにティティを自分から遠ざけ、姿を大人へと変えたのだ。

 

 

「ごめん、お待たせ」

「いや……。なんだ、その姿は?」

「最近は子どもだけで出歩いてるとうるさいからね」

 

 

ルイスは声に出さず杖を振り一帯に防音魔法をかけた。店内に客は少ないが、マダム・ロスメルタがそう遠くない場所にいる。この距離なら──おそらくだが──魔法を使用しても魔法省に知られる事はないはずだ。

もし、万が一魔法使用がバレたとしてもいきなり退学になる事はない。いくつかの面倒な手続きに赴かねばならないだろうが。

 

 

「──それで、どうしたの?」

「……ルイス……それが…」

 

 

ドラコは顔を蒼白にし、恐怖と不安で今にも気絶しそうな顔をしながら小声で話した。

 

 

 

 

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