【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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323 彼の授業は?

 

 

古代ルーン文字の授業は去年の復習からはじまり、そして宿題としてエッセイを40センチ読む事、短編の翻訳を二つ行う事、分厚い本を次の授業までに読む事の合計三種類が出された。

1度目の授業としてはとんでもない量の宿題に、ハーマイオニーは「理不尽だわ、明後日までにこんなに!」と不機嫌に呟く。

 

 

「まぁ、始まったばかりにしてはなかなかハードよね」

「本当に!──ねぇ今日の夜、一緒にやらない?」

「勿論よ!」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは黒く分厚い本を両手で抱え闇の魔術に対する防衛術の教室へと向かう。

毎年変わるこの科目で、まともな教師は少なく、教師一人一人やり方がまるっきり異なっていた。今年はセブルスが受け持つことになり──一体どんな授業なのか、ソフィアは少し心配だった。

 

ソフィアとハーマイオニーが教室に着いた時には既に多くの生徒が廊下で扉が開かれるのを待っていた。その中にハリーとロンの姿もあり、2人は駆け寄る。

 

 

「うわ、重そうな本だね」

「ええ、学年が変わってもいつも通りの宿題の量よ」

「ご愁傷様」

 

 

ハリーはソフィアとハーマイオニーが抱える本を見て気の毒そうに言い、ロンは空き時間のうちに気が緩みきり、欠伸をこぼしながら言う。途端にハーマイオニーの眉が吊り上がり「見てなさい、スネイプ先生も山ほど宿題を出すわよ」とロンへ恨みがましく脅すように言った。

 

その言葉を言い切ったちょうどその時、教室の扉が開き、いつものような不健康そうな青白い顔のセブルスが廊下に出てきた。授業の開始を待っていた生徒達の喋り声がたちまち静まり返る。

 

 

「中へ」

 

 

科目が変わっても変わらぬセブルスの静かな声に、誰もが緊張した面持ちで扉をくぐる。

毎年様変わりする闇の魔術に対する防衛術の教室の様子は、すでに彼らしい個性で飾られていた。

窓には分厚いカーテンが引かれ教室内は暗く、蝋燭で僅かな明かりをとっている。壁に新しくかけられた絵の多くは身の毛もよだつ怪我や奇妙にねじ曲がった体の部分を晒し苦悶の表情を浮かべていた。

ソフィアは昨年、何も置かれていなかった教室を思い出し、それよりは僅かにマシだろう──と思ったが、殆どの生徒が教室の不気味さに身を縮め1番最悪だ、と考えていた。

 

 

「我輩はまだ教科書を出せとは言っておらん」

 

 

扉を閉め、生徒と向き合うために教壇に向かって歩きながらセブルスが低い声で呟く。

教科書を出していたハーマイオニーや数名の生徒はこんな事で減点されてはたまらない、と慌てて教科書を鞄の中に戻した。

 

 

「我輩が話をする。十分傾聴するのだ。──我輩が思うに、これまで諸君はこの学科で5人の教師を持った。当然、こうした教師達はそれぞれ自分なりの方法と好みを持っていた。そうした混乱にも関わらず、かくも多くの諸君が辛くもこの学科のOWL合格点を取ったことに、我輩は驚いておる。NEWTはそれよりもずっと高度であるからして、諸君が全員それについてくるようなことがあれば、我輩はさらに驚くであろう」

 

 

セブルスは低い声で話しながら教室の端をゆっくりと歩き始め、クラス中が首を伸ばし彼の姿を見失わないよう集中した。──少しでもよそ見をしていれば、たちまち減点されるだろう。彼が教師である限り、グリフィンドール生はいかに減点されないよう務めるかが肝心なのだ。

 

 

「闇の魔術は──多種多様、千変万化、流動的にして永遠なるものだ。それと戦うということは、多くの頭を持つ怪物と戦うに等しい。首を一つ切り落としても別の首が、しかも前より獰猛で賢い首が生えてくる。諸君の戦いの相手は固定できず、変化し、破壊不能なものだ。諸君の防衛術は、それ故、諸君が破ろうとする相手の術と同じく柔軟にして創意的でなければならぬ」

 

 

ソフィアは少々意外に思った。

てっきり彼の性格からして、闇の魔術を讃えるような言葉が続くのかと思ったが、彼の話した内容はほとんどソフィアが闇の魔術や、その防衛術に対して思っている事と同じだったのだ。──その言葉の端々に闇の魔術に対して隠しきれぬ羨望が滲み出ていた事を否定は出来ないが。

 

 

「これらの絵は術にかかったものがどうなるかを正しく表現している。例えば磔の呪文の苦しみ。吸霊鬼のキスの感覚。亡者の攻撃を挑発した者」

 

 

絵の前を通り過ぎながらセブルスは何枚かの絵を指差し、苦悶の表情を浮かべる人の絵、虚な瞳のまま座り込む人の絵、赤黒い肉片になった人の絵を指差した。

 

 

「それじゃ。亡者が目撃されたんですか?間違いないんですか?あの人がそれを使っているんですか?」

 

 

パーバティが息を飲み、甲高い声で聞いた。

亡者の恐ろしさを知っている者は不安げな表情でセブルスをじっと見つめる。

 

 

「闇の帝王は過去に亡者を使った。となれば、再びそれを使うかも知れぬと想定するのが賢明というものだ。さて──」

 

 

セブルスは教室の裏を回り込み、教壇の机に向かって教室の反対側を歩き出す。黒いマントを翻して歩くその様子に、少々ざわついていたクラスはまた静まり返った。

 

 

「無言呪文を知る者は数少ないだろう。無言呪文の利点は何か?」

 

 

ハーマイオニーとソフィアは直ぐに手を挙げる。セブルスは他の生徒で知るものが居ないのかと見渡したが、ほとんどの生徒が俯き目を合わせないようにしているのを見るとソフィアをちらと見た。

 

 

「それでは、ミス・プリンス」

「はい。こちらがどんな魔法をかけようとしているか、敵対する者に知られない事です。また、魔法を唱える時間が無く、即座に対抗できる事から一瞬先手を取という利点があります」

「──よろしい。概ね正解だ。呪文を声高に唱えることなく魔法を使う段階に進んだ者は、呪文をかける際。驚きという要素の利点を得る。言うまでもなく全ての魔法使いが使える術ではない。集中力と意思力の問題であり、こうした力は諸君の何人かに欠如してると言えよう」

 

 

セブルスはクラス中を見渡し、最後にハリーを睨め付ける。その視線に気付いたスリザリン生は声を出さずにやりと笑ったが、ハリーは気にせずセブルスを見続けた。集中力がないなんて、去年の特別授業で散々言われすぎて最早気に悩む事ではないだろう。

 

 

「これから諸君は、二人一組になる。一人が無言で相手に呪いをかけようとする。相手は同じく無言でその呪いを跳ね返そうとする。──では、始めたまえ」

 

 

その号令に従いクラス中が立ち上がり近くの者と組を作るガヤガヤとした音が響く。

この教室にいる者は半数が去年ソフィアとハリーにより盾の呪文を教わり、尚且つ他人に魔法をかける事に慣れている。しかし無言呪文は結局習得しておらず──当然のごまかしが始まり、声に出して呪文を唱える変わりに囁くだけの生徒が沢山現れ出した。

 

 

「──もう!難しいわね」

「そうねぇ。集中して、その魔法が本当に口から飛び出て相手に向かうイメージをしてみたらどうかしら」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは同じ組になっていたが、すでに無言呪文を使いこなせるソフィアは自身の練習時間を全てハーマイオニーにわけていた。プロテゴはただでさえ集中力が必要な魔法なため、ハーマイオニーは使い慣れている武装解除呪文を口を固く閉じ顔を真っ赤にして何度も心の中で唱えていたが、上手くいくことは無い。

 

 

このクラスで無言呪文を成功させているのはソフィアとルイスだけだろう。ルイスもまた、ドラコの練習に付き合っていたが──ソフィアと異なるのはセブルスから沢山誉められ20点の加点を受けた、という点だったが、スリザリン贔屓なのは今までの授業を受けていて重々承知している。やはり科目が変わったとしてもそのスタンスは変わる事がないのかと、ソフィアはあまり気にしなかった。

 

 

セブルスは生徒が練習する間を滑るように動き回り、グリフィンドールにはチクチクといやらしく問題点を指摘する。そうしているうちに、課題に苦労しているハリーとロンに気がつき立ち止まって様子を眺め始めた。

 

ハリーに呪いをかけるはずのロンは呪文を唱えたいのをこらえて唇を固く結び、必死さから息を止め顔を紫色にしていた。ハリーは魔法を防ぐために杖を構えていたが──このままでは呪文が発射されるより、ロンの呼吸が止まる方が先だろう。

 

 

「悲劇的だな、ウィーズリー。──我輩が手本を見せてやろう」

 

 

セブルスはロンを押し退け──ロンは詰まっていた息を吐き出し必死に新鮮な空気を吸った──すばやくハリーに杖を向ける。ハリーは杖を握り直し、閉心術の事を思い出しながら背中に嫌な汗をかいた。流石に開心術をかけられることはないだろう。それに、怪我をさせる事も無いはずだ。もし故意的に生徒を怪我させたとすればきっとダンブルドアは許さない。ならば、かけられる魔法は武装解除、だろうか。

 

 

ロンだけで無く、多くの生徒が練習を止めセブルスとハリーを見る。

 

2人は無言のまま向き合う。ハリーはいつ魔法がかけられるのかと緊張し胸が激しく打っていたが、思考は変に冷静だった。きっと去年何度も対人訓練をしたから空気に呑まれることがないのだろう。

 

 

セブルスが不意に杖を振った。白い光線が発射された瞬間、ハリーは「プロテゴ!」と叫んだがやはり無言呪文がハリーを貫く方が早く、ハリーは白い光線に貫かれそのままバランスを崩す。しっかりと握っていたはずの杖が弾け飛びセブルスの左手に収まった。

 

 

「──う、」

「我輩は無言呪文を練習するようにと言ったが?そうでないにしても、判断が遅すぎる。これが身を滅ぼす程の呪文なら何も思う暇もなく死ぬだろう。無言呪文からの攻撃は、同じように無言呪文での防御でなければ防ぐ事は難しい。この距離の近さならば殊更それが顕著である」

「はい」

「はい、()()

「……はい、先生」

 

 

セブルスは冷たい目でハリーを見下ろしていたが、彼にしては珍しくそれ以上の小言を言う事なくハリーに杖を押し付け、再び他の生徒を見るために歩き出す。

練習を止めていた生徒達は慌てて相方と向き合い、また必死に打ち込んだ。

 

 

 

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