【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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324 歩く道は異なった

 

 

暫くして授業が終わり、セブルスは次回までに教科書第一章から三章までのレポートを羊皮紙ニ巻き分書くように伝えた。昨年まで全く杖を持つ事を許されていなかった生徒達は、「あのスネイプだけど、アンブリッジよりはマシ」と教室からずいぶん離れたところで囁き合っていた。

 

 

「正直言って、魔法薬学よりはいつもの陰険さが少なかったな?」

 

 

ロンは後ろをチラリと見てセブルスがいない事を十分確認し、そう言った。勿論グリフィンドールに加点することは一切無かったが、かと言って魔法薬学程の減点もなかった。それに魔法薬学と比べれば闇の魔術に対する防衛術を得意とする者が多く、緊張感はあれ苦しむ程の苦手意識はない。

 

 

「加点はされなかったけどね。スネイプ先生が初めにおっしゃってたこと──すごく、よくわかったわ。どれだけ強い魔法を知っていても、たった1人で敵に立ち向かう度胸と勇気、そして知能と柔軟な思考が必要だって事でしょう?私も同じように思っているもの」

「私も、ハリーとソフィアが昨年に言ったことを思い出したわ」

 

 

ソフィアが頷き、ハーマイオニーは昨年2人が言った事を一言一句間違うことなくさらさらと告げる。ハリーは自分がそんな事を言ったかどうか覚えていなかったが、ソフィアとハーマイオニーがあまりにも真剣な顔をしているため自分も真剣な表情を装い、頷いた。

 

 

グリフィンドールの談話室へと戻る前に前年度のクィディッチチームメンバーであるスローパーがハリーに羊皮紙の巻紙を手渡した。手紙を渡すついでにクィディッチの選抜試験がいつだと聞くスローパーに、ハリーは「まだはっきりしない」と曖昧に答える。

スローパーのビーターとしての腕は最悪であり、まさに合格出来たら奇跡だろう。

 

 

「ああ、そうかあ。今週末だといいなと思ったんだけど──」

 

 

ハリーは彼の言葉を全て聞く前に置き去りにして早歩きで歩き出していた。

細長い斜め文字斜め文字に見覚えがあったのだ、忘れるわけがない。夏休み中何度も読み返したのだから──あの文字は間違いなくダンブルドアの文字だ。

 

 

『親愛なるハリー

土曜日に個人授業を始めたいと思う。午後8時にわしの部屋にお越し願いたい。今学期最初の1日を、きみが楽しく過ごしている事を願っている。

アルバス・ダンブルドア

追伸──わしはペロペロ酸飴が好きじゃ』

 

 

「ペロペロ酸飴だって?」

 

 

ハリーが開いた手紙を覗き込みながらロンが怪訝な声をあげた。

 

 

「校長室の外にいる、ガーゴイルを通過するための合言葉なんだ」

 

 

ハリーは3度ほど素早く手紙を読み返しながら声を落として伝え、無くさないように鞄の奥へきちんとしまった。

 

 

「それにしても、どんな個人授業なのかしらね?」

 

 

ソフィアの言葉にハリー達は「うーん」と小さく唸る。

 

 

「そりゃ、死喰い人が知らない物凄い呪いとか呪詛なんじゃないか?」

「そういうのは非合法だわ。きっと高度な防衛術よ!」

「効果的な攻撃魔法かもね」

 

 

ダンブルドアが何を教えるのかは書かれておらず、ソフィア達は休憩時間中何を教えるのかと推測し合っていた。

始業5分前を知らせるベルが鳴るとソフィアとハーマイオニーはすぐに立ち上がり数占いの授業へと向かう。

 

2人と別れ談話室へ戻ったロンとハリーは嫌々ながらセブルスが出した宿題に取り掛かったのだが──それはあまりに複雑で難解であり、いくら唸っても一向に答えは見つからずいい言葉も浮かんでこなかった。

 

 

「──あ、そうだ。魔法薬学の教科書を購入しなきゃならないんだった!」

 

 

ハリーは魔法薬学を取るつもりはなかった。──取れないと思っていた。

しかし、マクゴナガはスラグホーンならOWLでOが取れなくても、Eの成績で十分受講させてくれると言った。

闇祓いになるためには魔法薬学のNEWTの成績が必須科であり、ハリーはすぐにうなずき魔法薬学を受講したのだ。

1回目の授業はスラグホーンが忘れた生徒用の教科書を貸してくれると聞いているが、何度も借りるわけにはいかないだろう。

 

マクゴナガルから受け取った追加教材リストにチェックを入れ、ハリーはすぐに立ち上がる。今日出せば今週末には新品の教科書が届くだろうか?

 

 

「ロン、君は?」

「僕は中古だ。ビルかパーシーのお古があると思うから──これをあそこに送ってくれないか?ほら、うちのはアレだから」

「ああ、オーケー」

 

 

ロンは羊皮紙の端っこに魔法薬学を受講した事と必要な教科書のタイトルを簡潔に走り書きするとびりびりと破りハリーに渡した。

身の安全の為、本部で生活しているモリーに手紙を渡すには、きっとかなりの時間がかかるだろう。ピッグウィジョンは少々彷徨い手紙の配達を遅らせがちであり、ロンは優秀なヘドウィグに頼もうと考えた。

 

 

ハリーは羊皮紙の切れ端と注文書をポケットに捩じ込み、フクロウ小屋へと向かう。

廊下を進み校庭へと出たハリーは、ハグリッドの小屋を見て後数時間もすればハグリッドの授業を受講しなかった事が知られてしまうのだ──と思い、その後のことを考え少し気が滅入ってしまった。

 

ここでモタモタしていてハグリッドに声をかけられたら厄介だ。すぐに手紙を出してグリフィンドール寮へ戻ろう。

そう考えたハリーは素早く校庭を横切りフクロウ小屋の扉を開け放った。

 

沢山のフクロウがホウホウと鳴いている。朝の配達を終えたフクロウ達は眠そうに首を回し、そして片足で立ち目を閉じていた。

 

その中央で、フクロウとは明らかに違う大きな鳥に手を伸ばし、ゆっくりと撫でているその人を見た途端、ハリーの心臓はどくりと一度大きく波打ち、足はぴたりと止まった。

 

 

「ルイス……」

 

 

そこにいたのはルイスだった。すぐに視線を小屋の中に向けたが、昨年度は毎日そばにいたドラコが、今はどこにもいない。

ルイスもまさかハリーとこんなところで会うとは思わず驚き目を瞬かせていたが、数秒ほどで冷静さを取り戻すとシェイドと名付けた大きな八咫烏の足に手紙を括り付ける。

 

シェイドの背中を優しく撫でれば、シェイドは心地よさそうに「クー」と一声鳴き、そして巨大な翼を広げふわりと浮いた。

小屋の中にあったおが屑や木の枝などが羽のはためきでふわりと舞う中、シェイドはあっという間に開け放たれた窓へ向かうとそのまま明るい空の中へ飛んでいった。

 

手紙を出し終えたルイスは、シェイドの羽ばたきで少し乱れた髪を指で撫で付けた後、何事もなかったかのようにフクロウ小屋から去ろうした。

 

 

「──待ってくれ!」

 

 

ハリーは扉の前に立ちはだかり、強い目でルイスを見る。

2人が対峙したのは久しぶりであり──ハリーは、ルイスの背が想像より伸びていることに気がついた。

 

 

「何?」

「何をしているんだ?」

「……手紙を出しにきただけだよ」

「ちがう!僕が言っているのはマルフォイと、きみのことだ。何かを企んでいるんだろう?」

 

 

ハリーの妄想ではなく確信があるような声音に、ルイスは脳内で必死にコンパートメントでの会話を思い出していた。

いや、あの時の会話に怪しいところは無かった。あれから一度ドラコとは話し合ったが、何のヒントも与えていない。ドラコが誇張表現する事はいつものことであり、誰よりも優秀そうに見せる口振りをする事もよくある。

何かを企んでいる、ハリーがそう思っているのはドラコならば何かをしでかすだろう、そう思っての事だろう。

 

 

「……コンパートメントでの事を言ってるんだと思うけど、あれはいつものドラコの悪い癖さ、虚勢を張って自分を大きく見せたがる」

「違う、僕には本当だってわかる。知ってるんだ。──ルイス、僕らは今でも友達?」

「……」

「ルイス」

 

 

ルイスはハリーから目を逸らし、フクロウの羽が低く舞う地面を見つめた。

 

友達。

──友達だからといって、全て伝えられるわけではない。もし、きみがドラコとここまで険悪でなければ、互いに意識し合い嫌っていなければ……僕は全てを相談出来たのだろうか。寮が違っていても変わらぬ関係を紡げただろうか。

 

 

 

ルイスは伏せていた目を上げ、彼らしからぬ──スリザリン生がよく見せる冷笑を浮かべた。

 

 

「……ハリー。忠告は読まなかった?」

「読んだ。その上で聞いているんだ。僕は、マルフォイの事はどうでもいい、あんなやつが落ちようが自業自得だ。──でも、ルイス。きみはダメだ」

 

 

ここまで拒絶してもなぜ、ハリーは僕に構うんだろう。

 

ルイスは悲しさや辛さを感じるよりもまず先にハリーの人としての実直さが怖かった。

 

 

きっと。ハリーは人を一度信じれば、二度と疑うことはないんだ。──ああ、そうか、シリウスに対しても、彼のことを全く知らないのに名付け親で両親の親友だというだけで、本当の父親のように慕っているんだっけ。

 

だからこそ、今でも僕を友達だと思ってくれるし、僕だけを助けてくれようとしている。──ソフィアの存在もあるからかな。

 

 

「ハリー──」

「それに!ソフィアはどうするんだ?2人がもし──もし本当に死喰い人なら、彼女を裏切っているんじゃないか?

ソフィアが言っていた。ルイスはマルフォイを護りたいって、それなら──マルフォイが君にとって友達なら、誤った道に進むのを正すべきじゃないのか?」

 

 

ルイスの言葉を遮り、ハリーは必死に思いを伝える。

今しかないと思ったのだ。ルイスと自分の2人きりになれる時なんて、今後無いだろう。ならば今全てを聞いて、ルイスを説き伏せ何とかこちらへ引き込みたかった。

 

ハリーの言葉にルイスは冷笑をがらりと消すと、疲れたような顔で寂しげに笑った。

 

 

「……そうだね、君は正しいよハリー」

「なら──」

「でも──そうだな──例えば、君が道徳的に最善である選択をすると、ソフィアは助かるけれど、シリウスが死ぬ。それでもハリー、君は綺麗な事を選択できるかな?」

 

 

一抹の希望を見せたハリーだったが、ルイスの言葉に怪訝な顔をしすぐに顔を顰めた。

例え話にしては物騒であり、想像だとしても考えたいものではない。

 

 

「何を──そんな、僕は、誰も見捨てない、みんな救ってみせる、その方法を考える」

「そうでしょう?僕にとって、それがこの選択だ。僕は護りたい者を護るために、最善を尽くす。それがどんな方法でもね。世界にとっての正解が、僕には違うんだ。お願いだから、僕らに関わらないで。──さようなら、ハリー・ポッター」

 

 

ルイスは確かな拒絶を漂わせ言い切ると、ハリーの肩を押し退け扉を開き、ハリーが手を伸ばすよりも早く城までの道を疾走した。

 

 

「──くそっ!」

 

 

残されたハリーは悔しさや悲しさ、憤り──色々な感情で心がぐちゃぐちゃになり、思いを爆発させるように壁を強く叩く。

握られた手紙がぐしゃりと潰れ、悲鳴を上げた。

 

 

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