【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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327 本の行方!

 

 

土曜日にハリーはダンブルドアとの個別授業を受け、ソフィアとハーマイオニーとロンにどんな授業だったかを話した。

それはソフィア達が予想していたような特別な魔法を教えるものでは無く、ヴォルデモートの過去を知る旅であり──それを聞いたソフィア達は難しい顔で黙り込んだ。

 

 

「君たちにだけ言うんだ。絶対他の人には言わないでね」

「勿論よ。……あの人にそんな過去があったなんて。それに、予言と関わってくるって──今のところわからないわね」

「そうね。でも、敵を知ることはとても良い事だと思うわ。そうすれば考えが読めるかもしれない。ダンブルドアはきっとそれを望んでいるのよ!」

 

 

ハーマイオニーが自信たっぷりに言うが、ハリーとロンは首を傾げ唸った。それだけなら、ダンブルドアがハリーに話すだけで事足りるだろう。実際その場に立ち、体験させたかった何か特別な情報があの場所にはきっとあったのだ。しかし、ハリーには一体それが何かはわからなかったし、ダンブルドアも過去の記憶についての正解を告げる事は無かった。

 

 

「今わからない事を悩んでも仕方がないわ!さあ、宿題を始めるわよ!」

 

 

ハーマイオニーはパチンと手を叩き、早速談話室の机の上に大量の教科書や羊皮紙を並べた。ソフィアもそれに倣い宿題の用意を進める中、ハリーとロンは嫌そうな顔をしてしぶしぶ鞄を掴む。

6年生になれば空き時間が多くなり、一見すると自由時間が増えたように見えた。しかし、実際はハーマイオニーが言ったように遊ぶ暇などなくどの教科でも大量に出される宿題をする時間となったのだ。

それでもハーマイオニーやソフィアは苦しむ事なく要領良く宿題をこなし、予習するほどの余裕があったが──それが出来る生徒は数少ないだろう。

 

宿題の量が増えただけではなく、授業はさらに複雑さを増している。

とてもではないがハリーとロンに羽を伸ばす事ができる自由時間など無く、結果ハリーはまだハグリッドの元に行く事が出来ないでいた。

 

ハグリッドはソフィアから何故ハリー達が魔法生物飼育学を取る事が出来なかったのかを聞き、とりあえず納得はしたようだった。

しかし訪れる事が出来ない日が重なるにつれ気難しい表情を浮かべるようになっていたのだ。ハリー達が挨拶をしても気が付かなかったかのように素通りする日すら、ある。

ハリーの口から直接理由を聞くこともできず、遊びにも来てくれない不満。そして体調が悪くなり続けるアラゴグの事でストレスが溜まっているのだろうとソフィアはハリー達にそれとなく伝えたが、なかなか向かう事は出来なかった。

 

6年生以上が頭を悩ませているのは無言呪文のせいでもある。

今や無言呪文は闇の魔術に対する防衛術だけで要求されるばかりでなく、呪文学や変身術でも同じであり、ホグワーツの至る所で無言魔法を習得しようと誰もが顔を紫色にして息張っている光景がよく見られた。

 

 

「そろそろハグリッドを訪ねたほうがいいんじゃない?」

 

 

二週目の土曜日の朝食で、教職員テーブルのハグリッド用の大きな椅子が空っぽなのを見ながらハーマイオニーが落ち着きなく言った。

 

 

「午前中はクィディッチの選抜だ!その上水増し呪文の練習をしなきゃ!それに、ソフィアがちゃんと説明してくれたんだろ?」

「ええ、でも、多分ハグリッドはハリーとロンとハーマイオニーに会いたがっていると思うわ」

「そりゃ、僕も会いたくないわけじゃない!けどさ、どこにそんな時間があるっていうんだ?」

 

 

膨大な量の宿題も終わらず、無言呪文の進捗も芳しくないロンは苛立ちながらソーセージを噛みちぎる。

 

 

「ハグリッドが最近ここに来ないのも気になるんだよなぁ……ソフィア何か聞いてない?」

 

 

ハリーは空席を見ながら心配そうに言った。ここ数日、ハグリッドは大広間に現れる事なく城の中でも一切見かけていない。

ソフィアとの授業が通常通りあると知っているため、急病などではないことはわかっているがそれでも何となく不吉な予感がした。

 

 

「うーん……ハグリッドのお友達がね、老いてもう長くないみたいで……授業の時も心配してて上の空だわ」

「えっ!?そうなの、大変だわ、きっとハグリッド悲しんでいるでしょうね」

「……ねぇ、そのお友達って?」

 

 

ロンはなんとなく嫌な予感がし、声を低くしてソフィアに聞いた。今までハグリッドがヒトの友達を紹介したことは無い。ハグリッドのいう友達であり、気のいい奴らとは大抵とんでもない魔法生物なのだ。

 

 

「アラゴグよ。ロンとハリーは会ったことがあるでしょう?」

「ア、アラゴグだって!?うわー!おめでとう!──じゃなかった、なんて事だろう!」

 

 

ロンは蜘蛛が大の苦手であり、大蜘蛛であるアラゴグが死にかけていることをつい喜んだ。しかしハーマイオニーに睨まれてしまい慌てて言い換えたが表情は嬉しさを隠し切れていない。

ハリーもまた、アラゴグと彼の眷属から死ぬ思いで逃げて来たことを思い出し複雑そうな表情をする。森にあの大蜘蛛がいなくなるのは喜ばしいことだ。だが、ハグリッドはきっと嘆き悲しむだろう。

 

 

「クィディッチの後で行こう。ハグリッドを慰めなきゃ……だけど、選抜は午前中一杯かかるかもしれない。応募者が多いから」

 

 

グリフィンドールのキャプテンになり、初めての大仕事を控えたハリーは数日前から思い悩み、少々神経質になっていた。

今まで応募者は多くて3名だった。名乗りを上げない年だってあり、去年は抜けた役割を探す事がとても大変だっただろう。

それにもかかわらず何故今年はこんなにも応募者が多いのか、ハリーは不思議でならなかった。

 

 

「まあ、ハリーったら、しょうがない人ね。クィディッチが人気者じゃないわ。あなたよ!あなたがこんなにも興味をそそったこともないし、率直に言ってこんなにセクシーだったこともないわ」

 

 

ハーマイオニーの呆れと苛立ち混じりの言葉に、ロンは飲み込みかけていたニシンの一切れで、ソフィアはマッシュポテトで盛大に咽せた。

 

 

「あなたの言っていたことが真実だったって、いまでは誰もが知っているでしょう?ヴォルデモートが戻ってきたと言っていたことも正しかったし、何度もあの人から逃れたと魔法界全体が認めざるを得なかったわ。そして今はみんながあなたを選ばれし者と呼んでいる。──さあ、しっかりしてよ。みんながあなたに魅力を感じる理由がわからない?ソフィアもハリーがより一層セクシーになったって思うでしょ?」

「ごほっ──え、えーと。ハリーは、そうね、いつでもセクシーだわ」

「そ、そうかな?」

 

 

ソフィアの言葉に、ハリーは満更でもなさそうな表情をした。大広間の天井は冷たい雨模様だったが、何だか急に暑くなったような気がしてハリーはパタパタと手で顔を仰ぐ。

 

 

「その上、あなたが情緒不安定の嘘つきに仕立てようと、魔法省が散々迫害したのにも耐え抜いた。あの邪悪な女があなた自身の血で刻ませた言葉も、忘れてないわ。でもあなたはとにかく節を折らなかった」

「クィディッチでの名キーパーとして活躍した時の傷、まだあるよ、見る?」

 

 

ロンが腕を振り袖を捲ったが、ハーマイオニーは気付かなかったのか無視をした。

 

 

「それに、夏の間にあなたの背が30センチも伸びことだって、悪くないわ」

「僕だって背が高い」

 

 

そんなこと些細だと言うようにロンが呟いたが、ハーマイオニーは知らぬ顔をして今度はソフィアに体ごと向き合った。

 

 

「ソフィア、あなたもよ」

「わ、私?」

「この流れだから言うけれど。あなたも可愛らしくなって、とってもセクシーになったわ。今までの溌剌としたソフィアも勿論可愛いけど、今は女性らしく可憐に成長しているもの。それに、DAで十分魔法も上手いとわかったし、無言呪文も完璧よ。あなたに恋焦がれている男の子はとても多いでしょう?今年度、私たちと離れて過ごす時間が増えて、いろんな男の子にアタックされてるんじゃない?」

「そうなの?そりゃ、ソフィアは誰よりも魅力的だけど──」

 

 

ハリーは体の熱が一気に冷え、必死な表情でソフィアを見る。誰よりも魅力的で可愛らしいソフィアだ。たしかに自分以外にその魅力に気づく人はいるだろうと思ったが、知らぬところでアタックされているとは夢にも思わなかった。

 

 

「そう、ね。まぁ、ええ。──けれど、ちゃんと恋人がいるからって断ってるわ」

 

 

ソフィアは狼狽えながらもそう明言し、ハリーはほっと胸を撫で下ろしたが、今ほど魔法薬学をとったことを後悔した事は無かった。あの教科書のおかげで今やハリーの得意科目となっている上に闇祓いになるためには必須科目であるにも関わらず、だ。

 

 

「僕たち、恋人だってことをもう少し周知する必要があると思うな」

「うーん……そうね、ハリーの魅力に気づく人が多いのは嬉しいけど、ちょっと妬けちゃうもの」

「──ソフィア!」

「きゃっ!──も、もう!」

 

 

不貞腐れたように言うソフィアのいじらしい表情が胸を打ち、ハリーはついソフィアを抱きしめたが、ソフィアは困り顔でチラチラと教職員テーブルを見ていた。

 

教職員テーブルで静かに朝食を食べていたセブルスは、人知れず額に青筋を立て心の中でハリーに考えられる限りの侮蔑的な言葉を吐いたのだが──勿論、ハリーはまさかそんな事が起こっているとは気が付かない。

 

 

フクロウ便が到着したところでようやくハリーは満足げに笑いながらソフィアを解放し、皆に水滴をばら撒きながら入ってきたフクロウの群れを見上げる。

 

 

「──ヘドウィグ!」

 

 

茶色や灰色の群れに混じり、雪のように白いヘドウィグが大きな四角い包みを持ち、優雅に羽ばたきハリーの前に着地した。

その直後ロンの前に茶色いフクロウが着地し、同じような大きさの包みを届けパンのかけらを啄んだ後すぐにまた空へ舞い戻る。

 

ハリーはすぐに包みを開け、中に新品の上級魔法薬の教科書を取り上げた。

ひらり、と一枚の手紙が舞い降り、床に落ちる前にキャッチしたハリーは差出人の名前を見てぱっと表情を明るくさせた。

 

 

「パッドフットからだ!」

 

 

新品の教科書には目もくれず、ハリーはすぐに封を切ると手紙を広げる。

 

 

「なんで書いてあったの?」

「えーと……元気かって事と、あっちは変わりないから心配するな、だって。2日前に鏡で話したところなのに」

 

 

そう言いながらもハリーの声は跳ねるように軽やかで喜びが隠しきれず、何度も短い文を読むと丁寧に封筒の中に戻し鞄にそっと入れた。

 

 

「新しい教科書が届いたのね。これでようやくあの教科書を返せるじゃない」

 

 

ハーマイオニーはシリウスからの手紙の内容が当たり障りないことだとわかるとすぐに話題を教科書に戻し、嬉しそうに言ったが、ハリーは怪訝な顔をして「返さないよ」と言い切った。

 

 

「あれを使えば魔法薬は完璧だしね。ほら、もうちゃんと考えてある──裂けよ(ディフィンド)!」

 

 

ハリーは新しく買った教科書の表紙を切り裂き魔法を使い古本らしく装うと、何食わぬ顔で元々借りていた教科書の表紙と交換した。見た目では古本が新品のようになり、新しく購入した本が古本のようになったと言えるだろう。

 

 

「スラグホーンには新しいのを返すよ。文句はないはずだ。9ガリオンもしたんだから」

「でも──」

「文句を言っていいのはソフィアだけだ。これはソフィアの親族の本の可能性が高いんだし。……ソフィア、僕が持っててもいいかな?」

 

 

ハリーは怒り認められないといった顔をするハーマイオニーの言葉を遮り、期待を込めてソフィアを見る。

ソフィアはハーマイオニーとハリーの全く異なる視線を受けながら──ぱちりと瞬きを一つし苦笑した。

 

 

「まぁ、いいんじゃないかしら」

「ソフィア!」

「でも、私にもたまに見せてくれる?魔法薬学は取ってないけれど、親族の書いたものに興味があるもの」

「勿論だよ、ありがとう!」

 

 

ハリーは目に見えて喜び、大切そうに教科書を鞄の中にしまう。ハーマイオニーはその元の持ち主がセブルスだと知っているため、新品と古本を交換するハリーの行動を責めるような目では見たが、ツンと口を尖らせ渋々納得した。

 

 

「あ。──今日の新聞が届いたみたいよ」

 

 

ソフィアは彼らの意識を逸らすためにハーマイオニーの元に舞い降りたフクロウを指差す。そのフクロウはハーマイオニーの前に日刊預言者新聞を一つ落とし、首から下げている小袋の中に通貨が入ったことを確認するとすぐさま飛び立った。

 

 

「誰か知ってる人が死んでるか?」

 

 

机の上に新聞を広げて隈なく読むハーマイオニーに、ロンはわざと気軽な声で聞く。ロンは新聞が届くたびにこうして同じ質問を繰り返していたが、今のところ凶報は届けられていない。

 

 

「いいえ。でも吸魂鬼の襲撃事件が増えているわ。それに逮捕が一件」

 

 

ハリー達は死喰い人が逮捕されたのかと期待したが、ハーマイオニーの口から出たのはナイトバスの車掌であるスタン・シャンパイクの名だった。陽気であり、どうみても死喰い人に見えない彼が死喰い人の活動をしたとして逮捕されたという記事に、ソフィア達は眉を寄せ難しい表情をする。服従の呪文をかけられていたのかと思ったが、どうやらパブで死喰い人の秘密の活動について話していたところを第三者から通報されたらしい。

スタン・シャンパイクは気をひくために話を誇張する癖があり、それで運悪く逮捕されてしまったのだろう。

 

 

魔法省のやつら(あいつら)いったい何を考えてるんだか。スタンの言う事を間に受けるなんて」

「たぶん、何かしら手を打ってるように見せかけたいんじゃないかしら。みんな戦々恐々だし……パチル姉妹のご両親が2人を家に戻したがっているのを知っている?それに、エロイーズ・ミジョンはもう引き取られたわ。お父さんが昨晩連れて帰ってたの」

「ええっ?でも、ホグワーツはあいつらの家より安全だぜ。そうじゃないか。闇祓いはいるし、安全対策の呪文がいろいろ追加されたし、何よりダンブルドアがいる!」

 

 

ハーマイオニーが顔をしかめながら低い声で言えば、ロンは信じられないとばかりに目を瞬く。ヴォルデモートに対してならば、このホグワーツにいることが何よりも安全ではないのかとロンは思っているが、遠く離れたホグワーツに子どもを預けることを不安に思う保護者は少なくない。

ホグワーツは安全かもしれない。しかし、ダンブルドアがヴォルデモートと戦う意志を示したと言うことは、死喰い人もまたダンブルドアを──ホグワーツを無視しないだろう。

 

 

「ここはどこよりも安全だけれど、その分狙われる可能性がある。──大人はそう思っているのね」

 

 

ソフィアはハーマイオニーの横から新聞の記事を覗き込みながら呟いた。

ダンブルドアだけではない、ヴォルデモートにとって宿敵であり、何としてでも殺害しなければならないハリー・ポッターがいるのだ。ハリーを持ち上げる市民がいる一方で、それに気付き不安を抱えている保護者が多いのだろう。

──何より、誰だって大切な者を目の届くところにおきたいと思うのが真理だ。

 

 

「そうね。それに──気がつかない?ここ1週間、校長席はずっと空だったわ」

 

 

ハーマイオニーは教職員テーブルにちらりと視線を送りながら小声で言った。ハリーとロンはその時初めてダンブルドアの不在に気がついた。よくよく思い返してみれば、確かに1週間前にハリーが受けた個人授業以来、ダンブルドアを見ていない。

 

 

「騎士団に関する何かで、学校を離れているんだと思うわ。つまり──かなり深刻だってことじゃない?」

「でも、パッドフットは何も言わなかった!」

「そりゃあ、万が一フクロウが誰かに捕まったら困るでしょう?それに、あなたはここにいるんだもの。何もできないじゃない?闇雲に不安を煽る事をしたくないんでしょうね」

 

 

ハーマイオニーは当然の事のように言うと再び新聞に目を落とし隅から隅まで読み耽った。

 

ハリーは鏡を通してシリウスと会話し、それほど事態が深刻なのだとは思っていなかったが──確かにハーマイオニーの言葉も一理ある。

 

何となく胃が気持ち悪いような、重い気持ちの中、ソフィア達は朝食を食べ終わりクィディッチの競技場へと向かった。

 

 

「ソフィアは、本当に選抜試験を受けないの?」

「ええ……正直、宿題と予習で手一杯だもの。マクゴナガル先生との個人授業も本当に驚くほど難しくて……」

「そっか……残念だな」

 

 

その分、やりがいはあるんだけどね。とソフィアは少し笑ったが、ハリーは残念でならなかった。

ソフィアは去年一時的にシーカーだった。腕は良く、見事試合で勝利していたが──しかし、ハリーと比べると差は歴然だ。

周りをよく見るソフィアは、きっと良いキーパーになれるだろう。だが、そのポジションにつきたいのはロンであり──ハリーはソフィアと共に選手として空を駆け巡りたい気持ちはあったが、ここで「キーパーに応募すればいいのに」とは、ロンの友情を考え言えなかった。

 

 

ソフィア達が大広間から廊下へと出た時、廊下の隅でラベンダーとパーバティが気落ちした様子でヒソヒソと話していることに気づいた。

2人はいつも一緒にいる親友同士だ。パーバティが連れ戻されるかもしれない、という不安な気持ちを話し合っているのだろう。

 

何と声をかけて良いのかわからず、ソフィア達は自然と口を閉ざしてその横を通り過ぎようとした。しかし、話し込んでいたパーバティが突然ラベンダーを肘でトンと小突きロンに視線を向けた。

ラベンダーは弾かれるように振り返ると、ロンを見てしっかりにっこりと微笑み──そんな笑顔を向けられると思っていなかったロンは驚いていたが嫌な気持ちはせずに、曖昧に笑い返す。

 

先ほどより胸と肩を張り、堂々と歩くロンの後ろでハリーは笑い出したい気持ちを堪えていて気が付かなかったが、ハーマイオニーはじとりとした目でロンの後頭部を睨みつけていた。

 

 

「じゃあ、ハリー、ロン。頑張ってね!」

 

 

選手用の控え室へと向かうハリーの首元に抱きつき、ソフィアは頬にキスを落とし激励をする。ハリーは嬉しそうに微笑み、同じように頬にキスをした。

 

 

「ほら、ハーマイオニー?」

「……頑張ってね、ロン」

 

 

ラベンダーに笑いかけられ有頂天になっているロンを見て面白くなかったハーマイオニーだったが、ソフィアに促されてしまい、無言で去るのは流石に嫌味すぎるだろうと仕方なく応援した。

 

 

「うん、応援してくれよな!去年の試合の時もそうだったけど、ハーマイオニーの声ってなんか耳に届くんだよね」

「え?──そ、そうなの。ふーん……去年、素晴らしい技を見せたもの、きっと大丈夫よ」

 

 

ロンの言葉に意表をつかれたハーマイオニーは少し言葉に詰まりながらも、先ほどとは違い柔らかい言葉で心から激励した。

 

ロンはにっこりと笑い、拳を空に突き上げたあと、ハリーの肩を抱いて控え室への扉をくぐった。

 

 

「たくさん人がいるのに、ハーマイオニーの声が届くなんてすごいわね」

「ええ……そうね」

 

 

ソフィアは不思議そうにしながら、きっと毎日聞いているからだろうか?と首を傾げたが、ハーマイオニーは鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌になり、ソフィアの手を引いてスタンドへと向かった。

 

 

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