【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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330 ハグリッドの授業!

 

 

その日の夜、ハリーはすぐに鏡を使いシリウスにマンダンガスがブラック家の品々を持っていた事を伝えた。

ハリーはその現場を見ていなかったが、ハニーデュークスで別れ三本の箒に向かったハーマイオニーとロンがマンダンガスと会い、その時たまたま彼が持っていた大きなトランクの中身がぶちまけられ──中に入っていたブラック家の家紋入りの様々な品物を目撃した、もしかして盗品なのではないかとハリーに教えたのだ。

 

シリウスはブラック家の家紋入りの物を全て処分したいと言っていた。捨てる前に困窮しているマンダンガスに譲ったのかもしれない。それならそれでいいと思っていたが、ハーマイオニーの言うように無断で持ち出している可能性もあるだろう。

 

ハリーの悪い方の予想があたり、それを聞いたシリウスは少々驚いたような顔をし「譲った事はない、捨てたと思っていた」と伝えた。

手ぐせの悪いマンダンガスにシリウスは呆れながら話はつけておくとハリーに約束し、ハリーは自分がその場にいたならばマンダンガスを捕まえていたのに、ともやもやとした気持ちでむっつりと黙り込んだ。

 

 

「気にするなハリー。そうだ──これはまだ極秘なんだが──近々いい知らせを伝えられるかもしれない」

「いい知らせ?」

 

 

ハリーは嬉しげなシリウスの言葉に目を輝かせ身を乗り出す。

こんな時勢の中、いい知らせとはなんだろうか。ヴォルデモートを発見したのか?それとも、アズカバンから脱獄した死喰い人を捕らえることが出来たのだろうか?

 

しかし、シリウスは「まだ、言えない」と低く笑っただけでその事をハリーに伝える事は無い。ハリーは首を捻り一体どんないい知らせなのか楽しみにしながら、ホグズミード行きでソフィアとデート出来たことやスラグホーンのパーティに誘われ憂鬱だという事、もうすぐ二度目のダンブルドアとの個人授業があるという事を簡単に話した。

 

シリウスと鏡越しに話せる時間は長くはなかったが、それでも嬉しい時間には変わりはなく──ハリーは「おやすみなさい」と告げ、自分の顔しか映らなくなった鏡を名残惜しそうに撫でた。

 

 

鏡をトランクの中に大切に保管した後、ハリーは時計が指す時刻を確認する。

まだ8時を過ぎたところでありソフィアとハーマイオニーとロンはまだ談話室で宿題をしているだろう。気が進まないが明日は月曜日だし僕も下に降りないと──。そうハリーが考えながらのろのろと鞄に筆記具を詰め込んでいると、がちゃりと扉が開いた。

 

 

「ロン?──どうした?」

「うーん。なんだか胃が気持ち悪くて」

 

 

現れたロンの顔色はやや悪く、吐きそうなのを堪えるように「おえ、」と声を漏らしていた。高い背を曲げおぼつかない足取りでベッドまでやってきたロンはそのまま服を寝巻きに着替えることもなく倒れ込む。すぐにハリーはベッドに駆け寄ると心配そうにロンを覗き込んだ。

 

 

「大丈夫か?医務室に行く?」

「いや、ちょっとステーキを食べ過ぎたんだと思う」

 

 

そういえば、夕食の時に出たステーキをロンは何枚も食べていたっけ。

もそもそと布団を手繰り寄せ丸まったロンに「明日も具合が悪かったらちゃんと行きなよ」と言えば、ロンは唸り声をあげ手をひらひらと振った。

 

 

 

ーーー

 

 

月曜日。すっかりロンの顔色はいつも通りに戻っていた。腹の具合も良くなったようでまた朝からベーコンやソーセージ、それにチーズたっぷりのピザをいくつも食べ、ハーマイオニーは呆れ混じりに「またお腹を壊すわよ」と忠告したが、ロンは気にせず次々とコッテリしたものを口の中に押し込む。

 

 

「ぜーんぜん問題ないさ。ちょっと眠いだけ。空き時間に寝れたらいいのになぁ……」

「宿題を終わらせてから寝ればいいのよ、ロン?」

 

 

ピザをミルクで流し込んだロンは口を手の甲で拭いながら小さくあくびを噛み殺す。

夜に何度かロンの唸り声を聞いていたハリーは、胃の気持ち悪さでよく眠れなかったんだろうと少々気の毒に思ったが──今、彼が食べた量を考えるとまた苦しむ事は十分にあり得る。自業自得か。と考え心配する事をやめ、相変わらず空席となっている校長席を何気なく見たのだった。

 

 

 

 

午前の授業を終えたソフィアは独り魔法生物飼育学を受けるためにハグリッドの小屋へ向かっていた。今日の朝食の時も、昼食の時もハグリッドの姿は大広間に無かった。きっとアラゴグが心配で食事が喉を通らないのだろう。

今日の授業をしっかりと受けることができるのだろうかとソフィアは少々心配だったが、ハグリッドは小屋の中に引きこもる事なく前で授業の準備をしていた。

 

 

「ハグリッド!」

「おう、早ぇな」

 

 

ソフィアはほっとしながら駆け寄り、地面に置かれた大きなガラス製の飼育箱を覗き込む。中には枯れ葉や枯木が無造作と共に、うぞうぞと蠢く小さな生き物が入っていた。

 

 

「だって一番好きな授業だもの、楽しみにしてたの!」

「そうか」

 

 

ハグリッドはにっこりと笑い嬉しそうに微笑んだが、その笑顔がどこかぎこちなく見えたのはきっとアラゴグの体調が戻らないからだろう。気を滅入らせているだろうに、教師としてしっかり授業をしソフィアに心配かけまいとするハグリッドの気持ちを汲み取ったソフィアはアラゴグについて何も聞かず、ただ興味深そうに飼育箱を眺めた。

 

 

「さて、時間にはちぃっとばかし早えが──ソフィアしか居ねえしな。始めるか──これは何かわかるか?」

「夢喰蟲ね」

 

 

蠢くその一匹一匹は鮮やかな緑色をし、形だけ見ればカタツムリによく似ていた。異なる点は殻の下から触手のような突起物が大量に生えブラシのようにわさわさと動いているところだろう。

 

 

「ああそうだ。そんで、特徴は?」

「はい。夢喰蟲は寄生魔法生物です。適当能力が高く、どんな気候でも──例え炎の中でも──耐える事が出来ます。寄生した宿主の夢を食べ栄養とします。殻が時計回りの模様の個体は()であり、半時計周りの親──女王夢喰蟲は好む夢を子に指示し、子は宿主に親が好む夢を見せる事が出来ます。夢の内容により殻の色が変わり、最後は女王夢喰蟲が子を食べて栄養にします。この夢喰蟲は緑色だから……草原の夢を集めたんですね」

「正解だ。グリフィンドールに3点だな」

 

 

ソフィアはハグリッドからの加点に嬉しそうに笑い、そっと飼育箱の中から小指の爪よりも小さな一匹の夢喰蟲を摘み目線の高さに持ち上げた。

 

 

「そいつらの親が広い草原を好んだんだな。中には青空が好きでそんな夢を集めたやつらや、じめっとしたところが好きで灰色になる奴らもおる」

「親はここにはいないの?」

 

 

わさわさと触手を動かす夢喰蟲を見ながらソフィアが聞けば、ハグリッドは残念そうに「喰われちまったんだ」と肩をすくめた。

 

 

「1週間ほど前に捕まえたんだがなぁ。珍しく晴れてたもんで、窓辺を散歩させてたら──鳥にパクリ!だ」

「あら……鳥は夢喰蟲の天敵だものね、仕方がないわ」

 

 

親を見ることが出来ず残念だったが、ハグリッドが保護していたとしても予期せぬ事態というものは存在する。ハグリッドは自然の姿のままのびのびと飼育するのを好むため、授業のためだとはいえ小屋の中に閉じ込める事を良しとしなかったのだ。

 

 

「女王夢喰蟲の殻は、先天的に盲目の人にも世界を見せることができるから凄く重宝されているのよね」

 

 

夢を蓄えた女王夢喰蟲の殻は一種の薬にもなりうる。夜寝る前にその殻を砕いて飲めば、殻が持つ夢を見ることが出来るのだ。それは草原や美しい夕暮れ、そして湿っぽい洞穴の景色──様々な夢だが、盲目の者にとってはどれも光り輝く夢に違いないだろう。

 

 

「寄生されても、特に痛かったり苦しかったりはないのよね?」

「そうだな、ただその夢を見るためにちぃっと草原を走ってみたくなったりはするだろうがな。ほれ、夢っちゅうもんはその日の行動に影響されるだろ?」

「ああ、それもそうね」

 

 

ソフィアは勉強に追い込まれていたハーマイオニーが「夢の中でも勉強していたわ……もっと勉強しないとってことね……」とやつれた顔をして呟いていた事を思い出しくすくすと笑った。

 

 

「ヒトに寄生した事例はないの?」

「いんや、あるにはあるな。だがこれが体のどこかにくっついていたら、すぐ気づくだろ?」

「それもそうね」

 

 

小さい生き物とはいえ、体のどこかについていればすぐに気付くだろうとソフィアは頷いた。

この夢喰蟲に寄生されるのは殆どが野生の生物だ。気付いたとしても自分では取れないネズミや猫だったり──いや、例え気付いたとしても害がないのなら好きにさせて気にもとめないのかもしれない。

 

 

ソフィアは指先に乗せていた夢喰蟲を群れの中に帰すと、鞄の中から羊皮紙を広げその姿を書き留めた。

 

 

 

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