【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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332 キス!

 

 

クィディッチの練習は正直なところ、上手くいっているとは言えなかった。

やはり問題はロンだろう、彼に実力があることは間違いないが、どうしても精神的に自分を追い詰めミスをしがちなのだ。

練習とはいえ何度もゴールを奪われてしまい、顔を赤や青色に変えるロンを見てハリーは彼のメンタルの安定と、そしてなによりも自分に自信を持つことが最優先課題なのだと理解せざるを得なかった。

ハリーは練習を終え、選手達の士気を上げるために激励し、グリフィンドール寮へ戻るまでにすっかり意気消沈してしまったロンを励まし続けた。

 

 

「僕のプレイ。ドラゴンのクソ山盛りみたいだった」

「そうじゃないさ。ロン、選抜した中で君が一番いいキーパーなんだ。唯一の問題は君の精神面さ」

 

 

何度も言葉を変え「あの動きは良かった」「まさに鉄壁の守りだった」と激励するハリーの言葉に、ロンは城の3階まで戻った時にはほんの少し元気が出たようだった。いつも通り近道をしようとタペストリーを押し開けた時、ロンとハリーはディーンとジニーが固く抱き合い激しくキスをしている場面を目撃してしまい──流石にハリーは少々面くらい気まずくなった。

 

 

「おい!」

 

 

ロンは怒りながらジニーとディーンに呼びかけ、2人はぱっと離れて振り返る。

 

 

「何なの?」

「自分の妹が、公衆の面前でいちゃついてるのを見たくないね!」

「あなたたちが邪魔するまでは、ここに誰もいなかったわ!」

 

 

ディーンは気まずそうな顔をしてハリーにニヤリと笑いかけ、ハリーは苦笑しながら肩をすくめた。流石に知っている人のキスシーンをばっちり見てしまうのは落ち着かない──ソフィアがあまり人前でキスをしようとしないのは、これが理由だろうか。

 

 

「あ……ジニー、来いよ。談話室に帰ろう」

「先に行って!私は大好きなお兄様と話があるの!」

 

 

ディーンは睨み合うジニーとロンを見比べ、この場に未練は無いと満足げな表情をして談話室へと向かった。ハリーもディーンの後について行きたかったが、かなり険悪な雰囲気を漂わせる2人をそのままにすることもできず、ジニーとロンをチラリと見る。

 

 

「さあ、はっきり白黒つけましょう。私が誰と付き合おうと、その人とどんなことをしようと、ロン、あなたに関係はないわ──」

「あるさ!いやだね、みんなが僕の妹のことを何て呼ぶか──」

「何て呼ぶの?」

 

 

ジニーは怒り狂いながら杖を取り出した。ジニーが陰で()()()だと妬みやからかい混じりに囁かれていると、ハリーは知っていた。それほど、この1年間で渡り歩いた男子の数は多いのだ。

 

 

「何て呼ぶって言うの?」

「あー……ジニー、ロンの言葉に他意はないんだ」

「いいえ、他意があるわ!」

 

 

なんとかジニーを落ち着かせようとしたハリーだったが、ジニーはロンの言葉に吼えるように叫び怒鳴る。その目はギラギラと凶悪に輝き、乱れた赤い髪はまるで燃えているようだった。

 

 

「自分がまだ一度もいちゃついたことがないから、自分がもらった最高のキスが、ミュエルおばさんのキスだから──」

「黙れ!」

「黙らないわ!あなたがフラーと一緒にいるところを私、いつも見てたわ!彼女を見るたびに頬にキスをしてくれないかって、あなたはそう思ってた。情けないわ!世の中に出て少しでも自分もいちゃついてみなさいよ!そしたら、他の人がやってもそんなに気にならないでしょうよ!」

 

 

ジニーの言葉にロンは赤を通り越して顔を焦茶色に染め、ついに杖を出した。

ハリーは慌ててロンの前に立ちはだかり、腕を掴み必死に杖を下げようとするがロンは妨害するハリーなんて視界に入っていないというように隙間から杖を向け口の端から泡を飛ばしジニーに吠え続けた。

 

 

「僕が公衆の面前でやらないからといって──」

「あははははっ!!」

 

 

ジニーはヒステリックに嘲笑すると、心底ロンを見下し愉悦感に浸りながら手の中で杖を弄び、指揮棒のように振った。

 

 

「ピッグウィジョンにキスでもしてたの?それとも、ミュリエルおばさんの写真を枕の下にでもいれてるの?」

「こいつめ──」

 

 

ロンはハリーの拘束を払うとジニーに向けて杖を振るった。途端オレンジ色の閃光がジニーのすぐそばを撃ち抜く。ジニーはさっと顔色を変え、杖先をロンに再び向けた。

 

 

「馬鹿な事はやめろ!」

「ハリーはソフィアとキスしたわ!それに、ハーマイオニーはビクトール・クラムとキスをした!ロン、あなただけがそれが何だかいやらしいもののように振る舞うのよ。あなたが12歳の子ども並みの経験しかないからだわ!」

「──な」

 

 

ロンが唖然として何も言えないうちに、ジニーはその捨て台詞と共に嵐のように荒れ狂い去っていった。

ハリーとロンの荒い呼吸だけが嫌な空気の中に響く中、一際大きく息を吐き出したロンはその場にしゃがみ込む。

 

 

「ハーマイオニーは、クラムにキスしたと思うか?」

「え?──ああ……んー……」

 

 

ぽつりと弱々しく呟かれたロンの言葉に、ハリーはなんと言っていいのかわからなかった。本音を言えば「そうだと思う」だったが、ハーマイオニーの気持ちを知っている今、それを認めるのはハーマイオニーのためにも、ロンのためにもならないんじゃないかと思ったのだ。

しかし歯切れの悪いハリーの言葉にロンは絶望したように暗い目を一瞬見せ──次の瞬間には苛立ちと自暴自棄の色を滲ませ舌打ちをしながら立ち上がる。

 

 

「なんだよ。──馬鹿を見るところだった」

 

 

ロンは苦い表情で吐き捨てると、ハリーを置いて荒々しく階段を駆け上がる。

 

 

「おい、ロン!待てよ!」

 

 

ハリーはきっとロンはとんでもない勘違いをしている。そう思いすぐに呼び止めたがロンはハリーの静止を聞かず、そうして──姿を消した。

 

 

「……、……はぁ……」

 

 

ハリーは重々しい溜め息をこぼしながらトボトボと階段を上がり、太ったレディに合言葉を告げ肖像画の穴を通った。

 

談話室にはロンとジニー──そしてディーン──の姿はなく、いつもの暖炉前のソファでソフィアが驚いたような顔で男子寮へと続く階段を見上げていた。きっと今しがた怒りで肩を上げたロンが談話室を突っ切り真っ直ぐに寝室へと上がったのだろう。

 

 

「練習、酷かったの?」

「うーん……ハーマイオニーは?」

「マクゴナガル先生のところ。授業でわからない事を聞きに言ったわ。──ロン、かなり怒っていたけれど、何かあったの?」

 

 

ソフィアは声を顰めながら疲れた様子で隣に座るハリーに声を顰めて問いかけた。

ロンはクィディッチの練習があるたびに意気消沈して帰ってくるが、今回は憤怒の如く怒り狂っていた。ソフィアはきっと練習が上手くいかず同じチームメンバーに苦情でも言われ怒っているのだと思ったが──ハリーは今あった事をソフィアに告げるべきなのか悩んだ。

 

ロンのあれほどの怒りが明日の朝にはすっきりと憑き物が落ちたようになっているとは思えない。今までの経験上、ハーマイオニーが関わるイザコザは後を引くことが多いとわかっているハリーは、明日からのことを考えせめてソフィアには何があったかを知らせなければややこしい事になるだろうと、ジニーとディーンのキスシーンを目撃し、ロンが怒り、ジニーがキレたのだと伝えた。

 

それを聞いたソフィアはなんとも言えない顔で押し黙る。ジニーの言い分はたしかに理解できるが──ロンにとってそれは触れられたくない箇所なのだろう。

 

 

「──それでジニーは、ソフィアは僕とキスした。ハーマイオニーはクラムとキスしたのにって言って。ロンはかなりショックだったみたい」

「それは──自分だけがキスしていないから?それとも、ハーマイオニーがキスしたのを知ったから?」

「多分、ハーマイオニーの方だと思う」

 

 

ソフィアは難しい顔をし、小さく唸る。

ハーマイオニーがクラムと本当にキスをしたのかはわからない。だが、当時すでにハーマイオニーはロンの事が好きだったはずだ。

そんな相手がいて、別の男子とキスをするだろうか?──いや、あの時はハーマイオニーはかなり自暴自棄になっていた、間違った事をしたとしても、おかしくはないだろう。

 

 

「ハーマイオニーが誰とキスしたとしてもそれは過去のことよ。少なくとも今、ハーマイオニーはロンの事を好きなわけだし……」

「多分、ロンは疑ってると思う」

「え……うーん。まずいわね」

「そうなんだよ。明日から絶対、ロンの態度はキツくなる」

「せっかくいい雰囲気だったのに……これじゃあクリスマスパーティなんてとてもじゃないけれど──ロンは行かないわね……」

 

 

ソフィアは困り顔で溜め息をつく。

ロンが自分達の予想通りハーマイオニーがクラムとキスをした事に関してショックを受け怒っているのなら──それは、つまりロンはハーマイオニーの事が好きだという証拠になる。まだ本人は自覚していないかもしれないが、すぐに気付くだろう。

しかし、意固地になったロンはいつものように怒りに任せハーマイオニーを酷く傷付けてしまう可能性が高い。ただでさえロンは残酷な言葉を悪意なく言ってしまう悪癖があるのだ。

 

 

「どうしようか……」

「そりゃあ……話し合うのが1番だけど、でも、うーん──喧嘩をしてるわけではないから……難しいわね。ハーマイオニーは悪くないし、かといって、ロンも悪くないもの。多分、私がもしロンの立場で──ハリー、あなたが他の誰かと昔キスをしたと知ったら、昔のこととはいえやっぱりショックだもの」

「僕、ソフィア以外としたことない!」

「わかってるわ。それに、私は過去にもしあなたが誰とキスしていても──そりゃショックだけど、今あなたにキスできるのは私なんだもの、気にしないわ」

 

 

即座に否定したハリーに、ソフィアは少し表情を緩め微笑む。ハリーはついソフィアにキスをしたくなったが人から離れた場所だとはいえここは談話室だ。他の人にキスシーンを見られるのをソフィアは嫌がるだろうと考えなんとか耐えた。

 

 

「でも、だからこそ、難しいのよ。この問題はロンの気持ちの問題だもの。過去の事と割り切れるのか──クリスマスパーティに誘ったハーマイオニーを信じられるのか。とりあえず、様子を見ましょう、明日からどうなるのか……あまりに酷かったら、また別の問題が出てくるわ」

「別の問題?」

「私の親友を傷付けるのは、友人(ロン)であっても許さないって問題よ」

 

 

ソフィアは真剣な顔で呟き、ハリーは神妙な表情をしながら頷く。

むしろ──ロンがハーマイオニーを傷付けてしまい、ソフィアが怒りロンを咎めた方が結局のところ早く収まるのでは無いかとちらりと思った。

いつも冷静であり、公平に判断し的確な言葉をかけるソフィアの言葉ならば、ロンは耳を傾けるだろう。思い返してみれば、ロンはソフィアの言葉ならすんなりと受け入れる事が多い。

 

 

「とりあえず、様子を見ましょう。……それで、クィディッチの方はどうだったの?」

「そっちも、最低だった」

 

 

ハリーの言葉にソフィアは慰めるようにハリーの肩を叩いた。

 

 

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