【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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333 信じる事!

 

 

次の日。ソフィアとハリーが考えていた通りの最悪な事が起こった。

ロンはジニーとディーンを冷たく無視しただけでなく、ハーマイオニーをも氷のように冷たい意地悪さで冷ややかな眼差しを向け無視をしたのだ。

最近穏やかな雰囲気だったため、朝の挨拶をいつも通りしたハーマイオニーは返ってきた眼差しと返ってこなかった挨拶にわけがわからずうろたえ、傷付いた。

 

 

「なに、私──何もしてないわ」

 

 

ハリーも待たずに独りで肖像画をくぐり大広間に向かったロンの背中を見ながらハーマイオニーが混乱し呟く。ハリーとソフィアはちらりと視線を合わせ──とりあえず、ハリーはロンを追った。今の状態のロンを独りにしない方がいいだろう。

ハーマイオニーとロンがこうなった時、自然とロンのケアはハリーの役目であり、ハーマイオニーのケアはソフィアの役目なのだ。

 

 

「そうね、ハーマイオニー。あなたは悪くないわ」

「何──何か知ってるの?」

「昨日のクィディッチの練習の後に色々あったみたいなの。それでとっても不機嫌なんだって、ハリーから聞いたわ」

「何よそれ」

 

 

ハーマイオニーはムッとして自分に非が無いのなら気にするだけ無駄だと思ったのか──彼女は間違いなくクィディッチの練習が上手く行かなかった八つ当たりだと思ったのだろう──少々怒りながら大広間へと向かった。

 

 

ソフィアとハーマイオニーが大広間に着いたとき、既にロンとハリーは他のグリフィンドール生から少し離れた場所に座り朝食を食べていたが、2人の到着に気づくとロンは目に見えて眉を寄せわざとらしく嫌そうに顔を顰めた。

 

 

「ロン、ハリー、おはよう」

「おはよう、ソフィア」

「……」

 

 

ロンはソフィアの挨拶も無視した。

隣にハーマイオニーがいるため変に意地になっているのだろう。勿論その理由をソフィアは知っていたが腫れ物を扱うようにロンに接する事はせず、堂々とロンの前に座るともう一度「おはよう、ロン」と笑みを深めて伝えた。

 

 

「……」

「ロン?」

「……はよ」

 

 

何度も促されたロンは渋々喉の奥で低く呟く。ハーマイオニーが自分の前に座ったのを見て、ロンは顔を顰めたまま立ち上がり、食事も充分に取らず背中に苛立ちを見せ不機嫌さをありありと態度で示しながら扉へと向かった。

 

 

ソフィアは一切態度を改めようとしないロンと、悲しそうに目を揺らせるハーマイオニーを見て──座りかけていたがすぐに立ち上がり無言でロンの後を追った。

 

 

「──ロン!」

「なんだ?挨拶しただろ、おはよう!」

 

 

大広間を出てすぐの廊下で呼び止められたロンは振り返り叫ぶように答える。その声の大きさに一年生の集団が驚きで肩を震わせ恐々とソフィアとロンを見つめヒソヒソと囁き合った。

昨夜の事を引きずったままで苛立ちと不満、悲しさや胸の痛みを抱えたロンは今にも感情が爆発するかのような苛立ちでソフィアを睨み上げる。

 

ソフィアは無言のままロンの腕を掴むと近くの空き教室に連れ込み、ロンを見上げる。ロンは抵抗はしなかったがありありと不満そうな顔でソフィアを見下ろした。

 

 

「なんだよ」

「何故、ハーマイオニーにあんな態度をとっているの?」

「──関係ないだろ。あいつが悪い」

 

 

苛立ち吐き捨てたロンは、無造作に置かれていた椅子に座り足を投げ出した。

 

 

「何があったの?ハーマイオニーに何か言われた?少なくとも、私が知る限りは何もしてないわ」

「はっ、ソフィアが知らないだけだろ。あいつ──あいつ、クラムなんかと──」

 

 

ロンは苛立ちの一端を吐露しかけたがすぐにぐっと口を噤むと神経質そうに足を動かした。やはり、自分だけがまだ誰ともキスをしていない事が不満なのではなく、ハーマイオニーがキスした事実がショックだったのだとわかるとソフィアは長く溜め息をついた。

 

 

「あのね、ロン。私はハリーを愛しているわ。でも、初めて好きになったのはハリーじゃないの。その時はわからなかったけど、きっと初恋はジャックだったって今は思うの。でも、私は今、誰よりもハリーを大切に思っているし愛しているわ」

「……」

「もし、あなたがハーマイオニーとクラムのことで苦しんで苛立ってるのなら。それは何故かをよく考えた方がいいわ。誰に怒っているのか?何故怒っているの?──今、大切なのは誰で、誰が誰を想っているのか、少し落ち着いてよく考えなさい。

私は、少なくとも昨日までのハーマイオニーとあなたの関係が真実だと思っているわ」

 

 

ソフィアは脚に置いた自分の拳を睨むように見下ろし続けるロンの肩をぽん、と軽く叩いた。

 

暫く視線を上げようとしないロンを見ていたソフィアだったが、このまま少しひとりでよく考える方がいいだろうと静かに踵を返し扉に向かう。

 

 

「──ハーマイオニー、あいつ、クラムとキスしたと思うか?」

 

 

扉に手をかけたソフィアの背中に、ロンはぽつりと呟く。その声は先程までの苛立ちや怒りは一切なく、萎れたような切なく悲しげな声音だった。

 

 

「さあ、知らないわ。けれど──それって、今のあなたたちにそれほど重要な事かしら」

 

 

ソフィアはロンの返答を聞く事もそれ以上慰める事もなく、静かに扉を開き大広間へと戻った。

 

1人残されたロンは顔を手で覆い、深い溜め息をついた後、灰色の天井を見上げた。

 

昨夜は色々あったからだろう。内容は覚えていないがきみの悪い妙な夢を見た気がして、全く疲れが取れていない。

ロンは目を擦りながら、僅かに冷静になった頭でハーマイオニーの事を考えていた。

 

 

 

その後ロンは戻ってくる事はなく、いつも通り大広間に戻り朝食を食べ始めたソフィアにハリーはロンの説得は上手くいったのか聞きたかったが、近くにハーマイオニーが側に居ては聞く事は出来ず、そわそわとした気持ちのまま授業を迎えることとなった。

はじめの授業は変身術であり、ロンは姿を見せないのかと思われたが授業開始時刻ギリギリに教室へと入ってくると、そのまま何も言わず仏頂面で教室の1番後ろに着席し──そのまま授業が始まった。

 

授業が終わったあと、ハリーとハーマイオニーはきっとロンはひとりで出て行くのだろうと思ったが、扉近くで仏頂面のままハリーとハーマイオニーの到着を待ち、言葉は少なく表情は苛立ちを見せていたが──今朝の態度は大幅に改善されていた。

ソフィアに何を言われたのかはわからないが、この分ならば明日の朝にはいつも通りの状態に戻っているだろうとハーマイオニーは安堵しハリーとロンと別れ古代ルーン文字学の教室へ向かう。

 

ハリーとロンはこの後空き時間であり、2人は何となく気まずさを感じながらちらりと目を合わせた。

 

 

「談話室、戻るか?」

「……そうだな」

 

 

ハリーはロンのよそよそしい態度に触れる事はなくいつも通り話しかけ、ロンは相変わらずの表情であり、顔色もどこか悪かったが誰彼構わず噛み付くような激しさは無く、ハリーの隣をゆっくりと歩いた。

 

 

ソフィアとハーマイオニーが古代ルーン文字学の授業を終え、沢山の宿題に辟易しながら大広間に入った時、すでにハリーとロンは昼食のサンドイッチを食べていた。ハーマイオニーはロンを見て僅かに表情を硬らせたが、何も言わずロンの前に座る。

 

 

「古代ルーン語も、沢山宿題を出されたわ!ああ、毎回毎回の事だけど、本当に嫌になるわね」

「そうね、この後空き時間だし……図書館にこもらなきゃいけないわ」

 

 

いつものように宿題の多さを嘆いたハーマイオニーにソフィアは同調する。この後、いつも通りならロンが軽口の一つでも叩くのだが、やはり彼は黙り込み大人しいままだった。

 

 

「あー……ロン?気分でも悪いの?」

 

 

ハーマイオニーはおずおずとロンの顔を覗き込む。激しく怒るロンも困りものだが、こうして貝のように黙り込んでいるのもまた、何となく奇妙な気持ちになってしまう。刺々しい雰囲気はないが、かといって朝の態度を反省ししおらしくしている雰囲気でもない。

 

 

「──大丈夫だ」

 

 

ロンはぼそりと答えると、ハムサンドを口の中に押し込んだ。ハーマイオニーは無視されなかった事に安堵し表情を緩め、「それならいいの」と頷きミートパイに手を伸ばした。

 

 

「──ハーマイオニー」

「な、何?」

 

 

改めて名を呼ばれたハーマイオニーは驚いてミートパイを喉に詰めかけ、ドンドンと胸を叩き涙目になりながらロンを見た。

 

ロンは暫く手に持っていたハムサンドに視線を落としていたが、決心したように顔を上げ真っ直ぐにハーマイオニーを見つめる。

 

 

「──クリスマスパーティ、楽しみだな」

「え?──え、ええ、楽しみね!」

 

 

思ってもみなかった言葉にハーマイオニーは驚きめを見開いたが、すぐに笑顔で何度も頷く。

ロンはその笑顔を見て何か憑き物がふっと落ちたように肩の力を抜き、ぱくぱくとハムサンドを食べた。

 

 

「なぁハリー、そっちのパイをとってくれないか?」

「勿論」

「ソフィア、そこのベーコンも」

「ええ」

 

 

ハリーとソフィアが自分の近くにあった皿をロンの前に押せば、ロンは先程までとは比べものにならない勢いで次々と料理を食べ進め、かぼちゃジュースで流し込んだ。

呆気に取られそれを見ていたソフィアとハリーとハーマイオニーは、顔を見合わせ声を出さずに笑い合った。

 

 

 

 

ソフィアはその日の夜、スラグホーンの自室へと向かっていた。数日前に誘われた食事会の日がついにやって来たのだ。

ハーマイオニーから「正直、楽しくはない」とゲンナリした表情で言われていたソフィアは、どうか母様の思い出話だけでありますようにと願いつつ人のまばらな廊下を歩く。

 

 

「ルイス」

「ソフィア……久しぶり」

「ええ、久しぶりね」

 

 

スラグホーンの自室の前にいたルイスに微笑みかければ、ルイスは同じように優しく笑った。時々廊下でルイスとドラコを見かけることはあるが、常に2人は他のスリザリン生に囲まれ話しかける隙はない。──それに、たとえ隙があったとして今、彼らに話しかける事は難しいだろう。

 

 

「この前のホグズミード行き、ハリーと行ったの?」

「ハーマイオニーとロンも一緒に行ったけど、途中から別行動したわ」

「そっか……ハニーデュークスで新商品はあった?」

「砂糖羽ペンと、後──新商品の試食があったわね。とても混んでいて食べられなかったのが残念だわ。きっと凄く美味しいヌガーだったのに」

 

 

残念そうに肩をすくめるソフィアに、ルイスは目を細めてくすくすと笑う。お互い気軽に話しかける事が出来ない立場になってしまったが、2人の間に気まずさやよそよそしさは全く無かった。

 

 

「ルイスもホグズミードに行ったの?」

「ううん行ってないよ。……時間だ、入ろうか」

 

 

ルイスは腕時計を見てソフィアとの話を切り上げると扉をトントンと叩き名乗った。すぐに扉の向こうから「どうぞ」と朗らかな声が聞こえ、ルイスは扉を開いた。

 

 

「やあ、待っていたよルイス、ソフィア」

「お招きくださりありがとうございます、スラグホーン教授」

「今日を心待ちにしていました」

 

 

恰幅の良い体を揺らし両手を広げたスラグホーンにルイスとソフィアは人当たりの良い笑みを浮かべる。スラグホーンは嬉しそうににっこりと笑うと既にディナーの支度が整っている部屋の中央へと2人を誘った。

 

部屋は想像以上に広く、シックな家具が整然と並べられていた。奥にある暖炉では温かな火が燃え、棚の上には写真立てがいくつも並び、その中には若かりし頃の著名な魔法使いや魔女が笑顔を見せている。

 

 

「君たち2人が揃うのを楽しみにしていたんだよ。ソフィア、君は魔法薬学を受けていないだろう?いやはや、とても残念だ。魔法薬学は苦手かね?」

「OLW試験ではEでした。──その、Oでないと受講出来ないと勘違いしていまして……」

「おや、さらに残念だ!まあ──私が聞くところによると、君は変身術の才能があるようだ。お母さんに似たんだね」

 

 

スラグホーンは杖を振るい金色の皿の上に豪華な料理を出現させ、食べるように促す。ルイスとソフィアはぴかぴかと光るフォークとナイフを掴み、美しく盛り付けられたサラダを食べつつチラリと視線を交わした。

 

 

「やはり、スラグホーン教授は僕たちの母が誰かをご存知なのですね」

「ああ、勿論だとも。アリッサ・エバンズ──とても優秀で、ずば抜けた才能を持っていた。妹のリリーと同じくね。

私は今でも彼女達がマグル出身だとは信じられないんだよ──いや、マグル生まれを下に見るわけではないがね。生まれ育った環境というものは、どうしても能力に影響を及ぼす。彼女達は真の才能を持ち、さらに努力家だった」

「……ええ、母を尊敬しています」

 

 

スラグホーンはマグル生まれを下に見ているわけではないが、やはり著名な魔法使いや魔女は魔法族の両親から生まれた者が多い。だからこそスラグホーンはマグル生まれであるアリッサとリリーの才能を見て()()()()()にしたという事実もあるのだろう。

 

 

「君たちのプライベートな事は言ってはいけないとダンブルドアからうるさく言われていてね。話す機会をずっと探していたんだよ。──父親はご健在かな?」

 

 

ワイングラスを傾け何気なさを装ってはいたが、スラグホーンはこの食事会でルイスとソフィアの父親の事が知りたくてたまらなかった。目星をつけている者は一名いるが、公になっていないということは言えない事情でもあるのだろうか。

アリッサは、在学中に妊娠し──寮監であるスラグホーンにそれを伝えはしたが、父親が誰なのかを言うことは無かった。スラグホーンだけではなく、どの教師にも、保険医であるポンフリーにも黙秘を続けたのだ。

卒業して暫くした後、スラグホーンの元に届いた手紙にはどうしても父親を伝えられない謝罪と、無事に産まれた赤子とアリッサの幸福そうな写真が収められていた。

手紙での交流は止まることは無く、さらに双子を妊娠し出産したと知り──そして、彼女の訃報を、彼女とその息子が亡くなって数年後に知らされたのだ。

 

 

「父は、気軽に会えません。……その関係も──僕たちが成人するまでは、誰にも告げてはならないと言われていて」

「そうか──いや、それなら仕方がない。ご健在でよかったよ」

 

 

ルイスは申し訳なさそうに眉を下げ、寂しげに微笑む。

内心では残念でならなかったが、スラグホーンは気にするなと首を振り、話題を変え、アリッサの学生時代の話を雄弁に語った。

どれだけ彼女が才に溢れていたか。

どれだけ教師達からの期待を集めていたか。──はじめの数年はスリザリンで過ごす日々は易しいものではなかったが、持ち前の才能と美貌、そして何よりもどんな侮辱も跳ね返すほどの確固たる自信から堂々としたものであり、いつしかマグル生まれを馬鹿にするスリザリン生からも一目置かれる存在になっていた。

 

ソフィアとルイスはスラグホーンがアリッサの話を楽しげに語るのをにこにこと笑い聞いていた。たしかに自分達の知らない母の様子を知る事ができるのは嬉しい事だ。だが、心から喜べないのはスラグホーンから聞くよりも、2人はそれを父親(セブルス)から聞く事を望んでいたからだろう。

 

 

食事会が終わったのは10時を回った頃だった。通常、この時間に生徒が寮を抜け出して外出する事は禁じられ罰則と減点の対象になる。しかしスラグホーンはもし見回りの教師と会ったならば自分の名前を出すようにと伝え2人の肩を優しく叩いたのだ。

 

 

「悪い話では無かったね」

「そうね……母様の事が知れて嬉しいもの。ただ少しオーバーに伝えすぎな気がしたけれど」

「寮監だし、お気に入りだったみたいだからね」

 

 

細い窓から差し込む月明かりがソフィアとルイスを柔らかく照らしていた。

幼き頃はよく似た双子であり、背丈も、顔の作りも同じだった。しかし今ではルイスの方が頭ひとつ分はソフィアよりも高く、顔立ちも涼しげな青年へと成長している。

 

ソフィアは隣を歩くルイスを見上げ、そっと手を握った。

もうソフィアとルイスは幼い子どもでは無く、兄妹間であっても手を繋ぎ歩くだなんて誰かに見られたならば怪訝な顔をされるだろう。ソフィアは一瞬、振り払われるかと思ったがルイスは優しげに目を細め、ソフィアよりも大きな手で握り返した。

 

 

「どうしたの?」

「……ルイス、無茶をしないでね」

 

 

ルイスとソフィアは足を止め暫く見つめ合った。ルイスは一瞬目を揺らせたがすぐにいつものように微笑むと身を屈めソフィアの額に軽くキスを落とす。

 

 

「大丈夫だよ、心配しないで。──おやすみ」

「……おやすみなさい」

 

 

そっと離れたルイスはソフィアの目元を指先で掠めるように撫でるとスリザリン寮がある地下階段を降りる。ソフィアは闇へ降りていくルイスの背中をじっと見送った後、グリフィンドール塔を登った。

 

 

 

もうハリー達は寝てしまったかと思っていたが、グリフィンドールの談話室にはハーマイオニーとハリーの姿があった。2人で一つの机を占領し、沢山の本や羊皮紙を広げている。

 

 

「あ、ソフィア──お疲れ様、と言うべき?」

 

 

ハーマイオニーは悪戯っぽく笑い手に持っていた羽ペンをくるくると回した。ハリーの隣に座ったソフィアはぐっと大きく天井に向かって腕を伸ばし、大きく息を吐き出したあと「うーん、そうね」と苦笑しながら頷いた。

 

 

「母様の学生時代の話を聞かされたわ。勿論それは嬉しいんだけど……少しオーバーな言い方に感じたし……悪い人ではないってわかるんだけれど……」

「ああ、わかるわ。あの人って自分が全てをわかっているように見せたいんだと思うわ。輝かしい経歴を持つ著名な人の全てを知っている理解者なんだぞ──って自慢したいのよ」

 

 

ハーマイオニーの的確な分析にソフィアは困り顔で頷いた。

ハリーは難解すぎる変身術の宿題に唸りながら取り組んでいたが、ついにレポートの書き損じをぐしゃぐしゃと手のひらで潰し、暖炉の中に投げ入れ羽ペンを置いた。

 

 

「あー、もう今日は止めよう」

「後で困るのはあなたよ」

 

 

ハーマイオニーはすぐに厳しい言葉をかけたが、ハリーは羽ペンを持つ気になれずソファに深く背を預け足を投げ出した。

 

 

「この論理、訳がわからない」

「どこ?──ああ、これね……確かに普通の教科書だけでは分かりにくいわ。私が持っている参考書を持ってきましょうか?」

 

 

横から宿題を覗き込んだソフィアはマクゴナガルとの個人授業で既に学んだ事だと気づき、ハリーに聞いたがハリーは首を振り「明日でいいよ」と断った。

 

 

「もう今日は頭がパンクしそうなんだ」

「まあ、そんな日もあるわね。──ロンは?」

「食べすぎて気持ち悪くなったって言って、もう寝室だよ」

「それに、昨日よく眠れなくて眠いって言ってたわね」

「あれだけ食べてたし、昨日は色々あったものね」

 

 

自分の知らぬところでまた何かがあり、ロンが不貞腐れて部屋に引きこもっているのかと心配したが、ただの食べ過ぎと寝不足だったようだ。

机の上に広げた教科書や羊皮紙を片づける2人を見ながら、ソフィアも眠そうな欠伸をひとつこぼした。

 

 

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