【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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335 一足先のプレゼント!

 

 

窓が凍りつき外では雪が吹き荒れる。

厳しい冬の到来だったが、ホグワーツ城は早くもヤドリギや豪華なクリスマスツリー飾り付けられ近づいてくるクリスマスの訪れを感じさせた。

凍えるような寒い日であっても恋人達はヤドリギの下で互いに寄り添い暖をとり、恋人がいない者も熱に当てられどこか心がそわそわと落ち着かない。

 

柊とティンセルの花飾りが階段の手すりに巻きつけられ、鎧兜の中には永久に燃える蝋燭が輝く。美しい光景に誰もがクリスマスまでに特定の相手を見つけたいと浮き足立つ中、ハリーは余裕のある表情でそんな生徒達を見ていた。

 

 

「あ、ほら。ヤドリギの下でキスしてるよ。僕らもした方がいいんじゃない?」

「んー、だめよ。恥ずかしいもの」

 

 

ハリーはソフィアの腰に手を回し期待を込めて囁いたが、ソフィアはひらりとハリーの腕の中から逃れるとハーマイオニーの隣に並んだ。

逃げ出したソフィアを見てもハリーは少し残念に思うだけで嫌な気持ちにはならなかった。ソフィアは他の恋人達のように常に糊付けされたかのようにくっつき合う事を好ましく思っていない。それを知っているからこそ気にせず「残念」と肩をすくめてみせるだけの余裕を持つのだ。

 

それに、ソフィアは数日前のグリフィンドールのパーティで、群衆の目の前だったにも関わらずキスをしてくれたのだ。

ハリーは跳び上がりたいほど嬉しく、それから今まで何があっても笑い飛ばせるほど上機嫌だった。

ソフィアとハリーが恋人である、という事実は恐ろしいほどの速さでホグワーツ中を駆け巡り、ソフィアは一部の女生徒から嫉妬と羨望を含む眼差しで射抜かれたものの、だれも2人の邪魔をする事はない。ソフィアとハリーは今まで恋人では無いかと噂され、ゴシップ記事に掲載されたこともあった。──たしかにお似合いだと、誰もが思ったのだ。

 

羨望の眼差しで見られたのはソフィアだけでなく、密かにソフィアへの恋心を持っていた男子生徒からの憎々しげな視線をハリーもまた受けていたが──ハリーはその視線すら、心地よいものに感じていた。

 

周りからの視線が少し変わっただけではなく、ソフィアは闇の魔術に対する防衛術の授業の時に一層ハリーへのあたりがキツく陰湿なものへとなった事にやや呆れと申し訳なさを感じていたが──ハリーはどうせクィディッチの試合でスリザリンが負けたからだろうと思い全く気にしなかった。

 

 

大広間では12本のクリスマスツリーが天井から降る雪を受け白くキラキラと輝く。あと数日経てばクリスマス休暇が始まる──その日を前に、ソフィアは悩んでいた。

 

 

クリスマス休暇のことだ。

ハリーとロンとハーマイオニーは不死鳥の騎士団本部で過ごすのだと今までの会話でわかっている。ハリーとロンはソフィアも当然そうだと思い込み何も聞かないが、ハーマイオニーだけが気遣うような視線を向けていた。

 

ソフィアはハリー達と──いや、ハリーとクリスマスを共にしたい気持ちは十分にあった。ここ数日は自分らしく無いことをしてしまうほどに彼に心を乱され、日に日に愛が溢れている。しかし、その気持ちと同じほどセブルスとルイスと共に過ごしたいとも思っていた。

 

今学年が始まってもう4ヶ月ほどが経つが、ソフィアは一度もセブルスと親子としての会話が出来なかった。

去年までは魔法薬学の補習と称して密かに親子でのティータイムを楽しむ隙があったが──今、セブルスはソフィアの得意な闇の魔術に対する防衛術の教師であり、ソフィアは補習を受けるような生徒ではない。

 

言い訳が出来ずセブルス(父親)に会いに行けば、ハリーはきっと疑うだろう。──特に、最近は図書館に行くだけでも片時も離れず着いてこようとしているし。

 

 

ソフィアはオートミールを食べるハリーを盗み見て、バレないようにため息を吐いた。

 

 

 

開け放たれた窓から大群のフクロウが雪を落としながら飛び込み、手紙や小包をそれぞれ配達していく。日刊預言者を受け取ったハーマイオニーはかぼちゃジュースを飲みながら見出しを見ていたが、奇妙に咽せ、ゲホゲホと何度も咳き込んだ。

 

 

「これ、見て!」

 

 

ハーマイオニーは机の上に乗っていた皿やミルク瓶を片腕で端の方に押しやると新聞を広げた。これほど取り乱すなんてどんな事件が書いてあるのか、苦い気持ちになりながらソフィア達は覗き込む。

 

 

「──え」

 

 

そこに飛び込んだ文字を見て、ハリーはぽつりと呟きすぐに机に広げた新聞に覆いかぶさるように顔を近づけた。

 

 

『シリウス・ブラックは無罪だった!?

マグルキラーと悪名高いシリウス・ブラック。彼は12名ものマグルを一度の魔法で殺害したことでその名が付けられたが──実は、その名が付けられるべき人物は他にいたようだ。殺害されたと思われていたピーター・ペティグリューの生存が確認されたのだ。

何故15年間も生存を隠す意味があったのか?ついに疑惑が明かされる──』

 

 

そこには指名手配されているシリウスの写真と同じ大きな写真でピーター・ペティグリューの写真が写っていた。

フードを目深に被っているが、小太りの醜い男の姿は忘れたくとも忘れられない。隣に小さく15年前のペティグリューの写真が載せられ、比べてみると確かに人相は酷いものだが彼の面影があった。

 

記事では死んだとされていたはずのピーター・ペティグリューが死喰い人特有の仮面をつけ姿を消す場面が目撃された事、そしてダンブルドアの証言としてシリウス・ブラックは死喰い人でも彼の親友であるジェームズ・ポッターを裏切ったわけではなく秘密裏に保護しているという事。不死鳥の騎士団は死喰い人であるピーター・ペティグリューを追っているという事が書かれていた。

魔法省は近いうちに過去のことを()()()()()()()()調査し、シリウス・ブラックに罪があるのか審議するものと決めたらしい。──つまり、シリウスが無罪になる可能性が出てきたのだ。

 

 

「言ってたのはこれだったんだ!」

 

 

ハリーはシリウスとの会話を思い出し小声で叫んだ。胸の奥で心臓がドキドキと高鳴りうるさい。本当にシリウスが無罪となったら?流石にあと一度の夏休みはダーズリー家に戻らなければならないと理解しているが、その後はシリウスと過ごす事が出来るのだろうか?いや、それよりもあの本部で篭りっきりのシリウスがついに堂々と陽の光を浴びて歩く事が出来るんだ。あんな暗い寂しいところで独りぼっちにならなくてすむ。騎士団のために自分だけが役に立たないと苦しまなくていいんだ──何て素晴らしいんだろう!

 

 

「ペティグリュー、ずっと姿を消してたのにどうして今になって見つかったのかしらね?」

 

 

ソフィアはハーマイオニーの隣から新聞を覗き込み、目に興奮の色を滲みせながら早口で話した。ペティグリューの姿は四年生の時

の三校対抗試合で、ヴォルデモートが復活する時の贄としてハリーの前に現れたきりだ。

それ以来ペティグリューは姿を見せてはいない──最も、ペティグリューだけではなくアズカバンを脱獄した死喰い人のほとんどが仮面を被り姿を隠してはいるのだが──一部の死喰い人達やベラトリックスは戦闘狂の側面もあるのだろう、顔を隠すことなく高らかに嗤いながらマグルの汽車を爆破し橋を落としている場面が何十人にも目撃されその凶暴性は魔法界全域に伝わってはいるのだが。

 

 

「えーっと……闇祓いが怪しい人物を発見し追跡したらペティグリューで──ほら、その時の写真がこれよ、ばっちり写っているわ!これでシリウスの無罪は確定するわよ、ダンブルドアも認めているんだもの」

 

 

ハーマイオニーは細かな文字を読み、大きく掲載されている写真を指差した。

日刊預言者新聞を購読している生徒達もピーター・ペティグリューの生存記事を読み騒めきひそひそと言葉を交わす。教師陣が座る席にダンブルドアの姿を探す者も居たが、ダンブルドアはクィディッチの試合以来、また姿を見せず校長席は空席となっていた。

ソフィアはセブルスの様子を見たが、彼は生徒達の騒めきを気にする事なくいつものように静かに紅茶を飲んでいる──つまり、彼はこうなる事を知っていたのだろう。

 

 

「シリウスの無罪が証明されるなんて……!早めのクリスマスプレゼントだ!」

「シリウスはそのつもりだったのかもしれないわね」

 

 

喜びに震えるハリーに、ソフィアは小声で囁く。ペティグリューの罪が暴かれないまま人知れぬ場所で命を落としてしまえば、きっとシリウスの無罪はダンブルドアが言おうとも証拠不十分として受理されないだろう。しかし、ペティグリューが生きている姿を見せ、さらに死喰い人であると言うことが確定すればダンブルドアの証言も無視する事は出来ないはずだ。

 

 

「もうすぐクリスマス休暇だ。きっとシリウスは喜んでるだろうな」

「休暇の前に、沢山の宿題をしっかり終わらせないといけないわよ。じゃないと、楽しいパーティを過ごせないもの」

「宿題が残っていても楽しめると思うけどな」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは眉を吊り上げたが、すぐに「私がみてあげるわ」と彼女にしては優しい言葉で言った。

ハリーとソフィアはロンとハーマイオニーの悪くない雰囲気にニヤリと笑い合ったが、幸運にも宿題やパーティのことを話す2人にはバレなかったようだ。

 

ソフィアはハムサンドを食べながらスリザリンテーブルを見て何気なくルイスを探した。ルイスは日刊預言者新聞を購読していないが、周りのスリザリン生が彼に新聞の記事を見せ少し驚いた表情をして何かを話しているところだ──きっと、シリウス・ブラックが無罪であり、ピーター・ペティグリューが死喰い人だという話題はスリザリンでも暫く話題に上がるだろう。

 

ルイスは見せられていた日刊預言者新聞を突き返し、ポテトが盛られている皿から一本摘みながらチラリとソフィアを見た。

そのまますぐにセブルスへと視線を向け、ソフィアにだけ伝わるように小首を傾げる。

遠く離れた場所だったが、何を伝えたいのかわかったソフィアは微かに頷いた。

 

 

 

1日の授業を終え、ロンとハリーがクリスマス休暇前最後のクィディッチの練習へと向かった後、ソフィアは闇の魔術に対する防衛術の教室近くにある研究室へと向かった。

その扉の前で待っている人影に気付き、ソフィアは足を早め、ほっと表情を和らげる。

 

 

「ごめんなさい。少し遅れたわね」

「ううん。──ソフィア、よくわかったね」

「この時間しかハリーに怪しまれずに会えないもの」

 

 

ソフィアの言葉にルイスは小さく笑うとソフィアの隣に並び目的地である扉を見る。

ルイスが扉をノックし名前を告げれば、数秒の沈黙の後「入りたまえ」と低い声が響いた。去年までは度々行っていたこのやりとりも、今では懐かしさを感じるほどになってしまっていて──ソフィアは、ほんの少しだけ寂しさを覚えた。

 

 

「失礼します」

 

 

初めて入る場所だったが、どこか魔法薬学の研究室を思わせる暗い雰囲気に、ソフィアは変わらぬところがあった事に安堵する。セブルスはソフィアとルイスの訪れにいつもと同じような冷たい視線を向けたがすぐに杖を振り扉を閉め、防音魔法をかけたあとの眼差しは、教師としてのものではなく父としての柔らかさが含まれていた。

 

 

「休暇の相談か?」

「僕は相談する必要はないんだけどね。今年も残るから」

「私は──悩んでるの」

 

 

セブルスの言葉から親子として話せるのだとわかった2人はすぐに部屋の中央に現れたソファに座りながら砕けた口調で話す。

セブルスは沈黙しながらもう一度杖を振り、対面側に肘掛け椅子を出現させるとそこに腰掛け、足を組み替えた。

 

 

「クリスマスは、父様とルイスと過ごしたいわ。でも、その気持ちと同じくらい──その、ハリーと過ごしたいの」

「恋人と過ごしたいって思うのは、当然だよ」

 

 

セブルスはソフィアの口から出た言葉に嫌そうに眉を寄せたが、ルイスは肩をすくめソフィアの気持ちに寄り添った。

セブルスはハリーとソフィアの仲を勿論知っている。恋人ならクリスマスの日に共に過ごしたいと考えるのは至って普通の思考だ。しかし、選択する余地が無かった去年とは異なり、クリスマス休暇に残る事も出来るソフィアがこうして家族と恋人を天秤にかけている様子に良い気持ちはしない。──何せ、相手はあのハリー・ポッターなのだ。

 

 

「ハリーは、私がクリスマス休暇も一緒に居るって少しも疑ってないわ。当然、本部で過ごすと思ってるの。ハーマイオニーは多分、私が悩んでる事に気づいているけど……」

「……」

「悩むって事は、もうソフィアの中では決まってるんじゃないの?」

 

 

何も言わず沈黙したままのセブルスの代わりにルイスが静かに問いかける。ソフィアは考えないようにしていた気持ちを当てられたことに瞳を揺らせ──項垂れた。

 

 

「……ソフィア、僕たちに決めて欲しいんでしょ」

「そんな──」

「僕たちが残って欲しいって言えば残るし、行っていいよって言えばそうするつもりだったんでしょ?その方が罪悪感が少ないからって──だめだよ。自分で決めなきゃね」

「……そうね」

 

 

ルイスの真理をついた言葉にソフィアは吐息と共に小さく頷き暫く自分の脚の上で握られた拳を見ていたが──顔をゆっくりと上げ、苦い表情をしているセブルスを見た。

 

 

「私……クリスマス休暇は、本部に行くわ。ハリーと過ごしたいの」

「……、……ああ、わかった」

 

 

セブルスは重々しく頷き──心の底ではぐらぐらと怒りが激っていたが──ソフィアは年頃の娘だ、仕方のない事だと自分自身に言い聞かせ「行くな」という言葉をどうにか飲み込んだ。

 

 

「ありがとう、父様」

 

 

ソフィアは立ち上がり、セブルスに近寄りそっと頬に感謝と謝罪を込めてキスをして首元に抱きついた。柔らかなソフィアの髪を撫でながら、セブルスはこの大切な娘にあのハリーが触れることになるのか──いや、既に触れているのかと一瞬考えたが、すぐにその光景を想像する事を脳が拒絶し吐き気が込み上げ無理矢理思考から追い出す。

もうソフィアは16歳になり、成人まで後一年である。年頃の男女が性行為をする事は至って普通の事であり、自分自身、ソフィアの年齢の時には既にアリッサと行為があった。──だが、受け入れられるかはまた別問題であり、セブルスは到底受け入れられなかった。かといって、面と向かってソフィアに経験があるのかを聞き頷かれたならば暫く寝込むはめになるだろう。

心情は穏やかではなかったが、セブルスは何も言わずにソフィアを優しく抱きしめた。

 

 

そのあと暫く簡単な近状報告をしたソフィアとルイスは、クィディッチの練習を終えたハリーとロンが寮へ戻る前に研究室を後にし、少し薄暗くなった廊下をいつもよりゆっくりと歩いていた。

 

 

「ソフィア、ティティの変身はうまくできるようになったの?」

「え?最近変身させていないからわからないけれど……多分、白いままだと思うわ」

 

 

唐突に切り出された話題に、ソフィアは何故そんな事を聞くのだろうかと思いルイスを見上げる。しかし、蝋燭の温かな灯りが姿を照らしていて彼の表情は揺らめく火の影に隠れうまく見ることができなかった。

 

 

「そうなんだ。──完璧に変身できるようになって欲しいね」

 

 

ルイスの呟きにソフィアは足を止め、数歩分離れたルイスの背中を見つめる。ルイスは振り返り、ソフィアの訝しげな視線を受けながら目を細め微笑んだ。

 

 

「それは、()()()()()()()()

「僕たちにとって」

「……わかったわ」

 

 

含みを持たせるルイスの言葉にソフィアは真剣な顔で頷き、開いた距離を埋めるため小走りで駆け寄り隣に並ぶ。気がつけばそれぞれの寮に向かう分れ道に辿り着き、2人は向かい合い色の違う瞳で見つめ合った。

 

 

「いいクリスマスを」

「ええ、いいクリスマスを」

 

 

ルイスは身を屈めソフィアの頬に優しく口付け、ソフィアも同じように返した。いつもならすぐに離れるルイスだったが、ソフィアの耳元で彼女にしか聞き取れないほど小さく囁き、それを聞いてソフィアが瞳を揺らし狼狽している内に踵を返し、スリザリン寮へ向かう暗い階段を足早に降りて行った。

 

 

「──……」

 

 

ソフィアは一歩踏み出したが、唇をぎゅっと結びグリフィンドール塔へ駆ける。

走り去るソフィアを見た者は少し驚きながら彼女を見送り、何かあったのだろうかと囁いた。

 

 

太ったレディに合言葉を告げ肖像画をくぐったソフィアは大広間を見渡し、そこにハリー達の姿が無いことを確認すると重いものを吐き出すように長くてため息をつき暖炉近くの肘掛け椅子に深く座った。

 

パチパチと爆ぜる炎を見つめるソフィアの顔は今にも泣きそうなほど歪んでいたが、ハリーとロンが練習を終え、ハーマイオニーが図書館から戻り談話室に戻ってきた時にはいつも通りの表情に戻り、膝の上に乗っているティティの体を撫でにっこりと微笑み迎えることができていた。

 

 

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