【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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336 クリスマスパーティ!

 

 

スラグホーン主催のクリスマスパーティの日。ソフィアとハーマイオニーはその日の授業を終えるとすぐに部屋へ戻り身支度を始めた。

 

 

「いいわね。私も行きたかったわ……」

「素晴らしいパーティだって聞いたわよ、羨ましいわ!」

 

 

2人と同室であるパーバティとラベンダーは化粧を落とし、いつもより念入りに乳液を塗るソフィアとハーマイオニーを見て羨ましげに呟く。前髪を魔法で上げたソフィアとハーマイオニーは少し申し訳なさそうにしながらもにこにこと喜びを隠しきれぬように笑い、「楽しんでくるわね」と柔らかい声で答える。

 

 

「ハーマイオニー、あなたロンと付き合ってるの?」

「そ、ういうわけじゃないわ」

 

 

ラベンダーからの問いかけにハーマイオニーは歯切れの悪い返事を返したがその頬は化粧をしていないにも関わらず赤く染まっている。

まだ付き合っていないのか、とラベンダーは思ったがそれでもきっと時間の問題なのだろう。ロンとハーマイオニーはよく喧嘩をしていたが、ここ数日は周りから見てもわかるほど穏やかで互いを尊重しあっている。

ラベンダーはハーマイオニーの美しく巻かれた髪を見ながら大きくため息をつき、自分のベッドに座ると大きな枕を抱えた。

 

 

「あーあ!私、ちょっとロンって良いなぁって思ってたのに、入り込む隙なんてなさそうね」

「えっ!──そ、そうだったの?」

 

 

ハーマイオニーは身支度もそこそこに焦りが滲む表情で振り返り、視線を彷徨わせる。まさか他の誰かがロンを想っているだなんて、そんな事夢にも思わなかったのだ。

 

 

「クィディッチでは素晴らしいプレイを見せていたし──ほら、輝いていたじゃない?」

「うー……ん、そうね」

「でも、いつも隣にはあなたがいたんだもの。それに、ロンもいつもあなたを見てるし。諦めたわ」

 

 

枕に頭を預けたラベンダーは軽い口調で冗談混じりにそう言ったが、彼女の親友であるパーバティはその声音で言葉を吐く事にどれだけ努力しているのかを知っていた。心配そうにラベンダーを見つめるパーバティの視線には気付かぬフリをしたラベンダーは、枕を後ろに放り投げぴょんと立ち上がるとベッド脇の棚から小さなガラス瓶を取り出す。

 

 

「これ、すっごく良い匂いがするの。もしまだコロンをつけてなかったら、是非つけてみて!きっとロンもイチコロよ」

「え、あ──ありがとう、ラベンダー」

「安心して、勿論私の匂いじゃないから」

 

 

ラベンダーは戸惑いつつもホッと安堵した表情を浮かべるハーマイオニーに笑顔で小瓶を渡し、たおやかな自身の髪を後ろに払いにっこりと微笑んだ。

 

 

「パーティの話、楽しみにしているわ。もしハーマイオニーが──勿論、ソフィアも──夜に帰ってこなくても、探しにいかないからね」

 

 

くすくすといつものように笑いながらラベンダーはパーバティの手を引き、そのまま部屋を出た。

ぱたん、と閉じた扉の前で俯くラベンダーに、パーバティは気遣うようにそっと寄り添い肩を撫でる。

 

 

「あなたは素敵よ」

「……ありがとう、パーバティ。──お腹すいたわ!大広間に行きましょう?」

「ええ、そうね」

 

 

ラベンダーは俯いていた顔を上げるといつものように明るく笑う。

彼女にとってロンに対しての感情は、憧れと少しの愛情だ。しかしそれが叶わなかったとしてラベンダーは心の底から落ち込む事はない──そこまで、本気で愛しているわけでは無かった。ただ、そう、最近のロンは自信に満ち、眼差しも柔らかく、眩しくてつい惹かれてしまった。

 

 

 

ハーマイオニーは暫く閉じられた扉を見ていたが、手の中に収まる小さな瓶に視線を落とし長いため息をついた。

 

 

「……気が付かなかったわ」

「私もよ。──ラベンダーは、とっても良い人だわ」

「ええ──そうね」

 

 

ハーマイオニーはその小瓶の蓋をそっと開け、中から甘く優しい匂いを胸いっぱいに吸い込み、自分の手首と首元に少しだけ乗せた。

 

 

 

 

いつもより大人びた化粧と美しいドレスで着飾ったソフィアとハーマイオニーは周りからの羨ましそうな視線を浴びながら談話室でハリーとロンの到着を待っていた。

2年前、ロンのドレスローブは流行遅れよりもさらに酷く歴史を感じさせるものだったが、商売が上手くいっているフレッドとジョージから新品のドレスローブを買ってもらい、ハリーと並んでも見劣りしない装いになっていた。

まさかハリーは今年もドレスローブを着るとは思わず、新しいネクタイとシャツを通販で新しく購入しただけだったが、2年前よりも大人びた彼は礼服を着ることにより、さらに男らしさが洗練されているだろう。

 

大人びたのは何もハリーとロンだけではない。

ソフィアとハーマイオニーもまた女性らしく成長し、控えめだったソフィアの胸元もそれなりに──ハーマイオニーよりは小ぶりだが──主張するようにはなっていた。

ソフィアは見る角度により発色が異なる真紅色の艶やかなドレスを着て、ハーマイオニーはシルエットが強調されやすい水色のマーメイドドレスに身を包む。薄手の羽織りを肩にかけ綺麗に結い上げた髪にはスパンコールや真珠の飾りで輝いていた。

 

 

「ソフィア、すごく素敵だ」

「ありがとうハリー、あなたも素敵よ」

 

 

ハリーはソフィアのいつもとは違う妖艶さに臍の奥あたりがずくずくと疼き、今すぐ濃厚なキスをし2人きりになりたかったがなんとかその気持ちを押し殺しソフィアの手を取り甲に口付ける。ソフィアは頬を赤く染め嬉しそうに笑うとハリーの頬に軽くキスを返した。

 

ロンもまた美しく着飾ったハーマイオニーを見て目を瞬き、ごくりと生唾を飲み込む。2年前、彼女の隣にいたのはクラムだったが──今、隣に立つことができるのは僕自身だ。

奇妙な満足感と愉悦感にロンは何故そう思うのかわからず内心首を傾げつつ「何か本で読んだな。馬子にも衣装だっけ?」といつものように揶揄う。その言葉は人によっては間違いなく不快になってしまう言葉だったがハーマイオニーは片眉を上げ呆れたように笑い、「あなたもね」と答えた。

 

 

「エスコートしてもらえるわよね?」

「あ──うん」

 

 

ハーマイオニーはすっと腕を差し出し、ロンは初めて彼女の腕がこんなにも細くて白いのだと知った。常にそばにいて忘れてしまいがちだが──そうだ、ハーマイオニーは女の子なんだ。

 

ぎこちなくハーマイオニーの手を取ったロンは、いつもは香らない甘い香りに鼻をひくつかせながら肖像画を潜る。

ハリーとソフィアはいい雰囲気の2人を見てにっこりと笑い合い、当然のように腕を絡め寄り添いその後を追った。

 

 

「パーティはどこであるの?」

「スラグホーンの部屋だってさ」

「そうなの、どんな人が来るのかしらね」

「吸血鬼が来る予定だって、噂で聞いたわよ」

 

 

ソフィアの疑問にハーマイオニーが顔だけで振り返り答える。

驚き「吸血鬼?」と呟いたソフィアに、ハリーは「あいつがいたらぶっ倒れてるね」と囁いた。

 

 

「それは、まあ、フリだったわけだけどね」

「僕は見てみたかったなぁ、吃りまくるか気絶するんじゃないか?」

「ええ、きっと立ったままね!」

 

 

ハリーのジョークにソフィアは楽しげに笑い、ハーマイオニーとロンも大きく頷きジョークを返す。

本当に吸血鬼が来ているのかどうか話し合っている内にスラグホーンの部屋がある廊下へと辿りついたソフィア達は、近付くにつれ陽気な音楽と共に笑い声と楽しげな話し声がだんだん大きくなっている事に気付いた。

扉には「クリスマスパーティ」と細い文字で書かれたプレートがかけられ、それはダイアモンドのようにキラキラと輝いていた。

そっとロンが扉を押し開ければ──途端にソフィア達は言葉と笑い声の洪水に飲み込まれてしまった。

 

見た目より広い部屋は、おそらく彼が部屋全体に魔法をかけているのだろう。天井と壁はエメラルド、紅、金色の垂れ幕や襞飾りで優美に覆われ、参加者は全てそれに相応しい装いをしていた。天井の中央には凝った装飾を施した金色のランプが下がり中には本物の妖精達がそれぞれ煌びやかな光を放ちながら飛び回る。マンドリンのような音に合わせて歌う美しい歌声が部屋の隅の方から流れ、年長の参加者が集まる片隅ではパイプの煙がベールのように漂っていた。

 

何人かのハウスエルフが料理を乗せた銀の盆を持って動き回り、参加者は目を落とさぬまま飲み物をスマートに受け取る。

 

 

「たしかに、すっごく素敵だわ」

 

 

ソフィアはホグワーツ生だけでなく見知らぬ大人が多いこの空間に圧倒されながら呟く。閉鎖的なホグワーツで休暇中でもなく、ホグワーツにとって無関係な人たちを集める事ができるのは、まさにスラグホーンが特別な存在だからだろう。

 

 

「これはこれは、ハリー!」

 

 

ハリーとソフィアが混み入った部屋に入るや否や、スラグホーンの太い声が響き人を掻き分け笑顔で現れる。

 

 

「やあ、ソフィアも!嬉しいね。さあ、さあ、入ってくれ。ハリー、君に引き合わせたい人物が大勢いる!」

 

 

スラグホーンはゆったりとしたビードロの上着を着て、お揃いのビロードの房付き帽子を被っていた。ハリーの空いた片腕をしっかりと掴むと、何か目論見ありげな様子でハリーをパーティの真っ只中へと導く。ハリーはソフィアの手を離す事はなく、ソフィアもまたその中央へと誘われた。

 

スラグホーンの元生徒であり、『血兄弟─吸血鬼たちとの日々』の著者であるエルドレド・ウォープルとその友人のサングィニという吸血鬼を紹介されたハリーは何かを言う前に熱烈な歓迎を受けがっしりと握手をさせられる。

ソフィアはウォープルがハリーの伝記を書きたいと熱っぽく話している間、吸血鬼のサングィニを失礼のない程度に見つめた。

サングィニは線が細い長身でありどこかやつれている。目の下に黒い隈がありかなり退屈しているようだった。

 

 

「こんばんは、私はソフィア・プリンスです」

「ああ──どうも、サングィニと呼んでくれ」

 

 

サングィニは近くにある女生徒を見ていたが、ソフィアに話しかけられると驚いたように目を見張り嗄れた声で軽く挨拶をした。自分より数十センチ以上低いソフィアを見下ろしたサングィニはソフィアの白く顕になっている首筋を見てごくりと生唾を飲み込む。

 

 

「吸血衝動を抑えるのはとても大変な事だと聞いたのですが──」

「まぁ、ここに来る前にたらふく飲まされたからね。元論、獣の血だが。──君はなかなか良い香りがするな……なるほど、穢れのない身か」

 

 

サングィニのねっとりとした飢えた視線に、ソフィアは引き攣った顔で曖昧に笑い、半歩後ろに下がりハリーの袖を掴んだ。

 

 

「──サングィニ!手を戻しなさい!」

 

 

ハリーと話していたウォープルはサングィニの腕がソフィアに伸びかけたのを見て厳しい口調で止め、そばを通ったハウスエルフが持つ皿から肉入りパイを掴み、サングィニの手に押し付けた。

 

 

「さあ、肉入りパイを食べなさい。──いやぁ、君、どんないい金になるか考えても──」

「まったく興味ありません」

 

 

ハリーはウォープルの誘いをキッパリと断り、ソフィアの腰に腕を回しぴたりと寄り添った。

 

 

「それに、少し彼女と踊りたいので。失礼します」

 

 

ハリーは有無を言わせぬ笑顔を見せ、スラグホーンとウォープルが呆気に取られている間にソフィアをエスコートしながら人混みの中に身を隠した。

途中でハウスエルフからキラキラと金色に輝く飲み物が入っている細いグラスを2つ取り、壁際まで進むとようやく足を止めソフィアにグラスを手渡す。

 

 

「すごい熱気だね」

「そうね、2年前のダンスパーティを思い出すわ」

 

 

流れている曲はワルツではなかったが、魔法界でのカリスマ的存在である妖女シスターズが不思議と気分が上がる曲を演奏し歌声を乗せている。踊りに興じている者は少ないが、少なくない数の人達がリズムに乗りながら揺れていた。

 

 

「あ、ほら見て。ハーマイオニーとロンよ」

「本当だ。楽しそうで良かったね」

「ええ、本当に!──生徒だけじゃなくて、先生達もいるのね」

「え?……トレローニーにはバレたくないな」

 

 

パーティに誘われたのは生徒やゲストだけでは無く、数名の教師が美味しい酒や料理に舌鼓を打っている姿が見えた。その中で足元がおぼつかずふらふらとしているのは──後ろ姿だけでもあの特徴的な服で判断できる──トレローニーであり、ハリーは嫌そうに顔を歪め、爽やかなドリンクを飲んだ。

 

ソフィアは大勢の人の中にセブルスやルイスの姿がないかと探したが、残念ながら人が多すぎてわからない。セブルスは呼ばれたとしても、来るような性格ではないか、とソフィアはすぐに人混みの中から2人を探すのを諦め壁に背をつけた。

 

 

「僕、料理を取ってくるよ。ここで待ってて」

「ええ、ありがとう」

 

 

ハリーはにこりと笑うと美味しい料理を取るために、揺れているスラグホーンの房付き帽子を避けながらパーティの中央へと進んだ。

ソフィアは美しいシャンデリアや煌びやかなドレスに身を包む大人たちをじっくりと見る。スラグホーンに招待された人たちなのだ、きっと何かの分野に秀でた才能ある者たちなのだろう。

 

 

「あれ?ソフィアひとりなの?」

「ハリーは料理を取りに行ったわ。ハーマイオニー、あなたこそロンは?」

「有名なクィディッチの選手がいたの、そっちにお熱よ」

 

 

ハーマイオニーは嫌そうにため息をつき、人が集まる箇所を指差す。人の壁に阻まれその中央にいる者の姿は微塵も見えないが、背伸びをして懸命にアピールしているロンの少々間抜けな姿はよく見えた。

 

 

「まぁ!名前は?誰だったの?」

「ああ、そういえばソフィアもクィディッチにお熱だったわね……さあ、忘れちゃったわ、興味無いもの」

 

 

つまらなさそうに答えたハーマイオニーは肩をすくめ、近くを通ったハウスエルフから初蜜酒入りのグラスを取ると口につけ一気に飲み干した。

 

 

「残念だわ。まあ──ロンはもっと残念ね、お熱にならないといけない人はそばにいるのにね?」

 

 

ニヤリと笑いソフィアがハーマイオニーを上目遣いに見れば、ハーマイオニーは言葉を詰まらせ頬を少し赤く染めた。

 

 

「そうかもしれないわね。──ソフィア、ありがとう」

「え?」

「あの試合で、ソフィアがハリーを信じなければ、私は2人を責め立てていたわ。きっとクリスマスパーティなんてロンと来れなかった。──ううん、また喧嘩して、最悪なことになっていたかも」

「ふふ、気にしないで。2人が幸せだと、私も幸せだもの」

 

 

ソフィアは優しく微笑み、ハーマイオニーに寄り添う。ハーマイオニーはもし、ソフィアがグリフィンドールに組分けされずスリザリンだったならば──いや、一年生のあの時、友達になる事なくその手を払っていたならきっと自分の学生生活は色を失っていただろうと思った。

ハリーとロンも、勿論友達であり親友だ。だがやはりハーマイオニーにとってのソフィアは彼らより特別な存在であり、隣にいないだなんて空想するだけで胸が痛む。

 

 

──ソフィアが居てくれて、親友になれて良かった。

 

 

ハーマイオニーは目に浮かんだものを酔ったせいだと言い訳するために、甘い蜂蜜酒を飲みほした。

 

 

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