【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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338 幸せなクリスマス休暇!

 

 

ソフィア、ハリー、ハーマイオニー、ロン、ジニーの5人はクリスマス休暇に不死鳥の騎士団本部へ帰っていた。

ハーマイオニーは家族が待つ家へ帰るべきか悩んだようだったが、ハリーとソフィア、そしてロンが本部で過ごすのなら自分だけ仲間外れなのはなんとなく寂しく、さらに──最近いい雰囲気であるロンと共に過ごす方が、ハーマイオニーにとって魅力的だった。

 

 

ソフィア達はクリスマス休暇の1日目に、ハリーとロンに与えられた部屋で、クリスマスパーティを抜け出したセブルスとドラコがどんな会話をしていたかを聞かされた。

間違いなく何かを企んでいるというハリーの言葉に、ソフィア達は頷くが──ハリーが思うほど深刻に捉えていない。

確かにドラコは、名前を出さなかったがヴォルデモートの命令により何かを企んでいるのだろう。だが、騎士団であるセブルスが援助するフリをして探っているのなら大きな問題ではない。

 

 

「スネイプ先生は、ドラコの企みを聞き出そうとしているんじゃないかしら?」

「多分、そうだと思う。──でも、うまくいってないみたいで、マルフォイは嫌がってた」

 

 

ハリーはセブルス・スネイプという人間を心の底から憎み軽蔑していた。あっちが目に見えて嫌っているのだからそれは自分の当然の権利だと考えていた。

しかし、去年憂いの篩で自分の父親とシリウスが彼にしていた虐めの事実と、本当に父親が傲慢だった事や、自分の突拍子もない言葉を信じシリウスと連絡をとり無事を確認してくれたことなど──まだ目を合わせれば心の底が妙にそわそわとするような落ち着きなさと気まずさを感じ、過去のような嫌悪感や憎悪はないとは言い切れないが、それでも彼に対して慎重になり、冷静に見ることができるようになっていた。

 

 

「その時、スネイプはマルフォイの母親と約束したって言ってたな。マルフォイを護るって、破れぬ約束だとか──」

「破れぬ約束?……まさか、破れぬ誓い?」

 

 

数日前のことを思い出しながら言ったハリーに、ソフィアは眉をひそめ声を落とし恐々と囁く。一瞬で緊張を見せたのはソフィアだけでなく、ロンとハーマイオニーも硬い表情でハリーを見つめた。

なぜ3人がそんな深刻な顔をするのかわからず、ハリーは戸惑いながら「うん、そう言ってたけど」と小声で呟く。

 

 

「まさか、本当に?スネイプ先生が?」

「嘘だろ。ありえないよ」

「なんで?確かだよ。しっかりと聞いたんだ。──その誓いって、なんだい?」

 

 

ソフィアとロンは顔を見合わせ、辺りに本当に自分達しかいないかどうかを確認するために辺りを見渡した後、いっそう声を低くし囁いた。

 

 

「えーと。破れぬ誓いってのは、破れないんだ」

「あいにく、僕にだってそれくらいはわかるさ。破るとどうなるんだ?」

「……死ぬのよ」

 

 

ソフィアの答えは単純であり、強烈だった。

ようやく何故3人がこれほど深刻な表情をしているのかわかったハリーは拳をぎゅっと握り「本当に?」と渇いた声で囁く。

 

 

「ああ。僕が五つくらいのとき、フレッドとジョージが僕にその誓いをさせようとしたんだ。僕、ほとんど誓いかけてさ、フレッドと手を握り合ったりとかしてたんだよ。そしたらパパがそれを見つけて、めっちゃ怒った。パパがママみたいに怒るのを見たのは、その一回だけだ。フレッドなんか、それから尻の左半分がなんとなく調子が出ないって言ってた」

 

 

ロンは当時の事を思い出しながら遠い目をして呟く。たった5歳の幼き時だったが、それでも忘れられないほど強烈な記憶であり、アーサーの怒りは──モリーよりも激しかったのだ。

 

 

「魔法契約は破ることがとっても難しいの。それは三校対抗試合で知ってるでしょう?ダンブルドア先生でもどうすることも出来ない契約はある。破れぬ誓いは──その中の最たるものだわ。誓いの方法は簡単なの、複雑な手順はいらない。契約を結ぶ、結び手が必要なだけなの。簡単だけど……破れば死ぬわ」

 

 

ソフィアは顎に手を当て、少しカサついた唇を指先で撫でながら難しい顔で言う。

破れぬ誓いを結んだのは間違いないのだろう。ならば、その内容はどんなものなのかが気になった。ドラコを護る。その一点においての誓いならば深刻な問題ではない。セブルスは誓いを護るためにドラコに救いの手を伸ばしている。

ソフィアはハリーと同じく、早くからドラコとルイスが何か企んでいるだろう事を理解していた。彼らが死喰い人になったとは思っていないが、楽しい企みではないことは確実だろう。それも、アズカバンに投獄されたルシウスを助けたい一心で個人的に何かを企んでいるのだと考えていた。ならば、ソフィアはドラコを助け、護りたいというルイスを信じ、遠くから見守るだけにとどめていた。しかし、ドラコの企みがヴォルデモートに命じられたものによる事ならば、今までの考えを改めなければいけない。

それほど大きな事をするとは考えていなかったが、ヴォルデモートが命じる事などある程度予想は出来る。おそらく、ハリーを殺すかその弱味を探れとか──そんなところだろう。

 

 

「…スネイプ先生が、ナルシッサさんと結んだ誓いは何なのかしら。ドラコを護るだけならいいんだけど……」

「護る約束をした、としか言ってなかったな。マルフォイは知ってるみたいだったけど。……この話も、ダンブルドアとシリウスにしようと思ってるんだけど、どうかな?」

「ええ……ダンブルドア先生は、スネイプ先生から聞いて知っているかも知れないけれど……一応伝えておくのがいいわ」

 

 

騎士団員の中で全ての情報が共有されているわけではないだろう。しかし、全ての要であるダンブルドアは全てを熟知しているはずだ。それならばセブルスはすでにナルシッサと誓いを結んだ事や、ドラコの企みについて話しているかもしれない。だが、こちらもそれを()()()()()という事を知らせておくのもまた、重要だろう。

 

 

「シリウスはまだ戻ってきてないんだよね?」

 

 

シリウスの話題が出たタイミングで、ハリーがそわそわと落ち着きなくソフィア達に聞いた。

ソフィアとロンとハーマイオニーは、ハリーのその態度を少し微笑ましく見ながら頷く。

ハリーは本部に戻ってすぐにシリウスの部屋を訪ねたが、そこにシリウスの姿はなかった。今まで彼が姿を消した事はなく、動揺するハリーにリーマスは柔和に微笑み「手続きのために魔法省にいるんだよ」と嬉しそうに言った。

ハリーはその言葉とリーマスの嬉しそうな表情を見て「あっ!無罪が確定したんだ!」と歓声を上げたのだ。

 

 

「多分、今日の夜には戻ってくるんじゃない?モリーさんが張り切って料理の支度をしているもの。クリスマスパーティにはまだ早いし、そんな豪華な料理を用意する理由はひとつしかないでしょう?」

「うわー!楽しみだ!」

 

 

ソフィアの柔らかな言葉に、ハリーはピンと来ると明るい表情で待ちきれないとばかりに時計を見た。その針はまだ昼間を指し、急激に進むことは無く、ハリーは一瞬で夜になりシリウスが戻ってくればいいのにと胸を高鳴らせる。

 

 

ドラコとセブルスとの会話は一先ずここで自分達が頭を捻らせていても仕方のない事だとハーマイオニーが結論を出し、ハリーもそれに頷いた。

勿論納得はしていなかったが、そんな事で頭を捻らせ唸り続けるよりも、今はしなければならないことがたくさんあるのだ。

 

 

「モリーさんに手伝いはないかって聞きに行きましょう?もしかしたら、広間を飾り付けないといけないかもしれないし」

「うん、シリウスを喜ばせるためにね!」

 

 

ソフィアの声にハリーは明るく頷き、彼らは忙しく料理の下拵えをするモリーの元へ向かった。

モリーはソフィア達に厨房の飾り付けを頼み、ハリーは張り切って部屋の端にまとめられていた三角旗のガーランドを飾り、ハーマイオニーは沢山の花瓶に花をいけた。ロンは雑巾で部屋の隅々まで綺麗にし、ソフィアは横断幕を引っ張り出し壁にかける。そこには金色で輝く文字で『シリウス、おめでとう!』と書かれており、堂々と飾り付けられた横断幕を見たハリーは満足げににっこりと笑った。

 

 

 

夜の7時。ピカピカに磨き上げられた大皿の上には豪華料理が乗せられ沢山のバタービール瓶や蜂蜜酒、ワインが並ぶ中、ハリー達はそわそわと主役の到着を待っていた。

 

落ち着かない様子のハリーに、モリーは「もうすぐ帰るはずよ」と優しく伝えたが、ハリーは頷きつつも数分おきに時計を見て時刻を確認していた。

 

ガチャリ、と、扉が開く小さな音と複数の足音が興奮と緊張で静まり返っていた厨房によく響く。途端にハリーはパッと表情を輝かせ、すぐに開くだろう扉を食い入るように見つめた。

 

 

「戻ったぞ、ハリー!」

「おかえりシリウス!」

 

 

シリウスは意気揚々と扉を開け放ち、見たこともないような明るい笑顔を見せる。今まで自分が「おかえり」と言うことはあれ、本部から一歩も出ないシリウスはその言葉を数年ぶりに久しぶりに聞き、喜びを噛み締めた。

 

ハリーは弾かれたように立ち上がるとすぐにシリウスに駆け寄る。シリウスは厨房の中を見渡し、自分を喜ばせるために飾り付けられた事やご馳走に気づくとさらに嬉しそうに笑い駆け寄ったハリーの肩をがしりと掴む。

 

 

「これで、ようやく君は胸を張って『シリウスは僕の名付け親だ』と言えるようになった」

「ほ、本当!?じゃあ、無罪が確定したんだ!」

「ああ、そうだ」

 

 

感激のあまり言葉を無くすハリーに、シリウスはぽんぽんと背中を叩き「すまなかった、今まで不自由な思いをさせてしまった」と謝る。しかし今のハリーにとってはそんなこととても些細な事だと思えた。シリウスは無罪だったと世間に周知され彼の汚名は解かれる。

自分の名付け親で後見人であり──なにより、父の親友だったシリウスと将来は一緒に過ごすことが出来るのだと思うと、ハリーは胸が多幸感と喜びでいっぱいになり、今なら何だって笑顔でかわせると思った。

 

 

「本当に良かったわ!──さあさあ、瓶を持って、あなた達はワイン?どっちでもいいわ、乾杯しましょう!」

 

 

モリーは涙ぐんだ目元をエプロンで拭いながらテキパキとソフィア達にバタービールの瓶を配り、シリウスの後から入ってきたリーマスとジャックにはワイングラスを渡した。

 

 

「シリウス、本当におめでとう!」

 

 

ハリーは大声で言い、バタービール瓶を高く掲げる。シリウスはソフィアやロン、ハーマイオニーなど、厨房にいた全員から「おめでとう」と言われ、何だかこそばゆいような気恥ずかしさを覚えながらも満面の笑みを浮かべ並々と注がれたワインを飲んだ。

 

それはまるで一足早いクリスマスパーティのようだった。ハリーはシリウスの隣に座り、何度も「本当にもう隠れなくていいんだよね?」と聞き、シリウスが頷くたびに歓声を上げる。

ソフィア達は喜びを爆発させるハリーを微笑ましく見ながら美味しい料理を飲み、騎士団にとって久しぶりの吉報に会話を弾ませるジャック達を見ていた。

 

 

沢山の料理が皆の腹の中に消え、それぞれの場所でゆったりと過ごす中、ソフィアは壁に背をつけ皆を目を細め見ていたジャックの側に駆け寄った。

 

 

「ペティグリューがどこかで死ぬ前に見つかって本当に良かったわ。どうせなら捕まえてくれればよかったのにね」

 

 

ソフィアは蜂蜜酒を舐めるように飲み、少しふわふわとする思考のままジャックに向かって呟く。

ワインを傾けハリーとシリウスが戯れ合う様子を見ていたジャックは、ちらりとソフィアに視線を下ろすとワイングラスで口元を隠しながら囁いた。

 

 

「捕まえることは不可能だったんだ。──あれは、本当はペティグリューじゃない」

「え?ど、どういうことなの?」

 

 

内緒話をするような低い小声で言われた言葉に、ソフィアは蜂蜜酒で咽せ、胸元をどんどんと叩き顔を赤くしながらジャックを見上げた。

今、ソフィアとジャックの周りには誰もいない。盗み聞きを心配されることがないとわかるとジャックは低く笑う。

 

 

「ポリジュース薬さ。あれは、俺だった」

「まあ!──そんな──ああ、そうね、ジャックはペティグリューの一部を手に入れることができるのね」

「まあな、発案者は俺だし、実行したのも俺。ペティグリューが偽物だって知っているのはダンブルドアとセブルスだけだ」

 

 

ああ、ペティグリュー本人もそうだな。とジャックは笑いながら告げワイングラスを回す。

死喰い人であり内部に入り込んでいるジャックならばペティグリューの毛髪を手に入れることは容易いだろう。外を自由に歩き、死喰い人やヴォルデモートを欺きペティグリューに姿をかえ堂々と世間にその姿を見せたのだ。

 

 

死喰い人の仮面をつけるペティグリューの写真を持ち、ジャックは魔法省を訪れた。顔の広く魔法省とも繋がりがあり、彼の意見を無碍にできない魔法省はペティグリューの事について精査し直し、ついに彼を死喰い人の一員であり、マグルの大量虐殺を行ったのは()()()()()()()()()()()。と決めシリウス・ブラックを証拠不十分であり、無罪とした。

魔法省からすれば今まで大々的にシリウス・ブラックを悪だと報道していたため、かなりの痛手だったが、それでも魔法省はジャックと──そして、シリウスの無罪を保証したダンブルドアに借りを作ることが出来た。

 

 

「魔法省は──大臣は、聡明な人だ。色々考えた結果、シリウスの無罪を認めた方が将来的に良いのだと考えたんだろう」

「色々って?」

「それは──まあ、今言うことじゃないかな。せっかくの楽しい雰囲気を壊したくはない」

 

 

ジャックの言葉にソフィアはそれがあまり良いことでは無いのだとわかり少し不安そうに表情を翳らせる。大人達が水面化でどんな駆け引きを行ったのかわからない。しかし、あまり喜ばしい事ではないのは確かだろう。

 

 

「そう、あのね、ジャック……少し相談したいことがあるの。ここは騒がしいから、別の部屋で……だめかしら?」

「いいぜ、おいで」

 

 

ジャックはワイングラスを机の上に置き、楽しげに話すハリー達に気付かれないようそっと厨房から抜け出した。

ソフィアもすぐ後に続き、階段を登るジャックについて行く。階段の踊り場に着いたジャックは手摺に腕を乗せ踊り場から厨房を見下ろしながらソフィアが話し出すのを待った。

 

 

「その──父様の事なんだけど。ジャック、その──あのね──ジャックは、ナルシッサさんと父様が破れぬ誓いをしたって、知ってる?」

 

 

ソフィアは琥珀色の蜂蜜酒が入ったグラスを両手で持ち、声を顰め不安げに聞いた。

じっと階下を見ていたジャックは表情には微塵も出さなかったが内心で激しく動揺する。勿論ジャックはセブルスとナルシッサの間に誓いがなされた事を知っていた。セブルスから聞いたのではない、ジャックは、その場に立ち会ったのだ。

 

 

「──どうして?」

「あのね、数日前に……ハリーがドラコと父様が話しているのを聞いたの。ドラコはあの人から何か命令されて、何かを企んでいる。父様はその企みを聞き出そうとしているけどうまくいってなくて……それで、その時に父様はドラコを護るってナルシッサさんと破れぬ誓いをしたって……」

 

 

何故知られてしまったのか理解したジャックは内心でセブルスが冒したミスを苦く思った。防音魔法をかけることもなくそんな重大な話をするなんて迂闊過ぎる。──いや、それほど焦っていたのだろうか。

しかし、2人はどんな誓いが交わされたかその内容までは言わなかったようだ。もしその内容を知っていたらソフィアは冷静さを失っていただろう。

 

 

「知ってた。ナルシッサとの間に誓いを結んだってな。ナルシッサは不安なんだ。ルシウスが投獄されたしな……ドラコを護るように、誓わせたんだ。ドラコがあの人から何かを命じられたとはダンブルドアも知ってるし、その対策も練ってる。気にすることはないよ」

「そう……それならいいの」

 

 

ソフィアはほっと表情を緩めると、甘い蜂蜜酒を一口飲む。ジャックの言うことなら信じられる。やはりダンブルドアはすでに知っていて、それを探るためにセブルスが動いているならば、何も心配する事はない。ドラコの企みが何であれ、ダンブルドアの前ではうまくいくことはないだろう。

 

 

「教えてくれてありがとうジャック」

「ああ……この事は、誰にも言うなよ?ハリー達にも、セブルスにもだ」

「ええ、わかったわ」

「さあ、もう戻りな。俺はちょっと酔いを覚ましてから行くから」

 

 

ソフィアは真剣な顔で頷くと、もう一度お礼を言い厨房へ向かって階段を降りる。ソフィアを見送ったジャックは、階段の手摺りに体を預けたまま大きくため息をついた。

 

 

──こうするしかない。何も知らせるわけにはいかないんだ。

 

 

ジャックは自分に言い聞かせ、ソフィアに嘘をついた罪悪感で胸を痛ませながら項垂れる。

 

 

セブルスはドラコを見守らなければならない。

ドラコに危害が及ばぬよう、全力で護らなければならない。

そして、もしドラコが与えられた任務──ダンブルドアの暗殺に失敗しそうな場合は、代わりに実行しなければならない。

 

それがセブルスとナルシッサの間で結ばれた破れぬ誓いだ。

セブルスはその誓いの内容や、ヴォルデモートに命じられたドラコがダンブルドアを暗殺しようとしているとすぐにダンブルドアに伝えた事だろう。

セブルスとて、ダンブルドアを殺害することは愚行であると理解しているが、あの場でナルシッサを凶行に走らせないため、彼女が持つ秘密を沈黙させるためには彼女の願いを聞き入れ、信頼させなければならなかった。

 

全ては、この世の何よりも大切なソフィアとルイスのために。

 

 

ジャックは粗暴な舌打ちを一つこぼし、力ませに手摺を叩く。

セブルスの考えを否定する事はできない。だが、それでも誓いを結んだことにより、今後セブルスの立ち位置は大きく変わるだろう。ダンブルドアがセブルスにより殺された時、騎士団の中で何が彼らにあったのかを知るのは自分だけになってしまう。その時に冷静さと指導者を失った彼らに言葉が届くのかどうか、ジャックにはわからなかった。

 

しかし、この件について騎士団員に周知すべきだと訴えるジャックの嘆願をダンブルドアは拒否し、誰にも言うなとジャックに強く言い沈黙を願った。魔法契約を結んだわけではなく、ジャックの善性に訴えかけたのだ。

ならば、ジャックはダンブルドアを信じ、沈黙するしかなかった。全てを聞いてもダンブルドアの表情は変わらず、穏やかなものだった──彼はどこまで未来を読んでいるのだろうか。

 

 

「……はあ……」

 

 

ジャックはもう一度大きなため息をつき、緩慢な動作で前髪をかきあげ後ろに流すとゆっくりと階段を降り、賑やかな厨房へと向かった。

 

 

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