【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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346 ホークラックス!

 

 

ソフィアは魔法生物飼育学の授業を終え、ハリー達が魔法薬学の授業が終わるまで1人談話室で宿題をしていた。

朝食や昼食の時、大広間にはラベンダーの姿は無く、その後の授業では同じ科目を受講していないために見かけることは無かった。パーバディの姿を見かけることも無かったことから、ただすれ違ってるだけなら良いと思いつつ──ソフィアはそれが希望的観測であることを理解していた。

 

 

「ソフィア……」

「パーバティ。……顔色が悪いわ」

 

 

憔悴し、蒼白な顔で肖像画の穴を潜ったパーバティはふらふらとおぼつかない足取りでソフィアに近付き、暖炉側の肘掛け椅子に腰掛けた。

ソフィアはすぐにパーバティの肩をそっと撫でる。暫く暖炉の火をぼんやりと見つめていたパーバティは、瞳にちらちらと炎を写したまま口を開いた。

 

 

「……ラベンダー、医務室で暫く入院する事になったの」

「えっ?」

「……理由は、詳しくは教えてくれなかった。ただ入院とカウンセリングが必要だからって。怪我をしたわけじゃないらしいけど……」

「そうなの……心配ね」

 

 

パーバティは一度口を閉じ、唇を噛み締める。ソフィアは彼女が何かまだ伝えたいことがあるのだが、言うべきか悩んでいるのだろうと察し──ただ無言で寄り添った。

沈黙していたパーバティは、体の中の空気が抜けてしまうのでは無いかというほどの長いため息を着くと、隣にいるソフィアしか聞こえないほどの音量で囁いた。

 

 

「……医務室で、ダンブルドアとマクゴナガルとラベンダーが話してるのを聞いてしまったの。ラベンダーが持っていたのは愛の妙薬じゃなくて、呪いのネックレスだったみたい。身につけると死んでしまうほどの強い呪いだったって。ラベンダーはそれを自分で購入して、ダンブルドアにプレゼントしたかったって。その理由は──」

「──ダンブルドア先生を、殺すため?」

「……ええ。──でも、ラベンダーがそんな事を考えるわけがないわ。怖くて泣いちゃうタイプだもの。きっと服従の呪文にかかっていたのよ!……あっ!そうね、入院するのはきっと原因を調べるためだわ!」

 

 

パーバティは祈る時のように指を組み、自分に言い聞かせるように早口で呟く。ソフィアは間違いなくこのホグワーツで何かが起こっているのだと感じ、胸の奥がざわざわと騒めき落ち着かない気持ちになりながら無理に笑顔を作り「大丈夫。きっとそうよ」とパーバティの背中を撫でた。

 

シャーロットとラベンダー。2人ともダンブルドア殺害を企てる人には到底思えない。

確かに今まで散々大人達に騙され、欺かれ、味方だと思っていた大人がヴォルデモートの忠実な部下だったことはあった。

しかし、ラベンダーは同じ時を過ごした友人だ。──まさか、ドラコのように何かがありヴォルデモート本人直接ではないにしろ、脅されて死喰い人の指示に従わざるをえない状況になっているのだろうか?

 

 

「……ラベンダー、何か変わったところとかあった?今年に入ってから、何か気づかなかった?」

「え?うーん……とくに変な事は……そんなに昔から操られていたの?」

「わからないけど、可能性はあるでしょう?」

 

 

操られているのか、脅されているのか。もし脅されているのならラベンダーは隠し事が上手いタイプではない。何か大きな事に巻き込まれているのならば1番近くにいたパーバティは気づくことが出来たかもしれない。しかし、どれだけ考えても異変は思い浮かばなかった。

 

 

授業が終了したのだろう。何人もの生徒がゾロゾロと談話室へ戻ってきて、静かだった談話室は人で溢れる。

この話題はあまり人に聞かせるものでは無い、そう思いパーバティは「自室に戻るわ」と疲れた笑顔で微笑み立ち上がった。

 

パーバティは小さく欠伸をこぼす。

昨日はラベンダーの事で最悪な未来ばかり考えてしまいよく眠れなかったのだ。

 

 

「ああ、そうだわ──」

 

 

パーバティはふと、小さな異変を思い出し、振り返った。

 

 

「──数ヶ月前、よく眠れないって言ってたわ。変な夢を見るって。あの子いつもならすぐ寝ちゃうでしょう?多分、ほら……失恋したからね」

 

 

それだけを伝え、ソフィアが驚き息を呑んでいる事に気づかず、パーバティは人を避けながら女子寮の階段を登った。

 

 

「……夢……不眠……」

 

 

ソフィアは暖炉の火を見ながらぶつぶつと呟く。

偶然だろうか。勉強や失恋が辛くて眠れぬ夜を過ごす事なんて子どもにはよくある事だ。

ソフィア自身も不安なことがあると寝付けず、悪夢を見て飛び起きてしまう事も少なからずあった。

 

 

ラベンダーがダンブルドアの殺害を企て、失敗し医務室に入院する事になったとは、ハリーとロンには言わない方がいいだろう。──少なくとも、どこからかその噂が漏れてしまうまでは。きっとパーバティは、ハーマイオニーには伝えるはずだ。ルームメイトが何日も姿を見せない事は隠し切れる事でもない。

あとで、ハーマイオニーと話し合わなきゃ。そう考えながらソフィアは止まりかけていた自習を再開させ、ハリー達が戻ってくるのを待った。

 

 

 

数十分後、魔法薬学の授業を終えたハリーとロンとハーマイオニーが戻ってきたが、どこか3人の空気は悪く、苛立ち、互いに不満を抱えているように見えた。

 

 

「どうしたの?」

「散々だったんだ。全くホークラックスの事を聞けなかった」

「それに、ハリーは混合毒薬から解毒薬を作る授業だったのに作業もしないでベゾアール石を提出したの!」

 

 

ソフィアはハリーとハーマイオニーの言葉を聞いても、何故彼らが苛立っているのか全くわからなかった。「ホークラックスって?」と首を傾げるソフィアに、ハリーはまだソフィアには先日のダンブルドアとの授業と──そして初めて出された宿題について伝えていなかった事を思い出し、誰にも聞かれないよう談話室の端に引っ張って行き説明をした。

 

 

ハリーはスラグホーンの記憶で、リドルがホークラックスについて知りたがっていたのを見た。ハリーが見た記憶ではスラグホーンはリドルを拒絶していたが、ダンブルドアはこの記憶は改竄されたものであり、本当の改竄されていない記憶をスラグホーンから聞き出さなければならない。──それがハリーに課された宿題だ。

 

 

「言っただろう?僕はスラグホーンを懐柔する必要があるんだ!僕と君がベゾアール石を提出したら怪しまれるだろ!」

 

 

ハリーは恨みがましそうな目で見るロンに強い口調で文句を言ったが、ロンは見るからに不機嫌そうな顔でそっぽを向いた。

 

 

「それで、ハーマイオニーは……ハリーが解毒薬を作らずにベゾアール石を提出したのが気に入らないのね」

「だって、石よ!薬じゃないわ!それなのに10点も加点されて!ゴルパロットの第三の法則を冒涜してるわ!」

「そのなんたらの法則は結局、どういう意味なんだ?」

「どういうって、そのままよ。わからないの?」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは眉を寄せ、もう一度教科書を丸暗記した言葉を澱みなく伝えたが、論理的説明をされても意味が理解できないロンは頭の上にハテナをたくさん飛ばし難しい表情をした。

 

 

「んー。つまりね。簡単に説明すると……膨れ薬と老け薬の解毒薬は縮み薬と戻り薬でしょ。じゃあ、膨れ薬と老け薬を一つの瓶に混ぜたものを飲んだらどうなると思う?」

「うーん……?」

「膨れて老けるんじゃないの?」

「それぞれ別に飲んだらね。魔法薬は材料が少し異なるだけで効能が大きく変わるわ。出来上がった薬でもそれは変わらないの。だから同時に飲む事は推奨されてないわ。胃の中で混ざるからね──つまり、2種類の薬を混ぜたものは、本来持つ薬とは違う効能を発揮する事が多くて、本来の薬に対応する解毒薬を飲んでも効果がないの。他にもいくつか薬品を足して中和させなきゃいけないのね」

「……わかるような、わからないような」

 

 

ソフィアの説明を聞いて、ハリーとロンはなんとなくゴルパロットの第三の法則について理解したが、しかしどうやってたくさんある材料から解毒薬になる材料を探し、薬を作り出せばいいのかはわからなかった。

 

 

「その法則のことよりも、スラグホーンだ。間違いなく警戒されたと思う。……ソフィア、ホークラックスって聞いたことある?」

「いいえ、初めて聞いたわ。……過去のヴォ…ルデモートが知りたがっているのなら、闇の魔法道具や闇の魔術かしら……」

 

 

ソフィアもホークラックスの名称を聞いたことがなく、それが物なのか魔法なのかもわからなかった。

ただ、過去のヴォルデモートが知りたがっていた──興味を持っていたもので、スラグホーンはそれに関わる事を隠蔽しようとしているということは、あまり良いものではなさそうだ。

 

 

「そのホークラックスについて、図書館で調べてみるわ。──あ、それとね。さっきたまたま知ったんだけど……また、ダンブルドア先生への殺人未遂があったようなの」

「えっ!本当に?」

「ええ……詳しくはわからないんだけど、こう続くとやっぱり何かあると思うの。……それで、たまたまかもしれないけど……2人とも夢見が悪くて寝不足気味だったって」

「んー……ああっ!もしかして、白昼夢魔法とか?ほら、フレッドとジョージが特許を申請していた創作魔法よ!あれを使って、悪夢を見せているとか!」

 

 

ハーマイオニーは思いつきの言葉だったが妙に筋が通っている気がして興奮しながらソフィア達の顔を見渡し同意を求めたが、ロンは難しい顔をして「悪夢とダンブルドア暗殺がどう繋がるんだ?」と尤もな事を言い、ハーマイオニーはそれもそうだと口を黙み、喉の奥でぶつぶつと何かいい考えが浮かんでこないかと頭を捻らせ続けた。

 

夕食を食べに大広間に行く時に、ソフィアは先ほど伝えなかった事を──ラベンダーが殺人未遂を犯したということだ──ハーマイオニーに伝えようとしたが、ハーマイオニーは既に全て読み取り、「わかってる」という意味を込めて頷いたため、ソフィアはそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

その後ソフィア達はホークラックスの事や、人を操作することができる魔法が存在するのか、図書館で必死に探したがどちらも難航していると言えるだろう。

 

ソフィアとハーマイオニーは時間が許す限り禁書の棚を手分けし、数日かけてほぼ全ての禁書本を読み、探したが見つかったのは『最も邪悪なる魔術』という本に『ホークラックス、魔法の中で最も邪悪なる発明なり。我らはそれを語りもせず、説きもせぬ』という一文が書かれているのみだ。

 

 

「これだけ探したのに!この文だけなの!?」

「それほど邪悪なのね……もしかして、許されざる呪文以上のもっと凶悪なものとか……ここまで隠されているのなら、大人でも知っている人は少ないでしょうね」

「本に書いてないならどうすればいいのよ!」

 

 

ハーマイオニーは苛立ち、もどかしそうに言いながら古色蒼然とした本を乱暴に閉じた。本から幽霊が出てきそうな鳴き声をあげたが、この程度のことで怯えるハーマイオニーではなく、「お黙り」とピシャリと本に言い、鞄の中に詰め込んだ。

 

 

ハリーはスラグホーンがまたスラグクラブを開催しないかと心待ちにしていたが、スラグホーンはハリーから何かを聞かれるのを避けるためなのか、あれ以来ぴたりとスラグ・クラブを開催することは無くなった。

はじめは衝撃と疑惑からよそよそしさを出していたスラグホーンだったが、ハリーがホークラックスの事を聞くつもりがないのだと数回の授業で判断すると、また以前のような可愛がる態度に戻り、その問題は忘れたように見えた。

 

何も解決しないまま日々が過ぎていく。ソフィア達は漠然とした不安を感じていたが、大きな事件は起こることもなかった。──ただ、ラベンダーはずっと入院していたが。

 

 

 

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